11話
森に囲まれたCG基地.その最上階にギルベルトとヴァランが居る.
「ガーディアンズを先に潰しておきたいところだな」
「とはいいますが,スポンサーに見せるパーツを次の期限までに入手しなければ見限られます.ガーディアンズが気付くよりも先に回収してここで防御するという形式を取るべきだと思います」
「何か懸念でもあるのか?」
「どうにもCGは適応力が低く,十分な計画を練ってからでなければ無駄に終わるでしょう.まずは次の期限までにパーツを集めて,その後で計画を立てましょう.彼らは内部から見るとこちらの想像以上に堅い」
「仕方ない,そうしよう.そうだ,今日はメールがあったか?」
「メールですか?ちょっと待ってくださいね」
ヴァランはPCのメールを起動する.情報セキュリティリテラシがCG内で最高ランクのヴァランがメール担当である.
「ああ,来てますね.トリュン博士からか.何のファイルだろう?」
ヴァランはファイルを開く.中身が空っぽだ.
「あれ?博士間違えたのかな?」
「おい,それ何か勝手に動いていないか?」
「え…」
ブラウザが開き,ゲージが動き始める.
ヴァランは閉じようとするが,マウスが動かない.強制終了コマンドを押すが,それも反応しない.
「不味い,ネットワークを切らなければ」
ヴァランはPCの下に潜ってコードを引き抜いた.その後,部屋の奥にあるPCを使い,外部との接触を強制的に遮断した.
「間に合ったか?」
「分かりません,これから調べなければ.長官は通信を切ったことをアナウンスしてください」
ギルベルトはマイクのスイッチを入れて通信を切った旨を伝えた後,マイスを切った.
「誰がこんなことを?」
「偽装できるほどこちらの情報を持っていて,その技術もあり,博士なら油断すると知っている人が犯人でしょうが,分かれば苦労しませんよ」
PC上に映像が出る.
「やあ,これを見ているということは開いちゃったようだな,馬鹿な奴だ.部下がかわいそうだ.クク…もう間に会わないぜ,無様な姿を晒したくないのならそこで大人しくしていることだな.俺達ガーディアンズが一番だ.1つのものを取りあうのに苦労して二番になる意味はない.分かるかな?…」
「ヴァラン,犯人が分かったぞ.犯人はガーディアンズだ」
映像の途中でギルベルトが声を出す.映像は流れ続けるが,時間稼ぎである.
「言うまでもないでしょう」
「叩き潰す!空いているのは誰だ?」
ギルベルトは自分の机に戻って表を見る.
「ジロラモ,グンナー,ジュールが動けるか」
「どうするつもりですか?」
「奴らは新しいパーツの場所の地図を持っていったに違いない.ならば,奴らより先に着いて叩き潰す.始めて行く奴らと調査で何度か向かっている我々では,こちらが早く着ける.それに,あのメッセージでは,我々を動けないようにしているように感じるぞ」
「(そう考えるのが狙いかもしれない…しかし,長官の言うことも最もだ.しかし,大丈夫か…)」
ギルベルトはジロラモ,グンナー,ジュールを1階の待機室へ呼び出した.
ヴァランが3人に出来事を端的に説明をする.
「という訳だ.ヴァランの言った通りガーディアンズは事前に計画を練ってからの行動のため,単純な手では捌かれる.しかし,我々は奴らよりも先にたどり着くことができる.そこに優位性がある.任せたぞ」
「任せて下さい.奴らに今までのツケを払わせてやりますよ」
「ここで一撃を加えてやる」
「……」
「よし,行ってこい」
3人は手下を率いて車に乗り,採掘場へ向かう.
「…さて,直さなければ.管理部を呼ぼう」
ヴァラン達は司令室に戻り,ヴァランはネットワークを復旧させるための行動を始めた.ギルベルトはネットワーク復旧後の3人の連絡に備えて採掘場の資料を取り出してガーディアンズの進入経路と脱出経路,ガーディアンズの基地の場所を予想をする.
