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10、異世界を生き抜く為のステータス確認

 


 異世界生活3日目にして、諦めていた(というか思い付きもしなかった)ゲームのメニュー機能を発見し、テンションマックスの混乱状態で思わず感激の言葉を叫んだものの、叫ぶ言葉を大いに間違っていたことに気づいたローザ・フォン・フェルメール、8歳です、こんにちわ!


 わたくし先程、感激のあまり『おぉう神よ!』と叫んだが、きっとこんな時はこーゆーのが正しいのだろう。


「ハーレールーヤーー!!!」


 涙がちょちょ切れるかと思った。


 キースパパにベッドに押し込められてお医者様を呼ばれたけれど、ローザは全然へっちゃらでした。

 うん、嘘です。

 正気を取り戻してから始終青い顔をしておりました。

 精神病院とかに放り込まれたらどうしようと、ぴるぴる怯えておりました。

 ローザの輝かしい未来が私のせいで………ん?ローザの未来は強制バッドエンド一本だし輝かしくはないか。

 じゃぁいいのか……ってよくないよ!

 馬鹿なの私!

 混乱しすぎだからね、落ち着こうか私!


 精神病院的なところに幽閉されるのか、はたまた屋敷の奥に閉じ込めて世間から存在を隠し、すべてを無かったことにされるのか、どちらかと言えば後者がいいな。


 なにやってんだ私!ホント馬鹿なの!

 あわわわわ。

 ヤバイ!

 ゲームの強制死亡エンド前に人生がエンドする!


 いやぁぁぁ!ローザ、今日からとってもいい子になる!

 とってもいい子になるから見捨てないでくださいお願いしますっ!!

 

「おじさま、ローザを遠くにやらないで」


 お布団に隠れてめっそりしてみる。

 あざといと謗られようが構うものか。

 こちとら命がかかってますですよ!


 めっそりローザちゃんの泣き落としがきいたのか、息子の説得のお陰か、キースパパは何も心配はいらないよ、とローザに約束してくれた。

 キースママも優しくしてくれるし、メイドさんたちも気遣ってくれる。


 キース家族はみんないいひとたちばかりだね。

 幸せな、家族だ。

 その中から誰かが消えるなんて、そんな悲しいことは絶対に阻止してみせる。

 

 ローザを救う道を、キースを生かす未来を、絶対に手にいれてみせる。


「ずっと一緒にいようね。ローザは僕が守るから」


 きゅっと、ローザの手を握り締めながらキースが言って、私も強く握り返した。




「おはようございます、お嬢様」


 ご家族で心のケアにつとめてください。

 白髪、眼鏡の、ぽっちゃりなじーさま医者に、憐憫(れんびん)の情に満ち溢れた眼差しで、一番の薬は家族の温もりと優しさです、と言われた翌日から、ローザちゃんはベタベタに甘やかされております。


 朝は、柔らかな光が差し込む暖かな部屋の広いベッドで眠る少女を、お付きの可愛らしいメイドさんが優しく声をかけて起こしてくれます。

 メイドさんの一人が持つ無駄に装飾の凝った器には、顔を洗うための冷たい水が入っていて、別のメイドさんが差し出すタオルはふわっふわでお日様の匂いがするのです。


 顔を洗い終わると次は着替えだ。


 洋服はわざわざキースのママが選んでくれていて、着替えはメイドさんがすべてやってくれるのです。

 過去の記憶が曖昧なので抵抗感はそれほどないのですが……うむむ、なんだか非常に申し訳なくて、そわそわするな。


 今日の服はピンク色のふわりっとしたドレスだ。

 ローザの髪の色と同じで、とても可愛い。

 念願のスカートですよ。

 しかもピンク。

 今まで黒のパンツ姿のローザ姉さんしか知らなかったから、感無量で泣きそうです。


「お嬢様、如何なされましたか?」


「な、なんでも、ない、です」


「もしや、お召し物が気に入りませんか?もしくは髪型が……」


「そんなことないです!凄く可愛いです!」


 私が男だったら今すぐ交際を申し込むだろうという可愛さだ。

「私、可愛い娘も欲しかったのよ」とほわほわ笑うキースママは、とっても趣味が宜しいようで、クローゼットにパンパンに詰めこまれたドレスは、どれもこれもローザにピッタリ似合うのだ。

