プロローグ
はじめましてよろしくおねがいします。
毎日18時に投稿します。
6月のとある日の午後。
窓の外には、梅雨を忘れたような青空が広がっていた。
俺――九十九零司は、大学の講義室で五十嵐理香先生の講義を受けていた。
いつもの後方、窓際の席。
特等席と言えば聞こえはいいが、ただ人目につきにくいというだけだ。
五十嵐先生は元高校教師だった。
高校時代にも授業を受けたことがある。もっと研究に打ち込みたいという理由で高校を辞め、大学講師へ転身したらしい。将来は教授を目指しているという話も聞いた。
高校時代から人気の先生だった。授業は分かりやすく、それでいて面白い。難しい内容でも自然と頭に入ってくる。その評判は大学でも変わらないらしく、この一般教養の講義には様々な学部の学生が集まっていた。今日も講義室は満席で、欠席者はほとんど見当たらない。
何となく周囲を見渡す。
見覚えのある顔がいくつもあった。高校時代に同じ図書委員で、今も同じ文系学部にいる一ノ瀬楓。いつもクラスの中心にいた委員長の二階堂澪。金髪ギャルでありながら学年一の才女で有名だった三上瑠奈。二人は理系学部だが、五十嵐先生の講義は学部を問わず人気らしく、こうして顔を合わせることになった。他にも、高校時代の同級生が何人もこの講義を受けていた。
そんなことを考えながら、ふと窓の外へ視線を向けた瞬間だった。
低い音が、遠くから響いてくる。
雷か?
さっきまで晴れ渡っていた空に、いつの間にか黒い雲が広がっていた。
「え?」
隣の席の学生が思わず声を漏らす。その声につられるように、講義室中の視線が窓の外へ向かった。
黒雲は異様な速さで空を覆い尽くしていく。まるで何かが空そのものを飲み込んでいくようだった。
「おかしいな……天気予報では晴れだったはずだけど」
五十嵐先生が手にしていたチョークを置き、窓の外を見る。
次の瞬間。
白い閃光が空を裂いた。
轟音が鼓膜を叩く。講義室全体が眩い光に包まれ、誰かの悲鳴が遠くなっていく。目を開けていられない。床が消える。身体がどこかへ引っ張られる。
意識が薄れる直前、光の中に人影が見えた。
学生たちの前へ出ようとする、五十嵐先生の姿だった。
そして――。
俺たちは、この世界から消えた。




