第22話 巨人の王VS無役の人間
───鳴神透───
ついに、新たに裂け目が開く日がやってきた。
場所は、ギリシアにあるテッサリア平原。あのギリシャ神話でおなじみ、ゼウス達神様の住まうと言われる、オリンポス山のある地方だ。
裂け目の開く場所の真下には、世界中から『機鎧』が集まり、万が一に備えている。
俺達は、そこからは遠く離れた場所で、裂け目が開くまでの時間まで、待機していることになった。
「一つ、質問いいかな?」
「なに?」
少し小高い丘の上に、俺達の待機テントはあった。
裂け目が開く予定の平野から、一キロほど離れ、はるか遠くに万が一のために待機する『機鎧』集団の人達の姿が見える。
集団でいる彼等は、俺達の方から確認できるけど、むこうからこっちは見つけられるかわからない。
まあ、別に他に待機している人に見つかろうが見つからなかろうが、それはどうでもいいのだけど。
それでも、なぜこんな離れた場所で待機しているのか。は気になった。
「仕方がないのよ。私とあなたは、表舞台には立たないことになっているから」
「……どゆこと?」
「これから私達は、裂け目に飛びこんでクロノスと戦うけど、それが誰なのかは公表されないわ」
「あ、そうなの?」
「当然でしょう? この作戦、私達は生贄のようなものなのよ。それが、私とあなたという子供が担っていたなんて、表に出せるわけないでしょう?」
「……あ、あー」
思わず変な声が出た。
そういえば、そのとおりだ。
成功しようが失敗しようが、これだけの人がいるのに、命をかけて戦ったのが中学一年生と高校一年生では、なにも知らない人から非難轟々なのは間違いない。
だから、誰が出撃したのかわからないようにしているってわけか。
「私達が戻らないのはかまわないのでしょうけど、私達を生贄にした。というのは体面が悪すぎるわ。だから、誰が行ったのかは秘密なのよ」
「了解しました。自分のことしか考えていませんでした!」
なぜか、敬礼。
「いいんじゃないかしら? 秘密なのも、自分のことしか考えていない人達の提案なんだから」
「それもそうか」
あはは。と俺達は二人で笑いあった。
んー。と、伸びをする。
そろそろ、時間だ。
「それじゃ、そろそろ行こうか」
「そうね。絶対に、あなたの体を取り戻して、戻ってくるわよ」
「それは約束できないなー。生きて帰れるなら、俺は体も捨てるなー」
「……あなたは、本当にぶれないわねぇ」
ため息をつかれてしまった。
でも、しょうがないじゃない。死にたくないんだもの。
こつん。と拳をぶつけ合わせ、俺達は、空を見上げた。
ビキィ!
ここにまで聞こえるほど大きな異音が、空に響いた。
空に、裂け目が開く。
真っ赤に染まった空の中に、ぱっくりと、まるで傷が開いたかのような裂け目が。
俺は、確信している。
そこに、どんな巨人が姿を現すのか。
だが、それを地球に出すわけにはいかない。
裂け目と裂け目の間で、必ず、足止めする!
