第二話
ピンポーン
『壱川さーん?お届け物でーす。』
「あ、はい。今行きます。」
あの愚弟が言ってた通り、あの"ヤバい"の説得から2日後の今日、GWO (最近の呼び方らしい)が届いた。
「ここに判子をお願いします。」
「はい。ちょっと待っててください。」
ゲームを届けてくれた宅配便のお兄さんに、判子とついでに七夕に腐るほど貰った(押し付けられたとも言える)缶サ◯ダーを手渡す。
「ご苦労様です。これ、貰い物ですけどどうぞ。」
「あ、これはどうもご丁寧に。」
「「ぷっ、あははははっ!!」」
「いやいやいやいや、大きくなったねー、ユリちゃん。」
「そっちは全然見た目が変わらないね、小次郎さん。もう40歳越えてるのに、見た目はまだまだ30だね。」
「言わないでくれよ、童顔なの気にしてるんだから。」
彼は、母方の親戚(っていうか、お兄さん)の金橋小次郎さん。私と同じ流派の道場に通う、格闘技の第一人者。柔より剛で戦うスタイルで、より剛の力を引き出す戦い方を学んでいて今は───じゃなくて。
「いやいや、女性としては羨ましいですよ?何時までも若さを保てるって。」
「・・・・20代前半の君がそれを言うかね。」
「20代前半で若々しく見えても女性って事に変わりはないですし、おすし。」
「ユリちゃんは俺の時だけネタぶっ混んでくるよね。そして自分で若々しいとか、イタイよ?」
だって、あなたが童顔+気安い性格だから、親友としか思えないんだもん!
・・・何て言える訳ないし。
「うん、ユリちゃん。聞こえてるよ?もろ駄々漏れだからね?」
「え、マジで?」
「うんマジで。・・最早隠す事もしなくなったね。」
普通なら、目上の人にどーたら、等と怒る人もいるが、小次郎さんは怒らない。大体、親戚だから、多少は気安くてもOKなのが、家の性質。
「それよりも、珍しいね。昔一度だけやって、ソッコーVR酔いしてトラウマになったのに。・・・・佐助くんに説得された?」
「流石小次郎さん。前よりも勘が鋭くなってない?」
昔から隠し事や秘密が通じない人だったな。
「まぁ、"時代は常に進歩するもの"だからね。VR酔いも大丈夫でしょ。それより小次郎さんはやらないの?根っからのゲーマーでしょ?」
「アハハ、欲しいからバイトしてるの。僕は二陣かな?攻略、期待してるよ?頑張りたまえ。」
「あれ?小次郎さん、時間大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。俺の仕事はこれで終わりだかんね。そいじゃまた、ゲームで会おう!」
「その前に道場じゃないのー、って行っちゃった。まあいいや。さっさと繋げておこうっと。」