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ようこそ、リズ先生!地獄の健康診断

評価&応援ありがとうございます!

「ついに、マリア・クレストか……長かった……」


「お疲れさまです。艦長」


「いやー、楽しかったね」


「リズせんせー、いなくなっちゃうの?」


「なに、そう寂しがることはない。すぐに会えるさ。すぐにね」


「なに話してんだ?さっさと研究ステーションに行くぞ」


「今行く。少し待っててくれ」




マリア・クレスト宙域研究ステーション――

そこで研究主任の女性が出迎えてくれていた。


「AIコアの受領、完了しました。ありがとうございます。コウキ艦長」


「なに、仕事だ。そうかしこまらなくてもいい」


「じゃあな、リズ。もう会うこともないだろう」


「えーと、リズ研究員なのですが……こちらでは受け入れできません」


「え?何で?」


「実はリズ研究員、先日正式に退職願を出しておりまして、こちらとしては受理済みです。ですので、お持ち帰りください」


「そんな返品拒否みたいに言われても……」


「しかし、すでに退職願は受理されているので、リズ研究員の席はもう……」


「こちらとしても、リズを引き渡すところまでが仕事なんだが……」


「では、一度受け取った後、すぐ引き渡します。これで問題解決ですね」


「マジかよ……」


「それではコウキ艦長、任務達成、お疲れさまでした。それでは」


そういって職員は帰ってしまった。


「てかリズ、これからどうするつもりだ?」


「何、決まっている。今後もコウキのもとで我が叡智を振るってみせよう。心配は無用。すでにクルー登録は済ませてある。これからもよろしく頼むよ。コウキ艦長」


「勝手に登録まで……どうやった?」


「こう、夜中にちょちょいと」


「アイカがわからないはずないだろ」


「アイカくんなら天然オイル一か月分で手を打ってくれたよ」


「買収済みかよ……」


「ま、そういうことでこれからもよろしく頼むよ。コウキ艦長」


コウキはギルドに問い合わせた。

すると、リズのクルー登録は正式に受理されており、ギルドとしてはもはや介入できないとのことだった。


「もう好きにしてくれ……」


なんとなくそうだろうと思ってたんだ。こいつの引き渡しが簡単に済むわけないって。




「そういうわけで、新しくクルーになったリズだ。はい拍手」


「これでまた艦が賑やかになるわね」


「せんせー、またいっしょ!」


「リズさん、例の件、忘れないでくださいね。それと研究室のレンタル料は毎月天然オイル一缶ですから」


「また勝手に俺の知らない契約が結ばれてる……」


「しかしアイカも良く研究室明け渡す気になったな。最初はあれだけ嫌がってたのに」


「リズさんの発明で当艦のパフォーマンスが15%向上しました。残念ですが彼女の能力は認めなければなりません。研究室は新しく私用のを増設する計画です」


「却下だ。いらんだろ」


「すでにマリア・クレスト宙域宇宙ステーションでの増設作業が予約済みです。キャンセル期間は過ぎております」


「また勝手にやりやがって……」


「さあ、星海の深淵にて生まれし叡智の申し子……リズ・ベラットがクルーとなったのだ。盛大に祝うが良い!あーはっはっはっはっは!」


――また賑やかな日常が始まった。けれど、この喧騒がどこか心地よいと思ってしまう自分がいた。




「それで、リズは具体的に何ができるんだ? 発明で貢献してくれるのはありがたいけど、それだけじゃちょっと不安だな」


「ふふん、心配には及ばぬ。我は医学の素養も兼ね備えておる。船医としても大いに役立ってみせよう」


「船医か……確かにいれば便利だが、本当に大丈夫なのか?」


「我が叡智を侮るなかれ。そこらの医者など比にならん。虫歯の治療から全身機械化まで、万全にこなしてみせようぞ!」


「いや、機械化はいらねぇって」


「それなら健康診断でもしてみるかい?」


「健康診断か……キョウカのこと、調べたいだけなんじゃないか?」


「そんなこと、ないさ!まぁ健康診断ついでに、ちょっとだけ、ちょっとだけ調べるだけさ。彼女は特殊だろう?何が起こるかわからない。なら、先に調べてみるのも悪くない。そうだろ?」


「おにいちゃん……けんこうしんだんって、いたいの?」


「大丈夫だよ、注射もしないし、ちょっと測るだけさ。ちょっとだけ、ね?」


「うーん……でもなんか、せんせーの目がこわい……」


「おいリズ、ほどほどにな。実験材料にしたら承知しねぇぞ」


「ふふ、わかっているさ。あくまで健康診断、あくまでね……くっくっく」


「おにいちゃん、ほんとにだいじょうぶかな……」


「まぁ、いざとなったら止める。たぶん……」


リズは自信満々に笑いながら、艦内放送のマイクを手に取った。


「全クルーに告ぐ! ただいまより“船内義務健康診断”を実施する! 診断拒否は叛逆罪とみなす!」


「そんな法律ねぇから!」




◆第一の犠牲者:マリナ


「はい、まずは君だ! さあ、こちらの謎のドーム状装置に入ってくれたまえ!」


「ちょ、まっ……酒だけは守って……ってぎゃあああああああっっ!!」


――数分後


「……マリナさんの血液から、アルコール濃度を通り越してラムの香りが検出されました」


「それ、血じゃなくてカクテルじゃんかよ……」


◆第二の犠牲者:アイカ


「AIだからって容赦はしないぞ。君のメモリもスキャンだ!」


「はい、構いません。ですが……」


リズが診断装置を起動した瞬間、爆音と共に煙が上がる。


「……おかしいな。ハードが検査機のほうを逆にスキャンし始めた……?」


「自律型AIをナメないでいただきたいですね」


◆第三の犠牲者:キョウカ


「キョウカくん! 特に君は重点的に調べる必要がある!」


「えええ~……きょうみないよぉ……」


「ほら、キャンディあげるからさ」


「ほんと!? やるやるー!」


「ちょろい……」


――5分後、診断装置の中で


「きゃー! くすぐったいのー! なにこれなにこれぇぇ!!」


「おにいちゃーん! たすけてぇぇ!」


◆最後の犠牲者:コウキ


「さて、艦長。逃げ場はないぞ」


「お前が一番ヤバいわ!」


「安心してくれ。艦長の脳波はしっかり記録して、夜な夜な研究素材に使うから」


「やっぱ俺の健康よりお前の好奇心が心配だわ!」


リズの健康診断は艦内に軽いトラウマと騒動を残したが──

それでも、なんだかんだと今日も艦はにぎやかだ。


そして、そのにぎやかさが、少しだけ心地よく感じるのだった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


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次回もどうぞ、お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
いやぁ、艦内治安維持のために絶許(絶対不許可)だわwww アイカ何してんの・・・
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