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7.迷子

 

「あっ、その……台本を……」


「台本?……あっ!演劇部のでしょ!昨日の放課後ここに落ちてて、届けたよ」


「な、なら良かったです」


「君、演劇部なの?」


「い、いえ……」


 私の言葉を聞いて、ん?と悩むような考える様な顔をした後、いきなり開き直ったように、


「ま、いっか。じゃーね!」


 軽く私に手を振って、旧校舎の奥へと消えて行った。私は何をする気なんだろうと思いながらも、時間が時間なので教室へと戻る。


 まだ賑やかな教室に入り席に座ると、


「おかえり、夢依ちゃん。今日はごめんね、一緒に食べれなくて。でも、明日からは一緒に食べよ」


 申し訳無さそうに雨宮さんが手を合わせて謝ってきたので、首を横に振りつつ下を向いて口を開く。


「き、気にしないで下さい。その、私で良ければ……一緒に……」


 けれどどうしてか、何とも言えない気持ちになり、言葉に詰まる。


 雨宮さんは本当に私の事が好きなのかな……


「夢依ちゃん?本当に大丈夫?今日なんだか……わ、私、何か夢依ちゃんが嫌がるような事したっけ?ごめん、その……」


「だ、大丈夫ですから……気にしないで下さい。本当に」


 私が目の端に涙を浮かべながら顔を上げると、雨宮さんは焦ったように謝って来るけど、何故か私は思わず少し低い声で言葉をかけてしまい、気まずくなって前を向く。


 ……ああ、きっとこれだから私は友達が出来ないんだろうな……


 いつの間にかホームルームが終わり、チャイムが鳴って教室が騒がしくなる。


 私は気まずさからささっと帰る準備をして、教室を出て行く。


 私はきっと雨宮さんに面と向かって謝れないので、帰ったらごめんなさいとメッセージを送ろう、そう思いながら校舎を出ると、


「む、夢依ちゃん……はぁ……はぁ……その、ごめんね。嫌だった事があるなら、教えて欲しい。夢依ちゃんに、嫌われたくないから。だからお願い……はぁ……はぁ……」


 すごい勢いで走ってきた雨宮さんが、泣きそうになりながら息を切らして謝り、お願いしてくる。


 私はそんな雨宮さんを見て、色々な事が分からなくなる。


 からかっているのなら、告白の返事が嘘なら、こんなに焦って泣きそうになって、息を切らして私に謝って来るだろうかと。


 人と人生であまり関わった事のない私でも、雨宮さんの表情は、声は、本物だと分かって……


「と、取り敢えず、一緒に帰りませんか?雨宮さん」


 私はぎゅっと自分のスカートを掴んで、小さな声で雨宮さんに言った。

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