採掘場についた3人はまず現地に居るCGの構成員に到着の連絡をする.
「よし,これから俺が指揮を執る」
ジロラモがグンナーとジュール,部下たちの前で宣言する.
「は?なぜお前が?」
グンナーが食って掛かる.
「CGに居るのは俺が一番長いからだ」
「価値があるのは実力だ.ただ最初からただいただけのお前より,能力を見て採用された俺の方にこそ指揮権はあるべきだ」
「はあ?縁故採用だろお前.長官にどちらが相応しいか決めて貰おうか」
「本部とはまだ繋がらないから無理だ.俺が指揮したほうが上手くいく.泥舟に乗るのはごめんだ」
「言うじゃねえか.ジュールはどっちの指揮に従いたい?」
ヴァランの頭の中では3人ならば2vs1となってバランスが取れるだろうという計算があった.
「俺は…どっちでもいい」
「このままでは埒が明かない.3分して指揮しよう」
「仕方ないな.どの道,分かれて陣取るのだから大して変わらないだろう」
「……」
「よし,行くぞ」
部下はやっと終わったのかと動き始めた.3人が何を揉めていたのか興味がないため,聞いていた者はいない.聞こえても意識していない.
3人は部隊を3つに分けて3方向に分かれた.
物陰からコバルトがその様子を見て,細い空洞を通り,ジュードたちの前に戻ってきた.
「なるほど,3人はバラバラの行動か.じゃあ俺達は2分しよう.俺とエルサとマイ,ヴィヴィとジェシカだ.俺がコバルトから相手の位置を把握する,コバルトは相手に気付かれないようにする.エルサとマイでジュール,ジロラモ,グンナーを2vs1を3回やって倒す.ヴィヴィとジェシカはパーツを探してきてくれ」
「了解」
別れたグンナーたちの前にジュードたちが現れる.
「遅かったなグンナー.失敗の少ない,いや…失敗の報告の少ない君は今度はどんな言い訳を用意できるかな?」
「その必要はない.ここでお前たちを倒す.出て来い,ファントムウィッチ」
「迎え撃てホーリー」
「いけ,ナイト」
ホーリーは槍の先から電撃が放たれる.ファントムは両手を前に広げてバリアを発生させる.電撃はバリアを焦がしながら地面に逃げる.ホーリーは宙を泳ぎ,ファントムの右後ろに回り込み,勢いをつけて槍で突く.ファントムは右手を突き出し,その先に渦を作り,その渦に触れた槍の突きを左下に反らす.勢いにつられたホーリーの体は左回転して槍の柄が前に出る.ファントムは左手の先に氷を纏った鞭を作り出し,ホーリー目掛けて振る.しかし背後から剣で背中を刺されて振り切る前に倒れてバッジに戻る.
「チッ,そいつは霧になるんだったな…」
「よし,βの力が弱った.眠らせるんだ」
「ホーリー,奴らを眠りに落として」
ホーリーの歌声によってグンナーとCGの兵士は眠りに就いた.
「よし,次に行こう.こっちだ」
ジロラモたちの前にジュードたちが現れる.
「ジロラモ,待ちくたびれたぜ.さて,CG本部と繋がらない今,何も持ち得ないお前に何ができるかな?」
「嘗めたこと言うじゃねえか.俺はCGの幹部だぞ」
「今はそれが意味を持たない.幹部ならβの力を持つ奴を率いていられるはずだぜ.ギルベルトやヴァランの影がちらつかないお前などただの雑魚.それが分かっていないのはお前だけ」
「来い,エンオ」
「エルサ,マイ,任せた」
エンオは全身に炎を纏って跳び上がる.宙で回転して炎の渦を作り,ホーリーに向けて進める.渦の中から火柱が飛び出し,地面に着火し,四方を火柱が囲う.ホーリーは槍を振り上げ,前方に水の壁を発生させる.炎の渦に衝突して霧が発生する.渦の中からエンオは飛び出し,炎の剣でホーリーに上から切りかかる.ナイトは2体の間に飛び出し,剣を持った右手を前に突き出し,左手は後ろに引き,剣を拳骨で押しつつ,相手の剣を受け流し,左手で剣を殴りつけて前に跳ね上げ右肘を引いて切りつける.その後,体を丸めて後ろに回ると足を伸ばしてエンオの胸を蹴り,宙で一回転してホーリーの後ろに立つ.エンオが怯んだ隙にすかさず,ホーリーは雷を纏った槍で突く.エンオは突き刺されてバッジに戻る.
