38:どうした、見ているだけか?
サブタイトル、カブっていたので変更しました。
「ぅうぅっ!ぅぅう~!!」
オレは張り付けのフェルディナンドをシバき、騒がないよう猿ぐつわをする。
となりで呆然とその様子を眺めていたヴァーミッド君は、なぜか協力的に猿ぐつわを受け入れた。
「さて・・・私は六道鬼面衆ハンベイである。そこに反論は認めません。つか、そういうことにしとけ。悪いようにはしない。つっても、もうラキシスやレイダー侯爵なんかには、お前達が鬼族の内通者で、ザンダ採掘場を譲渡してたのもバレてるけどね。あと、ファウスト王子やアズベルなんかが捕まってるって聞いたけど、どこにいるか知ってる?」
「ぅまぇぇかぅぅっ!」
お前かぁ?
あ
ザンダ採掘場を壊滅させたこと?
「はい、私です。ですが、もうそんなことはどうでもよろしい。王子やアズベルの居場所、知ってるの?」
興奮しているフェルディナンドは置いといて、隣のヴァーミッド君の方を見ると、首を横に振っていた。
あらそ。
知らないのなら、用はない。
オレはヴァーミッド君の右手を繋いでいる腕輪を一度ストレージへと収納して、再度それをカモフラージュとして緩く右腕にまた付ける。
「その体格だ。腕一本自由になりゃ、あとはなんとかなるだろう?30分は大人しくしてろ。もし騒ぎが起こったら好きにしてかまわない。その後、コーヴァに戻って罪を償うも良し、テキトーに逃げ回るも良しだ。従ってくれるか?」
真面目な表情で、力強く頷くヴァーミッド。
「よし・・・やり方はどうあれ、オレはアンタ達のことを嫌いにはなれない。死ぬなよ」
踵を返し、歩き出す。
後ろで暑苦しい男泣きの声が聞こえてきたが、振り返らずに城へと向かった。
さて、どうしたもんか?
サポ助、城内の様子はどうだ?
<正確には分からんけど、総勢で1万はおるんとちゃうかな。早朝ってこともあり、あんまり動きはないけど、普通牢屋っていえば、地下とか離れやないかと思う。で、マップの配置から考えて、ここが怪しいと思うんやけど>
それは本丸から少し離れた建物だった。
ま、どうしていいか分からんし、取り敢えずそこに行ってみるか。
城を回り込むように敷地内を歩く。
途中すれ違うオーガやオーク達には、頷いて挨拶するだけで喋らないと決めていた。
バレちゃうし。
そして目的の建物に近付いてみると、見張りのオークが2匹立っている。
雰囲気からして当たりのようだ。
「ご苦労。つかぬ事を聞くが、ここに捕らえた王子やアズベルは居るのか?」
オレは威厳たっぷりに、けど、なんでもないことのように質問する。
「ブ?ここはオラたちの種付け部屋だブ~。流石に男にはしないブ~。ハンベイ様、大丈夫だべか?いつもの頭良さそうな雰囲気が無いブゥ~」
おいっ
<・・・ゴメン>
「じょ、ジョークだよ、ジョーク・・・ハハ。では王子たちはどこに監禁しているかな?忘れてしまったなぁ~、ハハハ。あ、これは普段頑張っているキミ達へのお礼だよ。みんなには内緒な」
オレはザンダ採掘場よりパクッてきた金塊をオーク達に握らせる。
「ブホォォ、金だブゥ!ピカピカだブゥ、大好きだブゥゥ!有り難うだブゥ!・・・それにしてもハンベイ様は、また冗談を言ってるブゥ。王子とアズベルは、今日の朝一にクウカイ様への謁見に連行したばかりだブゥ~。あれ?もうすぐ始まる時間だと思うブが、こんなとこに居て大丈夫だブか?」
げっ
マジで
「無論、大丈夫だブゥ。あ、いや大丈夫だ・・・だが、確かに時間だな。私もそろそろ殿の元へと向かうとしよう。あ、その金塊、大切にするんだぞ、フハハハ」
オレは競歩のような早足で本丸へと急ぐ。
ヤッベェェ~
そんなことになってたのかぁ~
急げぇ~
<本丸、上階に確かにそんな部屋あるな。ルート表示するわ。けど、いきなりの修羅場やな。そんなとこでボロ出さんように、って、あれ?立ち止まってどないしたん?怖じ気付いたんか?>
オレは急ぐのを止めて、建物の死角へと入り込みタバコに火を付ける。
「ふぅー、、、いや、間違っているなぁと思って・・・オレ、なにしに来たんだっけ?演じるのが目的じゃない。救出もついでだ。いま優先すべきことは・・・」
物陰で立ち止まり、タバコをふかしながら冷静に考える。
オレの目的は、ハンベエになりきることなんかじゃない。
救出もどちらかと言えば二の次だ。
長く潜伏して長期戦にするつもりもない。
最優先は、駆逐。
驚異の排除こそが最優先のはずだ。
「ふぅー、、、」
オレはしばらくタバコを吸いながら、今後の動きをシミュレーションしていた。
「面を上げい・・・」
威厳を込めて、いち文官でしかない私が声を上げる。
