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47:次、どうすればいい?






 「ふぅー、、、国が変わると、随分と雰囲気も変わるもんだな」


 アシノミヤ王都より東へ二日移動した隣国、自由貿易国家[ナニュワ]。

 昨晩、街へと到着して、宿より何より看板の誘惑に刈られてヒドい目にあった。


 そして、正午前のメインストリート。

 遅い朝食をとりながら人の流れを眺めている。

 

 ここ、ナニュワでの人の流れや活気は現代なみだ。

 服装の雰囲気や店の感じも、ファンタジー色が少し薄れて懐かしい都会を連想させる。


 さて、サポ助よ。

 報告を受けようか。


 二階テラスのカウンターより人の流れを見下ろすように眺めながら、相棒へと話しかける。


 <労使協定の見直しを要求する!ボクには情報収集させといて、自分だけ楽しそうな店に行ってたとか、それはちょっとないんとちゃう?>


 だから、なんも無かったって言ってるだろ、むしろ被害者よ、オレ?


 <結果論やね。伯爵プレイとかむちゃくちゃ楽しそうやしっ!ボクもファイル見たかったっ!!>


 すまねぇって何回も謝ってんじゃねぇか、今度店行った時にゃオマエに体の全権渡してやっから、いい加減ヘソ曲げんなよ。


 <11時13分、言質頂きました、絶対に忘れません、3日以内に実行していただきます。ウヒョーっ!どんな店にしょっかな♪>


 はいはい、これで労使協定締結ね。

 だからそろそろ報告をお願いしたいんだけど。


 <イエッサァーッ!社長っ!私、身を粉にして労働に勤む所存ですぅ!!へへへ、ヤッタね♪・・・・・さて、ぺーはん。結論から言うと[お尋ね者]やね。賞金は1千万。まあまあ高い方みたい。アシノミヤ王国よりの依頼で、国境を超えて[賞金首ハンターギルド]へと手配書が回り出したところやね。罪状は国家反逆罪。救ったはずやのに皮肉なもんやで>


 「ふぅー、、、そりゃあんだけ城や大聖堂が壊れたんだから当たり前っちゃ~当たり前か・・・見ようによっては、オレがクリムト王子を怪物化させたようにも見えるだろうし」


 理不尽なのは分かっているが、王国側からしたら、誰か分かりやすい悪者がいないと収まんないほどの被害だろうしね。


 変に他人事のように現状を受け止めていると、通りの向かい側の数名に違和感を感じた。


 <インスピレーションの力やね。もう気付いたと思うけど囲まれてるわ>


 ファーストフード店のような店内で、メインストリートを見下ろすように設置された二階テラス席のカウンター。

 背後のフロアには、8名の客が談笑しているが、そのうち3名はどうやらお仲間のカウボーイのようだ。


 そしてさらに2名の女姓がテラス席へと現れて、オレを挟み込むように両脇の席へと腰をおろす。


 「スミマセェ~ンお兄さん、チョットお時間いいですかぁ?」

 「アンケートにご協力くださぁい。あら、いい男じゃない、私、好みよぉ~」


 オレの両腕に絡むように腕をくまれる。


 「「 はい、つかまえたぁ~ 」」


 組んだ腕に力を込めて拘束される。


 <こらこら、オッパイの感触にニヤけてる場合とちゃうよ。背後の奴らも動きだしたで>


 わ、わーてるよ

 チョットくらいの役得?

 それくらい、いいじゃねぇか


 「お嬢さん方、熱烈なお誘い申し訳ないのですが、チョット捕まってあげる訳にはいかないなぁ。代わりに、これで勘弁してよ」


 オレはテーブルの上へと、金銀財宝を出現させる。


 「「 っ!!すごぉぉいぃっっ!!! 」」


 オレの両腕を、むしろ放り投げるように勢いよく突き放す女性たち。

 そしてその勢いのまま、オレはメインストリートから目立つように、テラスの手すりの上へと立ち、大声で叫ぶ。


 「さぁ、この場にいる方々にもっ、私からのプレゼントですっ!」


 両腕を広げ、数千万はあろうかという大量の札を[ブラスト]で、メインストリートやテラスへと広くばらまいてやる。


 「「「「「「 おおおぉぉっっ!!! 」」」」」」


 この場は大混乱と化す。

 我先にと札へと群がる人々。


 「おいっ、ターゲットはどこだ!?」

 「うるさいわねっ!これだけの財宝よ、賞金以上に儲けが、、、、、あれ?アタシの財宝はどこにいった?」


 メインストリートでも突然消えてしまった大量の札に、群がった人々はキョロキョロと困惑している。


 はっ、と事態にいち早く気付いた女性カウボーイの二人が周囲を見渡しても、もうすでに賞金首の姿はどこにも居なかった。





 「ふぅー、、、テンカウントって思ってた以上に便利なのな。それはそうと動きが早いのはいいとして、どうしてオレがここにいるって分かったのかな」


 路地裏を走り抜け、先ほどの騒ぎより遠ざかりなが疑問を口にする。


 <う~ん、、、改めて思い起こしてみると、昨晩の騒ぎで顔は見られまくってるし、なにより泊まった宿でも[ジュンペイ]って記帳してるしな。つか、さっきのカフェでも店員さんに、アシノミヤから来たばっかなんだよ、仕事のあと案内してよ、ジャンジャン奢ってあげるからさっ、て、超自白ぎみにナンパしてたよね?そりゃ通報もされるよ>


 げ、

 じゃあ、あの店員さんが後から、仕事終わるまで待ってて、って言いにきたのは罠ってこと?

 脈アリじゃないってこと???


 <そういうことや。相変わらず全然ダメダメやね、ぺーはん。ハッハハ>


 ミッキーみたいな笑い方すんなっ!

 くっそぉぉぉ~

 オレだってきっと・・・

 ぷんすぅー・・・・・


 <さて、拗ねてるとこ悪いけど、マジの話これからどうする?指名手配されている以上、冒険者登録なんかも出来へんよ。もっと遠くの方まで行ってみるか?>


 だよね~

 流石に隣国くらいじゃ捕まる可能性も高いか、タラタラ旅するのも悪くはねぇけど、取り敢えず、あれ、気にならないか?


 それは、空高くそびえる塔。

 自由貿易都市ナニュワのシンボル[パルナスの塔]。


 いわゆる塔型のダンジョン。

 元々、ダンジョン都市から始まって、発展したのが現在のナニュワとなる。

 現在の最高到達階層は46階。

 冒険者ギルドを中心に、その豊富な資源やお宝を目当てに人口は常に増え続けている。


 「ふぅー、、、ダンジョンなんて初めてだし、ちょっと覗いてからでもいいんじゃねぇか?」


 <う~ん、確かに。まぁ入り口にギルドの検問があるやろうけど、忍び込めんことないやろうしな。行ってみよか>



 間近で見上げると、それは高く、デカい塔であった。

 建築技術どうなっての?

 地盤とのバランス悪すぎない?

 なんで倒れないの?

 そこはほれ、異世界ファンタジー

 などと、感じずにはいられないほどの迫力である。

 これを見れただけでも、十分に観光といえる。


 そして、入り口にはそれなりの列が出来ていた。

 後付けで設置された検問所で、入出場の冒険者を管理している様子だ。



 オレは[ブラスト]で飛ばしたバクチクが破裂するタイミングで、[ミラージュ]を全開にして検問所を通り抜ける。


 そして大きな塔の入り口をくぐり、初めてのダンジョンの中へと突入していった。







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