死天の試練後 その05
1.3倍ぇだー!
異形に囲まれたホテルからの脱出、という何だかパニックものにありがちなイベント。
脱出経路を『SEBAS』に準備してもらい、現実離れした広さの施設から脱出する。
なお、早々に脱出しなかった場合……という時間制限付き。
出る過程でも、そして出た後も恐怖体験が待っているんだよな……ハァ。
「『インビジブルクローク』──“アンタッチャブル”、“孤絶ノ衣”」
姿を消す『プログレス』、そして高度な隠蔽が施された術式を発動。
同時に、透明になる魔法薬や五感で感知できなくなる魔法薬などを摂取しておく。
加えて複数の職業能力、そして[称号]。
アイテムの効能を高めるものや、隠密行動の成功率を上げられるものをピックアップして発動させておいた。
「そしてこれだな……『神聖術式:透明』」
天上世界で知った、透明になる神聖術式。
今では『プログレス』を介してインストール可能な術式の一つなのだが、俺はそれを今回用いてはいなかった。
身に纏う外套、それは『プログレス』の起動によって構築されたモノでは無い。
天上世界との取り引きを続け、手に入れた神聖術式が施された代物だった。
そこにインストールした『プログレス』を移植し、制限付きで使えるようにしたもの。
いづれは本家本元に追いつかなくなるが、成長段階が低い今なら問題ない。
「音も消しているし、魔法薬が持つ間に脱出できればいいな……」
自発的な行動で音を鳴らすまで、その存在は神の名の下に伏せられる。
冥界の神が持つという神器になぞられたその神聖術式が、異形の目から俺を守るはず。
「──“神持祈祷:イッスンボウシ”、それじゃあ行くか」
ドアを堂々と開いて先に行くと、先ほど目を合わせた異形と接触する可能性がある。
なのでまずは小さくなり、物理的に観測しづらくしておく……念には念を、だ。
「『SEBAS』」
《畏まりました──“人影”を代行発動します》
俺、そして眼前の扉に存在する影に魔力を注ぎ、一時的に物質化。
元のサイズで顕現した影法師が、俺の代わりに扉を開き──そのまま外へ出る。
俺もそれに続き、扉の外へ……瞬間、脳裏でけたたましく響く死の警鐘。
異形は変わらずその場に居り、扉から出る者をジッと観ていた。
先ほどは目玉しか見えていなかったが、その体躯はとても大きい。
十メートルはあるであろう廊下の天井に、四肢を床に着けてなお頭を擦り付けている。
影法師を見つめるその瞳──何十何百という大小形状バラバラな瞳がその姿を追う。
対して、俺を観る瞳は存在しない……そのことを安堵する暇も無く、状況が動く。
『────』
目の一つがグルグルと黒目を動かしたかと思えば、ポロリと眼窩から外れたのだ。
そしてその目玉は床へと落ち、俺の方を見て……そのままどこかへと転がっていった。
影法師の向かった先へ、異形は体を廊下にぶつけながらもそれを追いかけていく。
──方向転換ができないからか、収まっている目玉を反対側に表面で動かしつつ。
(…………いや、ホラー過ぎるって)
《旦那様、ルートを投影しますので、そちらに従って移動をお願いします。周囲の状況はあまり認識せず、あくまで矢印を追いかけていく形で》
(? まあ、よく分からんが。それが最適解ならやってみよう)
少なくとも、俺が策を講じるよりかはマシな結果になるのだろう。
周囲の警戒を止め、俺は矢印のみを見つめて移動を始めるのだった。
※目玉の異形(仮)
そっち関連の知識に乏しいため、モデルなどは特にない
四足歩行の恐竜(色はマーブル)の至る所に目玉があって、皮膚を這うように場所が動く感じ
p.s. 無字×2002
今話の感じで、週1ぐらいで文字数が増えていきます
……読む速度的にはそんなに差は無かったと思います
なのに、山田武の普段の執筆に比べて凄く掛かった気が……
…………もう1000文字しか書けない体に!?




