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33 人は流されてしまうものなのか


 情報というのは、一体どこからどこまで広がっていくんだろう。

 国立サルートス上等学校で、身分を隠し、変装している王子様と一緒に授業を受けている私達は、秘密結社「王子様のプライバシー守り隊」のメンバーにして、成人病予防研究クラブのメンバーでもある。


(つまり私達、この学校における良心といった存在なんだね)


 クラブ活動は週に三回までと決められているが、送迎の移動車を待つ為に王子であるエインレイドと私はいつもクラブルームとなっている第2調理室で放課後を過ごしていた。

 もしかしてもう変装する意味はないんじゃないのかなって思うけど、髪を洗い流す為に私と一緒に帰る時間もエインレイドの気晴らしになってるみたいだから良しとする。髪を洗い流す為に王城に戻ってる日もあるみたいで、それなら普通に王城から通学すればいいんじゃないのかなって思ったりするけど、自立心を育む為に一人暮らしをした結果が男子寮暮らしなわけだから、それでいいそうだ。

 そして他のメンバーも、放課後のお喋りに付き合ったり、プランターに植えてあるハーブの世話をしたり、用事がある日はさっさと帰ったりと、自由に第2調理室をたまり場にしている。

 今日はみんなで調理台を勉強用机にして、問題集を解いていた。


「よっしゃあ、やっと間違わなくなった」

「ほんとに。どうしても間違えるルートにはまりそうになるよね」


 げっそりした顔のベリザディーノに、マルコリリオが同意とばかりに呟く。

 出題形式として間違いやすいその問題を、みんながどうにか間違わずにすむようになったところで、私達はふぅーっと「ここで一休み」な合図の溜め息をついた。


「うん、お疲れ様。どうしてもディーノとリオは素直に受け取って、そっちに行きやすいんだよね。引っ掛からないってことは性格が素直じゃないってことだと思えばいいよ。で、何度も解いていたらもう引っ掛からなくなるから」

「レイド。さりげなくアレルが僕達を下げてくるんだが」

「つまりアレルが一番性格がひねてるってことじゃないの?」


 何度も間違えてしまう二人が自信を失わないようにと気を遣った私の配慮を、ダヴィデアーレとエインレイドが分かってくれない。

 そこで私の向かい側にいたエインレイドの染めた髪が目に映る。


「思うんだけど、レイドが変装してる意味ってもうあるのかな。今日、女子トイレでレイドのことお喋りしている人達がいたけど、なんか世を忍ぶ仮の姿で一般生徒に混じっている気の毒な王子様扱いされてたよ?」

「まあな。経済軍事部生徒、もうほとんどが知ってるんじゃないか? だけど今更、エリー王子とか殿下とか呼ぶのも違和感あるし、ここはもう双子のようにそっくりレイドでとことん行ってもらいたい。僕にしてもディーノにしても、何を言われたところで、僕達が知り合ったのはレイドという平民生徒だったんだし、今更そんな王子とか言い出さないでくれってことで無視してる」


 ダヴィデアーレが、何度もやらされた計算式にうんざりしていたのか、疲れた顔で頷いた。

 伯爵家の二人は今までの付き合いもあるようで大変らしい。子爵家の私が大変じゃないのは、今まで貴族のお友達がいなかったからだ。


「あはは。僕も実は帰宅した時に呼び止められてね、それ聞かれたんだけど、王族として扱われるのはいつでもできるから、ちょっと成績の悪い平民ってことで変装してみたら、そんな僕にも声をかけてくれる貴族がいたので、いい勉強だなと思って付き合ってますって答えておいたよ。

 平民の立場からどう見えるかの勉強だって。

 けっこう平民の生徒達も、性格や面倒見のいい上級生貴族の話を休み時間にしていて参考になります、僕も気をつけようと思いましたって」

「レイド、そもそもそんな話に僕達、聞き耳なんか立ててないだろ? そりゃ色々なクラブで横暴な貴族が親切になるかもしれないけどよ。なんつー王子様だ」


 ベリザディーノが呆れているが、エインレイドはおとなしい顔してそういう王子様だ。いきなり目をつけられて学校長を巻きこんでのお友達騒動に巻き込まれた私だから分かる。

 怯えて男子寮に逃げ帰っていたという話のわりに、変な所で押しが強い。


「いいんじゃない? それでみんなが仲良くなれるなら。かえってここ、クラブ棟に無くてよかったよね。レイドのおかげでこんな伸び伸びとしたクラブ活動ができるって凄いことだよ。決められた花を花壇に植えるより、自分で肥料とかも考えて植えるのって楽しいしね。僕もけっこう育てるの失敗してるけど、おかげで勉強になってる」

「まあね。どうしても虫がつかない為には農薬使わないと無理だ。あ、ディーノ。とりあえず予算まだあるだろ? 僕とリオ、今度、植えておくと虫がつかないとかいう草を買いに行こうと思うんだ。本当に効果があるのかどうか分からないけど、農薬を使うのと、その草を植えておくのと二つを作ればいいかと思って」

「けっこう余ってるよ。いいんじゃないか? 荷物持ちでついていこうか、ダヴィ?」


 一番大柄なベリザディーノは、この中で一番体力に自信がある。ダヴィデアーレとマルコリリオだけでは大変だろうと、気軽な調子で声をかけた。

 たしかに二人よりは三人の方が荷物を沢山持てるよね。


「いや、いいよ。僕達は家も近い。面倒な時はリオの家に避難させてもらってるのさ。友達の所へ遊びに行くとか言って」

「うちなんてダヴィんちに比べたら小さすぎて恥ずかしいんだけど、その代わり、うちの親も忙しくて、けっこう自由だから。おかげでダヴィ、外泊とかも多い不良だって思われ始めてるみたい。うちに来ても普通に一緒にご飯食べて、ドラマ見て、一緒にゲームして普通に学校来てるだけなのにね」


 いつの間にかダヴィデアーレとマルコリリオはお泊まりする間柄になっていた。

 王子のフレッシュ情報を聞き出す為にグランルンド伯爵邸を訪れても、ダヴィデアーレが度々外泊しているとなればその先にまで追いかけてもいけまい。なかなかに策士である。

 だけどこの子達、まだ上等学校一年だよね?


