春半雁帰月@左傘 蕨
私、左傘はヤンデレ以外もかけるんです!
あと、挿絵があります。ご注意ください。
ジャンル:その他
わたしは彼と逢って、言葉を交わした。
鮮烈に。零れるように。夢のように。崩れるように。淡くほどけて消えてしまったけれど。
けれどわたしは確かに、鮮やかに夢を見た。
そして
きっともうわたしは彼にあえないよ。
□■□
わたしが彼にあったのは、多分一番寒い季節。昔の考えでは春に当たるらしい、雪のちらつく二月。
寒くて、白い夜。日が沈まない白夜なんてものじゃなく、ただ霧がでて白く霞んでいただけ。
とろりと薄汚れた黒と白は混ざって、霞んだ灰色になって、これ以上なく馴染んでいた。
昔からかわれない癖。時々何かに突き動かされるようにして街を歩く。彼とあったのは、そんな途中。
何処かに行きたかったわけじゃない。ただふらふらと霧のかかる町の中を彷徨った。
吐いた息が白かった。
霧をかき回した風が、身を切るような気がした。
当てもなく彷徨った町。気づけば知らない場所にいた。
今まで一度も来たことがない場所。帰り方どころかどうやってきたかすらわからない。
あたりを覆っていた霧は深くなり、もうほとんど何も見えない。
髪が湿気を含んで重たく張りついた。
冷たくて重たい空気が、とろりと絡みつくように渦を巻く。
ざぁ、と風が吹いて重たく厚い霧をかき回した。
視界が開ける。
ひらけた視界のその先、その向こう。そこには
誰かがいた。
■□■
わたしは何も言わなかった。彼も何も言わなかった。
可笑しいな。彼は気持ち悪くない。
わたしはちょっと首を傾げた。
彼はこちらを見ていた。けれど何も見ていなかった。顔がこちらに向いていただけ。目は長い前髪でほとんど隠れて見えなかったけれど、少しちらりと覗いた目は、虚ろでぽっかり、黒々と底のない穴があいているように見える。
どれだけ目を向けたって、目は絶対にあわない。なんて。そんな風に思わせる。
……どうして彼はこんなところに?
いちゃ悪いなんて言わないけれど、こうやって町をうろつくわたしは無意識に、けど確かに人を避けてるから。今まで人にあったことなんてないから。
だから人がいたことに、少し驚きを覚えた。
別に、どうだって良いけれど。
興が削がれた。帰ろうか、そろそろ。
わたしは踵を返してその場をあとにした。
帰り道、わからないけれど。
□■□
しばらく日が経って彼のことを忘れそうになった頃。記憶の中で溶けて底まで沈んだ頃。
また、暗く淀んだ町を歩いていた。
ふらふらと、また彼を見つけた。
見つけて、やっと思い出す。見つけて、やっと忘れていたことに気づく。
どうやら今日の彼は随分とやつれているようだった。しばらく日が経ったと言ったってまだ二、三日程度。何があったんだろう? 別にわたしには関係ないけど。
よく見ると彼は、ところどころ血を滲ませてそこに座っていた。石か何か投げられたみたい。
……やだなぁ、お関わりになりたくないよ。
そう思った途端、不意に顔を上げた彼と目があった。
「……」
「……」
もの凄くばつが悪い。居心地も悪い。
どうしよう。
「……お前も、豆を投げる?」
彼はゆっくりと、小さく言葉を吐いた。
……豆?
「豆って……。そんな食べ物を粗末にするような奴になる予定はありませんけど」
……そういえば今日家を出てきたのは夕飯、用意できなかったからだ。思い出したらなんだか切なくなる。
でもとりあえず豆を投げたりするような、そんな食べ物を粗末にするような奴にだけはなりたくない。ていうかなってたまるか。
「豆まき、する?」
「むしろその豆を食べたいくらいにお腹が空いてるんですが。そんなわたしに食べ物を粗末にするような真似をしろと? 生まれてこのかた豆なんていう素晴らしい栄養食をどぶに捨てるなんてしたことありませんが、何か?」
ちょっと空腹のせいか棘のある言葉を吐いてしまった、初対面(?)の人に向かって。
……お腹空いてたってことで見逃してもらえるだろうか。
しかし彼に目を向けると彼は驚いたように目を見開いていた。
……失言?
