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超大国無き世界

サツマン・ドラクレシュティ朝:

(島津家とワラキア・ドラクレシュティ公爵家による迭立。

 途中でロシア・ロマノフ家の女系と合流)

十一代 ミハイ3世

十二代 島津年久

十三代 ジョルジュ2世

十四代 ゴーリキー1世

十五代 島津豪久

十六代 ノブスキー

十七代 島津宣久

十八代 コーネフ

十九代 島津興久

二十代 リンツ

二十一代 島津彬久

二十二代 島津久光

二十三代 島津忠義

 目覚めたら自動炊飯器で炊いたご飯とインスタント味噌汁を食べ、テレビで天気予報を見て、スマホで交通情報を見て出勤……という生活から大山雄太(42歳)は一転した。

 此処では、朝寝坊したら永眠直前までぶん殴られて目覚めさせられる。

 身体の痛みと共に薩摩国で大山雄太郎(12歳)は目が覚めた。


「あれ、雄太郎殿随分早かどなぁ」

 母親がガス釜でご飯を炊いていた。

 母親は、彼の転生前の世界では平成という年号の半ばに死んでいた。

 懐かしい。

 だが、昨日も思ったのだが奥に居て出て来ようとしない。

 食事も男衆がしている時は、配膳に専念して一緒には食べない。

(江戸時代みたいな社会だな)

 と思っていたが、ちょっと違うようだ。

 出しゃばらないだけで、奥は女の世界、そこでは割と自由であった。


(俺が中一の頃は、もうスーファミは有ったよな。

 プレステはどうだったかな?)

 だが、この世界は家庭用ゲーム機どころではない。

 テレビは座敷に鎮座してあり、観音開きの扉がついていて、ゲーム用の端子等無い。

 「集成館官営製作所」という知らんメーカー製だ。

 いや、集成館は知っているけど、あそこ遺跡だよな?

 後で調べてみよう。

(なお、このメーカーの花束は薩摩にも伝わっていた)


