第24話 大巨人
ゴオオォォォォォォンンンン!!!!
低音で響く、凄まじい轟音。
ビリビリとガイアスーツを襲う振動。
俺のうしろの岩山がガラガラと崩れる音がする。
手袋が、ギュッと鳴る。
「そうかよ……ソマリさん。アンタの周りの全部、引っぺがして丸裸にしてやる。そんでなんのつもりだったか改めて聞き出してやるよ」
片足を踏ん張る。
「チカラずくでな!!」
両手を突き出して、
「アスガイアぁぁメテオストームぅ!!」
超高熱の、直径5メートルの火球をゴーレムに向けて放つ。
ドパン! と腹の部分に当たり、少しよろめいた、
だがすぐに体勢を整えて片手を上げ、俺に向かって振り下ろしてくる。
10メートル以上ある巨体からの叩きつけ。
俺は横っ飛びで転がりながら避けた。
大地が陥没する、
衝撃は受けてたけど燃えたりはしないのね。
俺は巨大ゴーレムを横目に、走りながら考える。
チカラ押しで行くか?
いや、ヘタな事してあの中心部のソマリさんにまで攻撃が通っちまうと不味いな。
取り敢えず腕と足をぶっ壊して、身動きできないようにするか?
よしそうしよう。
俺は拳にガイアエネルギーを溜めて強く踏み込む。
巨大ゴーレムがカラダを起こして、俺を掴もうと腕を伸ばしてきた。
デカいヤツの攻撃って遠くだとゆっくりに見えるのに、近くだと速くて迫力がスゴイね。
風圧を感じながら横向きにクルリと回転して避け、ぴょんと跳んでスキの出来た左肩へゲンコツを振り上げる。
「デラストぉぉ……ナックル!!」
たっぷりチャージして放った必殺技だ。
巨大ゴーレムの左腕が肩から砕け、ズゥゥンと地面に落ちる。
よっしゃ。次は右だな。
って考えてると、砕けた部分がパズルみたいに勝手に動き出した。
なんだ?
巨大ゴーレムのカラダから離れた腕が持ち上がり、ガシャアンと大きな音を立てて元の位置にくっついた。
自動修復機能つきですか。便利ッスね。
次は右手で襲ってくる巨大ゴーレムを掻い潜り、身体を動かしながら脳みそを働かせる。
どうやって行動不能にしてやろうかな。
「サファイアロー!」
蒼い矢が、巨大ゴーレムの上空に飛ぶ。
「シューティングスター!」
いくつもに分かれて降り注ぐ。
「バースト!!」
そんで巨大ゴーレムの周辺でバンバンと爆ぜた。
怪獣映画みたい。
ゴオォォォォンン!!
巨大ゴーレムがヒザをつきながら、飛ぶマキマキに向けて両腕を伸ばす。
それを避けながら俺の横に着地した。
ゴーレムは派手に転んだ。
「どうします!? カブラギさん!」
「うーん。両手両足ぶっ壊して動けないようにしようと思ったんだけどさ。アレ見た?」
「自動修復してましたね」
「どうしようかな……。あ、アグーさ」
マキマキの背中に張り付いてるアグーに声をかける。
「なんぢゃ?」
「アグーの収納機能って、大型バスくらいなら飲み込めるって言ってたよな?」
「うむ」
「生き物は無理で、無機物ならオッケーなんだっけ?」
「そうぢゃ。生物は収納しても、呼吸した時点で吐き出される。呼吸しない物なら自由に出し入れできるぞい」
「それじゃあ……」
思いついた作戦を伝える。
「それでいきましょう!」
マキマキが賛成してくれた。
「私も参加致します」
うおっ!
