死天の試練後 その06
部屋から出るだけなのに、いきなりSAN値を削られるような出来事に遭遇。
幸い、必死に拵えた隠蔽工作は文字通り見抜かれずに済んだようだ。
「…………」
そして今、俺は無言で移動中。
周囲の状況を確認することも無く、網膜に投影された矢印に従って。
おそらくだが、『SEBAS』によって五感が完全にジャックされているのだろう。
廊下はただ真っ白な通路に見えるし、異形のような存在も一切確認できない。
音も全然聞こえてこないうえ、普段の結界であれば分かる皮膚の感覚も失われている。
……つまりはそういうこと、五感で感じてしまうとロクなことにならないわけだ。
(今、道のりのどれくらいなんだ?)
《当初の予定から数度ルートを変更しておりまして……三割ほどでしょうか》
(あー、なんか追加で送ってきてるのか?)
《はい。現在も後ろに……決して振り返らずそのままお進みください》
ここで振り返ったらどうなるのかな、とも思うが大人しく言うことを聞いておく。
視界をジャックしているのに、それでもなお……というのであればガチでヤバいしな。
なお、確認できる身力値の残量を示す部分が、時折減少している。
生命力は……まあゼロに等しいのでともかく、魔力が何度も使われていた。
(魔力が減っているのはなぜだ?)
《移動の障害を回避、また排除するために用いています。“貼地路在”、“千変宝珠”などが主な用途です》
(なるほど……全然気づかなかった)
こう、傾斜の関係とかで気づかなかったりしなかったのだろうか……。
それを感じさせないよう、結構前から緩やかなスロープを作っていたらしい。
しかし、改めて思う。
俺はいったい、今どんな場所を歩かされているのだろうか……えっ、避けたり排除したりしないと通れない場所なの?
異形の存在、それは人造大陸の時に出てきた邪神の眷属によるもの……だけではない。
名状しがたい先ほどの目玉の存在然り、それらを扱う強大な集団は他にも存在する。
かつて監極にて、俺に干渉していた──混沌勢と呼ばれる神々。
俺に呪いのようなものを施してきているので、彼らの手勢である可能性も充分にある。
(仮に混沌勢か邪神派閥だとして、今回動いてわざわざホテルにまで手を回した目的ってなんだろう? 俺……ってのは、さすがに自意識過剰か?)
《いえ、旦那様で間違いないかと。ただ、どちらかと言えば旦那様自身を目的としているのではなく、副次的に旦那様を狙うことが好ましかった、ということかと》
(……ああ、そういうこと)
人質、相手の行動を抑制する効率的な手段の一つ。
そして、俺を人質に出して反応がある者など極めて少ない。
──EHOにおいて、現人神となり多くの者から慕われるうちの奥さん、ルリに対してなのだろう。
無論、ターゲットとしての価値は高い
……がリスクを考慮すれば損しか無い男
普通は、そういう判断になる
p.s. 無字×2003
何だか入力に時間がかかる
……重い、早めに切り上げます