 テレビジョン受像機というのは、政府が領民に法令や情報を伝える為に所有を義務付けたものだ。

 それでも娯楽番組は存在する。

 番組欄を見ると


・本日の刑場

・家庭菜園講座「甘藷を植える」

・歴史再現劇場「惟新公戦記」露国脱出行

・稚児動画紙芝居「曽我の奇妙な冒険~戦闘潮流~」『源氏の男』

・稚児動画紙芝居「ひっ飛べ、チェスト軍団」『ラーメン軍団の謎』

・風雲武士城


…………いや、なんと言うか…………。

 「本日の刑場」は死刑囚の斬首シーンを余すとこなく、ヘビーローテーションで流しまくる番組。

 その人がどんな犯罪を犯したのか再現ドラマ付である。

 ただ、時代劇で島津公を演じる役者に比べ、こういうドラマに使われるのは「河原乞食めが」と軽蔑され、母親が子供(稚児)を叱る時も

「人買いに売って、河原乞食にしてしまっど!」

 であった。


 なお、こっちの世界でも日本はアニメ大国である。

 一人の漫画家がほとんどのジャンルを開拓し、二人組の漫画家の作品が大人気となり、UFOから変形する巨大ロボットのアニメがフランスで視聴率80%を叩き出したとか。

 なおアルプスの少女のアニメは、この世界の薩摩では

山薩摩(スイス)はあげな牧歌的な国じゃなかどが!」

 と不評だったようだ。




 どうもこの世界は、元居た世界よりも技術が遅れている。

 その理由は、世界的大企業が存在しない事にある。

 調べてみたが、日本という国は独立国として存在していた。

 だが「日本製」はイコール「粗悪品」である。

 工芸品は最高品質という評判だが、工業製品は品質にバラつきがあり、当たりを引けば良いが、ハズレだと故障発生率が高い。

 大山の知っている太平洋戦争が発生してなく、戦後の品質管理という考えが入っていないのだ。

 その辺の歴史も調べてみよう。




------------------------------




 1582年に勃発した第一次世界大戦(ポトシ戦争)で、ヨーロッパ側は不毛な戦いを強いられた。

 海戦には必ず勝つ。

 サツマーニュにはろくな海軍が無く、新型戦術にも疎い。

 だが、上陸してからが勝てない。

 橋頭堡を中々築かせて貰えない。

 サツマーニュの戦い方は元寇の日本軍である。

 海で負けても、陸で負けても、そこに居座らせない。

 所詮船で運べる兵員等高が知れている。

 散々に夜襲や奇襲を繰り返し、沖に追い返し、補給が尽きるのを待つ。

 そして彼等が一旦帰ると、次までにヨーロッパ軍の戦法を覚えてしまう。

 戦えば戦う程強くなっていくのだ。


 そんな中、イスパニア・フランス・イングランド・神聖ローマ等のヨーロッパ連合を抜け出す国が現れた。

 イングランドである。

 元々この国は、王位継承のあやふやさからローマ教皇の承認を必要としていた。

 しかしそうやってローマ教皇を軸に、欧州主要国と婚姻関係を結び、バランス良い外交をしていたヘンリー7世が死に、ヘンリー8世の時代になると一転する。

 彼の統治期、「離婚したい」という理由でカトリックの腐敗や改革と全く無関係に「英国国教会」が誕生した。

 そしてイングランドでは国教会とカトリックのせめぎ合いが起こる。

 そんな中で即位したメアリー1世 (ブラッディ・メアリー)はイスパニア王フェリペ2世と結婚し、強固な同盟関係を作った。

 フェリペ2世も傑物で、薩摩やイスラム勢力に蚕食された国を再興し、勢力を海外に広めようとした。

 そんな関係でイングランドはイスパニアと組んでいたのだが、メアリー1世が死に、エリザベス女王となって方針が変わる。

 カディス、ジブラルタルを抑えてイタリア商船団を地中海に封じ込めたイスパニアを裏切り、イングランドはフランドルと組んでサツマーニュと貿易を始めた。

 イスパニアはイングランド女王を変えようと、スコットランドから亡命していたメアリー・ステュアートを担ぎ出す。

 これを察知し、メアリー・ステュアートを処刑したエリザベス女王を、ローマ教皇始めヨーロッパ各国は批判した。

 そこでエリザベス女王は起死回生の一手を打つ。

 サツマン朝東ローマ帝国と同盟を結んだのだ。

 さらに統制一元化問題、菱刈に次ぐ新しい鉱山の所有でサツマーニュと戦火を交えずして対立していた両国を、イングランドが仲介貿易して双方に得をさせる事で関係改善させる。

 この「薩薩同盟」と「薩英同盟」がイングランドを飛躍させる事になった。

 なお、この外交の為にシェークスピアは露骨に薩摩の悪口を書けなくなり、かなり遠回しな、「シェークスピア調で」の批判しか出来なくなってしまった。


 1588年、イスパニアを発したイングランド討伐艦隊は、イングランド海軍に敗れる。

 カトリック勢力の一角イスパニアが新教国に敗れた事で、欧州では新教派、異端勢力が息を吹き返し、内乱を起こす。

 神聖ローマ帝国の各諸侯毎に新教かカトリックかで争う戦争が発生し、彼等は新大陸のサツマーニュの応援を当てにした。

 最初こそこれに応えていたサツマーニュだったが、彼等も攻めていた当時のヨーロッパ諸国と同じ問題に直面する。

 海を越えて軍を出しても、得るものが少ないのだ。


 1600年、神聖サツマーニュ王国及び超合衆国、テラ・ディ・アメリゴ通商連合、アステカ帝国、インカ帝国、パウ・ブラジルといった国々連署で、新大陸は旧大陸に関わらないとする「新世界鎖国声明」が出された。

 交易も制限がかかり、フランドル、イングランド、ポルトガルだけが新大陸と取引出来た。


 大山は悟った。

 どうやら彼の世界で起こった「価格革命」は発生しなかった。

 結果、ヨーロッパにおいては銀の価格は高く、鉱山を持つ薩摩の立場は強いままである。

 そして南ドイツの銀鉱山を持つフッガー家も没落しなかった。

 新大陸だけでなく、アジアとの交易をも独占するポルトガルは、香辛料貿易で大国化する。


 アフリカ喜望峰回りでインドに辿り着いたポルトガルは、マラッカを通過し、マカオを獲得し、東アジアに達する。

 彼等はついに日本と遭遇した。

 その記録を見ると、彼等は前面に立たず、王直という海賊の親玉を立てて日本の種子島氏、続いて島津氏と接触した。

 ポルトガルは、不思議に思った、「此処にもシマンシュが居るのか?」と。

 だが当主島津貴久は言った

「島津家久? 誰じゃそいは?」

(※島津又七郎は誕生前。

 義久、義弘、家久も元服していない)

