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第15話 面談は何事もなく


 俺たちは今、噴水の広場に戻ってきている。


「ユウゲンさん調子はどう?」


「どうもスミマセン。お騒がせしましたホント」

 




 あの後、ユウゲンさんはルーレットで7連勝した。

 それを見てスゲースゲーと騒いでた俺たちの前で、ぶっ倒れた。


 そりゃもう、バッターンと。


 びっくりして、急いでアグーが出した回復薬ポーションを口に流し込んだ。

 飲み込まなくても効果はあるけど、体内に入れた方が効き目が強いって話だからさ。

 意識は戻ったけどまだ朦朧としているユウゲンさんが、震える手で懐から瓶を取り出して飲んだ。

 そしたらシャッキリして目の焦点が定まり、「じゃあ続けましょうか」なんて言うから3人で「もう止めよう!」ってチップを換金して外に出た。


 話を聞くと、ユウゲンさんは集中し過ぎると倒れることがあるんだって。

 さっきの瓶はサジーさん特製の霊薬、エリクサーって呼ばれる薬だそうだ。

 さすがの俺もエリクサーは聞いた事がある。

 ゲームにもでてくる、全回復アイテムだよな。





「いや、いいんだけどさ。そんな身体でアチコチ旅して大丈夫?」


 魔獣とか魔物がいる世界だよ?


「いや、旅に出る時は冒険者に護衛を頼みますし、さっきは良いトコ見せようと無理をしてしまいました」


「実際すごかったよな?」


「はい、7連勝ですもんね」


「無理をしなければカジノで食っていけるのう」


 ユウゲンさんが苦笑いする。


「自分は商売が好きなんですよ。昔上手くできなかった事ができるようになって、充実してます。それに、一か所に留まるよりもこの世界を見たくて」


 なるほどねぇ。

 生き方は人それぞれだわな。


 雑談をしていると、カジノの方からサジーさんたちが戻ってきた。


「やあ、やあ。お待たせしたかな? だいたいの話は付いたよ。ここじゃなんだからさ、一旦ミーの家まで戻ろうか、うん」


 じゃあって事でフリードリッヒさんが引いてきた馬車にみんなで乗った。

 全員乗るの? って思ったけど、乗った。

 地味な馬車は中がメチャクチャ広かった。




 そんで美味しいお茶菓子を楽しむ。

 サジーさんちのテラスは居心地がいいね。

 日差しも気持ちいし、ん?


「あれ? もう夕方じゃなかった?」


 俺の疑問にサジーさんが嬉しそうに笑う。


「や、や。気が付いちゃったかい? ミーの庭はね、時間をかなりゆっくり進められるんだよ、うん。一昨日が良いお天気だったからさ、もったいなくて。嬉しいなぁ、気が付いてもらえて」


 やりたい放題だな。

 ヴァンパイアって日の光とか大丈夫なのか?

 まあいいか。


「それでどうぢゃったのかの?」


「えっとね! フツーのおじさんだったよ!」


 アグーの質問に、質問した本人を抱いたまま答えるシソーヌ姫。

 そうかそうか、普通のおじさんだったか。

 良かったね。


「キューダ・ゲス・ネカジャノくんにはいくつかの条件で了承してもらえたよ、うん。でも新しいゲームの、キラースパイダーの闘蜘蛛が流行らせたいらしくてさ、一週間は待ってほしいって。一週間後にオウゴン教の視察もあるからその後なら問題ないそうだよ、うん。それまでに《神霊薬》が持っていかれそうだったら他の景品を進めて止めるってさ。あくまでもミーたちには正攻法で手に入れて欲しいそうだけどね」


「腰が低くて感じが良かったね、ネカジャノ子爵」


「そうですね。姫様の手を握った時は危うく《クロラブリュス》で弾き飛ばしそうになりましたが」


 アルマが黒斧を取り出す。


「ただの握手じゃん。お会いできて感激ですなんて言ってさ……噂通りお美しいとか言っちゃってさぁ!!」


「いたいいたい! 誰か助けて!!」


 バシバシされて叫ぶアグー。

 それを無視してソレガシの旦那が口を開く。


「ネカジャノ子爵は仙人殿に特段の敬意をはらっておったな。それでも条件を付けるあたりしっかりしておるが」


 エカテリーナさんに紅茶を注がれるサジーさん。


「キューダ・ゲス・ネカジャノくんはね、昔は才覚の欠片もない男だったんだけどさ、ある日から急にチカラをつけだしたんだ。意識の変化でもあったのかな? だんだん自信も付けていって、今じゃあ立派な大貴族さ。奢りも見え隠れするけどさ、ミーみたいになりたいって他所で言い振らしてる、可愛いトコもあるんだよ」


 アルセーヌさんもシソーヌ姫のカップに紅茶を注ぐ。


「一週間の猶予が出来ましたね。明日はマルマリ子爵家の皆さまが皇都へ向かうご予定になっております。いかがされますか?」


「もちろんお見送りするよ! メイちゃん達とお別れするのは寂しいけどさ、パパを元に戻したら新しい領地開拓のお手伝いに行こうと思うの!」


 微笑ましいね。

 俺たちも世界を周りがてら付き合うか。

 地球に戻る方法を探すにしても、焦ってちゃ気が滅入っちまうし。

 気持ちに余裕を持たないとね。

 そうだ。


「ユウゲンさんは大丈夫? 一週間付き合ってもらっても」


「大丈夫ですよ。急ぐ身でもないですし」


「申し訳ないね、うん。ユウゲンくんもなるべく早く東で商売したいだろうにね」


「いやいや。やりようはいくらでもありますから。今はビジネスのアイディアがいくつも思いついて不自由してないですし、こんな楽しそうな事に一枚噛ませてもらえて、ワクワクしてますよ」


 いい笑顔だ。

 それにしてもユウゲンさんってホント日本人顔してんなぁ。


「よーし。一週間後が楽しみだな! 俺がズバッと稼いでやるよ!」


「「「「やめて」」」」






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