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新たな旅路は天才とともに

評価&応援ありがとうございます!

「で、話を――って、聞いてるか?」


「んぅ……あー、カフェイン切れだ……眠い……」


リズは再び資料の山に顔をうずめ、寝息を立て始めた。


「……おい、おーい、寝るなって」


俺が声をかけるも、返事はない。アイカが傍らで淡々と言う。


「カフェインを投与すれば、反応が改善する可能性があります」


「機械か何かか?」


俺は室内をざっと見回し、中身が残っていそうなボトルを発見する。


「ほら、カフェイン。さっさと目を覚ませ」


「カフェイン!」


そう叫ぶとリズは飛び起き、俺からボトルを奪う。


「感謝する。これであと五分は我が英知を発揮することができる……」


「短いな。もうちょっと頑張れよ」


「昨日の三十時間耐久コード入力で私の体力は限界だ……」


「お前、さてはポンコツだな?」


「私をそのように呼ぶな!私は天才マッドサイエンティスト、リズ・ベラットだぞ!」


「お。元気出てきた」




「よし、目も冴えてきた。待たせたな。海賊よ。私の護送任務だったな。ともに行くことを許そうじゃないか。さぁ、果てなき旅路を!」


「いや、マリア・クレストに行先は決まってるから。あんたとAIコアをそこまで運ぶのが俺の仕事だ」


「ノリが悪いな、海賊よ。そこは、おー!と言うところだぞ」


「悪いな。ノリが悪くて」


「まあいい。長い旅になるのだ。貴様らが私の期待に応えられるかどうか、じっくりと見せてもらうとしよう」


「……ところで、いつまでそのキャラ続けるつもりだ?」


「別にキャラづくりで喋っているのではない!私は生まれつき、この口調だ」


「うそつけ。寝言を言ってるときは普通だったぞ」


「忘れろ!そんなこと、私は知らない!私は天才マッドサイエンティスト。この口調こそが真実の私なのだ!」


「そうかい」


話は通じるが、なんか……疲れる。


「ん?それは、アンドロイドか?」


「うちの艦のAIだ」


「アイカ、と申します」


「ふむ……A等級AIか……珍しいものを持ってるな。海賊よ」


「そんなに珍しいもんかね。けっこうポンコツだぞ、こいつ」


「“ポンコツ”、カウント:1。あと四回で制裁措置を実行しますよ。艦長」


「まだやってたのかそれ……」


「はっはっはっはっは!愉快なAIじゃないか!ここまで人間的になれるのは本当に珍しい。本体は艦の中だな?分解していいかい?」


「お断りします。艦長、リズ・ベラットの危険値をワンランクアップさせました。問題ありませんね?」


「勝手に何やってるんだよ、お前は」


他愛のない話は続き……


「それじゃあ、出発の準備ができたら連絡をくれ。迎えに行くから」


「了解した。数日でまとめよう。よろしく頼む。海賊よ」


「俺はコウキだ」


「そういえばそんな名前だったな。改めてよろしく頼むよ。コウキ艦長」


「はいよ。それじゃあ、俺たちは帰るから」


こうして“厄介な天才”との会合は無事に済んだのだった。




数日後。俺はリズを迎えに、研究ステーションへとふたたび訪れていた。


「これが君の艦か……ずいぶん個性的だね」


「見た目はともかく、中身は悪くないぞ。ほれ、ついてこい」


俺はリズを連れて《ヘッジホッグ》へと乗り込む。食堂では、すでに皆が集まっていた。


「連れてきたぞ。彼女がリズ・ベラット。自称天才マッドサイエンティストだ」


「自称ではない。私は天才マッドサイエンティスト、星海の深淵にて生まれし叡智の申し子……リズ・ベラットだ。リズと呼んでくれて構わない。年齢は十八。好きなものはカフェイン。よろしく頼む」


「私はマリナ。戦闘艦のパイロットよ。よろしく」


「わたしはキョウカ!よろしくね、リズおねえちゃん!」


「ふむ……この子、普通じゃないな?」


「……何のことだ?」


「隠さずともいい。私の口は堅い。誰かに吹聴などしないさ」


「さてね」


「お嬢ちゃん、ちょっと調べさせてもらえないかな? 本当に、ちょっとだけ。ほんの――細胞ひとつ分くらい」


「や!」


「リズさん、そこまでです。キョウカさんが怖がっています」


「仕方ない。今回はここまでとしておこう。気が変わったら、いつでも声をかけてくれたまえ」




「それで、私は何処で生活すればいいのかな?」


「客室が一部屋空いてる。そこを使ってくれ。鍵はアイカが管理してるから、あとで渡してもらえ」


「了解しました。準備しておきます」


「食事は食堂で。フードロボットが24時間動いてるから、いつでも使って構わない。味は……まあ、悪くないぞ」


「栄養価は完璧です。味についても、さらに改良を重ねています」


「で、そこの廊下をまっすぐ行くとバーがある。大体マリナが入り浸ってるから、何かあれば相談しろ」


「ちょっと!なんで私が“バーの主”みたいな扱いなのよ!」


「他に誰がいるんだよ、酒担当は」


「……まあ、否定はしないけどさ。へへっ。カフェインの次はアルコールってことで、リズちゃんも一杯どう?」


「遠慮しておこう。我が天才的な脳細胞にアルコールは不要だ。冴えた頭脳こそ、我が最大の武器だからな!」




「それじゃあ、マリア・クレストへ向かうとするか。アイカ、発進準備」


「了解しました。ヘッジホッグ、発進します」


低く唸る音とともに、艦がゆっくりと動き出す。

目指すは新たな宙域――マリア・クレスト。

これから、どんな出来事が俺たちを待っているのだろう。




「リズおねえちゃん、ねこちゃんは?」


「ああ。彼なら研究ステーションで昼寝でもしてるんじゃないかな」


「ねこちゃん……また、あいたかったのに……」


「ふむ。ならば、ねこロボットでも作ってあげようか?代わりに、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、君を調べさせてもらえたら」


「やだっ!」


「むぅ……残念だ」


――こうして俺たちの短くない旅が始まった。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


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