これは本来、我ら文官の筆頭、鬼面衆ハンベイ様のお仕事だ。
だが、ハンベイ様はここには居ない。
今までこんなことは無かった。
けど多忙を極める方なので、なにか問題でも処理しているのだろうと、誰も余り気にした様子ではなかったが、代役を押し付けられた私からすれば溜まったものじゃない。
謁見の間。
上座に座るクウカイ様。
その左右にハンベイ様の代理である私と、鬼面衆が一人、四つ腕の[シンゲン]様。
そして部屋の中央には、鎖で縛られたアシノミヤ王国の王子ファウストと、我らの敵、アズベルが転がっている。
その側にいる2名の武将オーガが、アズベルとファウストの髪を掴み上げて、クウカイ様へとその顔を見せている。
「フォッフォフォ。初めましてじゃな、アシノミヤのアズベルよ。ヌシ一人のお陰で、我らアコウがどれほど苦汁を舐めさせられたことか・・・会えて嬉しいぞ」
クウカイ様はにこやかに、だが、内に秘めた憎しみを隠すことなくアズベルへと話しかける。
「・・・五氏族の智将クウカイさんですか。それはこちらも同じこと。人質で脅し、投降したにも関わらず、平気で約束を破って部下達を殺したそのやり口。さすが[恥将]ですね、反吐がでます」
アズベルも怒りを隠すことなくクウカイを睨みつける。
「キサマっ!」
「くっ」
アズベルを取り押さえている武将オーガが、アズベルを叩きつける。
「もういいっ!殺すなら殺せっ!!だが、必ず、必ず父上がキサマ等を滅ぼしてくれるわっ!」
隣で、思い詰めた感じのファウスト王子が自暴自棄のように喚き散らす。
「うるさい」
「グハッ」
ファウスト王子も取り押さえる武将オーガに殴られて泣き出してしまった。
「フォフォホ、若い、いや青いのぅ・・・さて、ファウストとやら。それはワシも望むところじゃが、そうもいかん。ヌシは王都攻めの際に使う駒じゃて。殺すにはまだ時期尚早じゃ。して、アズベルよ。ヌシは今すぐにでもその首を跳ねてやりたいところじゃが、同じ五氏族の[ヨシツネ]がヌシにご執心でのぅ。それも一興かと思おておるが」
相手の出方を探るのがクウカイ様の癖だ。
ヨシツネ様といえば、アズベルに片腕を斬り落とされた経緯がある。
そんな方に引き渡すとあっては、死より辛い拷問が待ち受けているのは明らかだ。
「・・・あまりお勧めはしないな。ボクは必ずここを出る。殺せる時に殺さずに先延ばしにすれば、それだけキミ達への驚異が膨れ上がることになるよ」
床に顔を抑えつけられたまま、強がる訳でもなくアズベルは言い放つ。
「フォッフォフォ、怖い、怖いのぅ・・・ヌシが言うと強がりに聞こえんわ。ワシは小心者じゃ。臆病じゃからこそ、ここまできた。ゆえにヌシの言う通り、ここで殺すとしよう。我が氏族、全員でキサマを食すと約束し、、ん?」
「~~ッ!~ぉて、すぐに、、待ちを、、、お待ちくださいっ!」
廊下より騒がしい声がする。
それは段々と謁見の間へと近付いて来ると、扉は勢いよく開かれた。
「殿ぉ、たっ、大変にございます。賊が、賊が城内にっ!」
それは慌てふためく、ハンベイ様の姿であった。
それに続きクウカイ様の小姓が、ハンベイ様を引き留めきれずに息を切らして続いて姿を現す。
「何事じゃっ!ハンベイ、落ち着いて説明せよ」
その姿に、流石のクウカイ様も驚いている様子だ。
それもそのはず、こんなハンベイ様を見たこともない。
「はぁはぁ・・・?、いえ、そのハンベエ様に化けた賊が、先ほどクウカイ様を殺すと、」
息を整えて少し冷静になったハンベイ様が、よく分からないことを言う。
「ん?ハンベイ、ヌシはなにを言うてお、」
===パスッ!パスッ!・・・===
全員がハンベイ様に注目するなか、すぐ側で乾いた破裂音が数回響く。
「っ!!!」
鬼面衆、四つ腕のシンゲン様と、クウカイ様の頭が破裂した。
「そ、なっ」
振り返ると、ハンベイ様に続いて飛び込んで来た小姓が、いつの間にか上座の裏側にまで来ていた。
そして、手にした道具を次々に我々へと向けて破裂音を鳴らしていく。
「ぁ、ぁぁあ・・・」
謁見の間は、血の海となっていた。
私以外、誰も立っている者はいない。
ハンベイ様も、体が大きく吹き飛んで死んでいる。
だが、その顔はどう見てもハンベイ様ではない。
むしろ、同僚の友人のように見える。
「ふぅー、、、そんな怒るなよ、サポ助。ハイハイ、スキルのダブル使用を頑張ってくれたお前のお陰です。わーてるよ」
背後で意味の分からない声がする。
再度、ゆっくり振り返ってみると、先ほどの小姓の服を着た見たことのない人間が、黒光りする道具をこちらへと向けていた。
「ふぅー、、、わりぃな。じゃあな」
===パスッ!===
そこで、意識を失った。




