表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超最弱!? 防御魔法の使い方  作者: カンタロウ
3章 怪力の巨人――スノータイタン
44/52

3-9.助けてほしい。ただそれだけ

「…………ッ!」


 細い剣先がスノータイタンの頬をかすめる。眉間を狙っていたはずなのに、気がつけばそこを突けなくなっていた。



「…………」


 原因は、疲労。

 自分のスタミナを考えた戦い方を導き出して戦闘を繰り返しているのだが、それでも時間の流れには抗えない。時が経てば経つほど、精神が擦り切れ、体力を奪い取られ、気がつけば自身の腕や足が鉛のように重くなっている。



「ケンイチ……」


 気つけば、リーダーの名を呼んでいた。彼には彼の仕事があって役割があるのに、求めるのはあまりにもおこがましいのはわかっていた。それでもやっぱり自分を助けてくれたヒーローに、ここまで引っ張ってくれたリーダーに、助けを乞いたくなる。



「…………ッ」



 いつしかリーベは、下唇を噛みしめていた。戦闘中であるにもかかわらず、自分の弱さを咎めるように強く歯を突き立てて、潰す勢いでギュッと閉じた。



 プチッ。

 唇が裂けて、血が垂れる。

 自戒の念が途切れることなく、心にはポッカリと弱さだけが募った。


 それが命取りになるとは知らずに――突然、スノータイタンの動きが変わった。どうやら、この魔物はリーベの戦い方に慣れたらしく、攻撃を交わし始める。

 巨体から想像はできないほど軽やかなステップで、リーベの剣先を避けた。どれだけ突いても、どれだけ腕を伸ばしても、それは当たらない。



 ――なんで、なんで、なんで!


 振っても当たることが無い攻撃に、いつしか焦りが募る。どうすれば当たるのかわからない。得意の炎魔法は使えないし、どうすればいいのか思いつかなかった。

 

 ――当たれ、当たれ、当たれ、当たれ!



 攻撃する事ばかり集中していたから、全てが見えていなかった。突然、雪に足を取られ、リーベの体勢が崩れた。視界が下に落ち、白の世界が満ちる。そんな中、視界の端に見えた岩石のような大きい茶色の拳がピクリと動くのが見えた。

 


 ――ヤバい。



 自分の右手はレイピアを握り、左手はバランスを取ろうと後方に向いている。もしここで攻撃が来たら、確実に防げない。

 スノータイタンに殴られたら確実に肋骨は折れて、内臓は潰れるだろう。

 未知の痛みを前に体が冷え込む。


 どうしてこんなときに、視界がスローモーションになるのだろう。できれば、早く終わってほしいのに――リーベの願いとは裏腹にゆっくりとした世界の中、スノータイタンの拳が動いた。

 軌道から考えると、それは横腹か。肘が曲り、大きな拳ががら空きになった側面に向けって振られる。


 ――耐えろ。


 少しでも痛みを抑えるために歯を噛みしめた。しかし、それでも恐怖は拭えない。

 願うはただ一言――



 ――お願い、誰か助けて。



「シールド!!」


 瞬間、スノータイタンの体勢が崩れた。膝を雪に付け、頭が下がっている。


「リーベ今だ!」



 誰か判断する前に――いや、だれが助けてくれたのか、りーべにはわかっていた。だから、体が勝手に動いている。


 右足で踏みとどまり、スノータイタンの頭頂部に狙いを定める。そして、手に持っていたレイピアを勢いよく突き立てた。鉛のように重かったはずなのに、まるで蝶々のような軽い動きで、スノータイタンの頭蓋骨を貫いた。



 それからもうひと押しとばかりに力を込め、レイピアの剣先がスノータイタンの頭に消えていく。

 スノータイタンは痙攣しながらそのまま倒れ、動かなくなった。

でもリーベは心配となり、再度力を込めた――ところで、誰かに手を掴まれる。



「それ以上は、いいだろ」


 見ると、ケンイチだった。


 彼が止めている――それは十分に安心できる材料だ。気づけば、リーベは両目から冷たい涙をを流していた。まだ敵がいるのに、倒さなければならない魔物がいるのに、彼が助けに来てくれた事実に感情を爆発させてしまう。



「大丈夫か?」


 困った顔で自分の顔を見てくれる。

 なんて幸せなのだろうか――気持ちが満たされ、リーベは膝を折る。



「よく頑張ったよ。ありがとう」



 溢れる感情によって喋れない。そのかわりに、リーベは首を横に振って意思を表明する。



「ちょっと休憩してろ。俺が代わりに戦うからさ」


「…………」


 リーベは知っていた。彼がスノータイタン2体を倒すのに数分の時間を消費し、1体のスノータイタンが退散するためにシールド2枚使っていたことを。

 それでも、彼はあんなに手こずってもなお自分のために戦ってくれていた。


 ――ここで甘えるのは良い選択とは言えないけど、ちょっとだけならバチは当たらないよね。



「少しだけ休憩させて」



 リーベは簡潔に、自分の意志を表明する。全ては自分の体力を回復させるために、気持ちを落ち着かせるために――なんて思っているけど、本当は…………ちょっと甘えたいだけだ。

 今まで優しくない人とパーティを組んで、散々貶されてきたあの痛みを少しでも緩和させたかった。



「いいぜ! 俺を信じてくれよ」



 ケンイチは、ショートソードを抜いて前に立ってくれる。しかも、自分の前に1枚のシールドを設置して。


「さぁこいよ、デカブツ!」


 ケンイチは、一体のスノータイタン目掛けて攻撃を仕掛ける。

 一方リーベは、オレンジ色の半透明の板に手を重ねていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