 流石は芸術に秀でたキースママだ。


 本来なら喪に服したいのでドレスは黒にしてください、と頼むべきなのだが、今のローザは記憶を失っていることになっているので、有りがたく華やかな服を堪能しようと思います、ぐふふふふ。


「とてもよくお似合いですよ、お嬢様」


 腰までのロングの髪は、メイドさんの魔法の手で生花を編み込んだ、どこぞの花嫁さんのような可愛い髪型に大変身しています。

 18歳のローザはロングストレートの髪を後ろでひとつに括っただけの、飾り気のない格好だった。

 鏡に映る少女はまるで別人だ。

 月並みだが、お人形のように可愛らしい。

 あぁ、生きててよかった。


 支度が整うと丁度良いタイミングでキースママが訪ねてくる。

 キースママの側へかけよって、くるりと回ってドレス姿を見てもらう。


「とっても可愛らしいわ」


 ですよね!ですよね!ローザ姉さんはまさに地上に舞い降りた天使ですよぉぉお!

 もちろん心の中でそんなことを考えているなんて、おくびにも出しません。

 なにこの子、ナルシストなのキモッ。なんて思われでもしたら、ローザに謝りながら部屋に引きこもるからね。

 ぷよぷよの豆腐メンタルを装備してマス。


 そんなわけで、キースママには照れの混じった笑みで「ありがとうございます!」と元気にお礼を言っておきました。

 なんだか、10年後のクールなローザになれる気がしなくてちょっぴし不安です。でも、誉められたら嬉しいしなぁ。ドレス可愛いしなぁ。お礼は言うべきだしなぁ。笑いかけるとキースママが喜んでくれるしなぁ……まぁ、いいか。


 キースママと手を繋いでリビングに向かい、家族揃って朝食をいただきます。


 私の隣に座るキースはおはようの前に『ローザ可愛い!』とメイドさんの力作の髪型と、キースママチョイスのドレスを誉めてくれました。

 なんて可愛い弟なのだ。

 上機嫌でキースも素敵と返します。ホントは可愛いを連発して金色の髪をくしゃくしゃに撫で回したいけれど、ぐっと我慢だ。


 ちなみにこの国では1日3回の食事と、間に三回ほどのティータイムでおやつをいただくのが一般的です(※中~上級階級は)


 一日の食事回数が多いので、一回の食事の量はほどほどであります。


 ふわふわの白いパンと、スープと、少々の野菜と果物が朝のメニューです。

 パンには手作りのジャムが添えられている。

 甘さ控えめで美味しいです。


「ローザ、あーん」


「あーん!」


 口許に差し出されたフルーツにパクついて、にこにこ笑うキースにお返しをする。


「キースもあーん!」


 キースパパもキースママもメイドさんたちも笑っていて、食卓は始終和やかムードだった。



 毎日が楽しい。

 キースは可愛いし、パパもママも使用人さんたちも優しいし、ローザは綺麗なドレスを着て、美味しいものを食べて、柔らかなベッドで眠って起きて、眠って起きて、眠って起きて。


「って、和やかに日々を過ごしている場合じゃないでしょ!」


 異世界で目が覚めて、一体何日が過ぎたのか。

 病院&軟禁ルート(もちろんゲームにはない)を回避するために、ハレルヤ事件からしばらくの間おとなしくしていました。


 その間に、良く笑い、良く食べ、良く話す、元気で明るいお嬢さんにジョブチェンジ完了です。

 なにか、大いに間違っている気がする。

 クールなローザさん?誰それ幻想?って感じになっていってる。

 いや、だがしかしっ!病院&軟禁ルート回避の手段としては間違って無いはずだ。

 大丈夫。

 まだ挽回できる。

 10年後には、クールでびゅーてぃふぉーで剣術にも魔法にも秀でた、メインヒロインのローザ姉さんになっているはず。たぶん、きっと、頑張れば……。


 ま……まだ時間はあるから焦るな私っ。

 