「え? だけど子供だけでお泊まりって、リオんちのお父さんとお母さん、後で怒ったりしないの? うち、保護者無しの外泊なんて許してもらえないよ? やっぱり男の子って自由すぎるよね」

「別にうちは怒らないよ。住み込みのばあやも、ダヴィが遊びに来てくれるようになってから僕のマナーもよくなったって喜んでた。それを母に言ったらしくて、うちの両親も喜んでる」

「そうだな。うちもリオんちに泊まっても文句は言わないな。どちらかというと人見知りしなくなったなとか、そんなことばかり言われてるか。だけどアレルの外泊は無理だと思うぞ。女の子なんだから」


 そんなダヴィデアーレとマルコリリオを、エインレイドとベリザディーノがなんだか考え込むような顔で見ていたことに私は気づいたが、ここで何かを言おうものなら男子寮にいる寮監達に怒鳴りこまれそうなので沈黙を守った。

 まあね。気持ちは分かる。

 王子様だってパジャマパーティしたいよね。ベリザディーノだって広くて大きなおうちもいいけど、たまにはそこまで大きくないおうちで賑やかに過ごしてみたいよね。


(広いおうちだと、今度は全員バスルーム付きの客室になるからお泊まり会気分にならないんだよね。やっぱりああいうのは同じお部屋で雑魚寝じゃないと楽しくないと思うんだよ。いつの間にか寝落ちするまでお喋りしてるのが楽しいんだし)


 だけどこのクラブ、女の子が私一人だからクラブ合宿なんてやるわけにいかないといった事情があった。さすがにそれはウェスギニー家の誰一人として許さないって私も分かる。だって私一人隔離されてたら何の為の合宿? かといって、あの男子寮監達がついてくるのはノーサンキュだ。

 そしてうちの保護者がついてくるのも何かがおかしいと思うんだよ。

 そりゃね、うちの父か叔父、そしてアレンルードがついてくるならどうにかなるかもしれないけど、それならもうウェスギニー子爵邸へのご招待の方が早い。

 それにエインレイドの生活を見守り、支えている筈の寮監達がちょっとね。

 まだフォリ中尉はそうでもないんだけど、他の男子寮監達の私を見る目が冷たい気がするんだよ。

 フォリ中尉はいじめっ子だが、あれで話が通じる人だ。怒りっぽいが金払いはいいし、しつこく説教しない。

 その点、他の寮監達はちょっとどうかなって思う。

 何かと女の子なんだからとか、貴族令嬢としての慎みがどうだとか、男女交際がどうだのこうだのとか、そんなことでは縁談に差し支えますよとか、変に主張しすぎなんだよ。特にドルトリ中尉とか、ドルトリ中尉とか、ドルトリ中尉とか。


(別に私、何もしてないのに。王子が汚されるとかって、被害妄想もいいところだよ。ルードのしたことを私だと勘違いしてると思う。若いのに頭が固すぎるっていうか、人の話を聞かなすぎるんだよね)


 それでも王子が参加しているからこそ、このクラブが恵まれた環境にあるのも事実。

 今日はどうしても計算が分からないってマルコリリオが悩んでたから、こうして授業のおさらいをしてみた。それでベリザディーノも引っ掛け問題に引っ掛からなくなった。マルコリリオも理解できたようで、この分なら大丈夫だと思う。

 勉強しながらフライドフィッシュとピーマン、そしてレタスを挟んだパンを食べた。エルダーフラワーシロップの炭酸割りも飲んだ。だからみんな、お腹が空いたと悲しくなることもなく、一気に問題を解きまくることができたけど、この第2調理室がクラブルームで良かったと思う。

 お勉強ってお腹が空くよね。

 フォリ中尉達と一緒に行ったサンリラ旅行では車内のミニキッチンスペースに色々と揃っていたけれど、余ったシロップとか真空パックのゼリーとか、好きに使っていいと残りは全部くれたので、今、第2調理室ではストックしてあるお菓子にかなりゆとりがある。

 だけどリキュール等のお酒類は一つもくれなかった。風味づけに使うだけだから心配ないと言ったのに、フォリ中尉は信用してくれなかった。地味にケチだ。

 クラブ出納帳の出費を見ればほとんどお菓子や間食の買い出しで終わっている気がするけど、学校長が構わないと言ってくれたからいいことにする。

 つまり何が言いたいかというと、食費以外の支出がないと、うちが本当に調理クラブになってしまうということだ。


「たしかにクラブ予算、食べ物ばっかりだし、ここはもう苗とかどどんっと買ってもいい気がする。プラムとかさ。もう実が生るぐらいに大きな苗を植えたらよさそうだよね」


 私はマーサの鉄分補給も考えてあげたい。やっぱり長生きしてほしい。なんといっても私にとってマーサはサルートス国でのお母さん。

 だけどマルコリリオは反対意見だ。


「ねえ、アレル。まだレタスやピーマンは誰も勝手に取ってかないかもしれないけど、さすがにそれはみんなが盗み食いするんじゃないかな」


 そのまま採って美味しく食べられる果実は盗まれやすいと、マルコリリオは主張する。

 そうかもしれない。犯人を捕まえてみたらアレンルードとかいうこともありそうだ。 

 いいけどね。お店で買えばいいだけだし。


「じゃあ、すぐに食べられないものならいいんじゃないかな。クルミとかアーモンドとか」

「残念。この辺りの気候だとクルミは向かない。諦めて食べたい季節に買ってくる方が確実だよ、アレル」

「リオが言うならしょうがないや。だけど葉っぱ野菜を育てるのに飽きた気がする」

「アレルっぽいよね。そんなに虫が怖いならちゃんと洗ってあげるから」

「こ、怖いわけじゃないもん。だけどいきなりもわもわーって出てくるんだよ? 誰だって驚くよ」

「はいはい」


 マルコリリオもクラブの自由になる地面を少しもらったことから何やら育てていたけれど、レタスとかの間にいる虫にびびったのは私だ。あそこまで虫がたかってるとは思わなかった。

 いつも売られているのを買ってきていたから、せいぜい見つけるとしても数匹程度だったのだ。あそこまで多いとさすがの私だってびっくりする。

 だけど同じ学年でも私は一番年上だ。ここは年長者の威厳を見せなくてはいけない。


(リオってばおとなしそうなわりに、平気で虫もぷちっとしちゃうんだよね。実はけっこう冷徹ボーイ?)


 私はふぅっと優雅にお茶を飲むことで、みんなの憐れむような空気を入れ換えることにした。


「不思議なことに一通りコーヒーや炭酸とかも飲んでしまうとレムレム茶に戻るよね」

「そうだな。がぶ飲みできるっていう意味でレムレム茶、偉大だ」


 私の呟きにベリザディーノが同意する。そして、だばだばと自分のカップにレムレム茶を注いだ。

 レムレム茶はレムレム茶という商標で売られているお茶だが、一袋を鍋やケトルで煮だすだけのブレンド茶だ。

 カフェインが入っていないし、がぶ飲みしても問題なく、赤ちゃんにだって安心して飲ませられる。

 炭酸で甘くなった口内を洗い流すかのように、みんなもレムレム茶に手を伸ばした。

 すると広げておいたノートがみんなの目に入る。

 私は勉強していた内容に話を戻した。


「でね、後でもう一度、数字を変えて問題解けば大丈夫だと思う。違うことして気分を変えても覚えてたら自分なりに理解したってことだからね。その間に地理やろうか。この間、古城に行った時に城主さんにもお話聞いたから、ちょっと私、ラグーン平野詳しいよ。試験には出ないけど」

「なあ。それ、意味あるのか?」

「駄目だなぁ、ディーノ。知識には深みがなくっちゃ」


 せっかく教えてもらった雑学ネタなので披露してみたかった。いつかクラブメンバーが興味を持ってあの古城へ泊まりに行った時、その記憶でもって深い感慨を覚えることだろう。