俺と真姫さんは、待機していたテントを出て、二人で空に『機鎧』をかかげた。
光が瞬き、サムライ号とアレクが空へと浮かぶ。
飛行ユニットが光を放ち、俺達は、開いた裂け目へと飛びこんだ。
──────
「……裂け目が開いた。あたし達も続くよ」
「ああ。任せろ」
二つの光が飛び去ったテントの近くで、男と女の声が響いた。
さらに、まるで、膝を突いていた巨大ななにかが立ち上がったような音が響く。
だが、二つの『機鎧』が飛んだことによって一度飛び去った鳥は、その音や、その動きに気づかぬかのように、そこへ戻ってきた。
まるで、そこに、なにかいないかのようだ。
敏感な鳥でさえ、そこになにかいる気配を、まったく感知していない。
実際、そこになにもいなかった。
どれだけ目を凝らそうとも、その立ち上がった何者かは見えない。
いや、いない。
二つの光が裂け目へ向ったのにあわせ、この見えないなにかが浮かび上がった。
「さて。透ちゃんが無事戻れるよう、サポートしなくちゃな!」
「ああ! ……って、つーかさ、一つ聞いていいか?」
「なんだ?」
「あんた、透のこと、男だって知ってるんだろ?」
「ああ。知っている」
「ならなんで、ここまでしてくれるんだ?」
「……ふっ。簡単なことさ。命を救われたからだ!」
男ははっきりと言い切り、そのまま見えないなにかを動かし、裂け目へと飛ばした。
───大門真姫───
裂け目に入り、私達は、その空間。次元の狭間で、動きを止める。
相変わらず、乗り物酔いのような嫌な感覚が私達を襲う。
こうして停止してみると、はるか先に、光が見え、巨人の住まう世界が見える。
ものすごく遠く見えるが、実際にはものすごく近く、でも遠い、不思議な空間だ。
例えるならば、宇宙空間だろうか。上下もなく、ふわふわと浮いているような感覚だが、どこか押しつぶされるような違和感も感じる。
「ケラウノス発射形態に移行するわ」
「おう」
裂け目に入ったところで、ケラウノス発射のための準備にはいる。
私のアレクと、サムライ号を同期させ、私達は同時にそのボタンを押した。
アレクの胸にある黒い装甲が外れ、さらに手と足が、胴体から分離し、バラバラに外れる。
一方同期したサムライ号も、一部の装甲が外れ、手足の関節が、縮む。
手足の縮んだサムライ号に、先ほど外れたアレクの手足が変形し、新しい鎧のように追加され、黒い装甲として装着される。
さらにサムライ号の胴体が変形し、一部が延長され、そこに追加の装甲となる、アレクの黒い胸装甲と、背中の装甲と、私の乗るコックピットを伴った、飛行ユニットがセットされた。
そして、サムライ号の頭部に、アレクの頭部の装飾が追加される。
当初博博士は、なぜか私のコックピットをサムライ号のコックピットと合体させ、完全な複座状態とまでしようとしたが、私が必要ないと、止めさせた。
浪漫と言っていたけど、男の子の浪漫はよくわからないわ。
全ての装甲を纏うと、手足、体に追加されたその黒い装甲が一部割れ、形が変わる。
合体することにより、鎧を纏ったサムライ号の体長は、十メートルから十五メートルにサイズアップした。
これで、機内のエネルギーを、すべて連動させることが可能になった。
おかげで、装甲が増え、重量が増加しても、機動力は大幅にアップしている。
最後に残るのは、アレクの中枢であった、背骨の芯。
それもまた、大きく変形し、手の中に納まる。
それは、いわゆる錫のように見えた。
これが、ケラウノス。
これの力を引き出すために、この鎧と、それを動かす芯となる、『機鎧』が必要だった。
そう。おじいちゃんの残したケラウノスとは、単体で使用することはできない代物だったのだ。
アレクを変形させ、さらに、それを武器としてあつかえる『機鎧』を用意しなければ、起動さえできない。
おじいちゃんが文章で残した欠けたものの一つが、それをあつかう『機鎧』のことだ。
私の計算が正しければ、このケラウノスを纏う『機鎧』は、並の『機鎧』ではケラウノスのエネルギーに耐えることはできない。
ゆえに、それを実現させる技術を持ったものが必要となる。
これも、欠けたものの一つだ。
そして最後の、三つ目の欠けたもの。
それが、『機鎧』を動かすパイロット。
このケラウノスをあつかう場合も、無効領域の発動と同じように、二人のパイロットが必要となる。
それは、一人で暴走し、すべてを破壊しないためのリミッターなのだろう。
ちなみにこれは、コックピットに二人乗っていなければならないという意味で、男女という縛りはない。
これら三つの条件がそろって、はじめてケラウノスが使用可能となる。
「合体シークエンス完了! システムオールグリーン。いけるわ!」
「ああ」
ケラウノスの出力コントロールは、私の役目で、この新たな姿となったサムライ号の操縦は、そのまま透が担当する。
このエネルギーのコントロールは、重要だ。
万が一暴走でもすれば、地表全てを焼きつくす可能性があると、予測計算が出ている。
ビー!
巨人世界側から、なにかが飛来すると、レーダーがとらえた。
裂け目に向って、赤い雫が飛来するのが見える。
「くるわ!」
「このまま、一気に撃ち落す!」
「わかったわ。射撃モードに変換!」
私が命令を下すと、サムライ号を覆っていた装甲の一部が外れ、錫を包みこむように集まり、変形し、一本の、穂先のわかれた槍のようなものへと変化する。
これは、クロノスの槍と同じように、穂先からエネルギーを発射する形態だ。
これ以外に、近接モードとして、剣の形態が存在する。
赤い雫が、裂け目に入ったところを狙う。
裂け目にそれが飛びこんだ瞬間。
「今よ!」
「おう!」
私の掛け声にあわせ、彼が引き金を引いた。
二つの穂先の間に雷がほとばしり、穂先の前に光が生まれる。
カッ!
