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第13話 それからそれから


 アークガド聖王国。

 大陸に七つある大国の一つで、他国からは大聖王国と呼ばれる。


 かつて三千年もの昔、地上人と魔界の神々が争ったとされる《大聖戦》。

 その戦いで獅子奮迅の活躍をした、《世界の守護者》が眠る土地に建国されたという伝説が残る、由緒正しい国だ。


 国都アークガドは、大陸の中央を分断してそびえる《大嶮山》を背に築城されており、横幅広く街が形成されている。

 国土の中にある大嶮山で唯一整備された山道は、他の七つある大国の東三国、西三国を繋ぐ、貿易の要所である。

 そのため平和な時分には経済的発展を遂げて、魔王軍との戦役では絶対防衛線としての役割を担っていた。

 現在、かつてあった20の都市と212の村々は半分以下に減り、一致団結して復興にあたろうとしている。



◇◆◇◆



「んだってさ、だから元の世界に帰る方法を探すのも、人員を割くのが難しいのですって、サイロスさんが言っとったわ」


「わっ! なんでマスクしてるのに食べカスが飛ぶんですか! 口にモノ入れてしゃべんないでください!」


 俺とマキマキ、アグーの異界人三人組は今、お城の食堂で昼メシを食ってる。

 献立は、マメの煮っころがしみたいなのと川魚の干物、塩気の強いスープ。

 食糧が不足してるから新鮮な食材は少ないそうで、備蓄してある糧食を使ったメニューだ。


 でも、見た目より断然うまい。

 調味料が豊富みたいで、塩だけじゃなく、味噌と胡椒もある。

 厳密には若干味がちがうけど。


「そういやさ、こっちって味噌とかあるじゃんか。でも正確には多分ちがうよな? リンゴもらったこともあるけど、ちょっと味が違ったし」


 俺の疑問に、アグーが煮っころがしの皿に突っ込んでた顔を上げて答える。


「そうぢゃな。どうやらワシらの認識が近いものに単語が変換されておるようなのぢゃよ。例えば、この果実はリンゴみたいだ。とカブラギ殿が考えれば、耳にはリンゴと聞こえるようぢゃ。言語が通じるのも同じカラクリぢゃろうな」


「自動翻訳が勝手にされてるって事みたいですよ」


「へー……えらい便利だな」


 元の世界の昔話でも、元々みんな同じ言語で喋ってた。みたいな話あったな。

 アグーが顔を上に向けて、魚の干物を丸ごとパリパリと一気に飲み込んでいく。


「むしゃむしゃ。まあ、固有名詞や地球に無かったような単語はそのままこちらの言葉で聞こえるようぢゃがな」


 このじいさん、丸い綿毛みたいな体格でどこに食いモンいれてんだろうか。

 うーん。ヒーローマスク被ったままメシ食ってる俺も大概か。

 マキマキがスプーンでスープをすくいながら、目を細めてアグーを見る。


「アグーも、もうちょっと行儀よく食べてよ恥ずかしい」


 確かに。

 今の時間の食堂はお城で働いてる人らが大勢いる。

 献立は日替わり定食しかねえけど、がやがやとした賑やかさは連休のフードコートみてえだ。


「老い先短い年寄りに細かい事を言うなマキマキ。今は食べるくらいしか楽しみがないんぢゃ」


「もうマキマキでいいよ……」


 マキマキが溜息をついてスプーンを口に運ぶ。

 その後ろを通りがかった兵士の数人が、通りしな声をかけてきた。


「やあ天使さん、ヒーローカブラギ。こっちにはなれたかい?」


 ぎこちなく笑うマキマキ。


「あ、はい。そ、そうですね。はは……」


「おい間違えんなよ! スーパー・・・・ヒーローな! スーパー! 忘れそうならメモしとけ!」


 手を振りつつ、笑顔で去っていく兵士たち。

 昨日城の中で迷った時、声をかけてくれて仲良くなった連中だ。

 気のいい奴らで、俺が冗談を言うとゲラゲラ笑ってくれた。





 あの日から十日。

 魔王討伐の報告が届いた日から、十日がたった。

 ちなみに、あの後だいぶ気まずかった。

 でもなんやかんや、救国の英雄って扱いで居候させてもらってる。

 プーだな。

 マキマキの時代にはニートって言うそうだ。


 そうそう。少し脱線するけど、マキマキは俺より少し後の時代の日本から来たらしく、色々参考になりそうな話を聞けた。

 イッヒッヒ。

 地球に帰ったら株とか買ってみようかな。

 大きな出来事は多少年代に誤差があるから、過信は禁物だけど。


 そう、帰らねえと。


 待ってるだけじゃなく、自分たちで帰る方法を探したいって考えたが、如何せんこの世界の事を知らなすぎる。

 それは俺よりちょっと先に来たマキマキたちも同じで、今は執事長のアルセーヌさんと、時間が出来た時のサイロスさんから一日に数時間勉強させてもらってる。

 特にアグーはサイロスさんにあれやこれやと、この世界の歴史を聞きまくってた。

 今更机に付いてお勉強はしんどい。


 でもかなり分かってきた。

 現代の地球に比べて文明が遅れてると思ってたけど、この世界は独自の発展を遂げてる。


 そりゃあテレビもねえしラジオもねえ。

 でも娯楽が少ない分、生活の利便性は高い。


 それというのも、魔素や魔術、魔石なんてモンが科学の入り込む余地を無くしてるからだ。

 魔素ってヤツが一番重要で、空気中に漂ってるエネルギーそのものだ。

 これが人体に蓄積されて、ソレを元に魔法を唱える。

 魔法は火・水・風・土の四元素と光・闇の合わせて6属性に分けられるそうだ。

 属性を組み合わせることで、様々な魔法を使えるんだって。

 例えば、


 水を3割・風を7割で氷の魔法。

 火を5割・水を5割で爆発の魔法。


 光の魔法を極めれば、限りなく時間を遅く進める《時間停止タイムストップ》なんて魔法も使えるらしい。

 サイロスさんの転移魔術はすげえ難しいけど、光と闇の魔法の組み合わせで使えるそうだ。


 そして魔素は人体だけじゃなく特定の鉱石にも蓄積されるそうで、それが《魔石》って呼ばれるこっちの世界の資源ってやつだ。


 火の魔素を蓄積しているのが火の魔石で、地球でいう石炭みたいな使い方をされてる。

 これは錬金術っていう特殊な技術で粉末にすると、火薬みたいな使い方が出来るそうだ。


 水の魔石は水を生み出せて水源になるし、風の魔石は風を生み出せる。

 コレのおかげで空が曇ってても作物が育ち、食糧をまかなえてたんだと。


 土の魔石は建物や城壁に埋め込まれて強度を上げるのに役立ってて、技術者によってはゴーレムなんて物も作れるそうだ。


 この辺の話を聞いてアグーが


「科学の概念がこの世界にもあるんぢゃのう」


 なんて言ってた。

 俺は空気の読めるオトコだから、


「ああ……そうだな」


 って言っておいた。


説明回です。

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