 私は観光ガイド的な役割をしたことになるわけだ。

 古城の所有者(オーナー)もお喋り好きっぽいから喜びそう。なんだか古城っていうとお年寄りとか、ロマンチックな何かを求めてるカップルとか、その価値を理解してくれないぐらいに小さなお子さんとかにげんなりしてたっぽいし。そしてついに子供がはしゃぎすぎて古城内で飾られていた物を壊したことから、現在はお子様宿泊をお断りとしたのだとか。

 すると自分なりに計算式を確かめていたダヴィデアーレが、くくっと笑った。


「アレルの深みは、どんよりとした深みだからな」

「失礼な。私の中身は南国の海のように澄んでいるというものを」


 私がみんなの先生役をしているけど、こうやってみんなを教えていると、次のテストでは私がうっかりミスしてみんなの方が点数高いことになったりしそうだなぁと、ちょっと不安だ。

 別に上位成績をキープしなきゃいけないわけじゃないからいいんだけど。


「だけどなあ、アレル。これでまた試験前にも試験勉強するんだろ? このままいくと満点狙えるんじゃないかと思い始めてきたぞ、僕は。家では全く勉強してないってのに」


 ダヴィデアーレは、どうやら自宅で何かの抽出に励んでいるらしい。だけど失敗続きのようだ。

 自分なりに調べてやっていることだから口出しするものじゃないと思って、私も詳しいことは聞かなかった。先生にも相談しながらやってるらしいし、そうやって自分なりに考察し、トライすることが自主研究だ。

 失敗を繰り返しても続ける根気や考察はいつかその人の血肉となる。


(成功したら教えてくれるかな。リオもハーブどころか、色々な植物に手を出してるしね)


 成人病予防研究は色々な解釈ができる分野だ。派生した研究内容ということにしてしまえば自分が興味を持っていることをかなり追求できてしまう。

 私がファレンディアの小説を読むのだって脳のトレーニングだから大事って言い張れるように。

 今、早口言葉検定を私はみんなに受験しようと提案しているが、それもまた脳のトレーニングという理由で受験料をクラブ費用から出そうと目論見中だ。学校長先生からも了承されている。


「いいんじゃないの? 私だっておうちでお勉強なんてしてないよ。おうち時間は好きなことして遊ぶ為にあるんだもん。ダヴィだって本読むなら貸したげるよ」

「やめといた方がいいよ、ダヴィ。アレンによると、アレルが読んでる本ってばとってもいかがわしい本ばかりだってことだったから」

「あのフォトブック見た以上、僕もそれは予想してた。うん、アレル。本はいいよ、気にしないでくれ」

「ひどい。うちの兄は私を理解してないだけなのに」


 せっかくファレンディアの小説を貸してあげようと思ったのに。エロエロな本を読もうとする熱意が語学力を高めるというのに。

 だけど仕方がない。あまり粘っても私が責められるだけだ。

 最近、みんな怒りっぽいっていうか、すぐに私のこと悪いって決めつけてる気がする。特に寮監先生とか、アレンルードとか。

 そんなことを思っていたら、マルコリリオがくすっと笑った。


「どしたの、リオ? 本当はダヴィとレイド、私の本借りたいのお見通しだったりした?」

「ううん、それはない。ただね、なんか不思議だなぁって思って。だって普通、こんな風に学校の部屋とかって使えるもんじゃないのに僕達ができるのってなんでかなぁって思ったら、僕達、上級生がいなかったんだよね。普通なら上級生に気兼ねして、こんな感じでクラブルーム、自習室みたいな感じで好きに使えないし」

「そうだな。更に僕達、顧問がいないこともあるんじゃないか? 顧問がいたらどうしても報告しなきゃいけないとかあるだろうし。あ、そうそう。先生にこの間質問した時に言われたんだが、教師がここに顔を出す時は学校長先生に許可を取らなきゃいけないそうだ」


 マルコリリオが今更ながら気づいた感じで言えば、ダヴィデアーレがそんな情報をぽろっと零した。

 目を丸くしたベリザディーノが、がしがしと頭を掻く。

 

「許可? なんだよ、それ。知らなかった。あー、だけどそうじゃないと先生が来すぎるんじゃないか? だってアレル、何かと作ってるし、しかも言われたら作ってあげそうだしな。

 ま、顧問がいなくても変なもんに手を出してるわけじゃなし、不純異性交遊に励んでるわけでもなし、これはこれでいいと思うけどな。普通は顧問がいてもせいぜい数ヶ月に一回顔を出すぐらいだ。どっちかってっと学校長先生が顧問になってるよ」


 色々な教師を巻き込んで参加型にしている私達のクラブ活動は独特だ。

 マルコリリオが畑を作ってできた野菜を食べきれなかった為、私は教師を巻き込んで

「パンの中に同じベーコンと目玉焼きと野菜を挟んだ軽食を毎日夕方前に提供します。但し、それに使う油は植物性のサフラワーオイル、豚からとった動物性のラード、バターなどそれぞれ違うものを使用するので、自分が好きなものを選んでください。一度選ぶと油の種類は変更できません。その代わり一定期間経過後の増加した体重や皮下脂肪を調べさせていただきます」

というのをやって、体重や数値の増減分だけプラスマイナスで表にさせてもらった。

 残業で居残ったり、他のクラブ顧問をしたり、独身だったりする教師達が参加してくれたが、ラードを使ったまさに豚肉だぜってタイプを選んだグループが数値としては良好な結果が出てしまった。

 基礎代謝が違うからかもしれない。


(ラードを選んだのって体をハードに動かす体育会系クラブ顧問がほとんどだったもんなぁ。やっぱりカロリー消費量が違うってか。だけど植物油を選んだ人がカロリーを使ってないかというとそうでもないと思うんだよね。そういう体型や生活リズムも考えなきゃいけないかな)


 動物性油脂だからこそ蛋白質と相まって何らかの影響を及ぼすのかもしれない。

 キセラ学校長はこういった取り組みを私達がし始めて、けっこう教師達の顔色が良くなったとか言っていた。

 ちょうど甘いものが欲しくなる時間帯に提供される新鮮野菜とベーコンを使った軽食。ベーコンじゃなくてチキンな時もある。ヨーグルトだけじゃなく、たまにポテトを揚げたものとかもついてくる。その揚げ油もハーブオイル配合とか、ラードオイル配合とか、どこまでも選んだ油に寄せてみた。

 飲み物は違いに影響しないようにレムレム茶にしておいたが、男女の違いも出るのかもしれない。

 マーサには健康にいいお茶とか、みんなで育てたフレッシュハーブで作ったあれこれとか試してもらっているけど、あのたわんとして優しいお腹がすっきりしてきている気がする。


「あはは。学校長先生、ちょくちょく来るもんね。だけどアレル相手に不純異性交遊ってどうやるのかな。なんか僕、男子寮でアレルに汚染されちゃ駄目だってみんなからくどくど言われちゃったよ。アレルがしょんぼりしていたり、悲し気にしていたりしても、絶対に騙されるなって」

