第1話 新たなる旅へ!
「アスガイヤー・パァンチ!」
広々とした平原の上でゴブリン達が弾け飛ぶ。
長く伸びた数十の群れが円形にまとまった。
「マキマキ! 今ぢゃ!」
「サファイアロー!」
マキマキの胸元の宝石が蒼く輝き、弓から白光の矢を空へ放つ。
「……ライトニングレイン!」
上空に放たれた矢が幾つもの落雷へ変わり、狼狽えるゴブリンの集団へ落ちた。
「まだ残ってるよ!」
シソーヌ姫の言葉に目をやると、落雷で打ち損じた十数匹のゴブリンが森の方へ走り出していた。
「某の出番だな……」
進行方向へ先回りしていた、ソレガシの旦那が腰を下げて構えている。
「絶技! ソレガシ必殺・真空手刀飛ばし!!」
……なんて?
なんか叫んだソレガシの旦那が手を振ると、真空破がいくつも放たれて逃げたゴブリンを真っ二つにしていく。
平野に転がる、死屍累々のゴブリン達。
「はっはっは! 見たか! 某の必殺技を!」
上機嫌で笑うソレガシの旦那。
白い中華風の全身鎧をガシャガシャ鳴らして2メートル近い体格を震わせる。
「ソレガシったら危ないでしょー! こっちにも飛んできてたよ!」
「むぅ、面目ない」
頭を掻く旦那を叱責する金髪の少女。
大陸七国と呼ばれる国の一つ、大聖王国のお姫さまシソーヌ姫だ。
「そうですよソレガシ殿。姫さまの手足が千切れ飛んだらどうするんですか」
「具体的に恐い!」
怯えた目でシソーヌ姫が隣の女性を見る。
彼女は姫さまの専属護衛騎士、アルマ。
冷たい感じの銀鎧を着て表情も乏しいが、シソーヌ姫を何より大事に想ってる。
……多分。
蒼い魔法少女の衣装を着たマキマキと、妖精アグーがふわふわと白い毛をなびかせて戻ってきた。
「これで依頼のゴブリンは全部ぢゃな」
「カブラギさんどうですか? センサーに反応あります?」
俺はガイアマスクに手をやり、静かになった平原と近くの森を見渡しながらガイアセンサーを深く起動させる。
「とりあえず半径500メートルに反応はねえな。オッケーじゃね?」
俺の言葉に息を吐いて変身を解くマキマキ。
中学校のブレザー姿に戻った彼女は俺と同じ地球出身の異界人。
魔法少女ジュエリールこと海崎真希菜だ。
マキマキはあだ名。
一緒にいる白い毛のカタマリは妖精アグー。
魔法少女の補助をするマスコット的なアレだな。
中身は食いしん坊ジジイだけど。
そんで赤い仮面とカッコいいスーパーヒーロースーツに身を包んだ俺が救世戦士アスガイアーだ。
本名は鏑木恭司。
23歳のナイスガイです。
今俺たちは大陸の西部地方にいる。
ガドニア侯国を抜けて大陸七国と呼ばれる《ゼギアス大皇国》へ向かっている最中だ。
その途中で大陸七国に庇護されている国々を経由しつつ、魔物退治を請け負って小銭を稼いでいる。
マキマキが手をかざしてゴブリンの死体から魔石の魔素を吸収した。
一石二鳥だ。
なんでゼギアス大皇国へ向かってるかっていうと、
「皆さまお疲れ様でございました。喉は乾いておりませんか? 白湯を用意しておりますので宜しければどうぞ」
馬車の方から燕尾服を来た、50代くらいの紳士が労ってくれる。
紳士の名前はアルさんことアルセーヌ執事長。
大聖王国の王室付きなんだけど、今回の旅に同行してくれる事になった。
というのも旅の目的がアルセーヌさんの知り合いに会うためだから。
実は聖王国のアークガド18世。
シソーヌ姫の親父さんだな。
その王様が曲者に襲われて石像にされちまったんだ。
曲者は宰相のサイロスさんが退治したらしいんだけど石化が解けないときたもんだ。
生命反応はあったから死んでない。
でも宮廷魔術師長のバラックじいちゃんでもどうにもならなくて、魔術先進国の《ゼギアス大皇国》、
そこの「サンジェルマン」とかいう偉いさんに知恵を貰いに行くって経緯だ。
執事長のアルセーヌさんはサンジェルマンさんの元使用人だそうで顔が利く。
通信魔導具でただ「お会いしたいのです」って伝えたら、なんか察したように条件をいくつか出されたそうだ。
大嶮山関所を十日間の内に越えた者と来るように。
そのうちの一番身分が高い者
純白の鎧を纏った者
後4名
人選は任せる。
宰相のサイロスさんは難色を示したが、王様の復活がかかってるから首を縦に振らざるをえなかった。
怪しい事この上ないけどアルセーヌさん曰く
「悪い方ではないです」
だそうだから、まぁ何とかなるだろ。
しかも!
