わからない
「おや?たみって言ってたね」
玄関のドアを閉めた後
何かを思った、思い出した?のか
少し考えたが、何もなかったかの様に
奥のリビングに歩いて行った年配の女性の名前は
鈴木昌子
昌子は、軽い認知症を患っている為、体調が良い時と
悪い時の差で、記憶に曖昧さが出てしまう
そんな状況の中
今日は体調が芳しくない時だった様で
奈々未が、たみさんの事を尋ねても
思い出せなかったのでした。
「はぁ、、」
大きな溜息を洩らした奈々未は、歩く足取りは重く
来た道をトボトボと引き返していましたが
まだ諦めきれない気持ちが勝り
足運びはピタリと止まり、すぐさま後方を振り向いた時には
今訪れた和風の家は、だいぶ離れていました。
「やっぱり、、」
その家や周辺をじっくり観察した奈々未は少しだけ明るい気持ちに
なりました。
「やっぱり、、あの家は、たみさんの自宅だわ」
私の記憶が確かで良かった!
私の思い込みじゃなかった。でも、、たみさんの事知らないって?
あの人は誰なんだろう?
その場に立ち尽くした奈々未は、以前たみさんが招いてくれた時
あの家には、先ほどの年配の女性の気配は無かった?
朧げに、一人暮らしと思ってしまっただけ?
数時間の滞在時間で、たみさんが消え自分も同じく
その場から消え去った。飛ばされたが正解だけど
家の中の生活感を詳しく見た訳では無いから
あの女性が居たのか分らない?
それに自分の記憶が合っていたとしても
たみ?知らないねぇと
言われてしまうと此処からの手掛かりが無くなってしまった
奈々未は一気に落胆した顔になり
その場から一時の間、離れることが出来ませんでした。
その日の夕方
昌子は昼寝から目が覚めた時にリビングにセットされた
ドアホンのモニター画面の赤い点滅に気付いた
「おや?誰か来たんか?」
そんな何気ない言葉を言いながら点滅ボタンを押し
画面を確認し、う、、、?
食い入るように画面に映る奈々未を見ていた
「こんにちは、突然申し訳ありません。こちらに
たみさんいらっしゃいますか」
画面越しの奈々未は横顔だけが、映しだされているが
昌子の反応は、たみさんいらっしゃいますかの言葉が
気になるのか、何度も再生を繰り返して
ブツブツと呟き、考えこむ
すると突然、たみ!!ああ!!たみ
昼寝から目覚めて、頭がスッキリしたのか
忘れていた人を急に思い出した昌子は言いました。
私の娘はどこに行ったんだ?
へ?娘?どういう事でしょうか?