「ひどいですよ、レイド。私によって浄化されたならともかく、なんで汚染かなぁ。あの寮監先生達はちょっとおかしいって私、前から思ってたんですよね。普通、元気がない女の子がいたら慰めるのが素敵な男の子ですよ」


 私の令嬢教育をする前に、貴婦人(推定王妃様)は王子エインレイドを取り巻く寮監達にこそ貴公子教育をすべきだ。明朝のお茶会練習ではそういったテーマを話してみよう。

 

「騙されるってので思い出した。アレル、よく分からんが、別に婚約とかしてないよな? タチの悪い噂だが、ウェスギニー子爵が娘を外国人に売り飛ばして出世の足掛かりにしたとかいう話が出回ってる。レイドの近くにいる唯一の女子生徒だからそんな噂を流されちまったんだろう。なるべく消しといた方がいいと思うんだが、だからって他の婚約するのも違うよなぁ」

「あ、ごめん、ディーノ。父の出世どうこうは間違いだけど、外国人との婚約は本当。私ね、ファレンディア旅行したくて、ファレンディア人と婚約したの。三年間だけだけど。婚約していたら、外国人が乗れない急行とかにも乗れちゃうんだよ。だからなるべく早く旅行に行こうと思って。未成年の内に婚約解消しないと成人したら婚約で終わらないから、次の長期休暇とかの時に行きたいんだよね」


 室内がしーんとなった。

 分かりやすく説明してみたのだが、どうやらみんなはすぐに理解できなかったらしい。

 仕方ないので私はレムレム茶を飲んだ。

 焦って理解してもらうべく説明しても、無駄にヒートアップされて私が怒られるだけなのは、とっくに経験済みだ。

 ここは理性的にいく。

 

「ちょ、ちょっと待って。アレル、ちょっと待って。えっと、その、三年間だけ婚約って何なの、それ。しかも旅行の為に婚約って、そんなのできるの? 婚約届って子供が出した時は審査が凄いって僕聞いたことあるよ。あ、そりゃ貴族だと違うのかもしれないけど」

「いいや、リオの言う通りだ。アレル、非常識に生きているのは勝手だが、法を無視しても無理なものは無理だぞ。貴族の婚約届、しかも未成年となれば双方の家に対して調査が入るし、個別面談も行われる。一般人のそれよりも厳しい。貴族の血が欲しいばかりにそんなことを未成年に行ったとしたら人身売買と言われても反論できない。こんな短期間で認められる婚約届はあり得ない。だよな、レイド、ディーノ?」

「そうだよ、アレル。サンリラでバイトしてたのは聞いたけど、それで旅行に行きたくなったの? だけどだからって婚約なんて、ウェスギニー子爵だって許すわけないよ」

「全くだぞ、アレル。いくらビーバー生活してるからって、貴族の婚約届をなめるな。もしかしてアレルがあの噂を流した張本人だったのか? 婚約届がどんだけ難しいかも知らずに何てことやらかすんだ。動く前にまずは相談しろ。自分が非常識だって自覚するんだ」


 わたわたするマルコリリオはいつものこととして、ダヴィデアーレは軽く馬鹿にしてきて、エインレイドは眉間にしわを寄せ、ベルザディーノは説教をかましてきた。

 なんということだ。

 私はフォリ中尉を恨まずにいられなかった。

 誰だって貴婦人(推定王妃様)に暴露したら、その貴婦人の息子であり、フォリ中尉にとっても従弟にあたる王子エインレイドに話してあると思うじゃないか。そうしたら今だって私の味方をしてくれたに違いないのに・・・!

 わざと黙っておいて私から説明させようとする人しかいないのか、サルートス国。どうして清く正しく生きている私ばかりがいじめられてしまうのだろう。

 仕方ないので、私はみんなに説明することにした。


「まずは聞いてよ。話せば長いことながら、私には亡くなった母がいて、母は独身の時にファレンディア国に旅行に行ったことがあったんだよ。そこでファレンディア人の女性と知り合って友達になって、その後も文通とかしてたんだ」

「へえ。やっぱりアレルの性格と行動力ってお母さん譲りだったんだね。旅行でファレンディアに行くなんて凄いや。羨ましい。僕、尊敬するよ」

「へ? なんで?」


 何故かマルコリリオが目をキラキラさせて身を乗り出してくる。


「何言ってるんだか。ファレンディア旅行って言ったら、普通の外国旅行の二倍はするって有名じゃないか。滞在先ホテルも入国時に書かなきゃいけないから、前もってホテルも予約しておかないといけないし、かなり面倒くさい国だって。それぐらいなら違う国に行く人の方が多いのって当たり前だよ。今は昔より安いだろうけど、少なくとも旅行費用、200ローレ (※) はいると思うよ? 陸続きの外国なら数十ローレ程度なのに。なんかの時にね、幼年学校の先生がいつかあの国の本が欲しいとか言っているのを聞いたことあるんだけど、旅行で行くなんてお金がかかりすぎるから貿易会社に頼んでその本を買ってきてもらうしかないなってぼやいてた。あの国に旅行に行く人ってよほどお金と時間がある人だって話だよ」

「・・・そーだったんだ」


(※)

200ローレ=200万円

物価を考えると貨幣価値は約1.5倍として300万円

(※)


 懐かしい祖国だが、私は外国からあの国に入国したことがない。隔離されるということだって、優斗(ゆうと)に聞いて知ったぐらいだ。

 滞在先まで書かされるのか。もしかして荷物チェックもあるのだろうか。

 国民にとっては暮らしやすい国だが、外国人がいつかない理由が改めてよく分かった。


「って、アレルの母君って天涯孤独で働いていたって聞いてたけど、それでもかなりお嬢様だったんだな。船旅に一人で乗る女性客はまずいないから、少なくとも二人で行って、400ローレは必要だったわけだろ? わざわざそんな海外旅行にそこまでぽんって出せるなんてさ」

「え? ちょっと待って、ディーノ。なんで一人で旅行しちゃいけないの? 旅行なんて一人でふらりと行くもんだよねっ?」


 ファレンディア国の公共交通機関は国営だったので、年齢に応じて毎月一定金額分がカードに入り、その金額分なら交通機関を自由に使えた。無料金額分をオーバーしたら自腹だ。だから私も「ぶらり近くの駅めぐり旅」とか、毎月分を使い切る感じでよくやっていたものだ。

 初めての店にふらりと入り、気軽に適当なものを注文してみる。時にはハズレな店もあるが、意外な所に意外な名店を見つけることもできるミラクル。迷子になったら、通りすがりの人に近くの駅はどこかを尋ねればいい。

 たまには親切に案内してくれる人もいて、そこで僅かな時間を共有しながらも駅が見つかれば離れていくという無常に、人は出会いの価値を知るのだ。

 誰かをそれに誘うと、

「せめて行き先と宿泊先を決めてからにしてっ」

と、怒られるだけだから、誰もが一人で旅に出る。それが人生。


「何を言ってるんだ、アレル。たとえビーバーでも子爵家令嬢の身分を持ってる以上、非常識なこと言うんじゃない。

 いいか? 通常、長い船旅や旅客車の旅行なんて、女性はまず一人で乗らない。一人で乗るというのは、一夜の客の相手をしてお金をもらう女性だと思われかねないからな。

勿論、一人で旅行する女性もいないわけじゃないだろうが、トラブルがあっても男女関係トラブルだろうといい加減な対応になるのがせいぜいだ。だから一泊や二泊程度ならともかく、一週間以上を要する乗車・乗船が必要な旅行に女性が一人で行くことはまずない。