 そんな私はただいま書斎の机の下に隠れております。

 キースと屋敷内かくれんぼ中なのです。


 必死の『私元気です!精神もめきめき回復中です!』アピールが功をなし、食事と、メイドつきのお散歩以外で、ようやく自由に部屋の外へと出れる許可がおりました。

 

 よっしゃあ!死亡エンド回避のために動き出すぜぇ!と、意気込んだが、私の後ろにはキースがついて来た。

 どこに行くにもついてきた。

 寝るのも一緒。

 お風呂も一緒。

 トイレ……は流石にメイドさんに止められた。

 止めなきゃ中まで入ってきたの?

 

 すでにシスコンの片鱗が見えちゃってるキースです。

 どーしよう。

 

「ま、いいや。シスコンでも度を過ぎなければセーフなはず」


 姉に話し掛けてきただけの一般人をぶん殴るようないっちゃってる人間に成長しなければ、少々のシスコンは許される、はず。


「とりあえず、かくれんぼを理由にやっとひとりになれたんだから、この時間を最大限有効活用するわよ、ローザ。出来ることから片付けていこう。えーと、まずはステータスの確認からね」


 頭の中でコントローラの△ボタンを押すイメージをしてっと。


 ピコーン。


 聞きなれた効果音と共に、目の前に半透明のパネルのようなものが出現し、そこに文字が浮かび上がった。


 メインメニュー

  →ステータス

   アイテム

   マップ

   オートメモ機能 


 

 項目はゲームをしていた時よりも少ない。

 本来ならここにバトルメンバーの選択画面や、倒したモンスターや手にいれた素材などの情報を記載した辞典などがメニューに並んでいるハズだ。

 オートメモ機能ってなんだ?

 これが辞典の変わりか?


 試しに十字キーを下に動かすイメージで、オートメモ機能を選択してみる。


 オートメモ機能

  →ストーリー

   キャラクター詳細


 おお?なんだか便利そうな機能があるではないか。

 ちょっとストーリーを選択してみよう。ぽちっとな。



【ストーリー】

  目覚めるとそこは異世界だった。以上。




 …………は?

 いや、うん、間違って無いけども……。

 は?としか、言いようがないわ。

 これは、あれか、ストーリーが進むと新たに書き加えられるのか?よくわからない機能だな……。


「ま、いいわ。えーと、キャラクター詳細という便利なものは、きっと死亡エンド回避作戦にも役立ってくれるはずよ」


【キャラクター詳細】

 ろーざ・ふぉん・ふぇるめーる(?)

  年齢:多分8歳

  性別:おそらく女

  種族:きっと人間 だったらいいのにな そーだったら良いのにな



 ……馬鹿にしてんのか?

 なにが詳細だ。まったく詳しくねぇーし。多分とかおそらくとかきっとってあやふやな表現ばかりじゃないか!


 うっわー、嫌な予感がひしひしするわー。

 これはあんまり、期待しない方がいいのかな。


 恐る恐る、私はステータス機能を選択する。

 そして。


【ろーざ・ふぉん・ふぇるめーる(?)】

  HP ルリボシヤンマ

  MP マウス

  AT スナネズミ

 MAT ミジンコ

 DEX コチドリ

 AGL リスモドキ

 AVO キタイワトビペンギン(陸上)

 

 状態:弱体化


「前回までの経験値を反映させますか?」

  →はい

   オッケイ

   もちろん

  

 

 おひ。

 一体なにごとだ。

 もはや数字ですらないじゃないか。

 

 体力がルリボシヤンマってどーゆーこと?

 ヤンマってトンボか?トンボなのか?

 私はトンボ並みの体力しかないのか?


 魔力マウスって、ネズミに魔力があるのかよ。

 攻撃力はスナネズミって、なんだ。

 わたしはネズミだとでもいうのか?


 魔法攻撃力に至っては、肉眼で認識するのも億劫なレベルの生物で表現されております。


 あと、嫌なことに気づいたけど、誰がしりとりをしろと言った。誰が。



 あはは。これはもうふざけてるとしか言いようが無いわよね。

 うん。

 責任者、出てこいやぁぁぁ!







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