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38/47

38:どうした、見ているだけか?

サブタイトル、カブっていたので変更しました。







 「ぅうぅっ!ぅぅう~!!」


 オレは張り付けのフェルディナンドをシバき、騒がないよう猿ぐつわをする。

 となりで呆然とその様子を眺めていたヴァーミッド君は、なぜか協力的に猿ぐつわを受け入れた。


 「さて・・・私は六道鬼面衆ハンベイである。そこに反論は認めません。つか、そういうことにしとけ。悪いようにはしない。つっても、もうラキシスやレイダー侯爵なんかには、お前達が鬼族の内通者で、ザンダ採掘場を譲渡してたのもバレてるけどね。あと、ファウスト王子やアズベルなんかが捕まってるって聞いたけど、どこにいるか知ってる?」


 「ぅまぇぇかぅぅっ!」


 お前かぁ?

 あ

 ザンダ採掘場を壊滅させたこと?


 「はい、私です。ですが、もうそんなことはどうでもよろしい。王子やアズベルの居場所、知ってるの?」


 興奮しているフェルディナンドは置いといて、隣のヴァーミッド君の方を見ると、首を横に振っていた。


 あらそ。

 知らないのなら、用はない。

 

 オレはヴァーミッド君の右手を繋いでいる腕輪を一度ストレージへと収納して、再度それをカモフラージュとして緩く右腕にまた付ける。


 「その体格だ。腕一本自由になりゃ、あとはなんとかなるだろう?30分は大人しくしてろ。もし騒ぎが起こったら好きにしてかまわない。その後、コーヴァに戻って罪を償うも良し、テキトーに逃げ回るも良しだ。従ってくれるか?」


 真面目な表情で、力強く頷くヴァーミッド。


 「よし・・・やり方はどうあれ、オレはアンタ達のことを嫌いにはなれない。死ぬなよ」


 踵を返し、歩き出す。

 後ろで暑苦しい男泣きの声が聞こえてきたが、振り返らずに城へと向かった。


 さて、どうしたもんか?

 サポ助、城内の様子はどうだ?


 <正確には分からんけど、総勢で1万はおるんとちゃうかな。早朝ってこともあり、あんまり動きはないけど、普通牢屋っていえば、地下とか離れやないかと思う。で、マップの配置から考えて、ここが怪しいと思うんやけど>


 それは本丸から少し離れた建物だった。


 ま、どうしていいか分からんし、取り敢えずそこに行ってみるか。


 城を回り込むように敷地内を歩く。

 途中すれ違うオーガやオーク達には、頷いて挨拶するだけで喋らないと決めていた。


 バレちゃうし。


 そして目的の建物に近付いてみると、見張りのオークが2匹立っている。

 雰囲気からして当たりのようだ。


 「ご苦労。つかぬ事を聞くが、ここに捕らえた王子やアズベルは居るのか?」


 オレは威厳たっぷりに、けど、なんでもないことのように質問する。


 「ブ?ここはオラたちの種付け部屋だブ~。流石に男にはしないブ~。ハンベイ様、大丈夫だべか?いつもの頭良さそうな雰囲気が無いブゥ~」


 おいっ

 <・・・ゴメン>


 「じょ、ジョークだよ、ジョーク・・・ハハ。では王子たちはどこに監禁しているかな?忘れてしまったなぁ~、ハハハ。あ、これは普段頑張っているキミ達へのお礼だよ。みんなには内緒な」


 オレはザンダ採掘場よりパクッてきた金塊をオーク達に握らせる。


 「ブホォォ、金だブゥ!ピカピカだブゥ、大好きだブゥゥ!有り難うだブゥ!・・・それにしてもハンベイ様は、また冗談を言ってるブゥ。王子とアズベルは、今日の朝一にクウカイ様への謁見に連行したばかりだブゥ~。あれ?もうすぐ始まる時間だと思うブが、こんなとこに居て大丈夫だブか?」


 げっ

 マジで


 「無論、大丈夫だブゥ。あ、いや大丈夫だ・・・だが、確かに時間だな。私もそろそろ殿の元へと向かうとしよう。あ、その金塊、大切にするんだぞ、フハハハ」


 オレは競歩のような早足で本丸へと急ぐ。


 ヤッベェェ~

 そんなことになってたのかぁ~

 急げぇ~


 <本丸、上階に確かにそんな部屋あるな。ルート表示するわ。けど、いきなりの修羅場やな。そんなとこでボロ出さんように、って、あれ?立ち止まってどないしたん?怖じ気付いたんか?>


