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超最弱!? 防御魔法の使い方  作者: カンタロウ
3章 怪力の巨人――スノータイタン
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幕間 訪れた平和

 奇跡は連続で起きなかった。



「ゲホッ……ゲホッ」



 ケンイチは、木の天井に向かって大きな咳をする。

 なぜこうなったか――それは寒空の下、死んでいたとはいえ冷たい積雪の上で寝ていたことが影響して風邪をひいてしまったのだ。

数日間はこうだろう――と、ブルーノに言われ、ベッドに寝ている。



「せっかく生き返ったのに、動けねぇじゃん……ゲホッ」



 また咳を吐きだし、一息つく。

 暇だ――とにかく何もできなかった。ただただ天井の木の板を右から左に数えて、また左から右に数えてを繰り返し、時計を見る。それしかできることがない。


 この世界にスマホがあればいいのだけれど、生憎それはあの世界に置いてきてしまった――いや、忘れてきたと言うべきか。まぁとにかく、この世界に暇を潰せる電子機器が存在しない。

 魔法と魔物が共存する世界でも、風邪になれば退屈となる。

 そんな世界だ。



「あぁ暇。とにかく、暇」



 天井の木の板――24枚をもう一度数えようと思ったそのとき、正面の扉が開いた。

 ケンイチは来客に大喜びし、目線だけを向ける。



「入るよーケンイチ」



 その人物は、リーベだ。自分を生き返らせてくれた命の恩人であり、幾度もの危険を潜り抜けた仲間の1人。

 彼女はお盆を持っており、その上には水が入ったコップと湯気が立つ土鍋が乗っていた。



 ケンイチは、興奮する。

 それは、この状況で唯一楽しめる事――つまり、食事である。

 体調不良によって自由が封じられても、五感だけは縛られていない。むしろ不自由だからこそ十二分に研ぎ澄まされており、何かしらの刺激――今回で言う所の食事は、彼にとって最高のエキサイティングな経験と言える。

 あぁ刑務所ってこんな感じなんだろうな、と思いながら嗅覚を最大限に活用するケンイチであった。



「お腹すいたかなぁと思って、持って来たけど良かったかしら?」


 椅子を持ってくるなり、隣の机にお盆を置いた。



「全然、大丈夫。むしろ食べたくて食べたくて仕方なかった」


「それなら良かったわ。風邪ひくと、食事しか楽しめないからねぇ」


「そうなんだよ。ほんと、よくわかってらっしゃる。流石、最強リーベ」


「からかわないでよ!」



 友達を軽くこつく程度に、彼女は言った。

 

「食べるなら起きなさい」



 あっ自分でやるやつか。

 大体のお決まりとして、この状況になれば“あ~ん”や“ふーふー”が起きると考えていたケンイチ。だが現実は、自分の口で冷まし、自分の手でスプーンを掴んでお粥を食べた。

 少しだけ、やってくれてもいいんじゃない? と言った淡い期待を乗せた視線を送ったけども、全く気付かれることなく、完食してしまう。


 味は、普通に美味しかった。例えるならトマトのリゾットで、お米は日本と比べたら若干細くて、例えるならタイ米に近い。

 歪で好都合――それが改めて実感できる現実であった。



「少し体調よくなったようで、良かったわ。この後、ローナさんたちとも話す機会があるんだけど、どうする?」


 おっ話せるのか――ケンイチは、すぐさま「やりたい」と答えた。

 ……もちろん邪な考えを持っているのだけれど、それよりも彼女たちの顔が見たかった。少しでも多く知っている人の顔を見て、自分が死の淵から生き返ったという安心感を得たかった。



「わかったわ。じゃあ、そのときになったらまた入るね」


 リーベはお盆を片手に部屋を出る。

 さて――と、天井へと目を向けつつも、瞼を閉じた。きっと天井を数えたくなかったのだろう。



◆◇◆◇◆◇




「生き返ったら体調不良で寝込むなんて。笑える!」


腹を抱えて笑う幼女――の見た目をした一般成人女性カヤコは、言葉通りの大笑いをした。足を上げ、涙を蓄えながら、口を開き「あはは」と大きな笑い声を水晶玉の中で響かせる。


