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奥山さん、調停する その2

「はーい、それじゃあ作戦会議始めるわよー。なんか意見ある人―。」


……


 あーあ、完全にお通夜みたいになっちゃったよ。今僕たちはリザードマン・巨人族間の抗争を止めるために魔王軍からの使者としてリザードマンの集落に来ています。リザードマン達との会議の議長はフランソワ様が務めることになったのですが、あのビンタを見た後じゃ皆黙っちゃうのも仕方ないですよね。


「フランソワ様、皆さん恐がってるんですよ。まずはフランソワ様から何か案を出した方がいいと思いますよ?」


「私の事を恐がる?はぁ……こんな可憐で今にも散ってしまいそうな花のように儚い少女を恐れるなんて、だらしないわよ皆!」


「フランソワ様、いきなりこの場にいない人の話するのやめてくれません?」


ゴッ!


=====


「あのフランソワ殿、今回我らの部族間で何故抗争が起きたのか説明したいのですがよろしいでしょうか。」


「お!さすが族長!確かにそれを理解してからの方がいい案出せそうね。お願いするわ矢守さん。」


 そう言ってリザードマンの族長である矢守さんが立ち上がり、説明を始めました。それにしても痛い……なんで僕にはビンタじゃなくて拳なんだよ……


「もともと我々と巨人族は特にこれといった関わり合いはありませんでした。お互いの領域に踏み入ることのないように日々を過ごしていたのです。ですが……」


「なるほど、そういうことだったのね。」


「え?!まだ説明の途中なのに何か分かったんですかフランソワ様。」


「よく考えてみて奥山さん。私たちが転送されたのはこの集落ではなく、ここから少し離れた荒野だったでしょ?恐らくあそこはもともとリザードマン達の狩猟場だったのよ。でも巨人族が食料欲しさに侵攻し、そしてそれを妨げようと抗争が始まった。その影響であそこはあんな荒野になり果ててしまった。矢守さんは私たちにその惨状を見せたかったのよ。そうよね矢守さん。」


「いえ、魔法陣による転送で生じる魔力の痕跡で集落の位置が特定されるのを避けるためで、あの荒野は特に何の関係もありません。」


「そうよ奥山さん。矢守さんの説明を最後まで聞かないで自分の憶測を話すなんてあなた何様なの?」


「よくそんな堂々と他人に罪を擦り付けられるなあんた!いちいち大物ぶろうとしなくていいですから大人しく矢守さんの話聞きましょうよ!」


 全くこの人は……何だかいつにも増して面倒くささがアップしてるぞ。これは早いとこ矢守さんに説明を終わらせてもらわないと!

 

「それで、関わりのなかった巨人族とどうして争うことになっちゃったんですか?」


「はい、事の発端は巨人族が所有している鉱山です。巨人族の集落の近くには良質な鉱物が採れる鉱山があるのですがある日、深夜にその鉱山からリザードマンが鉱物を盗んだと巨人達が食料採取に出ていた者達に抗議してきたのです。」


「鉱山から鉱物を……それは事実だったんですか?」


「そこなのです。盗んだと言われましたが我々は自分達でまた別の鉱山を所有していて、そもそも巨人達の鉱山に盗みに入る必要がないのです。それにもし深夜に集落を抜け出してどこかに行く者がいたならば必ず誰かが気付くはずですから。」


 うーん、どうなのかなぁ。確かに矢守さんの話を聞くと巨人族が一方的にいちゃもんをつけてるとしか思えない。でももしかしたら嘘をついてるのは矢守さんで集落にいる他のリザードマン達と口裏を合わせてるという可能性も……


「それで争いになっちゃったの?」


「はい、私達は話し合いをしようとしたのですが巨人族は短気でして。外に出て出会うたびに襲い掛かってくるので我々も仕方なく応戦を……幸い死者は出ておりません。」


「うーん、それじゃああなた達の採取場を見せてもらえる?そこが本当にあれば口裏を合わせてる可能性はなくなるわよね奥山さん。」


「え、僕の心読んだんですか?!……まぁいいや、じゃあ矢守さん早速ですが案内してもらえますか?」


「はい、もちろんです。ではお二人ともこちらへ。」


 僕とフランソワ様は矢守さんの案内の元、証言の確実性を高めるためリザードマン達所有の鉱石採掘場に向かいました。


=====


「ここが我々所有の採掘場です。御覧の通り、ここは広く枯れておりません。これで巨人族の言葉がおかしいということが分かっていただけたかと思います。」


「へぇー、集落から直接採掘場に繋がってるんですね。これだけ立派な場所があるなら盗みに行ったっていう話はあり得ないですね。……どうしたんですかフランソワ様?」


「引っかかる、このプライベートアイディテクティブ探偵フランソワの直感が何かがおかしいと囁いているの。」


「気に入ってるんですかその頭の悪い肩書……さっきあんなクソみたいな推理かましておいてよくそんなにイキれ……ひぃぃぃごめんなさいごめんなさい!やめて睨みながら胸ぐら掴んでこないで!」


 矢守さん率いるリザードマン族の証言が正しいことが分かったのにフランソワ様はどこか納得がいかない様子です。一体どこに納得のいかないことがあるのでしょうか。


「ねえ、矢守さん。この採掘場にはここでしか採れないレアな鉱石とかあったりするかしら?」


「レアな鉱石……ですか?いえ、これといって珍しいものは採れませんがそれが何か?」


「採れないのね。もしこの採掘場でレアな鉱石が採れるのだとしたら巨人族がそれを奪うために言いがかりをつけてきたのかと思ったんだけど。だとしたら……」


あれ?なんだかフランソワ様がちゃんとした推理をしてるように見える!でも確かにそうだ。そう考えると巨人族が質の悪い人達ってことなのかな?でもそれもなんだか違う気がする。


「もしかすると……第三者の仕業かもね。」


「第三者?我々や巨人族のどちらでもない者が関係していると?」


「確定じゃないけど、そう考えるのが妥当じゃないかしら。ただもうちょっと情報が欲しいわね……よし!それじゃ行きましょうか。」


「行くって、一体どこに行くんですかフランソワ様?」


「決まってるじゃない。巨人族のところよ。ここにいてもこれ以上有力な情報は出ないだろうし、直接巨人達に聞いた方が事態解決に近づくでしょ。」


「あ、なるほどそうですか。じゃあ頑張ってきてくださいね。」


「は?何言ってんの奥山さんも行くのよ。」


「やだ恐い!だって短気なんでしょ!大きいんでしょ!行きたくない!……ちょ!やめて引っ張らないで!嫌だ、嫌だぁああああ!」


「矢守さんも来てくれる?道案内してほしんだけど。」


「あ、はい。かしこまりました。」


 僕はフランソワ様に引きずられ為す術もないまま、巨人族の集落へと向かうことになりました。どうやら今日が僕の命日のようです……


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