 オレは急ぐのを止めて、建物の死角へと入り込みタバコに火を付ける。


 「ふぅー、、、いや、間違っているなぁと思って・・・オレ、なにしに来たんだっけ?演じるのが目的じゃない。救出もついでだ。いま優先すべきことは・・・」


 物陰で立ち止まり、タバコをふかしながら冷静に考える。


 オレの目的は、ハンベエになりきることなんかじゃない。

 救出もどちらかと言えば二の次だ。

 長く潜伏して長期戦にするつもりもない。

 最優先は、駆逐。

 驚異の排除こそが最優先のはずだ。


 「ふぅー、、、」


 オレはしばらくタバコを吸いながら、今後の動きをシミュレーションしていた。






 「面を上げい・・・」


 威厳を込めて、いち文官でしかない私が声を上げる。


 これは本来、我ら文官の筆頭、鬼面衆ハンベイ様のお仕事だ。

 だが、ハンベイ様はここには居ない。

 今までこんなことは無かった。

 けど多忙を極める方なので、なにか問題でも処理しているのだろうと、誰も余り気にした様子ではなかったが、代役を押し付けられた私からすれば溜まったものじゃない。



 謁見の間。

 上座に座るクウカイ様。

 その左右にハンベイ様の代理である私と、鬼面衆が一人、四つ腕の[シンゲン]様。


 そして部屋の中央には、鎖で縛られたアシノミヤ王国の王子ファウストと、我らの敵、アズベルが転がっている。

 その側にいる2名の武将オーガが、アズベルとファウストの髪を掴み上げて、クウカイ様へとその顔を見せている。


 「フォッフォフォ。初めましてじゃな、アシノミヤのアズベルよ。ヌシ一人のお陰で、我らアコウがどれほど苦汁を舐めさせられたことか・・・会えて嬉しいぞ」


 クウカイ様はにこやかに、だが、内に秘めた憎しみを隠すことなくアズベルへと話しかける。


 「・・・五氏族の智将クウカイさんですか。それはこちらも同じこと。人質で脅し、投降したにも関わらず、平気で約束を破って部下達を殺したそのやり口。さすが[恥将]ですね、反吐がでます」


 アズベルも怒りを隠すことなくクウカイを睨みつける。


 「キサマっ!」

 「くっ」


 アズベルを取り押さえている武将オーガが、アズベルを叩きつける。


 「もういいっ!殺すなら殺せっ!!だが、必ず、必ず父上がキサマ等を滅ぼしてくれるわっ!」


 隣で、思い詰めた感じのファウスト王子が自暴自棄のように喚き散らす。


 「うるさい」

 「グハッ」


 ファウスト王子も取り押さえる武将オーガに殴られて泣き出してしまった。


 「フォフォホ、若い、いや青いのぅ・・・さて、ファウストとやら。それはワシも望むところじゃが、そうもいかん。ヌシは王都攻めの際に使う駒じゃて。殺すにはまだ時期尚早じゃ。して、アズベルよ。ヌシは今すぐにでもその首を跳ねてやりたいところじゃが、同じ五氏族の[ヨシツネ]がヌシにご執心でのぅ。それも一興かと思おておるが」


 相手の出方を探るのがクウカイ様の癖だ。

 ヨシツネ様といえば、アズベルに片腕を斬り落とされた経緯がある。

 そんな方に引き渡すとあっては、死より辛い拷問が待ち受けているのは明らかだ。


 「・・・あまりお勧めはしないな。ボクは必ずここを出る。殺せる時に殺さずに先延ばしにすれば、それだけキミ達への驚異が膨れ上がることになるよ」


 床に顔を抑えつけられたまま、強がる訳でもなくアズベルは言い放つ。


 「フォッフォフォ、怖い、怖いのぅ・・・ヌシが言うと強がりに聞こえんわ。ワシは小心者じゃ。臆病じゃからこそ、ここまできた。ゆえにヌシの言う通り、ここで殺すとしよう。我が氏族、全員でキサマを食すと約束し、、ん?」



 「~~ッ!~ぉて、すぐに、、待ちを、、、お待ちくださいっ!」



 廊下より騒がしい声がする。

 それは段々と謁見の間へと近付いて来ると、扉は勢いよく開かれた。


 「殿ぉ、たっ、大変にございます。賊が、賊が城内にっ!」


 それは慌てふためく、ハンベイ様の姿であった。

 それに続きクウカイ様の小姓が、ハンベイ様を引き留めきれずに息を切らして続いて姿を現す。


 「何事じゃっ!ハンベイ、落ち着いて説明せよ」


 その姿に、流石のクウカイ様も驚いている様子だ。

 それもそのはず、こんなハンベイ様を見たこともない。


 「はぁはぁ・・・?、いえ、そのハンベエ様に化けた賊が、先ほどクウカイ様を殺すと、」


 息を整えて少し冷静になったハンベイ様が、よく分からないことを言う。


 「ん?ハンベイ、ヌシはなにを言うてお、」



===パスッ!パスッ!・・・===



 全員がハンベイ様に注目するなか、すぐ側で乾いた破裂音が数回響く。


 「っ!!!」


 鬼面衆、四つ腕のシンゲン様と、クウカイ様の頭が破裂した。


 「そ、なっ」


 振り返ると、ハンベイ様に続いて飛び込んで来た小姓が、いつの間にか上座の裏側にまで来ていた。

 そして、手にした道具を次々に我々へと向けて破裂音を鳴らしていく。


 「ぁ、ぁぁあ・・・」


 謁見の間は、血の海となっていた。


 私以外、誰も立っている者はいない。

 ハンベイ様も、体が大きく吹き飛んで死んでいる。

 だが、その顔はどう見てもハンベイ様ではない。


 むしろ、同僚の友人のように見える。


 「ふぅー、、、そんな怒るなよ、サポ助。ハイハイ、スキルのダブル使用を頑張ってくれたお前のお陰です。わーてるよ」


 背後で意味の分からない声がする。


 再度、ゆっくり振り返ってみると、先ほどの小姓の服を着た見たことのない人間が、黒光りする道具をこちらへと向けていた。


 「ふぅー、、、わりぃな。じゃあな」


===パスッ!===



 そこで、意識を失った。








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