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第3話 モテキ到来


 俺たちは街道を馬車に揺られながら、取り敢えず戻る予定だった街へ向かう。


 馬車は俺たちが乗ってきた一台、魔人族の人らが乗ってきていた二台。

 計三台だ。


 後ろの二台に過激派のリザードマン達をふん縛って運んでる。

 街に着いたら治安維持隊に突き出す予定だ。

 

 見張り役で一台にはソレガシの旦那が、もう一台にはアルセーヌさんが同乗している。


 ホントはアルセーヌさんじゃなくて、俺が見張り役をする予定だったんだけど……。


「改めて危ないところをありがとうございました。貴重な回復薬ポーションまで分けていただき、さらに護衛も兼ねてご一緒して下さるとは感激の極みですわ」


 笑顔でそう言うのは魔人族の公女、メインクーン・アメト・マルマリさんだ。

 17歳だそうで、幼さの残る見た目だけどまぁカワイイ顔してる。


 今は俺の二の腕に巻き付いている。

 ……なんで?


 まぁ悪い気はしねぇけどさ、

 なんか身内からの視線がキツイ。


「あの……メインクーンさんはなんで俺にくっついてるんですかね?」


「まぁ! カブラギ様! もっと気軽にメイとお呼びくださいな」


 なんか身内からの視線がキツイ!!


 魔人族のメガネさんが、溜息交じりに声を出す。


「姫さま……」


「「はい?」」


 メイさんとシソーヌ姫の声がハモる。


 あ

 

 というような顔をするシソーヌ姫。

 バカだよこのコは……。


「シソーお嬢様は《姫》という言葉を聞くと、返事をしてしまう病いにかかっているのです」


「待って。その設定はキツい」


 アルマの言葉に、シソーヌ姫ことシソーお嬢様が口を挟む。


「失礼いたしました。使用人の中には私を《姫》と呼ぶ者もおりまして、オホホ」


 シソーヌ姫が自分で誤魔化した。


「左様でしたか。ではメイ姫さま。初めてお会いした方、それも恩人にそのような馴れ馴れしい態度はいかがなものかと」


 メガネさんがメイさんをたしなめてくれる。


「何をいうのソマリ。このような雄々しく逞しい殿方を前に、アプローチしないわけにはいかないでしょう」


 おぉ……モテキ到来。


「仮面被ってるけど俺。大丈夫? 全然かっこよくねえよ?」


「そうです! カブラギ殿はブサイクです! それはもうスゴイですよ!!」


 アルマが立ち上がって吠える。


「そこまで言わなくても……」


 俺は肩を落とす。


「いや! いい意味で! いい意味でだ!!」


 慌ててそう言うアルマ。

 フォローっすかソレ?


「素顔などどうでも良いですわ。《仮面の救世主が窮地を救う》という事に、魔人族の乙女は憧れるのです」


 どういう事?


「申し訳ございません皆さま。しかし、メイ姫のおっしゃることは我らの旅の理由にも繋がるのです」


「と言いますと?」


 メガネさんこと、ソマリさんの言葉にアグーが問いかける。


「メイ姫様のご実家、マルマリ子爵家は元々小国を治める王族でした。しかし、マルマリ国は遥か昔に行われた《進化の実験》で、暴走した魔獣に滅ぼされてしまったのです」


 聞いた事あるな。

 アルセーヌさんの授業で教わったっけ。


 魔獣は体内にある魔石に魔素が一定量溜まると《進化》する。

 理論上進化に制限はないけど、身体が魔石の魔素量に耐えきれなくなると破裂して大爆発しちまうって話か。

 それを実験しようとして、進化し過ぎた魔獣に滅ぼされた小国があるって言ってたな。


「当時のマルマリ家当主は魔獣に蹂躙される街を眺め、己の過ちを悔いて祈ったのです。《神よ、愚かな我らを救いたまえ》と。すると仮面の戦士が天から現れました。そして魔獣を封印したのです。民たちは全滅をまぬがれました。この逸話は魔人族の中でおとぎ話にもなっております」

 

 なるほどね。

 仮面の戦士ってのは、地球で言う白馬の王子様みたいなモンか。


「マルマリの国土は、魔獣の毒で住まう事叶わぬ土地へと変わりました。しかし永い時を経て今、その土地の毒が消えつつある事が分かったのです」


 ソマリさんがメガネを上げる。


「ゼギアス大皇よりその土地の統治を命じられ、マルマリ子爵家は、複数の種族を迎えて新しく領地を広げる予定であったのです。今回はその為の下見を行っていたのですが……」


「なるほどのう。その《複数の種族を迎える》というのが原種主義の過激派は気にいらんかったんぢゃな」


「はい……先んじて皇国内に公示を出したのが仇となりました。マルマリ子爵家の手練れを共にし、護衛も兼ねて冒険者組合に案内役を頼んだのですが、まさか冒険者が刺客にまわるとは……。信頼度も高いA級の冒険者クランだったのですけれど」


 声を落とすソマリさん。

 多分この人が連中を手配したんだろうな。

 残念だけど向こうの方が上手だったって事か。


「おかげでカブラギ様と会えましたわ!」


 しがみつくチカラが強くなる。

 まいったね。


「……なんか笑ってません? カブラギさん」


 マキマキが睨んでくる。


「……笑ってないよ?」


「声張ってもらえます?」


 なんか身内からの視線がキツイ!!


 ソマリさんもピリピリした空気を感じてるみたいだけどオロオロするだけ。

 

「おやおや。すっかりメイ公女さまはカブラギ殿をお気に入りのご様子ですな」


 アグーがにこやかに声を出す。


「ええ、我が子爵家にお迎えしたいくらいですわ」


 アルマが、マキマキが、シソーヌ姫がメイさんにキッと目を向ける。


「しかし、よく考えてみてくだされ。商品を持たぬ商会の令嬢。その身に一番そばで控える、顔を隠した仮面の者。……あまり深入りせぬ方がお互いの為かもしれませんぞ」


 アグーが不敵にそう言うと、ハッとしたように俺の腕から手を放すメイさん。

 ソマリさんが慌てたように口を挟む。


「これは! 寛大なご配慮恐れ入りますアグー様。……メイ姫様、あまり心労をかけて下さいますな」


 よく分かんねえけどアグーがなんか場を治めたみたいだ。


「貸しぢゃからの」


 って小声で言ってんのがガイアイアーで聞こえた。


「……あきらめませんわよ」


 ってメイさんが言ってんのも。



 

 


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