愛と狂気とチョコレート。@高梨 裕也
大好きな人のために、愛情たっぷりのチョコレートを作る、狂った少女の話。
うふふ。うふふふふ。
バレンタイン。好きな人にチョコレートを渡し、自分の愛をアピールする日。
彼女は、来るべきその日のために、大切に大切にチョコレートを作っていた。
時折キッチンから狂気じみた笑いが聞こえてくる。鍋を弄りながら彼女は何かをブツブツ言っているようだった。
「うふふ……待っててね××くん……君のためだったらなんだってしてあげる……」
煮詰めたチョコレートに真っ赤な液体が注ぎ込まれる。その異臭、見た目から、それは一目で血液だと分かった。
うふふ。うふふふふ。うふふふふふふ。
「ねぇ、ここまで綺麗に作ったら××くん喜んでくれるよね……? だってほら、彼を好きな人がこんなに見事に作れたんだもの」
綺麗に作れた。それは間違いだった。
どれも皆、苦悶の表情を浮かべている。それは何故か。簡単だ。彼女たちをそのままチョコにしたから。
「あの苦しむ顔。堪らなかったなぁ……でも、××くんに食べてもらえるなら本望だよね……?」
もはや彼女の頭には狂気以外何もなかった。
ただただ好きな人に振り返って欲しい。
そのために、邪魔な存在は一人残らず消す。
もっと彼に近づきたい。もっと彼に愛されたい。もっと、もっと、もっと……。
「私ねぇ、××くんのことなんでも知ってるよ。誕生日だって、好きな食べ物だって、血液型だって。
……なのに、なんでこっちを向いてくれないの?」
行き過ぎた愛情は憎悪へと変わる。彼女は、周りの女を次々と消していった。
「彼に振り返って貰うまでは、みんなに消えてもらうしかないもんね……」
うふふ。うふふふふ。うふふふふふふ。うふふふふふふふふ。
彼女の狂気は、いつまでもキッチンから止まらなかった。