「くそっ…早かったか…」
「今だ!」
ホーリーの歌声によってジロラモたちは眠りに就く.
「よし,次で最後だ」
ジュードに連絡が入る.
「…入手したのか.ならここにはもう用は無い.ルート10を使い撤退だ.戻れコバルト」
ジュードたちは通路の途中で合流する.
「これがそうじゃない?」
ジェシカは箱から細い金属の棒を取り出す.一見何の変哲もない棒だ.
「このレンズに反応している.こいつで間違いなさそうだ」
5人は外へ出る.
「やはり彼らでは無理だったか….まあ少しは削ってくれただろう」
出口の1つで待ち構えている集団がいた.
「お前は…ジュール,今更何の用だ」
「パーツを返してもらう.出て来い,スイキョウ」
CGの羽バッジから使い魔が飛び出す.使い魔は装飾の付いた鏡の姿をしており,鏡の奥から獣の目が2つ覗いている.
「出て来い,シェイド,奴を倒すんだ」
シェイドは杖を振り,スイキョウの下から岩が突き出し,打ち上げられる.シェイドは杖の先に冷気を溜め,右足を前に出して力強く踏み,両手で杖を持って勢いよく振って氷の弾をスイキョウに飛ばす.スイキョウは太陽光を受けて力を溜めてそれを打ち出し,氷を溶かす.シェイドが光に目が眩んだ隙に鏡の中からライオンの頭をしたゴリラが飛び出して殴りかかる.シェイドは竜巻を発生させて鏡も獣も巻き上げ,地面に叩きつける.スイキョウはバッジに戻った.
「(シェイドは強い光を受けると防衛本能により,出力が一時的に跳ね上がる.それを知らないようだな).帰るぞ,撤退だ」
ガーディアンズはその地域から脱出した.ジュールとその部下たちはグンナー,ジロラモたちの目を覚まして回った.
3人と手下たちは本部に戻ってきた.
「すみません,奴らを取り逃してしまいました」
「そうか…」
「完全な無駄足だったぜ.こいつらに付いていくなら寝てた方がマシだった」
「そうだそうだ」
下っ端たちが騒ぎ出す.
「黙れ.おい,お前とお前,反省室へ来い」
ヴァランが声を荒げて騒ぎ出した2人を連れて行く.
「一先ず解散だ.詳細な報告は私の部屋でしてもらう」
「了解」
ギルベルトは3人を引き連れて司令室に入る.
「なぜ,ヴァランはあの2人を咎めたのです?指揮に問題があったのに」
ジロラモはギルベルトに尋ねる.
「その話を聞かせてもらおう.しかし,これはそれとは毛色が違う」
「?」
「彼らが命令の方に問題があると考えれば,今後命令無視が起きる原因となりかねない.だから悪いのが我々でも,あの姿勢で臨むしかないのだ.彼らがどう思おうと,それを実現できる力を持たせてはならない」
「……」
「まあ,組織によって違うが,少なくともここではこの方針だ.ジロラモ,お前には覚悟が足りていないように感じるが?」
「申し訳ありません」
「戻りました.また後で反省室を見に行きますね」
ヴァランが部屋に入って来た.
「どうだった?」
「彼らへの認識を見直さなければいけませんね.目に見えた成果が必要でしょう」
「…考えておこう.まずは報告からだ」
CGの司令室でギルベルトとヴァランは話を聞く.ギルベルトたちの受難は続く.




