37:今こそ、総攻撃であります
<ぺーはん、これはもう終わってるわ。鬼族の奴ら、全員城へと引っ込んでるみたいや>
モザークの森を突き進んでほぼ半日が過ぎた頃、視察団が襲われたという夜営跡地へと到着していた。
だが、ここまでにゴブリンにすら遭遇していない。
森の野獣たちも多くのハンターが森に入っている関係か、身を潜めて大人しくしている様子だ。
「スミマセン、教官。遅れて参加しましたジュンペイです。いま、どんな状況ですか?」
この夜営跡地には多くのハンターが到着している。
その中で新人達に指示を出しているのは、以前少しだけ話したことのある戦闘教官だった。
「おお、サブマスのお気に入りか。ま、見ての通りだ。もう終わってる。血痕の様子から相当な数が殺られたと推測できるが、根こそぎ持ち帰られているんで詳細が分からねぇ。食うためだとは思うが、攪乱の意味もあるなら流石知将クウカイと言ったところだ。いまはファウスト王子殿下の逃走経路の詮索や、街への報告なんかを手分けしているところだ」
なるほど。
ここまでもそうだったが、血痕以外なにも無い。
死体はもちろん、夜営の器材やゴミすら残っていない。
ゆえに推測がし辛くなっているようだ。
「ふぅー、、、こうなってくると、ズマ城へと乗り込むのがてっとり早いんだが」
教官と別れ、タバコを吸いながらつい独り言が漏れてしまう。
<まぁ間違いなく、死体も捕らわれた人も城へと連れて行かれてるやろうな。けど、そこに探りに来るのは知将クウカイさんなら百も承知やろ。つか、そう誘導しとるように思う。つまり、誘い受けやで、これは>
だね。
多分、ザンダ採掘場を壊滅されたことに怒り狂ったクウカイ氏は、内通者より視察団のスケジュールを知っていて、全軍を以てそれを奇襲報復したと。さらに生存情報などを遮断することで、コーヴァの戦力を城へと向けざるを得ない状況にして削るか、逆にコーヴァの街を制圧する気なのかもしれない。
となると、逆にファウスト王子などの重要人物は、利用価値の点から考えてもまだ死んでいない可能性が高い。
なら、単身でそれを救出するのが一番なのだが。
「ふぅー、、、行くだけ行ってみるか。最悪、無理そうならザンダ採掘場みたいにガソリンまいて全部燃やしっちまえば問題解決だし」
<外道っ!アズベルも王子も殺す気や、この人っ!!救う気あらへんやないか!>
「無理ゲーだろ、潜入救出なんて。どこのスネークさんだよ。ふぅー、、、男だし」
<最後、ボソッと本音出たっ!マジでNTR狙う気や、この人・・・ま、つってもぺーはんの言う通りなんは確かや。そこまで命懸けてられへん。行くんは反対せいへんよ>
それから更に半日。
深夜、100年は続くと言われる難攻不落の名城[ズマ城]の近くにまで到着していた。
「ふぅー、、、立派なもんだ」
鬼族は名前の感じからしても和風要素が強い。
いま、目の前にある城は、昔見た熊本城を連想させる黒塗りの城だ。
モザークの森を抜けると、正面には広大な平野が広がっていた。
その正面には違和感でしかない、直径1kmはありそうな人工的な高台と城壁。
そして中央には一際高く、月明かりに照らされた不気味なズマ城がこちらを見下ろしている。
左側、遠くの方には海が見える。
右側には岩肌の目立つ山脈が連なっている。
つまり、この地方を通るには、ズマ城からの監視を潜り抜けることは難しいのだろう。
さらにマップレーダーには、深夜にも関わらず広く周辺を巡回している小隊の様子が映し出されていた。
これでは死角をつくのは不可能だといえる。
オレは現在、森の切れ目の木の上より、広大に広がる平野と遠くにそびえるズマ城を眺めながら考えている。