うちだって女性は働いているが、遠隔地に派遣するのは常に男性だ。女性を派遣しようとすると少なくとも二人は必要で、更に女性だからとトラブルになった時のことを考えて男性も同行させなきゃいけないからな。つまり、男なら一人で行かせればすむところが女だと三人は必要になるんだ」


 きっぱりとベリザディーノに言われ、私は創作話をいささか修正しなくてはならないと知った。


(仕方ない。リンデリーナマミーはお友達と一緒に、おんな二人旅で行ったことにしよう)


 父や叔父からそのあたりを指摘されなかったのは、恐らくその程度のお金なんてホイホイ出せる人達だからだろう。そして旅行慣れしていることがある。軍人女性ならたとえ一週間以上の海外旅行でも一人で乗りきるだろうし。

 思い返せば父も叔父も、正しい意味では庶民の経済感覚を知らないのだ。大体、売れば50ローレになるガラクタを娘が手に入れたと知っても、売りたければ売ればいいし、遊び道具に使うなら好きにしなさいと言う時点で普通じゃない。

 思い起こせば祖父母と一緒の日帰り家族旅行だって、家族水入らずとか言いながら、お世話する人や運転手が同行していた。

 私が暮らしている家だってしっかりしているけれど、子爵邸になると住み込みの使用人もいるし、色々な人が働いている。そりゃ移動時だって平然とお供の人を連れていくだろう。

 だからその不自然さに祖父母や父、そして叔父は気づかなかったに違いない。


「そうだな。親から相続したのか、資産は持っていたものの、それでは財産狙いの者に目をつけられる。だからあえて働いておられたんだろう。それをアレルの父君が見出してプロポーズされたんだな」


 ダヴィデアーレがなるほどと頷いているが、未だに亡くなった時のことを教えてもらっていない私はコメントできない立場だ。母がいたのは知っている。亡くなったのも知っている。私が知らされているのはそこまでだ。

 せいぜい残されたフォトと絵画だけだろうか。死因については誰もが口を閉ざし、どうにか口を開いたら病死だと言うばかりで、どうやら叔父が皆に、私が傷つくようなことは口にするなと命じたことが関係しているらしい。


(レンさんから説明してもらってるなんて言えないしなぁ。おっとりしたフィルちゃんは、ここはやはりマミーの顔を忘れてもマーシャママに愛されて育っていることだけ分かっているスタンスでいいと思うのだよ。わざわざ悲しい過去を掘り返さなくても、覚えている人が愛し続けることはできる。娘を守ろうとした優しい人だったって、私も知ってる)


 なんでも父のフェリルドは仕事で身も心も疲れきっていた時、一杯のコーヒーを飲もうと目についた店に入ったそうだ。仕事帰りの父はシャツもよれよれでくたびれきっていたけれど、そんな父にカフェで店員をしていたリンデリーナは、ゆっくりと(くつろ)げそうな席を案内し、疲れきっている父に美味しいコーヒーだけじゃなく、濡らしたミニタオルも渡してくれたらしい。きっとほっぺたにインクの跡でもついていたのだろう。

 礼を言うフェリルドに優しく微笑むリンデリーナ。その時、二人は運命を感じた。

 そして一目惚れした父は、後日正装してカフェを訪れ、改めて交際と結婚の申し込みをしたらしい。

 偶然にもその日、噂好きな貴婦人達がその店を訪れていたのでその話が広まったとか。

 おかげでダヴィデアーレとベリザディーノもその話を知っていた。王子であるエインレイドと、平民のマルコリリオは知らなかった。私も知らなかった。


(店員の兄ちゃんの顔なんて仕事帰りの私ならまず見てないってのに。ついでにたかがコーヒー一杯の客の顔なんてのも私ならいちいち見ないな、うん)


 その時、父と母には運命のインスピレーションが煌めいたのだろう。

 私なら結婚の申し込みをする前に、価値観と経済観念と趣味のすり合わせをした上で借金の有無を聞き出さなくてはならないところだが、運命の稲妻が二人の間に流れたのであれば仕方がない。

 普通ならいくら金持ちそうでいい男でも、お付き合いも何もしたことない男からのプロポーズなどお断りするのが当たり前だと思うのだがサルートス国人はサルートス国人だから仕方がないのだ、きっと。

 自分達はそんな運命の出会いで結婚を決めたというのに、一人娘(わたし)の結婚相手は徹底的に調査した上で幸せになれる相手を選ばなきゃねと言ってくる父は、私を愛しすぎている。

 父の中で私と優斗との婚約は、三年後に完全解消されるものとなっていた。しかも父は、どうやら婚約していると言えば私に余計な婚約話を持ち掛けられなくてすむからいいかと考えているようだ。

 そんなことを祖父が言っていた。

 結婚相手として優良物件なフォリ中尉やネトシル少尉を婚約するかもしれないという感じで一緒に出かけさせておきながら、父は彼らを虫除けとして使い、外国人の婚約者ができた今は今までの虫除けも虫扱いして排除する気である。

 いやね、もう。父ってば私を愛しすぎてて、どうしようもないんだから。


「それはともかくとして、だからどうしてアレルが婚約するとかいう話になったの?」

「あ、そうそう。でね、私、母の日記を見つけて、そのことを知ったんだけど、顔も覚えてない母のお友達ってどんな人だったのかなって、ファレンディア語を勉強してお手紙書いたの。母のことを教えて欲しい、私は覚えてないからって」


 どこか()かす口調のエインレイドに、続きを話し始めた私だが、そこで一気に皆の表情が固まった。

 ここは感動するところだと思うのだが、どうして悪いことを言わせてしまったと言わんばかりの顔になるのだ。まあ、いいけど。


「そしたらお手紙を受け取ったファレンディア人のお友達はね、弟さんがちょうどサルートスに行く用事があるから、サルートスでお手紙を郵便に出してねって預けたみたいなの。

 だけど弟さん、気を利かして直接会って渡そうと思ってくれたみたい。その方が、私がどんな子だったとか、お姉さんに話せるからって。

 ところが私、サンリラにいてさ、無人のおうちを訪ねてきた弟さん、私に何かあったんだろうかってなんかもうあっちこっち通訳の人と尋ね歩いて十日間近く無駄足踏んだみたいなんだよねー、あははは」