それはまるで、天からほとばしる、雷のようだった。
雷鳴を轟かせ、その一撃は、赤い雫へ吸いこまれる。
その威力は、赤い雫など軽がると突き通し、その雷鳴は、次元の狭間へと消えてゆく。
透を助けに行ったあの日、巨人の世界で見た、あの光と同じだ。
たった一撃で、破壊不能だったあの赤い雫を破壊した。
やはりこれは、人知を超えた威力を持つ、人類に余りある兵器だ。
私は、確信する。
この争いが終わったら、この兵器は、海の底か、空の果てに捨てるべきだと。
赤い雫が粉々に砕け散り、裂け目の中に静寂が戻った。
「……終わったのかしら?」
それは、あまりにもあっけない。
「いや……」
彼が、裂け目の入り口を凝視していた。
やはり、終わりではなかった。
むしろ、敵も私達の行動を読んでいたのだ。
ゆらりと、裂け目を通じて一体の巨人が姿を現す。
威厳のある、三十メートルを超える、一本の槍を持つ、巨人だ。
通信チャンネルの向こうにいる透が、その姿を見て、一瞬表情を変えたのに気づいた。
やはり、これがそうなのね。
人間の姿をしているというのに、どこか、怪物じみているように見える。
なにか、得体の知れないものを内側に飼っているかのような、畏怖さえ感じる存在に見えた。
『……やはり、いたか。我が分身よ』
巨人が口を開いた。
巨人の言葉を聞くのははじめてだったが、それは、人間の発する声と同じようで、全く違うように感じだ。
やはり、この巨人。
巨人の王、クロノスは、私達には見えないなにかが見えるようだ。
『ほう。移し身だけでなく、ずいぶんと珍しい星を持つ者もおるようだな。これは、面白い。貴様等たった二体で、余をとめるというのか?』
「ああそうだよ。御託はごちゃごちゃいいから、運命を受け入れるために、この『機鎧』にさっさと倒されろよ。巨人の王様」
サムライ号が空いた左手をあげ、くいくいと、手招きする。
私達がここにいる名目は、クロノスをこの場に閉じこめる時間稼ぎという名目だが、実際、目の前のクロノスを倒してしまってかまわない。
いやむしろ、倒さねばならない!
『残念だが、運命は、貴様の力によって変えられる! 余は、全ての運命を変えるため、ここにおるのだ!』
クロノスが、槍を持ち上げ、私達へと向けた。
「透、くるわ!」
「ああ!」
同時に、ケラウノスの引き金を引く。
光と光が発射され、狭間の中央でぶつかりあった。
まっすぐ飛んだはずだというのに、ぶつかりあう光はうねうねと歪み、なのにまっすぐ、相手の雷とぶつかり合っている。
見ているだけで、気分が悪くなる光景だった。
ぶつかりあった光が、闇を食らい、中央で小さくはじけた。
威力は互角。
これはどちらも、決定打を欠く結果となった。
「むしろ好都合だ!」
彼が声を上げ、サムライ号を一気に前進させた。
透は、このぶつかり合いがこうなることを読んでいたようだ。
はじける光をブラインドとし、近接用のソードモードに切り替えたケラウノスを振りかぶる。
ソードモードに変化したケラウノスは、錫の先端から光の刃を生み出す、光の剣だった。
射撃モードで変形した装甲は各部に散り、近接戦闘を行うための防具へと戻る。
一気に間合いをつめたサムライ号は、クロノスめがけて、その光の剣を振り下ろす。
クロノスも、その一撃をきざきざと揺れる槍の穂先で受け止めた。
いわゆる、つばぜり合いの状態へと入る。
バリッ、バリと火花が。いや、雷が散る。
すぅ。
クロノスが大きく息を吸いこんだ。
即座に透は、飛行ユニットを動かし、後ろへとさがる。
ゴォァ。
巨人の口から、火山のごとき炎が噴き出した。
この炎。
まさか、あのレッドドラゴンを食らい、彼の存在と同じく取りこんだということなの?
