夜空の星空に捧げる五重奏18
「あ~る~さ~ん~おきてくださ~い」
カーテンをがらがらと開けて日差しを強引に差し込まれる、私はこんな強引な子に育ては覚えはないぞ
「眠い」
ぐだぐだと布団の中へと潜り、簡易的な夜を作り出そうとする、だがそれでも強引な娘は力づくに布団を引っぺがそうとしてくる
「駄目ですって、今日は特に何かあるわけではないんですから!店開けないといけないんですって」
「大丈夫だって、どーせ人なんてもんは来ないって」
「来ますから、というか開けないと人も来ませんから!」
「なーんで朝が来るんだろうな」
くそぉう、寝足りないというか魔力不足だな、もうあと十二時間ぐらいは寝たい気分なんだがな…あー身体が重い、というか辛い、なんで朝は来るんだよ、当分夜で良かったよ
というか何故朝は毎度毎度律儀に仕事を始めるんかね、偉すぎだろ、一日ぐらいさぼっても良いだろ、誰も怒らないって絶対に
はぁ‥‥
………‥‥‥‥夜にしてしまおうか
「駄目ですよ、駄目ですからね、魔法で夜にしてしまおうとかは、本当に」
駄目かぁ
「…‥‥…おやすみ」
「だめですって!ここで寝たら確実に夕方までおきてこないじゃないですか、ほ~ら~お~き~て~」
と言いつつルディアに強引に布団を持ってかれた
いつもの如く毎度の如く、いつも通りに店の奥に座っていた、ルディアはいつもの如く買い出しに行って貰っていてここには現状いない
‥‥‥‥いつもありがとうございます、ルディア様
なので私がかつてのように一人で対応するしかなかった。
静かな空間が流れる、何も音がしない空間が流れる、耳を澄ましても聞こえてくるのは高々私の息遣いか、少し離れたところから聞こえてくる小さな小さな喧騒の音だけだった、それ以外は特筆すべき音はない、座っている木椅子の音も聞こえてきたのかもしれない
静かだった、唯々静かだった。
この時間は昔は特に何も感じなかったが最近は少しだけ、ほんの少しだけ寂しさを感じている
何ともない日常で何ともない言葉を交わしていただからだろうからか、普段といういつも通りの日常から離れると私でもこんな気持ちに陥るんだなと驚きも同時に発生している
「まぁ別にそれがどうしたって感じだがな」
賑やかしいのも嫌いではないが静かなのも嫌いではないのだ、だから別に特段困る事ではないからな、静かな時間を使って本でものんびりと読んでみればいいさ
そうして本を開き、読書に集中しようとした瞬間にからんからんと客人を知らせるベルが鳴った
だれだと思ってそちらに目を向けるとそこには見知った顔というか、見たくもない顔がそこにあった
「お…ね…え…ちゃん!!遊びに来たよ!!ってなんだ、お前か」
「お前なぁ~人の店に来てそれはないだろ?というか店主なんだぞ?いるに決まってるだろ?」
「てめぇなんかに興味があるわけないだろ、入れ物」
「なんだぁ?昨日の夜、無様に寝っ転がってたおめぇが私に何か言える立場かぁ?また片手で転がしてもいいんだぞ、こっちは」
「……………………………………。」
「………………………………………………。」
ぴりついた雰囲気が辺りに充満し始める、一歩でも動けばこの場は戦場になってしまう。少しでも手を動かせばそこから戦闘が始まってしまう、その緊張感という空気が辺りを支配していた
だがその支配よりも昨日の疲れから来る気怠さが勝ったアルが先に警戒を解き、のんびりとくつろぐように、足を前に出すようにして深く座り込んだ
「やめだやめ、昨日、今日でやる気にはならねぇよ、こちとら寝不足も相まって何にもやる気が起きないんだからさ」
「…………」
「だがらてめぇも警戒を解きやがれ、ルディアが来た時なんて説明すんだよ、それで」
それもそうだなと思ったアカネは肩の力を抜いた
「おい、入れ」
「本当に消し炭にするからな?その不名誉な名前を次言ったら」
「はぁ……、アル、お前はあの後回収したのか?」
「あー?あー………あれなぁ」
回収をしたかと聞かれたら回収には失敗している、何かトラブルがあった訳でもなく、何か不手際があった訳でもない、ただただ言われた場所、彼女の部屋へと侵入しあるべき場所にある物を探したがそれは本当に元から何もなかったかのように何もなかったのだ
人の部屋を漁るなんて気分のいいものではなかったために途中で切り上げてきた
……どこにいったんやら
「お前はこれからどうするんだ?その悪魔を抱えて生きていくのか?」
「あー?当たり前だろ、私はこいつを抱えて生きていくんだ、お前と一緒で」
「………。それはどうあがいても悪魔だぞ」
「悪魔でもいいっつってんだよ、私は私が面白いと感じれればどうだっていいんだ。」
「そうか、まーだったらここの王様には伏せといてやるよ、あいつはまぁ暴れなければ気づくこともないだろうさ」
「っは、なんであいつは王様なんてやってんだろうな」
「んなもん、私が知るわけないだろ?私はただの魔法使い屋さんなんだから」
「まーどうでもいいか……だったらこれからよろしくね、お姉ちゃん!」
優しいそうな笑顔があった、だがその中身を知る人物にとってはそれは外をしっかりと包装されただけの汚れ切った物だ、ハリボテだ
アルはそんな笑顔に、引き攣った笑顔しか返すしかなかった
「これからもよろしくするわけねーだろ、クソ幼女」
「だって私と貴方は似たもの同士だもの、貰い受けて、繋がって、そして負けて………なにも持たない人同士」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………。」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
「ま、だから仲良くしようね、お姉ちゃん」
悪魔と契約を交わした少女はそう言いこの物語を締めた
音楽は鳴り終わり、幕は落ちる、何かを得たわけでもなく、夜空に披露をしただけのそんな物語、何かが進んだわけでもなく、今あるものが音のように、波のように広がるようなそんな物語、波は波紋を流し、それはいつか大きな波となる、その波紋は情報を持っており、小さな情報はいづれ大きくなって新しい波を連れてくるだろう、跳ね返り、跳ね返り、元居た場所へと
だからこそ五人で奏でた五重奏、だが影は含まない、それは不定形だ、妄想は演奏者にはならない。
そして、そしてそれを見て観客は大いに笑った、楽しそうに、嬉しそうに