彼は立ち上がるとつかつかとこちらに寄ってきた。
……え、なんで歩いてるの。いや、歩けないなんて思ってたわけじゃないけど。でもあんな死んだみたいな目をして何も、さっきまで見てなかった人がこっちに向かって歩いて来るなんて思わないでしょ。
……いや、こちらを見て、ついでに話しかけてきた時点でもうびっくりだが。
そのせいで一瞬反応が遅れた。気づいた時には既に遅く、手が握られていた。
ゾワリとした。
思わずてを振り払う。ドキリじゃない、ゾワリだ。
気持ち悪くないなんて嘘。こいつはやっぱり“人”だ。今すぐ手を洗いたい。ぐるぐるして、吐き気がする。
振り払われた手を、彼は少し嬉しそうに見ていた。
……今度は別の意味で気持ち悪いな……。
「……へんたい?」
彼は首を小さく傾げた。さらり、と。彼の長めの前髪から真っ赤な目が覗く。
てっきり、髪と同じく黒いんだろうと思っていたのに。
「 へんたい? 違う。レイ」
……そりゃね、変態って言われて頷く人はあんまり見たことなんてないな。つまり、レイっていうのは……名前?
私はぴっ、と彼を指さす。
「レイ?」
「そう」
どうしようもなく泣きそうな顔で。それでも嬉しそうに。彼はほんのり、零れるように笑った。
■□■
「わたしはハルだよ」
面倒だし、敬語は使わないことにした。使わなくても良い気がした。もう出てきたから滅多なことでは会わないだろうけど、家の奴らに見られたら三時間はくだらない説教をされそうだ。
ハル、は元の名前を少し変えたもの。実は本当の名前より気に入ってたりする。
「ハル」
彼はわたしを指さした。
わたしは小さく頷く。彼は嬉しそうに笑っていた。
「ハルは人じゃないみたい。投げないし、こたえてくれる。……でもハルは笑わない。何かつらい?」
彼はわたしを伺うように私の顔を覗き込む。
て言うか投げるって何を……。
……で、わたしが……辛い? 何が? 別に辛いことなんてない。笑えないのは、もう癖だし。
少し顔をしかめてわたしが黙っていると、彼はそれをどう思ったのかポツリと、言葉を吐く。
「ハルみたいなのがいるなら、人も良いかもしれない、ね」
わたしは思わず、彼の方に顔を向ける。
なんて可笑しい。彼は人じゃないか。
よくよく考えてみれば彼は少し……不思議だ。一番最初の虚ろな目も。石を投げられたような怪我も。そしてポツリポツリと零れる妙に幼い言葉と口調。
……それに。人みたい、人じゃないみたいって。だからなんだっていうのか。どうせ人なことに変わりはないのに。人じゃないものになるなんて、そんなのわたしたちにはできっこないのに。
なら、比べるだけ無駄なのに。
わたしはまた黙り込んでしまう。
けど、彼はそんなこと気にしていないようだった。
「ねぇハル、ハルはどうして豆投げない、の?」
「投げる理由も必要もない。……投げて欲しいの?」
そう言った途端、彼の顔から血の気が引いた。あ、嫌なんだね。
……それにしても豆投げるってなにごと、さっきから気になってたけど。幼稚園の先生が何かかな。ガキどもは思いっきり、しかも必死に豆投げるらしいと何処かで聞いた気もする。
「さっきからなに? 豆でも投げられたの?」
「うん」
うんって……。何してんだ。豆投げる行事といえば節分だが豆投げられる行事なんて……ねぇ?
「おれね、鬼なんだって」
……は?
