死天の試練後 その16
俺が撒いたポーションに、ルリがバフを掛けて超強化。
それを浴びた者たちが一気に動き出し、反撃の狼煙(星鑓)が(物理的に)上がった。
毎度お馴染み、冒険世界最高の戦力である『騎士王』……周囲を上手く先導しつつ、アルス・ナギマの排除に動き出す。
「貴男の望んだ通り、これでアレはあちらに注力せざるを得ませんわね……それで、ここからどうしますの?」
「とりあえずは、残党狩りですかね。まだ複製体は残っていますし、それらを一掃する必要があります」
「面倒ですわね……すぐに終わらせて差し上げましょう」
何かをした、それは【傾界魔王】が指を鳴らしたからでは無いだろう。
すぐに『SEBAS』から連絡が入る、クローン魔獣たちに変化が生じたようだ。
「……いったい、何を?」
「方法は違えど、私もアズルのようなことができますのよ? 今回はクローンですし、デメリットはありませんわ」
「つまり本物、というか普通の生命体に用いてはいけない方法だと」
届けられた映像で、クローン魔獣たちの性能がこれまでの倍以上となっていた。
それはまるで──命を燃やし尽くし、この一瞬にすべてを注ぐが如く。
「少々ストックが減りますが、まあ必要経費ですわ。さあ、私を楽しませなさい」
ショウの『プログレス:ブレイブソウル』の能力“オーバーブレイブ”、その効果と酷似した現象……確定的な死を代償とした瞬間的な超強化、それが今起きる事象の正体。
俺が彼女に提案した──クローン魔獣への魂の付与。
それを使い潰すことで、彼女は彼女自身が楽しむための時間を得ようとしている。
友好的に接してくれていても、その考え方はやはり星敵。
……まあ休人にもそういうやり方の人は居るだろうから、そんなに気にならないがな。
◆ □ ◆ □ ◆
改めて、複製体を一掃したことで目的を決めなければならない。
その内容次第で、【傾界魔王】は自らの欲求を満たすために騒動を起こす。
だがそもそも彼女の琴線に引っかかる案を出せなければ、彼女はこの場を離れ勝手に行動するだろう──星敵としての使命、それさえ守れば自由は約束されているのだから。
「ルリ、何かありますか?」
ここで頼るのは『SEBAS』ではない。
いつもお世話になっているわけだが、今回は相手が相手だ……演算をどれだけ重ねても想定外を出してきそうだ。
なのでルリに任せる。
俺が予想も付かないような突拍子もないアイデアが、彼女の口から出ると信じて。
「……うーん。そもそもあの子って、アナタが呼んで来てくれたのよね?」
「……え、ええ。そう、なりますね」
「それを無理に追い返すのは、また少し違うと思うの。ただ、ちょっとやり過ぎなところもあるのよね……でも、アナタが居たホテル以外の被害はそこまでじゃないわ」
「そういえば……たしかに」
アルス・ナギマは複製体を放出した。
それは本体とほぼ同等、あるいはそれ以下の性能を持つ……上回っていない以上、頑張れば倒せる相手。
強化やら補助やら、支援術式などいくらでも使えただろう。
しかしそれをいっさい用いず、解析と複製あと自己防衛ぐらいしか行っていない。
「だからね、こうすればいいと思うのよ。たとえば────────────とか」
「……へっ?」
「ふふっ、はははっ! ええ、ええ、面白いですわね貴方がた!」
ルリの提案にポカーンと口を開く俺、そして高笑いする【傾界魔王】。
たしかに俺が求めた通り、彼女はとんでもないアイデアを出してくれた。
※『プログレス:ソウルマスター』
魂という概念そのものを統べる
擬似的な魂の付与、またそれを用いた存在の強制限界突破なども可能
普通車にロケットのエンジンを搭載するようなもの
そもそも入らない……無理にぶち込んだらそりゃあ壊れますよ
──なお、もともと似たようなことはできた模様
p.s. 無字×1213
最近は湯たんぽを使っている作者です
……電気で温めるタイプですが、問題が一つ
温めて完成を待つ間に、だいたい寝てしまいます
先にやっておけばいいのですが、いろいろとありまして
なので寝る前にやってから温めて、完成したら使う……という想定ですが、だいたい回収は起床後になってしまっています(涙)




