僕と先輩の春節分@tomaru
ジャンル:恋愛
拙作の乙女ゲーの世界に転生したっぽいから傍観してたらライバルキャラの子に惚れましたの番外編です。
今日は節分。
生徒会の先輩でもあり俺の彼女でもある南 愛実先輩に、「豆まきをしましょう」と可愛らしくお願いされた為、断る理由が見当たらない俺は一も二もなく頷く。
それにしても、本当に可愛らしくて……周りから見て平々凡々な俺とは全く見た目が釣り合っていない、と言われるのも頷けるものだ。
ただ、だからこそ見た目も磨こうと色々頑張っていたら、益々格好良くなっちゃうとかずるいなんて先輩に言われてしまうのだが……えっと、ずるいと言うより、見た目もお似合いねって皆に言われたいだけなんだけどなー。
閑話休題。
放課後先輩に指定された空き教室へと向かう。
うん、生徒会の権力使いまくりだなー。いや、愛実先輩の事だから実際雑務しながら待っていそうだ。
その予想を外す事なく、教室の扉を開ければプリントを机に広げている先輩の姿が……って、鬼の面?
「あっ、雄星君!」
元気よく俺の名前を呼ぶ声から喜色を察する事は出来るのだけど……いや、出来ればその鬼のお面外して頂いてその下の素顔を見たいんだけどなー。
思わず苦笑いを浮かべながら口を開く。
「そのお面はどうしたんですか?」
すると、胸を張る愛実先輩。
「えっへん。お手製なんだよ」
「本当ですか? 可愛らしいですね」
と言うか、普通にお店で買ってきたのかな? ってくらい出来がいい。
そして、愛実先輩手作りと聞けば、その愛嬌のある顔も可愛らしく見えてきて、我ながら現金なものだなぁと思う。
俺の言葉を聞いて、先輩はお面を外してそのツリ目を優しく緩めて笑顔を作りお面を見つめる。
「そう言ってくれると嬉しいなー。自分でも結構可愛く出来たって思ってたの」
嬉しそうな先輩の姿に俺も自然と嬉しくなってくる。
ああ、良いなー。
うん、なんだか凄く幸せを感じられる。
と、おもむろにお面を被り直そうとする先輩を慌てて止めた。
「愛実先輩。もしかして先輩に向かって豆を投げろ――何て言うつもり……ありませんよね?」
不安を抱きながら聞けば、お面を可愛らしく頭に乗せたままキョトンとした表情を浮かべる愛実先輩。
「えっと、そのつもりだったのだけど……」
おふぅ。マジかよ。
一瞬天を仰いでしまうが、すぐに先輩に向き直って口を開く。
「先輩、それを被った僕に豆投げつけれますか?」
途端はっとした表情を浮かべる愛実先輩。
いや、別に投げられない事は勿論ない。
そんな事ある訳ないのだが……、皆でやったりする場合でもないのに、何が悲しくて恋人に豆を投げなきゃならんと言うのだろう。
無論、ただのイベント事だ。楽しんだ者勝ちと捉えれば良いのだろうが、既に他の案が頭に浮いている以上出来ればそちらにしたい。
「えっと、私だけ投げてもらう……じゃダメかな?」
ああ、やっぱり。
この人俺に投げつける気なんてなかった……いや、その発想すらなかったな。
これがお互いに投げ合って戯れ合うと言うのなら、それはそれで良いのだろう。
それならば俺だってさっきのような考えも今の思考もしなかったはずだ。
だけど、一方的に俺だけ投げて終わりとか、そんなもん嫌に決まっている。
困った顔でこちらの様子をうかがっていて、その姿は愛らしいけど却下なものは却下。
逆なら全然平気だけど……多分それは先輩も同じ気持ちなのだろうな。
「ダメです」
はっきりと言えば、しょんぼりとした表情になる先輩に俺の胸も痛む。
が、楽しみ方なんて他にもあるんだ。
さっさと提案しよう。
「あのですね――」
年の数だけ豆を二人で食べて、先輩がしていた雑務を手伝いそれを終わらせてから帰路につく。
結局あのお面を上手い事机の上に立てて、二人仲良く豆まきをしたのだけど、うん、物凄い楽しかった。
「ありがとうね、付き合ってくれて」
不意に先輩がそう言ってきて、湧き上がる感情のまま笑みを先輩に向ける。
「いえ、とても楽しかったですし、こちらこそありがとうございました。また来年もずっとやって行きましょうね」
嬉しそうに頷いてくれる先輩。
ああ、本当に幸せだなー。
そのまま何となくいつものように手を繋いで、そこから感じる暖かさにまた幸せを覚える。
ずっとこの幸せを感じていられるように頑張らなきゃな。
そう思うと、俄然何にでもやる気が湧き上がってくる。
うん、いずれこの手を繋ぐ手が増えたりして、お互いの手が最終的にしわくちゃになっても今と変わらない想いを……いや、今以上の想いをお互いに抱けていたら、きっととても素敵なのだろうな。
雑談しながら歩を進めつつ、どこかぼんやりとそう思うのだった。
ご閲覧誠にありがとうございました。少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
企画物ですので、是非他の方々の素敵な作品もご閲覧頂ければと思います。