 ポルトガルは、薩摩島津氏の正体を正しく知る事は無かった。


 彼等に代わって島津の正体を知るのは、フランドルである。

 フランドルとイングランド、後にスコットランドと併せて連合王国となる、は新大陸方面に領土拡大は諦め、ポルトガルと同じアフリカ回りでのアジア交易に乗り出す。

 アジアの地で過酷な競争を繰り返している内に、日本との交易はフランドルが独占するようになる。

 そしてある日、薩摩国が消滅したのを確認した。

 目印にしていた山が消滅し、その付近にあった陸地も消えてしまった。

 フランドルは「黄金の国」との貿易で金銀を大量に獲得するも、連合王国が施行した「航海条例」に伴う戦争で没落する。

 更にバブル的な投機で儲けていたチューリップが、竹によって駆逐される悲運にも見舞われる。

 そんな中で連合王国で「名誉革命」が発生。

 既にテューダー家はエリザベス女王を最後に滅亡、イングランド王位継承権を持っていたメアリー・ステュアートの子がイングランド王を継いだステュアート朝となっていたが、この王が追放され、改めてフランドルから王が迎え入れられた。

 こうして一世紀ぶりにヨーク朝が復活した。


 ポトシ戦争に始まったヨーロッパの大乱は、約百年で戦った勢力は勝者どこも無しで終了する。

 この第一次世界大戦の勝者は、早々に脱落した英国、そしてヨーロッパが衰退するのを良い事に復活したロシア帝国であったと言える。

 イヴァン5世(雷帝)は、ゾイ・パレオロギアの孫に当たる。

 彼は再び皇帝(ツァーリ)を名乗り、周辺各国を破り、国内の大貴族も粛清して国を拡大させた。

 イヴァン5世の賢明な所は、サツマン朝に喧嘩を売らなかった事である。

 代わりにポーランド、リトアニア大公国は蚕食され、クリミア汗国も影響下に入る。

 オスマン帝国は相変わらず東ローマ帝国と戦争中で、モスクワ大公国の拡大を止められない。

 そんな中でリューリク朝が終わり、ロマノフ朝が始まる。

 ロシア帝国と国号を改め、衰退したヨーロッパに侵攻し始めた。

 第一次世界大戦及び宗教戦争から遠かったスウェーデン王国(カルマル同盟崩壊後に独立)がロシア帝国を食い止めていたが、やがて敗れ、ロシアは中欧から西欧にも影響を与えられる位置にまで進出した。


 ロシアは地の利、人口、野蛮さをいまだ持っていた事で欧州の強国にのし上がったが、イギリスは違う。

 彼等には強力な資源が有った。

 鉄と石炭。

 この世界でも産業革命が起こった。

 錬金術に始まる科学的思考、技術の蓄積等があり、衰退した各国を置いてイギリスで産業革命が起こるのは必然と言えた。

 ここで不思議な事実にぶち当たる。

 なんと、東ローマ帝国においても産業革命が発生したのだ。

 サツマン朝は戦闘国家であり、イギリスのように大学を作り、学者を育て、工場を作って新大陸と交易し……という蓄積に欠ける。

 なのに、僅か十数年で集成館という巨大施設が稼働し、蒸気機関、化学工場、製鉄事業等重工業が生まれた。

 これを産み出したのは、技術者でも学者でも企業経営者でも無い。

 東ローマ帝国を終わらせた男・島津彬久という人物であった。




------------------------------




 ここまで調べて来て、転生者には分かった事がある。

(どの国も資金の蓄積が足りない)

