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超最弱!? 防御魔法の使い方  作者: カンタロウ
3章 怪力の巨人――スノータイタン
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3-3.報告

ブクマありがとうございます!!!

 ケンイチはリーベに見たことを話し、その後ある木造建築へと入った。それはカルラ村入ってすぐの所に立っている小屋みたいなものであった。


 話によると、この建物は冒険者のために建てられたもので、できたのはつい先日とのこと。中に入ってみると、そこは必要最低限の物しか置かれていなかった。腰まで伸びた棚にびっしりと並べられた分厚い本、電気の代わりに熱石を燃料にしたコードが無いストーブ、物が散乱した長方形のテーブル。

 ケンイチは部屋に入るなり、早速防寒具を脱いだ。



「少年よ。そこにかけておいてくれ」


 そう言ってくれたのは、銀髪の男性。名はブルーノ。ケンイチよりも身長は高く、190センチある。年齢は50歳弱でありながらも、顔には皺1つ浮いておらず、見た目だけで判断すれば若者とそう変わりない。しかしながら、どっしりとした雰囲気から発せられる貫禄は、ブルーノがそれなりの年月を生きていたんだと本能で感じてしまう。

 ブルーノは、今回ネーヴェックの調査で着いてきた科学者。そのため仕事着としての白シャツと黒のズボンを今も着ている。



「わかりました」



 入ってすぐの壁にはフックが付いており、2つの防寒具が吊り下げられていた。ケンイチは、同じようにして防寒具をかけた。


「さて、椅子は………」


 ブルーノは、まわりを見渡して椅子を探す。しかし、この部屋に座るものは置かれていない。


「立ったままで大丈夫です」


「そうか。すまないね」



 ケンイチの気遣いを汲み取って、ブルーノとそのまま話すことになった。


「もう1人が戻ってくるはずなんだが……遅いな」


 ブルーノの目線がケンイチを越えた先――扉へと向けられている。察するに、壁に吊るされている黄色の防寒具はきっとその人のだろう。

 どんな人なのか――会って話したい。



「まぁいいか。とりあえず、話したまえケンイチくん」


「わかりました」


 一呼吸おいて、自身が見た影についてありのままのことを話した。


「――と、言うものを見まして」


「なるほど」


 人中に人差し指の第二関節部分を置いて、ブルーノは考える。


「…………」


 外で風の音がする。今も雪が降っているのだろうか。あぁ遊びてぇ――雪とは無縁の地に生まれ落ち、それから16年間生きてきた。異世界に来てからも雪には、縁が無い。だから正直、遊びたかった。

 ……が、ここでは我慢。異世界では15歳以上が成人という扱いになっており、ケンイチはこの世界の中で大人として生きる必要があった。



「それは、ネーヴェックで間違いないだろう」


「やっぱり……」



 今でも覚えている。角が生え、翼をばたつかせた黒い影――それは、冒険者が倒すべき相手であり、カルラ村とラロット村に間接的な影響を与えたドラゴン。

 それがあそこに居たということはつまり、


「いつかこの村も襲われるんじゃないですかね」



 扉の音と共に、誰かがそう言った。


「そういうことだ」


「冒険者の勘って頼りになりますねー」


 ケンイチの隣に立ち、手刀を上げる少年。名はソル。強面な顔をしているから信じにくいが、年齢は同じ16歳だ。金色の髪をかき上げ、クリスタルのような銀色の目を特徴としている。身長はこの中で2番目に高く、180センチ弱。

 恰好は比較的ラフだ。黄色の長袖と茶色の長ズボン、そして皮のブーツ。



 ――さっきまで外に居たんだよな。



 窓から見える銀色の世界は、小さな白い粒が横殴りに落ちており、明らかに寒い。しかし、ソルはそんな外で防寒具を着ることなく、こうして戻ってきて今平然としている。

 ケンイチは、ついうっかりと彼の顔を一点に見ていた。すると、彼は恥ずかしそうにはにかみながら、


「そんな顔で見るなよー。照れるだろ」


と、茶化した。

 ソルは同年代と言うのも相まって、気楽に話しかけやすい。だから、ケンイチは彼にきくことにした。


「その恰好で外に?」


「おん。だって寒くないし」


「は?」


 いやいやいやいや――もう一度外を見る。そこには変わらず雪景色。

 絶対寒い。誰が何と言おうと、寒いに決まっている。

 