いつの間にか後ろにアルセーヌさんもいる。
「ご安心を。マルマリ家の皆さまは強固な魔防障壁で守られております。敵方の魔導具でしたが、害はないようなので利用させていただきました」
まあ、アルセーヌさんが判断したんなら大丈夫かな。
「よっしゃ。じゃあマキマキは左、アルセーヌさんは右、俺は正面ね。……いち、にの、さん!」
起き上がった巨大ゴーレムにそれぞれが向かっていく。
それに対して目標が、ゴリラみたいに両手を振り上げて叩きつけてきた。
マキマキとアルセーヌさんは左右に飛んで回避、俺は走ってすり抜ける。
「ルビー・リボン!」
マキマキの赤いムチが伸びた。
そのまましならせて右肩を狙い、バシッとムチが巻き付く。
「ヒート!!」
巻き付いたムチが熱を帯びた。
みるみる高温になり、巨大ゴーレムの二の腕がバツンと両断される。
「アグー!」
「がってんぢゃ!」
マキマキから離れたアグーがブワッと、横幅約5メートルの煎餅みたいに丸く広がった。
そのまま落ちる右腕をかぶさるように飲み込む。
「ハッ!!」
一方アルセーヌさんは、くるっと宙返りして巨大ゴーレムの左肩にカカトを落とす。
ガクンと体勢が崩れるゴーレム。
「ぬぅぅうん!!」
ガガガガ! っと派手な音を立ててさらに連打を叩きこみ、大きく片足を後ろに振ると……、
「セイヤァ!!」
下から蹴り上げた。
ゴーレムの左腕がボンッと飛ぶ。
アグーがまた身体を広げて、それを飲み込んだ。
俺は加速をつけて、右足にガイアエネルギーを集中させる。
「アスガイアぁ・キッックぅぅ!!」
片足のヒザを飛び蹴りで砕き、ゴーレムのカラダが傾いたところで、
「アスガイアー・ギガ! パァンチぃ!!」
もう片足の根元も砕いた。
ゴオオォォォォォォンンンン!!!!
派手な音を上げながら仰向けに倒れる巨大ゴーレム。
砕けた足の部分がまた、パズルみたいに動き出したところで、
「ほいっ! ほいっ!」
アグーが腕と同じように足も飲み込んでくれた。
倒れたゴーレムの胸元、ソマリさんが収まっているコア? みたいなところに乗っかる。
マキマキとアルセーヌさんも来た。
俺は腰のガイアコアを右手で擦る、
「ガイアシューター」
射撃姿勢をとった俺の手元に、拳銃サイズのガイアシューターが光りながら現れた。
ガイアシューターからのレーザー光線でジジジとコアを切断していく。
「それって使い道あったんですね」
「基本的に射撃じゃ当たんないけどな。鍵無くした時とか便利よ? ……よし開いた」
外れたコアの表面を横に置いて、目を閉じたままのソマリさんを引っ張り出す。
「……これはいけませんね。魔素が吸い取られ、かなり衰弱しております」
「え? どうしよう」
困った。
「これを使ってみるのぢゃ」
アグーがポンっと小瓶を出してきた。
「霊薬ぢゃ。サジー殿が念のためにと持たせてくれての」
いい仕事するねサジーさん!
じゃあさっそく。
「お待ちください」
アルセーヌさんに止められた。なに?
「これほど衰弱した場合ですと、経口摂取でなければ十分な効果が見込めないと思われます。意識のない状態では吐き出してしまわれるやもしれません」
「え? じゃあどうしたらいいんスか?」
「口移しでしたら問題ないかと」
……え?
いやいや! 人命がかかってんだから躊躇しちゃダメ!
「でも俺、仮面してるけど大丈夫かな? メシは食えるけど、キスとかした事ねえし」
「ア、アタシが……」
「マキマキよ、ファーストキスぢゃろ?」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」
「では私が」
アルセーヌさんがアグーから霊薬を受け取った。
「お待ちください!!」
メイ姫が立っている。
「ソマリは私の家臣です。ならば主人の私が責任をもってその役目を負いますわ」
そう言って近づくと、アルセーヌさんから霊薬を貰って俺を見た。
「私は! カブラギ様をお慕いしています!!
メイ姫は叫んだあと、薬をあおってソマリさんに唇を重ねた。




