第7話 作戦会議
俺たちはカーネルへのお礼と、とあるお願いをするために夕飯を奢ることにした。
「改めて自己紹介しようか!」
「私はカレン!」
「俺の名前はソフィ。」
「騎士団 第6部隊 隊長、カーネルだ。よろしくな」
カーネルは笑いながら手を差し出した。
「よろしく。」
一応握手だけはしておく。命の恩人なのは事実だ。
まぁ、色々問題はあるが...
「おいおい、なんだよ~その微妙な顔は。」
「いや、初対面でキスを要求する人は初めて見たなって。」
「普通だろ男は下半身で生きてんだぜ?」
「お前、処女だろ?」
反省しているどころかセクハラまでかまして来た。
「カーネルさんはウザくてキモイで有名だからね。」
カレンが苦笑する。
「おいおい、まるで俺が変態みたいじゃねぇか。」
「違うの?」
「違わねぇな!」
即答だった。
本当に騎士団の隊長なのか疑わしくなってくる。
だが、あの数の魔獣を一瞬で倒した実力だけは本物だった。
「それで、カーネルさんは何で森に居たの?」
「お前らを尾行してたからな」
「「え?」」
あまりにも自然な口調だった。
カーネルは気にすることなく料理を口に運んでいく。
「お前、今尾行って言ったのか!?」
「あぁ、そうだよ。聞こえなかったのか?」
「なんで尾行したんだよ」
「だってよぉ、可愛い女の子二人が治癒魔法のスクロール買ってたんだぞ?」
「そりゃ追いかけるだろ。」
「追いかけねぇよ!」
思わず机を叩いた。
周囲の客がこちらを振り向く。
「まぁまぁ。」
カレンが苦笑しながら両手を振った。
「結果的には助けてもらったんだし。」
「それはそうだけどさ!」
「ほらな!」
カーネルが得意げに胸を張る。
「俺の行動は全部正しかったってことだ!」
「全然違うだろ!」
「で、俺に何か頼みたいことがあるんだろ?」
カーネルは肉を頬張りながら言った。
さっきまでの軽薄な態度とは違い、その目だけは妙に鋭い。
俺は一瞬だけカレンと顔を見合わせた。
「...黒牙を倒したいんだ。」
「おう、いいぜ。」
カーネルは何の迷いもなく答えた。
あっさり了承を得られるとは思っておらずカレンも驚いていた。
「...え?」
「そんな簡単に決めていいのか?」
だがカーネルは平然と
「可愛い女の子二人の頼みを断る男が居るかよ普通。」
「居るだろ普通!」
「それに、俺の活躍で女の子からモテモテになるかもだしな!」
なんて不純な動機だろうか。
だが、俺たちに仲間ができたことは素直に嬉しかった。
それに騎士団の隊長を務めるような人だ、とても心強い。
「なら、早速作戦会議と行こうぜ。」
「カーネルは黒牙について知ってることは?」
「俺が知ってんのは、黒牙のアジトの場所だな」
「本当か!?」
「ただ問題がある」
「問題?」
「黒牙のアジトは崖の上にある廃砦だ」
「正面から行けば見張りに見つかる」
「しかも相手は十人以上いる」
「正面突破すれば良いじゃん!」
「カーネルさん死なないようなもんだし!」
「さっすがカレンちゃん、頭良い~!」
コイツ、自分の役割に文句がないのかよ...
「カーネルお前、それ完全に囮役だぞ?」
「へっ、可愛い女の子のためなら本望だね!」
「重症だな。」
「まぁ俺一人じゃ厳しいし、隊員の何人か誘うけどよ。」
「誘うって……勝手に決めて大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。」
カーネルは手をひらひら振った。
「どうせアイツら暇だろ。」
「絶対怒られるやつだろ、それ。」
「細かいこと気にすんなって。」
本当にこの人が隊長でいいのだろうか。
不安しかない。
だが実力だけは本物だ。
それは今日嫌というほど見せつけられた。
「でも、それなら戦力は十分かもね!」
カレンが嬉しそうに言った。
「見張りはカーネルさんたちが引き付ける。」
「その間に私たちが中へ入る!」
「黒牙の頭領を倒せば終わりってわけだな。」
カーネルが頷く。
「まぁ簡単に言えばそうだ。」
「ただし。」
そこでカーネルの表情が少しだけ真面目になった。
「相手は盗賊団だが、素人じゃねぇ。」
「追い詰められりゃ何してくるか分からん。」
カーネルの言葉に、店の空気が少しだけ重くなった。
さっきまでふざけていた男とは思えない声音だった。
「黒牙は人を殺してる。」
「追い詰められた連中が大人しく捕まると思うなよ。」
その言葉に俺は黙り込む。
森で魔獣に囲まれた時の光景が脳裏をよぎった。
足がすくみ、何も出来なかった。
あの時カーネルが来なければ、今頃俺たちは死んでいた。
「……分かってる。」
小さくそう答える。
黒牙は魔獣じゃない。
人間だ。
だからこそ厄介だろう。
「それでも行くんだな?」
カーネルが真っ直ぐ俺を見る。
逃げ道を残してくれているようにも聞こえた。
だが
「行く。」
迷いはなかった。
「俺は強くなりたい。」
「だから、逃げない。」
数秒の沈黙の後。
カーネルは満足そうに笑った。
「よし。」
「なら決まりだな。」
カレンも大きく頷く。
これで大まかな方針は決まった。
「決行日はいつにする、早いほうがいいか?」
「まだ少し準備時間が欲しいかな~」
「ソフィの魔力操作もまだ完璧じゃないし。」
カレンの言葉に俺も頷く。
森では運良く生き残れた。
だが次は盗賊団の本拠地だ。
中途半端な実力のまま挑むつもりはなかった。
「最低でも今よりは強くなっておきたい。」
「良い心掛けだな。」
カーネルは酒を一口飲む。
「無謀と勇気は別物だからよ。」
「準備できる時間があるなら使っとけ。」
今度こそは誰かを守れるようになるんだ。
俺はまだ諦めない。
黒牙との戦いまで、残された時間はそう多くない。