それとも、巨人にはそういう能力があるの?
あまりに予想外のことに、私の心が揺れる。
だが、サムライ号を動かす透は、一切の動揺もなく、動きにブレもなかった。
炎のブラインドの影から、光がはじける。
距離をとった私達へ向け、クロノスの槍が、三本の光を放ってきたのだ。
動揺した私なら、この攻撃はかわせなかっただろう。
しかし、今サムライ号を動かしているのは私ではない。
口からの炎に動揺も見せず、冷静を保つ透は、その三本の光も平然とかわす。
「ちっ。真姫さんソードの出力と距離を最大に!」
「ええ!」
言われるままに、光の剣の出力と距離をあげる。
三本の光をかわし、後ろへ飛んだ透は、その光の剣を横に薙ぎ払った。
巨大な雷が、次元の狭間を大きく薙ぎ払う。
彼の行動を見て、やっとなぜそういう行動を私に支持したのか理解できた。
クロノスの周囲に、何百体もの巨人が姿を現そうとしているのが見えた。
それが顕現するのと同時に、ケラウノスがそれらを薙ぎ払って、光の霧へと戻してゆく。
その中で唯一、クロノスだけが、自身の槍の力を持ち、ケラウノスの一撃を防いでいた。
……凄い。
透も凄いが、透の攻撃を、ここまで捌いてみせるクロノスも凄い。
次元の狭間の中で、光と光がぶつかり合い、戦いが続く。
武器も、技量も互角。
この勝敗を左右するのに必要なものがなんなのか、私にはわからなかった。
戦いが続く中、背後にある裂け目が閉じてゆく。
作戦としては、成功しつつある。
このまま互角の戦いが行われていれば人類として、この巨人との戦いは、勝利に終わるだろう……
あとは、別の裂け目を開き、巨人世界にある裂け目の発生装置を破壊すれば、クロノスは永遠にこの狭間をさ迷い続けることとなる。
私達と、共に……
召喚された巨人を剣や雷で倒し、私達へ迫る光や槍を、剣で受け、時にはサムライ号に備えつけられた刀で受け流す。
一進一退の攻防が続く中。ついに、外へと続く裂け目が閉じられた。
出口さえ存在しない空間に、私達は閉じこめられる結果となった。
結局生きたいといいながらも、透は逃げるぞとは言い出さなかった。
だって、わかっていたことだ。
逃げるとなると、『機鎧』の通れる十メートルほどの幅がなければならない。
それだけの大きさがあれば、クロノスは槍を一度、地球に放つことができる。
そんなこと、彼が許すはずがない。
口では死にたくないと言いながら、彼はそんな行動を平気でとれる人間なのを、私は、知っている……
「これで、クロノスを倒して助けを求める以外、帰る道がなくなったわね」
「そうだな」
再び距離をとり、私は彼に言われずとも、モードを射撃に変えた。
この状態ならば、外を気にせず、最大出力でケラウノスを放つことができる。
それは、今我々人類が放てる、最大の一撃と言ってもいいだろう。
サムライ号が槍を構えると、クロノスも同じように槍を私達へ向け、にやりと笑った気がした。
ケラウノスの穂先と、クロノスの槍の前方に光が集まり、そして、再びぶつかりあった。
狭間の中央でぶつかりあう二つの巨大エネルギーは、さながら太陽のように見えた……!
「……や、べっ」
透が、冷や汗を流すのが見えた。
最大出力での撃ち合いだというのに、ケラウノスが、徐々に押されはじめているのだ。
なんということなの。同種の武器だというのに、クロノスの槍の方が、威力があるなんて!
「やっぱ、三種全部ないと厳しいってことだったんだろうな……」
槍の反動を押さえこみながら、透が言う。
兜はともかく、もう一本の矛。それと同じ力も、目の前の槍は持っているのかもしれない。
だとすれば、ここで敗北するのは、私達だ……
拮抗した光が、ついに押し戻された。
クロノスの槍が、ケラウノスの力を、完全に上回ったのだ。
もうダメだ。
そう思った瞬間。
どすん。
クロノスの胸から、一本の剣が生えた。
クロノスも、私達も、あまりのことに、動きが止まる。
その剣を、私は知っていた。
元々は、私のアレクに装備されていた、一本の大剣。『巨人殺し』だ。
今回は、ケラウノスを使用するため、持ってきていない。
それが、なぜか突然、クロノスの胸から、生えたのだ。
衝撃に、クロノスの手から、槍が零れ落ちる。
クロノスが、信じられないという顔をしたが、それでもその背後を振り向き、手を伸ばした。
胸を貫かれたというのに、平然と動いている。巨人の王というモノは、心臓を貫かれただけじゃ、死なないというの……?