 ポトシ銀山の豊富な銀が、新大陸内部でほぼ循環してしまい、彼が昔いた世界のスペイン植民地帝国はついに生まれなかった。


 もう一つ、テレビを見ていて気付いたものがある。

 この世界、サッカーはケマリーという名で盛況であった。

 尤も、サツマン語由来のケマリーを使う国は少なく、多くの国はフットボール、フスバール、フッチボウと「足球」という意味の名を使っているが。

 薩摩蹴鞠連盟は、欧州フットボール協会の立ち上げ者(初代家久公の時代には既に存在した!)でありながら、ラフプレーのし過ぎで欧州連盟を追放され、アジア協会の方に属している。

 自分たちの代表がそんな扱いな割に、薩摩ではヨーロッパのリーグが好きなのだ。

 その試合が放送されるのだが、ユニフォームのスポンサーロゴが知らない企業ばかりだ。

 「バンク・メディチ」「フッガー・フィナンシャルグループ」って、まだ続いてたのか!

 多国間に跨る企業はあれど、例えばヨーロッパとアジアや、ヨーロッパとサツマーニュという域を跨ぐ企業は数える程しか存在しない。

 転生前の世界で散々見た日本企業のスポンサーロゴは全く見られない。

(まあ、俺が子供の頃はそんなだったかな。

 確か中二の時にJが発足したから)


 ふと気になったので父親に聞いてみた。

「アメリカン……じゃなくてサツマーニュフットボールって有った?」

 父親は嫌な表情で答える。

「有るじゃろうが。

 あげな野蛮な球技、あん地でしかやっちょらんど」


 調べてみた。

 なにこのプロテクターにトゲトゲついてるのは?

 どこの世紀末覇者の雑魚兵士だよ!

 手で持つのがOKなのは元の世界と一緒。

 空中にボールがある時は、投斧(トマホーク)で撃ち落としても可……。

 武器は投斧(トマホーク)2丁まで、盾の装備必須。

 タックルは背後から以外は全て有効。

 ボールは硬度4.5以上の鉱物を成型して作られる(でないと壊れる)。

 ボールを持った敵を蹴り倒してゴールするキックイン、ボールを持った敵をスープレックスで叩きつけてタッチダウンするスローインは得点が加算される。


 新大陸(あっち)薩摩本国(こっち)より野蛮になってるようだ……。

おまけ:

インカ帝国皇帝アタワルパは、謎の敵の襲撃を受けた。

敵、だろうか?

身なりは粗末で、小汚い。

だが野盗というには武器が優秀である。

苛烈な攻撃に捕虜となるアタワルパ。

「待て! 余を離せ、黄金ならやろう!」

「めーーしーーー!!」

「なに?」

黄金(こがね)等要らん、飯食わせろ!!!!」

以上が謎の蛮族とインカ帝国のファーストコンタクトであった。

なお、この蛮族は意外に義理堅いし、通訳連れて歩く律義さもあった。

インカ帝国皇帝はトウモロコシ、甘藷、馬鈴薯、トマトを下賜する。

これをきっかけに蛮族の国・神聖サツマーニュ王国から使者が来て、鉄砲と日本刀を贈る。

本来食糧確保が行動原理のサツマン人は、こんな豊かな国を放っておかず、攻める筈だ。

だが相変わらず兵站が弱く、また高原の国を攻める気も起こらなかった。

結局インカ帝国は、神聖サツマーニュ王国の食糧供給国となる。


ヨーロッパ諸国は初めてサツマン人から大恩恵を受ける。

トウモロコシ、甘藷、馬鈴薯はヨーロッパ人を食の面で助ける事になる。

特に飢饉時において。



おまけの2:

1時間後にも更新し、完結させます。

家久の死と新大陸独立で本編終了、その後の世界は後書きだったのですが、

後書きだけで1万字超えてたので章立てしました。

(結局サツマイモは見つかったのかは、絶対気になると思ったので)

が、蛇足が長過ぎたら最早別物になりそうなので(にょろにょろにつけた足が長いと最早トカゲ)。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こっちの薩摩も転移したか… アマビヱの助言はちゃんと聞き届けられたんだろうね そして、何処に転移していったのやら… こうやって順番にサツマ色に染め上げられたパラレルワールドを増やして逝くの…
[一言] >サツマーニュフットボール くにおくんシリーズかな?
[一言] >>ヨーロッパ諸国は初めてサツマン人から大恩恵を受ける。 菱刈の金は?って思ったけど大恩恵ってほどじゃないな
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