そして、そのまま夜は明けていった。
「クウカイ殿に会われてくれ、話を聞いてほしいっ!」
ズマ城城内、城門近くの中庭。
コーヴァの街、領主。
辺境伯爵フェルディナンドと金獅子騎士団団長ヴァーミッドは張り付けとなり拘束されていた。
そして、その目の前には大量の金獅子騎士団の兵士や視察団に参加していた者の死体が積み上げられている。
「黙れっ、よくもそのような口がきけるな。貴様が持ちかけた条件は何だったかな?ザンダ採掘場を譲渡する代わりに、我ら鬼族との同盟ではなかったか?それを裏切っておいて・・・クウカイ様は酷く気落ちしておられる。首が繋がっているだけでも感謝して、そこで大人しくしていろ」
額より一本角が突き出た眼鏡を掛けた文官。
六道鬼面衆が一人、[ハンベイ]は冷たく言い捨てる。
「それについては何度も言っているではないか!我々は関係ないっ!なんなら犯人探しをこちらでも手伝おう」
フェルディナンドとヴァーミッドには理想があった。
鬼族の国[アコウ]より、[アシノミヤ]王国を挟んで反対の勢力、自由国家[ナニュワ]。
自分たちはナニュワのように貴族制を廃止した、身分の無い実力が優遇される国へとしたかった。
ゆえに鬼族アコウと同盟を結び、アシノミヤへの侵攻を容認して、背後より鬼族を討つと同時にナニュワからも進軍して、アシノミヤ王国とアコウを同時に消し去る裁断を進めていたのだ。
「フッ、まだ分からんのか?もうコーヴァなど用済みなのだ。キサマがなにを企んでおるのかなどクウカイ様はお見通しだ。キサマが我々を利用しておるように、我々もキサマを利用しているとなぜ思わぬ?そしてもう、その利用価値は無くなった。それだけのことだ、フハハハ」
一本角のハンベイは高笑いをしながら、絶望する二人に背を向けて城へと歩き出した。
「ハンベイ様~っ!来て欲しいブっ!城門に来てほしいブゥ!!」
一匹のオークが慌てて駆け寄ってきた。
ここの中庭は城門よりすぐの所にある。
その様子より、なにかあったことは明らかだろう。
素直にオークと共に城門へと走る。
そして、そこに待ち受けていたのは、
「っ!エビス、エビス殿ではないかっ!?無事だったか」
ザンダ採掘場を任されていた、同じ鬼面六道衆が一人、妖魔鬼[エビス]の姿であった。
「・・・ハンベイ殿か。すまない、おめおめと生き恥をさらしているよ。クウカイ様おられるか?事情を説明したい」
「?、えらく殊勝な態度だな。あのエビス殿が・・・」
絢爛豪華を好み、傲慢で不遜なエビスだが、今はその影も無い。
顔はすす汚れ、家宝の[巴百式]のマントで身を隠しているが、裸足で服も着ていない様子だ。
「あまり虐めてくれるな。大失態だ、下手にもでるよ」
落ち込んだ様子のエビス。
違和感を感じるが、確かに気落ちしても仕方がない状況だ。
「そ、そうだな。こんな所で立ち話もなんだ。まずは身を清めてゆっくり休まれるがよい。殿はまだお休みだろうから」
そう言って歩き出すと、トボトボとエビスはついて来た。
「ハンベイ殿、現在の状況はどうなっている?オレは真っ直ぐ戻って来たので現状が分からない」
オレ?だと・・・
「・・・報復は上手くいった。被害は殆どない。ほら、犬共はそこに張り付けにしている。アズベルや王子も捕らえることが出来た。ま、当初の計画通りだな」
「ふーん、そうかい」
===パスッ!===
小さな破裂音とともに、ハンベエの頭が吹き飛んだ。
「ぶはぁぁー・・・焦ったぁぁ、速攻で疑われちまったぜ。怖かったぁぁ」
城門より敷地へと通じるクネクネとしたスロープ。
ここはちょうど死角となっていて、マップレーダーでも周辺に反応は無い。