彼は何処か虚ろに笑った。
「ずっと、前に。そう言われた。背が高くて、目が赤いから。だから、豆投げられるんだって」
確かに彼の目は赤い。けど……そんな人探せばいくらでも出てくるだろうし、髪黒いからそれで隠せば何と無く茶色に見えないこともない。
ていうか背が高いって何? 嫌味? 見たところ一八〇くらいありそうだけど、だからなに? 背の低いわたしに対する当て付けなのか?
………………。
とりあえず落ち着こうわたし。
そして話の流れを少し変えようわたし。このままじゃ埒が明かない。
「……それより、どうしてわたしに声をかけたのか教えてくれる? 前見た時は死んだ目してこっちなんでちっとも見てなかったのに。どういう気分の変わりよう?」
彼はちょっと、キョトンとして首を傾げた。そして少し間をおいて、口を開く。
「同じ、気がしたから」
……同じ?
「目が、似た色。髪の色も、不思議。だからきっと同じだろうなって」
ああつまり彼は……。
……でも、失礼だな。確かに私の髪は茶色。それに時々黒いものが混じってあんまり普通じゃなければ綺麗でもない。そんなことわかってる。薄汚れて見えるし。
目は、これは茶色だと思う。赤じゃ……ないはず。
そして彼は続ける。
「それに前あった時。何も言わなかった。何もしなかった。だからきっと話せるって」
ほんのりと笑って。柔らかくて、綺麗で。
私には少し眩しい。
ポツリポツリと零れる言葉を聞いているうちになんとなく、彼がどんな人かわかった気がする。
彼は自分を人じゃないと思い込んでいることとか。
少しずれていて少し抜けてる。ただの人らしい人なのに。なのに周りから人でないと、そう言われて、鬼だと言われて。
人と少し違うだけ、それだけなのに。
なんとなく、勿体無い気がした。
「ねぇハル」
彼は不意に、少し明るい声をあげた。
「何?」
「ハルのはなし、きかせて」
……図々しいな。
でも。
そういうのも、今なら悪くない。そんな気がした。
□■□
――別に、大した話じゃないよ。
わたしの家はね、なんか可笑しな家でね。父と母は兄妹だし祖父に至ってはもう壊れてるし。
……壊れてるって……うん。なんて言えばいいんだろうね。頭が可笑しいし。それだけじゃ、ないんだけどね。
で。わたし、三人兄弟の末っ子なんだけどさ。出来損ないなんだって。だってただの人だから。何代にも渡る近親相姦のせいか体が妙に弱い、ただの子供。それに女の子だったしね。
母はせめて、男の子で生まれてくればよかったのにってよく言ってたな。
父は、わたしがただの人だったから生まれなかったことにするし。……だからわたし、戸籍ないの。別に構わないんだけどね。
祖父は……どうしちゃったんだろうね。いわゆる、現人神だって家では言われてたよ。うちの家系の、最高傑作なんだって。かれこれ……もう三百年くらいは生きてるんじゃないかなぁ。一人じゃもう動けないんだ。枯れ木みたいって、本当にそう。骨に皮が張り付いてる感じ。目ばっかりギョロギョロ窪んで。怖いったらありゃしないの。
まぁ、他にも兄とか兄とかいるんだけどね。面倒だから割愛するよ。
……つまりね、うちの家自体、排他的で保守的。しきたりしきたりもうお腹いっぱいって感じだよ。
……で、出来損ないの私はそりゃあもうひどい扱いだったよ。ご飯が一日に一回出てくることの方が珍しかったし、まぁ他にもいろいろだ。死んでもいい、って思われてたんだろうね。……いや、むしろ死んで欲しいって思われてたのかもね。
どうせ家にいたって死ぬだけだろうからって家から出てきたのはそれが理由だよ。もうかれこれ何年かは家に帰ってないな……。
別に、別にね家とか家族とか、その辺否定するつもりもないけど。
わかってはいるんだよ。頭ではね。
そうやって内輪ばっかり、排他的、保守的。そうやって守られてきたものがあることだってわかってる。
そうしないとわたしが生まれてこなかったことだってわかってはいるんだ。
次の世代に少しでも濃い血を残して、少しでも薄れていく【とくべつ】を繋ごうとしてたことも。どれも、これも。
……けどさ、到底納得できるものじゃあ、ないんだよ。
生まれてこなければよかったのに、とかは沢山言われたよ。でも、わたし自身、自分が生まれてこなければよかったなんて思わないし。
けど、それでもさ。
傷つかないわけじゃ、ないんだから。
少しくらい、わたし、を。
花春を。
見て欲しかった。
■□■
「……なんで、君が泣いてるのかな」
隣にはボロボロと零れる涙を拭いもせずに、声も上げずに、でもやっぱりボロボロ泣いてる彼。
何で泣いてるんだろう。
別に彼が痛い思いしたわけでもひもじい思いしたわけでもないでしょうに。傷ついたのは私で。それにもう終わってしまったことだし。傷つきようなんてないでしょう?
