表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/191

第18話 なんか不穏


 飛んでくるフライパンをキャッチした。


「そんな所で寝られちゃ困るねぇ! 料金は先払いだよ!」


 宿屋の女将さんがそう言って、ガハハと笑う。

 その後ろから気まずそうに、ユウゲンさんが顔を出した。


「ユウゲンさぁん、女将さんに危ねえから奥に居てくれって言ってくれよ」


「いや、スミマセン。女将さんが強引で……」


 ドタドタと、アグーを抱きかかえた寝間着ドレスのシソーヌ姫が、その後にアルマが階段から降りてくる。


「終わった? やっぱり悪い人たちだった?」


「いきなり襲ってきたからな。良い人ではねえと思うよ」


 アルセーヌさんが懐からしゅるっとロープを出す。


「彼らが目を覚ます前に縛ってしまいましょう」


「そうね」


「うむ」


 俺とソレガシの旦那が手分けして、知らない……人? 達を後ろ手に縛っていく。

 なんか叫んでいたリーダー格の人は見覚えがあるな。

 カジノにいた、ヌメヌメした種族の人か。

 アラビアンな服着てるなぁって思ったから、記憶に残ってる。

 結んでる俺の横からマキマキが顔を覗かせる。


「カブラギさん、ちょうちょ結びじゃダメですよ。こういう時は……こう、そしてこう。ホラ、やってみてください」


 別の人の手を縛る。


「こう? そんでこう?」


「そうですそうです」


 俺たちのやり取りを尻目に、手際よく縛っていくアルセーヌさんと旦那。


「おぉおい! こいつ等も一緒に縛ってくれや!」


 山男みたいな、ヒゲもじゃのゴツイおじさんが入ってきた。

 誰?


「あんたぁ! 帰ってきたのかい!」


「おうよ! おどれぇたぜ! 店ン中からバンバン聞こえてくっからよぉ! ほらよ! アルさんから見張っといてくれって頼まれた連中だ!」


 抱えてたヌラヌラの人たちを4人、ドサッと床に置く。


「待ってろよ! おかわりがまだあっからよぉ!」


 また外に出てった。


「……ご主人っスか?」


「そおさ! 男前だろ!」


 マキマキと顔を見合わせる。


「はは、ソッスネ」


「えへへ……」


 俺たちが縛り終わると、ヌラヌラの人をまた4人抱えてご主人が戻ってきた。

 

「おうい……。こん中にシソーさんってのはいるかい?」


 きょとんとして、シソーヌ姫が片手を上げる。


「私ですけど……」


「お客さんだぜ」


 荷物を抱えたまま、首をクイっとするご主人。

 不思議そうにみんなの顔を見ると、アグーを抱えたまま外へ向かうシソーヌ姫。

 俺たちもそれについていく。


 外には大勢の人間が、光る棒を掲げていた。


 その集団から一人、馬に乗ってアゴがタプタプのおじさんが前に出てくる。

 立派な服だ。貴族だな。

 俺たちの前まで来ると馬から降りた。


「おお! ご無事でしたか! シソー……様。この区画で賊が暴れていると通報があったのです。もしや賊の目的は貴女様ではと考え、こうして馳せ参じた次第ではありますが……。いやいや。宿の主人が言うには既に鎮圧されたとの事! さすが優秀な護衛を連れておりますな!」


 ふわりとアグーがシソーヌ姫から離れる。

 シソーヌ姫はスカートの裾を掴み、しゃなりとお辞儀した。


「お心遣い、誠に感謝致しますネカジャノ子爵。危機を察する慧眼と行動力……魔防都市メサルテに傑物ありと、しかるべき方へご報告させていただきます」


「おお……感激の極み。それで賊共はどちらに?」


 シソーヌ姫が上品に首をかしげる。

 いつもながら驚かされるね、この切り替え方。


「室内にて捕縛しております。連行していただけると助かります」


「ほ、捕縛? 生きておりますのか?」


 ネカジャノ……子爵? が不思議そうな声を出した。


「? ええ、賊はみな息がありますが……」


「そ、そうですか! さすがですな! ははっ! はっは! おい!」


「ハッ!」


「賊を引っ立てろ」


 ゾロゾロと宿の中に警備隊が入っていく。

 宙に浮いていたアグーが俺の肩へ止まった。


「カブラギ殿よ、おかしいと思わんか?」


「何が?」


「三等地区などと、街の中枢から離れた場所からの通報で動いたにしてはぢゃ。動きが速すぎるぢゃろう?」


「うーん、たしかに」


「警備隊が来るのは良いのぢゃ、よく訓練されておるくらいにしか思わん。しかし大貴族と聞いているネカジャノ子爵が一緒となると、途端に胡散臭いの」


「というと?」


「襲撃を知っておったか?」


「うそ? でも敵意がねえよ」


「そうなのか? うーむ……」


 コソコソ俺たちが喋ってる間に、ヌラヌラの賊共が運ばれていく。

 その途中、リーダー格のヤツが運ばれるのを見てネカジャノ子爵が反応した。


「やや! この男はまさか! いや間違いない!」


 シソーヌ姫がネカジャノ子爵を見る。


「どうされましたか? ネカジャノ子爵」


 子爵はリーダー格の懐に手を突っ込んで、手のひらサイズの何かを取り出した。


「やはり! これはポロイス大共和国の紋章! この蚯蚓人ミミズジンは大共和国の密偵ですぞ! おのれ大共和国め! 我ら魔皇国と大聖王国を仲たがいさせる策略だったか!」


 大共和国ってめっちゃ言うね。

 

「御身を狙った襲撃だったようですな。差し支えなければ、ワシの館までお移り頂いても宜しいのですが」


「いえ、お気持ちだけありがたく頂戴いたします。私には頼もしい仲間がおりますので、ご安心くださいませ」


「そ、そうですか、そうですな。ではワシは賊共を連行致しますゆえ、これで失礼いたします。おい! この周辺の警備を最大限に強化しろ! では」


 ゾロゾロ去っていく。

 

「ぶはっ! 疲れた!」


 シソーヌ姫が肩のチカラを抜いた。

 同時に弛緩した空気が流れる。


「夜分に仕事熱心なことだな」


 ソレガシの旦那がガシャンと鎧を鳴らす。

 

「私の姫様をキタナイ目で汚して、豚が」


「アルマ! そういう事言っちゃダメ!」


 宿から女将さんとご主人が出てくる。


「終わったかい? ヤギのミルクがあるんだよ! 温めてやるからそれ飲んでまた寝な! 子供は睡眠が大事だからね!」


「あ、手伝いますよ」


 ユウゲンさんが女将さんについていく。


「アグー様、カブラギ様」


 アルセーヌさんが近づいてくる。


「どう思われましたか?」


「うーん、敵意はないんだよなぁ」


「アルセーヌ殿も違和感を感じたんぢゃな、ワシもぢゃ。しかし筋は通っておるし、ありえん話ではないの」


「ネカジャノ子爵の言う事が真実ならば、いえ、真実でなくとも、このままでは大陸七国同士で戦争になります。私はサンジェルマン卿へ報告に行ってまいりますのでその間、姫様をお願いいたします」


 そう言ってアルセーヌさんが闇に消えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリックして応援してね↓
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