 郵便物を外国から出すより、その国で出した方が早く到着する。当たり前だ。

 優斗はバーレンが国立サルートス習得専門学校で勤務していることをご近所から聞き出し、そちらにも乗り込んだ。

 ゆえに成人してからかつての弟から逃げきろうと思ったら、バーレンは役に立たない。私の愛情を理解しているあの子は本気で私と結婚するよう画策しかねないのだ。

 上等学校と隣接しているとはいえ、どこまで情報が伝わっているか分からないので、私はみんなが納得するように話しておく。

いざという時は王子に協力してもらって私だけは逃げきらなくては。大公家の息子は駄目だ。兵器一つで買収される。

 うん、矛盾はない。


「でね、私ってばサンリラでバイトしていたけど、それ、上等学校に問い合わせが来てたみたいなんだよね。それで私がサンリラにいるって知った弟さん、実は私が休日は働かされている可哀想な子なのかなって変な誤解したみたいで、サンリラに来て私を見つけ出したの。

 まあ、そのあたりの誤解で色々とあったんだけど、そういうことなら一度ファレンディアにあるそのお姉さんちに行って、そのお姉さんと私の母とが一緒に埋めたタイムカプセルを掘り起こしてみましょうねって約束したんだよ」

「タイムカプセル?」

「そう。ディーノ、知らない? たとえばみんなが将来の夢とか目標を書いて、封をして缶に入れてしまって、それを地面とかに隠すの。いつか母が訪ねてきた時に見ようって、そのお友達の人の家で、開けずにまだ置かれてるみたいなんだ。だから旅行で行きたいんだけど、そこで問題が出たんだよ」

「問題? 何かあったのか?」

「うん」


 こういう時、ベリザディーノはノリがいい。なんだなんだと聞いてくれる。

 だから私は大切なことを、ここで言おうとした。


「実はさ、ファレンディア国に外国人が訪れた時、問題ない人なのかどうかのチェックで10日間近く隔離されるんだって。たとえば思想的に危ない人じゃないかとか、変な犯罪者じゃないかとか、そんな感じで。

 だけどね。たとえば外国人がファレンディアに婚約者がいたりして、それで訪ねてきたなら隔離期間無しに入国できるんだ。

 それでね、その母のお友達の弟さん、独身だったの。しかもまだ当分、結婚予定もないって話なんだ」

「・・・ビーバー、お前って奴は」


 そこで皆も察したらしいが、私の名前も忘れるベリザディーノこそが嘆かわしい奴だ。誰がビーバーだ。

 父が呼ぶ「ウサギさん」には私への愛が溢れているというのに、ベリザディーノの「ビーバー」には全く愛が感じられない。

 それなのにダヴィデアーレも、額に指先を当てて目を伏せている。


「アレル。それは偽装婚約といって、まともな子爵家令嬢のやることじゃない」

「ダヴィってば、そこまで言ったらアレルが可哀想だよ。

 えっと、アレルってば本当に凄いね。チャンスがあったら逃がさないっていうのかな。僕、貴族のお嬢様って華やかで微笑みながら男の人に命令するイメージがあったんだけど、そんな先入観が恥ずかしいよ」

「道理でみんな、アレルみたいな結婚観を持っちゃいけないって僕に言ってたわけだ。旅行日程を短縮する為に婚約するだなんて初めて聞いたよ。アレル、ウェスギニー子爵はそれ知ってるの?」


 明るく言ってくれるのはマルコリリオだけで、エインレイドの口調も冷たいものになっていた。

 みんな深く考えすぎだよ。

 そりゃあね。私だって相手が優斗じゃなければ了承しなかった。

 だってあの子、暴走させる方が怖い子なの。それぐらいなら私と交流する理由がある状態に置いておいた方が安心っていうの、当然のリスク管理だと思う。

 たとえば恋愛関係でもストーカーみたいな人がいるとして、完全にシャットアウトするなら居場所不明な状態にまで逃げてからじゃないと、ある程度の接点があるのに遮断状態に持っていったら、いきなり思いつめての凶行に走ったりするよね?

 それと同じってこと、あると思う。

 優斗の場合、私に危害は与えないけど、他の人の社会的生命を傷つけそうなところが信用できない。

 

「うちの家族はみんな知ってるけど、もう旅行が終わったら解消するから仕方がないって思ったみたい。どうせサルートス国で婚約届は出さないし。出すのはファレンディア国だけ。だって私、あの弟さん、好みじゃないんだもん。私、結婚するなら叔父みたいな人って決めてるの」


 ここでもう税金がどーだのこーだのは出さない。節約がどーのこーのも言わない。

 私は学習する女だった。

もう脱税だとか密輸だとかで責められるのはごめんだ。


「別に十日間の隔離って言っても、部屋から出られないわけじゃないんだろ? それも旅行の内の一つだろうに」

「駄目だなぁ、ダヴィ。そりゃ散歩もできるし、それなりに自由はあるけど、食事は食事代、払わなきゃいけないんだよ? そこまで高くないって言っても、隔離されている間の宿泊費も取られるんだよ?

 私、それぐらいならさっさと入国して美味しいお店に行きたいよ。当たり前でしょ? だってその母のお友達のお姉さんちに泊めてもらえるんだもん。客室あるし、好きなだけどうぞって言われたもん」

「そのお友達とやらだって家族がいるだろうに。そこの迷惑は考えた方がいいと思うぞ、アレル。せめてホテルを取るべきだろう」

「大丈夫。だって母が泊めてもらったおうち、別宅だから。本宅は別にあるから平気だよ。手土産ぐらい持ってくつもりだし。それにその母のお友達、結婚してないって話だったもん。独身女性のおうちに行くだけなら問題ないよ」

「ああ、そういう・・・。それならいいのか?」


 うーむと考え始めるダヴィデアーレはとても真面目だ。


「ちょっと待って、アレル。あっちの国でしか出さないって言っても、そのお母さんのお友達の弟さんだって結婚とかするかもしれないでしょ? 大丈夫なの?」

「大丈夫だと思う。婚約は長くて三年ってことで三年後の解消届も書いたけど、早めに旅行に行って戻ってくればその時点で解消してもいいわけでしょ?

 私、冬の長期休暇に旅行に行きたいっておねだりするつもりなの。そうしたら半年で解消ってことになるし。今はちょっとおねだりできる状態じゃないけど、冬になったら落ち着いてそうだよね?」


 心配そうなエインレイドだが、私は完璧な計画を立てた。

 普通の旅行と違い、優斗に船で迎えに来てもらえば渡航費用は無料。滞在費用だって、あの家は元々私のもの。必要なのはせいぜい祖父母や父や叔父や兄に買ってくるお土産代金だ。

 どうせファレンディア国にいるかつての父は忙しい人だし、使わない家が使用されていても気づかないだろう。

 

「え。ちょっと待って。アレル、まさかおねだりできる状態じゃないって、実は他にも何かやったの?」

「やってないよ。他にもって、やだなあ、リオってば。

 ただね、ほら、うちの祖父母にはバイトすることも話してなかったから、それでちょっと怒られちゃったの。祖父母のご機嫌取りでうちの父と叔父、今、とってもとっても忙しいんだよ。だからもう旅行については冬になってから言おうかなって」


 私は空気を読む女だ。

 最近、私が家にいる間はうちの通話装置がオフにされ、門の呼び出しボタンも家の中からオフにされていることには気づいていた。マーサからも、外で誰が騒いでいようが出ていってはいけませんと、しつこく言い聞かせられている。