 この世界に電子機器が無い代わりに、魔法が進化した道具がある。その1つとしてあるのが水晶玉である。大きさはダチョウの卵ぐらいで、透明だ。ムルムルが使っていたのと同じに見えるけど、リーベ曰く全く違うらしい。



「そんな笑わないでくださいよ……。結構、大変だったんですからね」


 主にリーベが――にこやかな表情で水晶玉を見る彼女。それは腹を立てているわけではなくて、スノータイタン戦から生き残った喜びだ。

 他にも水晶玉を見ている人が居て、それはエリスとである。一応面識があるらしくて、最初軽く話していた。

 ちなみにハンドックは現在、ボランティアで外に出ていた。



「しかし、無事で何よりですよ、ケンイチさん」


 落ち着いた声でローナは言う。

 

「ほんと、そうだぜ。オレけっこうヒヤヒヤしてたんだ」


 椅子を後ろに倒して揺らしながら、エリスはそう口にする。

 そこに居るのは、リーベをからかい飄々とするエリスだ。



「でも、アンタ泣いてたじゃん」


 仕返しとばかりにリーベが突っつく。


「それは、言わない約束だろ」



 エリスは前のめりとなり、リーベに対して険しい顔を向ける。

 ただ実際そうであった。

 目を覚ましたケンイチを前に大泣きしたのは、エリスである。



「良かった。本当に、本当に良かった」


 と言いながらグシャグシャな顔で、抱き着いたぐらいだ。



 彼女は誰も悪くないにもかかわらず、その責任を自分に背負わせ、償いとして自殺しようとしていた。いち早くハンドックが気付いていなければ、彼女はもうこの世に居なかっただろう。



「ほんとリーベのおかげだよ。まっさか、あんな魔法が使えるとは、思わなかった!」


 嬉々としていうケンイチに、挙手する者が1人――それは水晶玉の向こうで、今まで長い髪をいじっていた人物。



「そのコトについて、あたいなりに調べてみたのネ。てことで、リーベ質問。最近おかしなことナカタ?」


「おかしいことですか……」


 顎に手を当て数秒考えた。しかし、どうやら思い当たる節はないらしく、首を振りながら「まったく」と言葉を口にする。



「んー。なら、質問を変えるのネ。アナタ、最近魔法の威力が上がった――と話していなかったカイ?」


「ありましたね、そんなこと。……でも、それとこれ関係あるんですか?」


「あるネ、大いにある。まず魔法を覚える方法は、誰かに教えてもらうことが一番だって知ってるよネ?」


「もちろんです」


「でも、もう1つあるのネ。ただこれは、解明してなくて、あくまで憶測の話になるけど、知りたいカイ?」


「はい、知りたいです」


「おけー、おけー。リーベに新しい魔法が目覚めた理由は、炎魔法が威力あがったこと――つまり、あふれ出る魔力が反応したということネ」


「? よくわからないんですが……」


「まっ、簡単に言うと、どの分類にも属さない無色透明の魔力が想いに共鳴した結果、回復魔法へと形を変えたってことネ」


 リーベは、その話を聞き終えた後「たしかに」と、納得する部分を見せていた。



「これは、あたいの予想でしかないから冗談半分で受け止めることネ」


「わかりました。それでも根拠しか感じないのですが……」


「だてに魔法鑑定士やってないてことネ」


 ニヒヒ、とムルムルは笑う。


「…………」


 待てよ、とケンイチは手を上げた。


「俺、質問があります!」


「なんだネ?」


「俺にももし余分の魔力があれば、新しい魔法使えるのでしょうか?」


「あればネ。でも、貴様は無理ネ。余った魔力が全くないアルヨ」


「………この先ってパターンは?」


 手をひらひらと振りながら、


「それもないのネ。もう諦めろ――いやだったら農家になることネ」


 どんだけ農家を推すんだよ!

 ケンイチは、がっかりと肩をすくめた。



「まぁでも、精進することネ。地道な努力こそが人を成長させるのに一番大切アルヨ」


「なら、お前得意だな」


 エリスが目を向けてくる。


「根性が取り柄って節もあるし、気長にやってくかぁ」


「そうだぜ、ケンイチ!」


エリスに背中を叩かれる。

 痛みが全体に入り、神経を刺激したが、気を引き締めるには十分だった。


 身勝手ではありますが、1ヶ月ほど休ませていただきます。

 次回は7月20日から更新を再開します。

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