<な?案外難しいもんやね。鑑定ステータスで相手の名前は分かっても、雰囲気や口調で違和感を与えてしまう。知らんヤツに化けるのは難しいで、これ>
ハンベエの死体を収納して、その着ていた服だけを取り出して、それに着替える。
「な。心臓に悪いな、この[ペルソナ]は。けど、使い勝手は間違いなく良さそうだぜ」
そう言いながら、手にしているハンベエのIDカードが発光して、ハンベエの姿へと変身する。
これは昨晩、作りたてホヤホヤの新しい能力だ。
ー[ペルソナ]ー
称号[女神の使徒]×劣化[アカシックレコード][万物創造]で制作したスキル。
以前、イシュタルの部下として誓いを立てた際に得た、称号[女神の使徒]。
S級素材である[女神の使徒]を使って、IDカードに残された本人の姿形を再現することだけに特化した変身スキルだ。
イメージなどで自由に変身するには、流石に要領が足らなくて実現不可能だったが、本人の情報をたっぷりと含んだIDカードを利用して、それを再現することで実現可能となった。
ゆえに、このスキルを使用するにはIDカードが必須となる。
IDを手にするということは、本人が死ななければいけないので、死んだ者にしか変身出来ないということでもある。
オレはまだ持っていたエビスのIDカードを使って、警戒されることなく場内へと進入を試みたということだ。
だが、まさかこんな入り口付近で入れ替わるとは思ってもみなかった。
「あ~、あ~・・・確か、ハンベエさんって凛とした丁寧口調だったよな?」
新しい姿を馴染ませながら、城へとスロープをあがって行く。
<やね。ほら、猫背なってる。もっと背筋伸ばして。そんな貧乏臭い感じやとすぐバレるよ。もっとシャンとし。出来る男って感じや>
ムズい・・・
これならオークやゴブリンに変身した方が演じやすいかもしれない。
<それは自分が低脳寄りやと認めることになるで。それに体積の増減はちょっとしか出来ひんかったやろ。2m超えるオークや小さいゴブリンやと動きに違和感が出まくりですぐバレるわ>
ですよね~
ここはチョット本気だして、出来るオーラをまとうとしますか。
さて、そこの中庭に内通者の犬どもを張り付けてるって言ってたな。
まずはそこに行ってみるか。
おっ
やっぱり、ヘルディナンドじゃねぇか
ザマーミロってね
隣のハゲた厳ついのがヴァーミット君だね
これはちょっと、テストも兼ねてヘルディナンドさんから情報を引き出すとしよう。
「フフ、随分と落ち込んでいるようだね。このハンベエ様が少し話し相手になってやろう」
不敵な笑みを浮かべて堂々とヘルディナンド伯爵へと近付いて行く。
「・・・誰だ、キサマっ!?そんなゲスい雰囲気で騙されるものかっ!」
速攻でバレたしっ!
・・・・・オレ、そんなダメな感じかな。
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LV46 ジュンペイ 32歳
クラス:[奇術師]A
職業: Dランク ハンター
フィジカル:C+
メンタル:Aー
称号:[ジャイアントキリング][女神の使徒]
固有仕様:[最適化][ストレージ]
[マップレーダー]
[サポートシステム」[合体モード]
固有スキル:[リロード][アクセレーター]
[テンカウント][グライドシステム]
[ミラージュ][サイレンサー]
[ブラスト]new[ペルソナ]new
ポイント:60P
カテゴリースキル:[奇術師A][商人C]
[魔法使いF]
装備: デザートイーグル50AE
黒鉄の短剣
巴百式
トレント樹脂の胸当て
トレント樹脂の小手
トレント樹脂の脛当て
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