第27話 満月の攻防! 明かされる探偵の正体⁉
魚雷の連続発射とは
さすがにヒヤッとしたぜ…
よし…
対潜用電波妨害装置『アメンボ』を使って
発生させた超強力電磁パルスと
『ロシナンテ』搭載の最強火器
超電磁加速砲の一撃で
何とか二本の魚雷は撃退した…
ふふん…
小っちゃいからって
『アメンボ』を舐めんなよ
こいつを使って俺は
原子力潜水艦『クラーケン』を
機能不全に陥らせた事もあるんだ
それにしても…
この相手は何て野郎だ
お嬢さんに聞いた話じゃ
女を監禁して凌辱するのが趣味の
変態サイコパス野郎ってだけじゃなく
物騒な武器マニアでもあるって事だったが
そんな生易しいもんじゃないぜ
個人で本物の魚雷まで所有してるなんて
相当なもんだぜ
イカレ野郎も極まれりってとこか…
この車が俺の『ロシナンテ』じゃなかったら
カブキ町で人気者の風俗探偵様は
見目麗しき、うら若きお嬢ちゃんと一緒に
海の藻屑になってた所だぜ
まあ、満月の今夜は
俺が死ぬ事は無いんだが
不運なお嬢ちゃんは木っ端微塵だったな
俺だってバラバラになっちまったら
元通りになるには時間がかかる
能天気な俺の悪いクセだが
相手を舐めてちゃ痛い目見るってこったな
とにかく…
最凶ドラッグ『strongest』の摂取で
魔物に変わり果てたイカレ野郎が
思いのほか手強いって事は分かった
そうなって来ると
ゾクゾクしちまうのは俺の悪いクセだ…
とりあえずは
今まで以上に注意して島を目指そう
このベッピンさんのお嬢ちゃんのために
親父さんを救ってやらなきゃな
俺にとっても昔なじみの
おやっさんだからな
よし、ロシーナ
超電磁推進の速力上げろ!
進路そのまま、ようそろうー
********
よし、島に着いたぞ
いつの間にか、夜の帳は下り
満月が島全体を照らしていた
俺は闇夜でも暗視が利くが
空に雲の見当たらない今夜は
くみにとっては好都合だろう
見たところ
島自体は悪い感じじゃない
むしろ静かで環境的にも良さそうだ
だが、林の向こうから…
禍々しいとでも言うべき異様な雰囲気が
砂浜のここまで漂って来やがる
くみの話では、あの林の向こうが
ヤツの住んでる館なんだな
なるほど…
イヤな気配はそのせいか
それに気配だけじゃない
この生臭く不快な匂いは何だ?
強烈だが海の生物の匂い…か?
ちなみに俺は夜目だけじゃなく
イヌ並みに鼻も利くんだ
こんな場合は辛い所なんだが…
どうやら、この怪しい気配も匂いも
原因は同じ場所から漂って来る様だな
おっと、どうした?
震えてるのかい?
安心しな、お嬢さん
俺が傍にいれば
お前さんを怖い目になんざ
遭わせはしないさ
俺を雇った事を絶対に後悔させないぜ
震えてはいるが
くみの父親救出の決心は固いようだ
俺が先に立ち、二人は林の中を進んだ
やがて、林が終わりを告げ
木の合間から向こう側が見えて来た
おいおいおい…
何だ何だ?
あの、カニの出来損ないみたいな
気味の悪いオブジェは…?
え? あれがヤツの館?
の筈って…?
ホントかよ?
まあ、イカレ野郎にゃあ
相応しいっちゃ相応しいか
おっ、内側から扉が開いた
誰だ?
俺の髪が逆立った…
何だ、こいつは…?
カニと人間のハイブリット化け物か?
何?
お嬢さん
今、何て言った?
おいおい、この怪物が
おやっさんだって言うのか?
クソっ! 何てこった!
遅かったか!
おやっさんまで『strongest』で魔物に…
くみ、下がれ!
もう手遅れだ!
魔物化しちまった人間は
元には戻らねえ!
それにこいつは
もう、自分の娘を認識してねえ!
おい、カニ野郎!
お前の相手は俺だ!
その娘に手を出すんじゃねえ!
てめえの娘だろうが!
狂ったか⁉ おやっさん!
俺の叫びなど気にする事なく
カニ野郎がすごいスピードで
くみに襲いかかった
ちぃッ!
俺は呆然と立ち尽くしている
くみの前に回り込む
ぐわっ!
カニ野郎の巨大なハサミが
俺の背中を切り裂いた!
痛烈な痛みが俺を襲う…
やりやがったな!
満月の夜でも
痛えもんは、痛えんだぞっ!
俺はくみを安全な方へと突き飛ばすと同時に
振り向きざまにカニ野郎の顔に向け
電光石火の勢いで右上段回し蹴りを放った
「ガッキィィーン!」
甲高い衝撃音と共に夜空に派手な火花が散った
何いっ⁉
俺の靴には仕掛けがあり
爪先に鋼鉄製のブレードが仕込まれている
一撃で頭蓋骨を砕いたかと思った蹴りを
カニ野郎は左手のハサミで受け止めやがった
こいつ、速い!
向こうも同じ様に思ったに違いない
この俺が…
カニなんかに負ける訳ねえだろう!
次なる攻撃を警戒したのか
外骨格の八本脚を素早く動かすと
カニ野郎は俺から高速で遠ざかった
体勢を立て直すつもりか…
それにしても、何て硬いハサミだ
満月の夜に俺が繰り出した蹴りを
ヤツは片手で受け止めやがった…
あの外骨格は鋼鉄並みの硬度だ
「ひゅるるるるる~!」
ん…何だ?
「ドドーンッ!」
俺に向かって飛んで来た何かが
身体に当たると同時に炸裂した
爆炎と煙が俺を包み込む
くみの甲高い悲鳴が聞こえた
こいつは… 榴弾?
おいおい…
おやっさんとの勝負に
横槍入れて来るなんて
やってくれるじゃないか…
この変態サイコパス野郎!
おかげで…
オシャレな俺のスーツが台無しだ
全身ズタズタになって血塗れなのと
右耳が千切れ飛んだのは
我慢するとして
このスーツ…
気に入ってたんだぜ
人ん家に乗り込んで来たんだ
大人しくしてようと思ってたが
さすがの俺も頭に来たぜ
そっちがそう来るってんなら…
不本意だが俺も本気を出すぜ
見せてやろう
満月の夜だけ可能となる俺の姿!
てめえらの腐ったカニの目で、とくと見やがれ!
ぐわおおおおおうーッ!
俺の口から野獣の咆哮がほとばしった
服がズタズタに破れ
剥き出しになった俺の全身に
所々に黒い毛の混じった白い剛毛が生え始め
身体中をビッシリと覆い尽くしていく
呆気に取られたくみは
俺を凝視してる事だろう
嫌われちまったかな…?
あまり人には見せたくないんだが
そんな事、もう構ってられるか
生来の戦闘本能に火が付いちまった
もう止まらねえ!
満月に照らされた俺の
獣人化現象が加速した
そうさ!
風俗探偵は仮の姿…
この俺こそは、獣人白虎だあっ!
ぐわぁおおおおおーっ!
俺は満月に向かって大きく咆哮した