 恐らく税関事務所で見せた私の才能に惚れこんだ人が多発したのだろう。だけど忙しい職場はごめんだ。

 ゆえに私はいい子でおとなしく過ごす。

 うん。今、何かを言おうものなら祖父によって監禁される。

 永遠の二十代にして豊富な人生経験を持つ私には分かっていた。今は耐え忍ぶ時なのだと。

 

「いやいや、何事も早めに言っておけ。

 いいか、アレル。ビーバーには分からんだろうが、冬の長期休暇だって生徒同士で招待し合うこともあるし、上等学校に通い始めれば色々なお付き合いも始まるもんなんだ。秋のダンスパーティで仲良くなった生徒同士のお付き合いとかな。

 家の人がそれで約束したりするかもしれないだろ? ちゃんと言っておけ。せめて双子の兄には言っておけ。人間社会には人間社会の常識があるんだ。川で泳いでりゃいいお前とは違うんだ」

「分かってないみたいだけど、うちの兄より私の方がしっかりしてるんだよ、ディーノ」


 ベリザディーノが私の両肩をがしっと掴んで揺さぶってくるのだが、このクラブメンバーが誰と仲良くなってお付き合いできるというのか。王子様を巻きこんではならないからと、変な約束もできない状態だろうに。

 私達は王子様の学友としてはランク落ちとして考慮されてなかった、いわゆる学友候補落選メンバーだ。

 それこそ上等学校から始まる生徒同士のお友達付き合いを始めた途端、第二王子エインレイドと親しくなれるような口利きをしろとか、仲間に入れろとか、そういった要求を突きつけられるだろう。

 だけどベリザディーノにしてもダヴィデアーレにしても、自分の兄に遠慮して箸にも棒にも掛からない程度を心がけているだけで、かなり根性はあるタイプだ。経済軍事部を選ばなかったのも、王子様のご機嫌取りをして生きていきたくなかったのだろう。


(そんな子供の内から貴族同士のお付き合いとか言ったところで、喧嘩したら終わりだと思うんだよ。それぐらいなら大人になってから上っ面のお付き合いし始めるってので十分。そう、今は私の問題だ。あのウミヘビに関しては口をつぐまないと四人共何を言い出してくるやらだよ)


 父と叔父が忙しいのは祖父母を相手にしているからではなく王城に詰めているからだが、これ以上を話すとぼろが出る。

 ここで兵器にもなる水泳グッズをせしめたとか、税金を払いたくなかったとか言ったら説教の嵐だ。祖父とフォリ中尉だけでもううんざりだっていうのに。

 だけどさ、私は悪くないよ。

 誰だって真実を知れば私を責められないよ。

 だって倉庫にあるものでしょ。つまり父の所有物にして不用品でしょ。本来は私が持ち出したところで問題ないものだったわけでしょ。それを私が死んでるからって、弟が私に渡すわけでしょ。

 それをどうして他人にお金を払わなきゃいけないのってことだよ。親や弟のものを好きにして、どうして怒られなきゃいけないの?

 誰だって自分ちの屋根裏部屋にしまっておいた物を外に持ちだそうとして、「持ち出したければ村長にお金を払え」とか言われたらムカッとくるよね? だって自分の物なんだから。

 そういうことだよ。今は赤の他人という関係だから婚約関係にありますよってことにしたけれど、そもそも他人にどうこう言われるものじゃなかった。それだけなんだ。


「だけどさ、結婚できないって分かっている未成年の時だけ婚約して、旅行が終わったら解消ってアレル、ひどくない?」

「ひどくないですよ、レイド。だってあっちもそれでいいって言ったし。だけど父はいくらウソ婚約って分かっててもショックだったみたいだから、冬になるまでは父に甘えることにして、冬になったらすかさず旅行に行って帰ってくればいいかなって」

「それ、アレンも行くの?」

「ルードは行かないですよ。だって兄はファレンディア語を話せないですからね。何より私の不在をごまかす為に兄を祖父母の所に差し向けておかないと。今から冬になるまで父と叔父には甘えまくって、旅行の了解と不在をごまかしてもらう協力をとりつけないとまずいかなって計画中だったりするんですよね」

「ああ、うん。アレルってば本当に根性あるよね」


 うんうん。エインレイドが納得したところで、後日、あらためて父に対する説得の協力依頼を出すことにしよう。王子様の加勢があれば父も頷くに違いない。


「火のない所に煙は立たないもんだが、ウェスギニー子爵家を知れば知る程、僕は噂というもののいい加減さを知らずにはいられない」

「僕もだ、ダヴィ。アレルのお父上が気の毒すぎてたまらない。ウェスギニー子爵、どれだけ言われてると」

「えーっと、アレルのお父さん、とてもスタイリッシュな人だよね。だけどこれだけアレルが自由にできるんだから、いい人だと思うよ」


 普通に父は子煩悩で素敵な人だが、それゆえに妬まれてしまうのか。色々と悪い噂があるそうだ。

 きっと色男の宿命なのだろう。




― ☆ ― ★ ― ◇ ― ★ ― ☆ ―




 国立サルートス上等学校に隣接して、国立サルートス習得専門学校があり、父の友人であるバーレンはそちらで勤務している。制服を着ていれば上等学校生でも敷地内に入ることができるし、バーレンの研究室へも通行身分証があるから私は行くことができた。

 バーレンの研究室は、私の縄張りの一つだ。バーレンは私を個人秘書だと勘違いしているが、彼の危機管理能力が怪しすぎて心配になるから諦めて面倒を見てあげていた。


「レンさん、もう新学期用に全部入れ替えちゃうよ」

「ああ、頼んだ。あと、もう付き合いがなさそうなのは要らないと思うんだがな」

「そう思って処理した十年後とかにひょんなことからその人に師事したとか、そういう人が出てくることがあるんだよ。スペースがないならともかく、そうでないならあまり使わない場所に保管しとくといいよ」

「そうか。じゃあそれで」


 そして私は予定表を新しく書き直す。いつの間にか知人も増えているようなので、そのあたりも人物ファイルに加えていった。

 バーレンは私の淹れたお茶を飲みながら何やら机に向かっている。


「お前さんが送り迎えされているのは安全っちゃあ安全なんだが、夜まで付き合ってもらえないのがネックだな」

「しょうがないよ。なんか私達、税関事務所で目立ったみたいでしょ。おかげでうち、夜間の通話装置も呼び鈴も全てオフにされてるよ。もう誰とも接触するなって感じ」

「大変だな。だが、親に相談せず婚約を決めちゃうような娘だ。そりゃ仕方ないか。変な勧誘に引っ掛かってくれたら目も当てられん」

「あれは私なりにユウトの暴走を止める手段に過ぎなかったというのに」

「まあな。だけどやっぱり言わなくても気づいてたんだろ。そうでなきゃあそこまでやらんさ」

「うん。どうもそうみたい。あまりにも私が私らしすぎるってんで、もしかしたら情報を集めて作り上げられた諜報関係者かとか思われてたみたい。その時は持ち帰ってカスタマイズすればいいかとまで考えてたんだって」