「可笑しな人だね」
全く、馬鹿だと思う。
けど。
それでも私は嬉しかった。
それが嬉しかった。
「辛かった、よね」
彼は言葉を吐いた。小さく、けれど確かに。
「そんなの」
もう忘れたよ。
そう言いかけた言葉は、口に出すことは叶わなかった。
代わりに零れたのは
「辛かったに決まってる」
まごうことなき、肯定の言葉。
本当は、辛くなかったって、言いたかった。言おうとしてた。
辛くないって、目を背けて、気づかないフリをして、それが普通だって、当たり前だって。そう思い込んで。そうでもしないと可笑しくなりそうだったから。
だから、目を背けたのは間違いなんかじゃない。正しいことなんだ。
辛かったなんていうのは、お門違いでしょう。
なのに。
どうしてわたしは辛かったなんて言ってしまったのか。
辛かったなんて、絶対に認めたくなかったのに、可笑しいね。
彼はやっぱりまだボロボロ泣いていた。
わたしが泣かせたのかな。
私が悪いのかな。
……でも、なぜかそれが嬉しかった。
わたしのために泣いてくれてるって、そんな気がして。
私のためだけに、何か優しくて綺麗なものが向けられてる、そんな気がして。
わたしが必要とされてる、だなんて。
そんな風に勘違いしてしまう程に。
「辛い。ならどうして、どうしてハルは泣かないの」
「……わたし、もう泣けないから。泣いたって、どうもならないから」
「おればっかり泣いて理不尽」
「聞きたいって言ったのは君で、勝手に泣いたのも君だ。わたしは知らない」
ちょっとしたやりとりも。
こんなこと話したのも。
どれもこれも。どうしようもなく居心地のいいぬるま湯みたいだ。
凍えるほどに冷たい本当で、ぬるま湯みたいにとろけた、薄汚れた夢をみる。
はたからみればきっと無様な傷の舐め合い。覚めてしまえば何も残らないような、そんなもの。
けれど、人の温もりも優しさも。きっとわたしも彼も知らないんだ。だからこんなに温かくもないものが何よりも堪え難いものに思えて仕方ないのかもしれない。
全くね、無様で吐き気がする。
でも、嫌じゃない。
□■□
「ねぇハル。おれハルにあえて良かったな。本当にそう思うよ」
彼は泣き止んで、しばらくするといきなり言った。
こいつは藪から棒に何を言うんだろう?
これじゃあ、まるで
「誰かと話したりするの、初めてで、嬉しかった。名前、教えてくれて嬉しかった。名前呼んでくれて嬉しかった」
まるで別れの挨拶のようではないか。
「きっともう、おれハルにはあえないな」
「何を言って……」
彼はうっすらと笑った。霞んで消えてしまいそうな、儚い笑顔。
手を伸ばしかけて、ハッと気づく。
うっすらと霞んで消えてしまいそうなのは、笑顔じゃなくて、彼だ。
だんだんそこにいる感じが薄くなって、最後には消えてしまう。わたしは前にもそれを見たことがある。
「君は、わたしを置いて何処かに行くの」
ああほら。やっぱり何かに心を向けてはいけないんだ。どうせ何処かわたしの手の届かない遠くに消えてしまうんだから。
ポツリとつぶやいた声は予想外に大きく、当たり前のことをなぞるように響いた。彼はちょっと目を大きく開くとへにゃりと笑う。
「悲しんでくれる? ちょっと嬉しい。ずっと昔、やっと死ねた時よりずっと」
こんどはわたしがちょっと目を見開いた。
彼は、生きてる人じゃなかった……?
