可愛い妹04
部屋に入ると、子守り役のメイドが私たちに頭を下げ、部屋から出ていった。
ベビーベッドに寝かされている、クリス様。
私の義理の妹になるのだけれど…可愛い。
なにをおいても、この一言に尽きるわ。
赤ちゃんが天使だと言うのは、本当なのね。
白のベビーベッドに白のベビー服を着ているクリス様は、この世に舞い降りた天使そのもの。
(あぁ、この可愛らしさを表現出来ない私を許して下さい、クリス様!)
天使のように可愛らしいとだけ、言わせて下さい!
そんな私の思いを知ってか知らずか。
クリス様の円らな瞳で見られ、私のハートは射抜かれた。
(はぅあぁぁぁ!クリス様が、私に微笑んでいらっしゃる!)
クリス様が私に向かって両手を伸ばしている。
可愛く小さな手に右手を差し出すと、両手できゅっと掴まれ、まんべんな笑顔を向けて下さった。
「クラウス様、クリス様が可愛らしいです。愛らしいです。私の妹にしたいです」
「うん、ちょっと落ち着こうねアリス。もう、君の妹みたいなものじゃないか。義理の、だけどね」
…そうですけど! そうなんですけど!
内心荒ぶっている私には、落ち着ける要素は全くない。
寧ろ、興奮状態のままです。
クラウス様のお小さい頃も、きっと天使だったに違いない!
同じマリア王妃様とシャルル国王様のお子だもの、それに…睫毛の長い所が似ているの!
クリス様とクラウス様は!
成人なさる頃は、きっと美人になっていらっしゃるだろうな…クリス様。
クラウス様は、この国一のイケメンで間違いない。
王妃様と国王様は美男美女だものね。
王宮の執事さんもメイドさんも、美男美女。
…フリードリッヒの事は、どうしたものかしら。
あまり人の事を悪く言いたくも思いたくもないのだけれど、悪役令嬢として振る舞おうと決意した以上、そんな思いも捨て去ろう。
クラウス様は仲良くして下さって居るから、私の話は聞いて下さる筈。
「クラウス様、私…噂通りに振る舞おうと思います」
「“噂通り”…。あぁ、レオナルドにでも聞いたの?シスコンは口が軽くていけないな」
…聞き間違いかしら?
クラウス様がレオ兄様をディスったように聞こえたけど。
「心無い貴族が流した噂に、尾ひれが付いてね。我儘三昧で、性格が捻じ曲がっていて。僕との婚約も、脅してなったって。――本当に、馬鹿な事を言うよね」
クラウス様の後ろに般若が見え…。
うん、その噂を流してる犯人が知りたいわ。
クラウス様が怒るなんて、よっぽどだもの。




