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09

「それでそのゴーレムはもう暴走の心配は無いのか?」


再起動してまた暴走とかはさすがに勘弁してほしい


「…それなんじゃが、おそらくもう暴走はしない。と言うかゴーレムとしても再起動できないじゃろうな」


「なんでだ?」


「少し読み取った記録からの推測なのじゃがな、人で言うところの精神崩壊に近い状態になってしまったようじゃ。廃人ならぬ廃ゴーレムと言うところかのう」


「精神崩壊とは穏やかじゃないな。お前何したんだよ?」


「ほとんどお主のせいじゃぞ]


シンシアが憮然とした表情でこちらを見る


「このゴーレムには相手の装備や体格、魔力などから戦闘能力を推測する機能があってな。それによりお主は脅威度をかなり低く見られていた様じゃ。」


武器はスリングとナイフだし、着てるのもただの服だ


体格や魔力も並以下だから普通ならゴーレムに勝てる要素は無い


「そんな最弱ランクのお主に無力化されたのがよほど堪えたらしい。あと頭に当てた最後の一撃はかなりの威力だった様でな、それでもダメージ自体は大して無いんじゃが、相当なパニック状態に陥ったらしいぞ」


「それはまぁ…俺のせいになるかも…」


高性能ロボットが立て続けに不測の事態に陥り、『理解不能!理解不能!』とか言ってるイメージが浮かぶ


「その後に格下認定したはずの儂に権限を掌握された事がトドメになったようじゃ」


(少しはシンシアのメンタルの強さを見習ってほしいもんだな。無駄にポジティブなのも嫌だが)




「では儂の工房、人形館へ案内しよう。報酬も払わねばならんしな」


馬型ゴーレムには暴走ゴーレムの核や貴重な部品をくくりつけてあるので、徒歩で向かう


暴走ゴーレムの残りの部分は置いてきた


後で他のゴーレムに回収させる事にするそうだ


シンシアと雑談しながら森の中を歩く


「しかし分からんのう、お主の様な者ほど冒険者に相応しく思えるがの。冒険者ギルドの目は節穴じゃな」


「この辺りはモンスターが強すぎて新米冒険者だとすぐ死ぬから、メティスでは新規登録できないらしくてな。それに自分で言うのも何だけど、俺はかなり特殊なんだよ。一般的な錬金術師を冒険者として評価した場合、適正が低くなってしまうのは仕方ない。メティスでは錬金術師の冒険者は過去にも例がないらしいし」


「そうなのか?」


「筋力も体力もないし、剣も槍も弓も使えない。ナイフは持ってるけど、使いこなすほど俊敏でもない。攻撃魔法も回復魔法もダメ、もちろん精霊魔法もな。」


「でもお主にはスリングがあるじゃろ?あんなに素早く正確に当ててたではないか。弓使いみたいなものじゃろ?」


「弓使いはたくさん居るし広く認知もされてるだろ?スリングは扱いが難しくて正確に投げるのには条件があるんだ。だから大抵は威嚇に使う程度で攻撃手段にする人は滅多にいないらしい。冒険者ギルドでも遠くの的にも正確に投げれるって言ったけど信じてもらえなかった」


「それは難儀じゃな。…して正確に投げる為の条件とはなんじゃ?」


「弾の大きさ・形・重さが同じである事。弾の条件が異なると同じく投げても全然違うとこへ飛んでいくからな。でも俺は錬金術師のスキルで同じ型のポーションを量産できる。さっきは中身が接着剤だったが、普段はただの水を入れてる」


そう言って実際にクリエイトポーションを発動し、片手を開いて投石用の小瓶を見せる


「ずいぶんと変わった形じゃのう、薬瓶には見えんぞ。…これ自立せんじゃろ?蓋だけでなく底も尖っておるし」


「紡錘形って言うらしいぞ。俺も前にいた村で糸紡ぎをした事があるって人に教えてもらうまで、この形に名前がある事を知らなかった」


「なんで呼び名を知らんのじゃ?」


「安定して飛ぶ弾を研究した結果がこの形だからな。糸紡ぎと関連した形だったのは偶然なんだ。そして俺はこの小瓶と倍の大きさの大瓶の2種類を使いわけている。ゴーレムの頭に最後当てたやつな」


「ああ、あれな!すごい音じゃった!人の頭にあんなのが当たったらエライ事になるぞ!」


「普通に即死だよな。当たりどころが悪いとしばらく苦しんでから死ぬかな」


「…結局死ぬのか、まあその腕なら外さぬだろうしな」


「まぁな、ただ正確に投げるには弾の型を揃えてもまだ不十分だ」


「まだ何かあるのか?」


「百回投げたら百回とも同じタイミングで投げれる技術が必要だ。このタイミングを掴むにははかなりの練習がいるからな」


「儂にも出来ると思うか?」


「…正直なところ厳しいと思う。仮に投げ方をマスターしても錬金術師じゃないと弾の調達が難しいだろうな」


「そうか…まあ良い。しかしスリングと錬金術師は相性が良いんじゃな。何故もっと広まっておらんのじゃろう?」


「普通なら錬金術師は街から出なくても稼げるしな。冒険者になる必要はないだろうし、回復に使う事の多いポーションをスリングで投げるって発想自体、誰もしなかったんじゃないか?」


「言われて見れば確かにそうじゃな。お主はよくその組み合わせに気がついたのう」 


「まぁね」


いくつも偶然が重なった結果だったので運が良かったとしか言えない


(正直スリングが無かったと思うとゾッとするからな。接近戦はできれば避けたいし)


「ところでシンシアのゴーレムは100体も居るんだろ、戦闘用以外にはどんなのがいるんだ?」


「ふふふ、よくぞ聞いてくれた!」


シンシアは無い胸を張って腕を組み、ドヤ顔で話し始める


「戦闘用が大半だがな、採取や建築に特化した物などもおる。儂の身の周りの世話をするメイド型なんかもこの馬型ゴーレムに並ぶ自信作の一つじゃ」


「なん…だと…」


思わずタツキは馬型ゴーレムを見た


作りこまれた造形は本物にかなり近い


(この再現性の高さ。メイド型ゴーレムも期待できるのでは?)


昂ぶる気持ちを抑えて、努めて冷静に質問する


「…そのメイド型ゴーレムはどんな奴なんだ?」


「あやつはなぁ、性能は良いんじゃが、少し口うるさいのが玉に瑕でな。夜更かしするな、本読みながらお菓子を食べるなといちいち言ってくるんじゃ」


(オカン系か…少し思ってたのと違うかもな…ん?)


「口うるさいって、自我があるのか?禁忌じゃないのか?」


「自我がないと単純作業しかできんし、不便じゃろう?儂のゴーレムのほとんどは自我を持たせてあるぞ」


「…禁忌のゴーレムが溢れてるのかよ」


その後は人形館に着くまでシンシアのゴーレム自慢に付き合う事になるのだった

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