そして、さっき握られた手を思い出す。私の手を握ったのは、氷みたいに冷たくて、芯にしっかりと温もりのある、人の……手、で。
あれ。どうしてだか、触れた手の感触が思い出せない。いつもなら人に触れたものは嫌でも忘れられないのに。
「鬼って言われて、死んで、起きて、痛くて、泣きたくて。でもハルは何でもないような顔で話聞いてくれて、話してくれて。全部。優しさも全部全部。嬉しくって。きっと、こういうのが幸せって言うんだなって思った」
どうしようもなく幸せそうな顔で、彼はだんだんと希薄になっていく。
「巫山戯るな。違う。君は人で、他とちょっと違うだけで、それだけのはずでしょう。君の言った幸せは今なら当たり前のものとして与えられるはずのもの、で。だから、そんな……」
そんな風に、わたしを肯定されたら。
まるでわたしに価値があるみたい。
どうしようもないほどに寒くて、凍りつきそうなのに、なのに目があつい。
視界が歪む。
「だから、だから、レイは……」
口に出した言葉が続かない。言いたいことも、わたしが言えるようなことも、何ももうないんだ。
彼の、わたしのものより大きな手が優しく優しく、わたしの頭に置かれた。
もう、気持ち悪くなんてない。気持ち悪いなんて思って、ごめんなさい、と言いたかった。
「やっと名前、呼んでくれた。不謹慎? でも嬉しい。……ねぇ花春」
わたしは顔を上げる。
わたしの前にはいつの間にか立ち上がってわたしの頭に手を置いたままの、彼。
「どうして、名前」
わたしは掠れた声で言った。
彼は曖昧に笑うばかり。
「おれの名前はね、本当は令月。……ハルなら、忘れない。覚えててくれる。そうでしょ?」
緩やかに薄れていく彼に手を伸ばした。
届かない。
「ねぇ待って、まだ何も言えてない、何も伝えてない、何も話せてない、何も聞けてない、ねぇ……お願いだから。おいて、行かないでよ」
はしからだんだんと薄れて彼は消えていく。
何も、言えてないのに。
ごめんなさい、も。お疲れ様、も。大変だったね、も。何もかも。
まだ、何も。
なのに、置いて行くというのか。
やっと、認められたのに。
「花春」
大切な大切な、わたしだけに向けられた彼の言葉も。ひどく、とおい。
そして、わたしは気づいた。
私はただ、寂しかった、それだけなのかもしれない、と。
自覚して、初めて落ちていく自分の一番伝えたい想いを掴み取る。
そして、精一杯の想いを込めて、顔を上げ、目を合わせる。
彼が一瞬、息を飲んだのを見た。
ぎこちなくても、きっと、それでいい。
わたしは口を開いて、小さく、けれど確かに言葉を吐く。
嘘も皮肉も何も混じっていない。
彼は一瞬目を見開いて、それから、泣きそうで、でも確かにこれ以上なく嬉しそうな笑顔を浮かべた。
■□■
私は彼とあって、優しさをみた。想いをみた。心をみた。幸せを、みた。
鮮烈に。零れるように。夢のように。崩れるように。淡くほどけて消えてしまったけれど。
けれどわたしは確かに、鮮やかに夢を見たんだ。
それだけの、話。
春半も雁帰月も花春も令月も。全部同じ意味で、二月、という意味です。
それと……これはやんでませんよね……?