「・・・違う意味でも怖すぎるだろ」


 だから言ったではないか。あの弟は危険だと。

 亡くなった姉と同じようなクセを持ち、似た仕草や反応をする外国人の少女を工作員だと判断し、都合よく洗脳すればいいとまで考えていたって何なのだ。

 さすがに私自身しか知らないことを知っていたので受け入れてはくれたが私は婚約解消後、つまりサルートス国での成人を迎えたら早めに誰かと結婚しないとまずいのではないかと、そんな恐怖さえ抱いている。今度はかつての弟から逃亡する為に偽装結婚しなくちゃいけないのだろうか。


「そういえば賄賂はどうなったんだ?」

「それがね、ユウトからサルートスの配達事故率聞かれたんだけど、調べてみたら高額品って結構盗まれることあるみたいなの。そしたらもう誰かに持っていかせるって」

「へ? ああ、そうか。私物扱いなら高額品輸送の保険も掛けられないもんな」

「うん」


 私も色々と考えていた。

 あの時、私は優斗を守ることしか考えていなかった。それは徹底されなくてはならない。

 ファレンディア国人の優斗が、サルートス国子爵家息女を誘拐したという事実などあってはならないし、ちらりとでも噂が立つこともあってはならないのだ。


「なんだ。じゃあ発送せずに持ってきてもらえるわけだ」

「うん。聞いたら今のウミヘビってかなり攻撃能力もあるらしくって、その場で詳しく説明できる技術者に運ばせるって。だからレンさんに通訳仕事、依頼されるかも」

「どうだろなぁ。そういう時は国か軍が使ってる専門の通訳が呼ばれるんじゃないか?」 

「寮監先生達に渡すだけなのに、そんな人を呼ぶかなぁ。お祖父ちゃま達に心配かけないように誘拐されたとかいう話を揉み消してくれる為の賄賂なんだよ? 渡す時には沈黙誓約書書かせなきゃいけないのに」


 その時はフォリ中尉に協力してもらうつもりだ。あれだけトビウオに興味を持っていたフォリ中尉だから、もっといい製品を提示すればきっと受け入れてくれるだろう。

 他の寮監達を説得する為に、フォリ中尉の権力が必要だ。


「なあ、フィルちゃん。俺もあの時はどうでも良かったから何も考えなかったが、それってあの士官達がそれぞれに密輸した兵器を所有することになるんじゃないか? そりゃ一名は何を持っていたところで国王陛下がいいと言えばそれまでだろうが、他の奴はヤバくないか?」


 言われてみて、私もそういえばと考えた。

 すぐに問題ないという結論に達した。


「別に水中を泳ぐだけに使えばいいだけじゃない? 平和に利用するだけならどんな凶器も凶器じゃないんだよ。ナイフだって人に突き立てるなら凶器だけど、パンを切ったりする分には凶器じゃないでしょ」

「そういう問題か?」

「さあ? そこらへんはフォリ先生に任せるからいいよ。ヴェインお兄さんもパピーに任せるからいいとして、問題はリオンお兄さんと他の寮監先生達かな。だからまずはうちに届けてもらおうと思ってるんだよね。子爵邸よりもその方が私の管理下におけるから。そして誓約書を書かせないと」

「そのあたりはお前さんよりフェリルの方が得意そうだけどな」

「そうかもしれないけど、所詮、うちは子爵家だもん。パピーじゃどうしようもないよ。そこはもう未成年というそれで押しきろうかと」


 いくら父の方が軍では出世していても、貴族としては大公家の息子であるフォリ中尉に強く出られないだろう。ここは私が仕切るべきだ。

 だって私は父を愛している。父にそんな苦労を掛けたくないのだ。


「うーむ。だけど意外だな。それならあのユウトさんが自分で持ってくるかと思ったが」

「うん。そのつもりだったみたい。だけどなんか私の死因を改めて調べ始めて、そしたら手が離せなくなったんだって」

「へ? 事故じゃなかったのか?」

「事故なんだけど、よく分かんない。なんかサルートスに行きたがってる人がいたらしくて、だから持ってくるついでに同行させてあげる約束したら、それでユウトが行けなくなったってんで、もうその人がふてくされて大変だってぼやいてた」


 手紙を一ヶ月に一度送るだけで良かった筈なのに、何故か換金できる小切手が送られてきたのだ。有料公衆通話装置を使う代金用だとか言って。


「それなら、その人に持ってきてもらえばいいんじゃないか?」

「その人は全くのド素人なんだって。ただ外国行ってみたいだけって。どうもユウトの管理下じゃないとまずい人みたいだよ。同行させるのはいいけど、他の人には任せられないって言ってた」

「大変だな。まあ、研究者とかってのは変人が多い」

「そうだね」


 心から同意する。

 

「結局、国際通話までしてるのか」

「うん。それ、しつこく連絡取られそうで怖かったんだけどね。だけどユウト、かなり忙しいらしくて、家に帰ることができるの、三週間に一度みたいなんだ。だから仕事場の方の直通番号に連絡取ってるけど、それでも繋がるのは十回に一回ぐらいかな。大抵は秘書の人が出るよ。だけど時差とかあって、折り返しあっちから連絡しますって言われても、私、昼間は学校があるし、それに夜間はうちの通話装置をオフにしているから、私から連絡とるしかないんだよね」

「そうだな。自分が通話装置を使う時にオンにすりゃいいだけだもんな」

「うん」


 優斗は、今の私は父と二人暮らしだけど父は不在がち、家政婦は通いで朝から夕方まで、そして夜間は全く他人が接触できないように呼び鈴も通話装置もオフにされていると知り、それならいいとか言っていた。

 相も変わらず心が病んでいる弟だ。自分が会えないなら他の誰も会えなくていいとか言い出す弟には、今までも私がいなくても生きてこられたのだから、これからも元気に生きていってほしい。

 それでも優斗は私から通話が入るのを待つのが楽しいらしい。ちょっとしたご褒美に思えるそうだ。たとえ自分が出ることができなくても、私から通話通信が入っていたと知るだけで嬉しいとか言っていた。

 かつての弟がまともな日々を歩んでいるのか、本気で心配だ。


(私は資料を捜すついでに弟の見合いもセッティングしてこないといけないんだろうか。あの秘書さんによると、優斗に好意を持ってる女の人はそれなりにいるという話だったけど)


 そうして半曜日の午後はいつものようにバーレンの研究室でたまった書類を片づけ、作り置きの軽食を冷凍庫に仕舞ってあげて、私は上等学校敷地内の警備棟に行った。

 王子であるエインレイドのついでに送り迎えされている筈が、私一人でも送り迎えがされるようになったからだ。

 私を放置しておくと何をやらかすか分からないという言いがかりをフォリ中尉がつけて、全ての送り迎えが警備棟により徹底されたらしい。用務員をしているネトシル少尉も、優斗がすっぽかした大臣の部下とかが接触してきても厄介だからその方がいいとか言っていた。

 うちの弟、あまりにも目立ちすぎだと思う。

 


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