クロノスの手が、なにかを掴み、むしりとった。
刹那、すぅっと、一機の『機鎧』が姿を現した。
今まで、なにもいなかった空間に、突然それが、現れたのだ。
それは、いまだ名前のない、そよかの『機鎧』
頭をつかまれ、頭部をむしられてしまったが、私がそれを見間違えるはずがない。
「まさ、か……」
信じられないと、私の声が漏れた。
「そのまさかさ! 透明兜、見つけてきた馬鹿がいるんだよ!」
そよかの声が聞こえた。
つまり、『機鎧』にセットした兜が頭ごとむしられたから、その姿がここに現れたということなのね。
「馬鹿とはなんだ!」
この声は、頂上一!? 一体彼がなぜ!?
でも、そんなことを、考えている暇はない。
「そこから逃げろー!」
彼の言葉に、頂上一は即座に反応した。
頭を失ったとしても、『機鎧』は死ぬわけではない。メインカメラがやられただけで、動けなくなるわけではないからだ。
目ざとく、こぼれたクロノスの槍をその手につかみ、飛行ユニットで最大加速した彼女達は、その射線から、逃げ出した。
この反応。日本二位は伊達じゃないわ。
「いっけえぇぇぇぇ!」
透の叫びが響く。
私は即座に、範囲を絞り、逃げるそよか達へ、それがおよばないよう調整する。
胸を押さえたクロノスが、ケラウノスの光へ、包まれた……!
───鳴神透───
「や、やったの……?」
突然姿を現した、そよかねーちゃんと、日本ランク二位の人のサポートのおかげで、クロノスへケラウノスの一撃をぶつけることができた。
真姫さんが、溢れんばかりの光に包まれた、ケラウノスの狙撃地点。クロノスの居た場所を見て、小さくつぶやく。
「いや、まだだ!」
光の中に、なにか動くものを見つけ、俺は叫んだ。
まさか、この一撃でも倒せないってのか?
もうもうとあがる煙の中から、それは姿を現した。
まず見えたのは、槍だった。
先ほどそよかねーちゃん達が奪ったクロノスの槍に、姿はよく似ているが、その大きさは十倍以上ある。
圧倒的に巨大な、槍が、姿を現したのだ。
あったのは、槍だけではない。
そう。槍だけでは、なかった。
「ま、さか……」
「嘘だろ……」
真姫さんと、頂上さんが、それを見て、同時に声をあげた。
これは、『機鎧』と慣れ親しんだ経験が長いからこそあがった声なのだろう……
俺も、信じられなかった。
だが、そうだとすれば、ケラウノスの一撃を耐え切ったのも、納得がいく。
そこに姿を現したクロノスは、巨大な鎧を纏っていた。
いや、正確に言えば、クロノスは、その鎧に、乗っていると言うのが正しいだろう。
その鎧は、光と共に、ぐんぐんと大きくなっている。
俺達は、それを知っている。
そのサイズアップの仕方を、知っている。
天にかかげるのと同時に、光に包まれ、その鎧を纏う。機械で作られた、鎧……!
それは、確かに鎧だ。
だが、ただの鎧ではない。
神と同等の力を与える、人類の切り札。『機鎧』という、鎧だった。
そこに、三百メートルを超える姿となった、巨人の王、クロノスの『機鎧』があった!
バリッ、バリと、巨大な雷をたずさえる槍が、俺達の方へ、向けられる。
ぞっ!
誰がどう見ても、それは、ヤバイという感覚しか感じなかっただろう。
俺も、背筋が凍り、冷や汗がどっと飛び出すのを感じた。
アレは、ヤバイ。
マジでヤバイ。
見ただけで、ケラウノスと、クロノスの槍で生み出す雷の、十倍の大きさはある。
「二人とも退避ー!」
俺は、全力で叫びながら、その場から逃げ出した。
次元の狭間を、巨大な光が、覆う……