「サンジェルマン卿は異界に渡った経験がおありです。きっとカブラギ様方の御力にもなって下さるでしょう」
だって!
いいね!
俺たち地球組の一番の目的は《帰る》ことだからな。
サイロスさんが、
「王族のいらっしゃらない宮廷で政治を取り仕切る。その重圧を分かって下さい……ノマリタ殿下、早く戻ってきて……」
って言いながら頭を抱えて、宮廷魔術師長のバラックじいちゃんに肩を叩かれてた。
「幸い諸侯が聖王陛下と面会する予定はない。こちらはこちらで何とかするゆえ心配するな。頼むぞみんな!」
マルク大将軍もエールを送ってくれた。
その後コソコソ娘のアルマに耳打ちしてたけど。
アルマは表情を変えずに顔を赤らめて大将軍を小突いてた。
それからちょいちょいアルマと目が合うようになったんだけど。
何言われたの?
「カブラギさーん! 行きますよー!」
考え事してる間にみんな馬車に乗り込んでた。
慌てて俺も乗り込む。
アルセーヌさんが手綱を引くと馬車が進みだす。
大きな馬車だが車輪じゃなくて、風の魔石で荷台が浮いてるから馬一頭で十分だ。
今回の旅は目立たないように魔導車はナシ。
誰も運転できねえし。
姫さま連れてるしな。
この一行は商会の令嬢と護衛って設定だ。
馬車の中でシソーヌ姫が口を開く。
「アルマさっき《姫さま》って言ったでしょ。駄目よ、ちゃんと《お嬢様》って言わないと」
「そうですね姫さま」
「あ、また言ったー」
「すみません姫さま」
「ウソでしょ!?」
そのやり取りを横目に、ソレガシの旦那へ話を振る。
「そういや旦那、さっき叫んでたのってなんだ?」
ガシャリと鎧が鳴る。
「む? 必殺技か?」
そんな事言ってたな。
「そうそう、絶技! とか言ってたじゃん?」
「ハッハ! カブラギ殿とマキマキ殿が攻撃する際、叫んでおるのを見てな! 真似しておるのだ! アレは良いな! 気合が入る!」
上機嫌で笑う旦那。
遊びでやってんじゃねえんだけど……。
まぁいいか。
「街に戻ったらクリーニング屋さん行きましょうよぉ。制服が痛んじゃう……」
今泊ってる街は大きいから、洗浄魔術で服を綺麗にしてもらえるクリーニング屋がある。
乾燥要らずで便利なもんだ。
「その前に冒険者組合へ行って映像魔導具を提出せんといかんぞい。仕事は早め早めに済まさんとな。《今日できる事は明日に伸ばすな》ぢゃぞ」
討伐依頼の完了を映像魔導具の提出で完了させる。
ホントは討伐した対象の一部を持っていくのが普通なんだそうだが、アルセーヌさんが映像魔導具を持ってたから助かった。
アルセーヌさんチョー有能。
ガヤガヤ喋りながら揺られてると、馬車がゆっくり止まった。
「人が襲われております」
事件ッスか?
明日以降は1話ずつ投稿いたします。
ストックが切れ始めれば二日で1話投稿になります。
皆さまの応援次第です。
スミマセン、私の頑張り次第ですね。
しかし応援してください。そうすれば人間を一人幸せにできます。
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