 「あっもしかして魔法か。それならあり得るな」


 ソルは鼻で笑い、親指を立てる。

 

「ただのマジックさ」


「はぁ」


 納得した――が、否定する。絶対魔法だ、と。

 ブルーノは眼鏡の位置を調整し、「さて」と声をあげる。



「今回ケンイチくんが見たと言われる影――ネーヴェックがカルラ村の付近に現れたということは、今後も姿を見せるだろう。村の守りを固めると共に、あすの朝から調査に行ってもらいたい。ソルいいだろ?」


「んあ、全然問題ないっすね」


 彼は一瞬たりとも迷いを見せず、ブルーノの言葉を了承した。

 ソルは冒険者としての実力が買われ、C班の班長を担っている。ちなみにC班というのは、ケンイチが属している班で、仕事としては魔物討伐が主だ。

 他にもA班とB班があり、Aは建築関係の復興、B班は村の護衛となっている。内わけとしては、A班15名、B班10名、C班30名となっている。そして、★3冒険者が班のリーダーを務めている――ということだ。



「じゃあ、明日C班を連れて、外回りをしてくれ。道中出会う魔物が攻撃してきたら討伐して構わまない。その分の報酬を支払われる」


「しゃー! やる気がみなぎりますわ」


 ソルがガッツポーズをした。


「ただし見たこと全て報告すること」


「魔物の数も?」


「当たり前だ。魔物を見た数、討伐した数、状況、時間、気温――全てを事細かに記し、帰還次第すぐに報告しろ」


「めんどくさ……いけど、まぁいいや。了解でーす」


 ブルーノから大人の余裕が見えた瞬間であった。

 ソルの態度に表情一つ変えず、顎を扉に向ける。


「では、帰りたまえ」


「はい!」


 大きな返事をし、ソルは回れ右をする。ケンイチも同じようにしたそのとき、「ケンイチくんはここに居なさい」と指示される。

 俺もう帰りたいのに――なんて言葉は発さず、「わかりました」とだけ返事をし、その場から一歩も動かなかった。


 扉が閉まり、ソルは外に出て行く。ブルーノはそれを確認し、テーブルの上へと目線を動かす。


「前回、きみが狩ったゴブリンを覚えているか」


「はい。覚えています」


 ザベス一行を全滅した緑の魔物。卵状の頭で、武器を持ち、二足歩行で行動するさまはゲームでみたゴブリンとまんま一緒だが、実際は残酷であった。自分の快楽のために人を殺す――ケンイチの記憶の中では、そうなっているし、図鑑でもそう記されている。

 忌々しい記憶から逃げるように、ブルーノの顔を見た。



「きみたちが狩ってくれたおかげで、冒険者の情報はゴブリンたちに漏れることはなかった。ありがとう」


「…………」


「もしあそこで全滅させていなければ、報復という形でラロット村は危険になっていた。彼らは集団で生きて、集団で生活することを大事にしているから、仲間意識がどの魔物よりも強い」


 図鑑で読んでいたから知っていた。ザベス、ロル、カッシャの葬式を終え、その日のうちにゴブリンのページだけは何度も何度も何度も読み返した。だから覚えている。一言一句間違えることなく、その情報を述べられる。

 一体なにが言いたいんだ、ブルーノは。



「冒険者の調査によれば、死んだゴブリンを探しているらしく今は危険が無いようだが、いつ危険になるかわからない。そこでケンイチくんにお願いしたいことが1つあって」


「はい」


「この調査が終わったらゴブリンキングの討伐をお願いしたい」


「…………!!」


 シユと約束していたから、願ったり叶えたりだ。


「もしよければなんだけど、できそうか?」


 見下ろしたブルーノの目には、なんの感情も見えない。しかし、彼が本心からお願いしていることはわかった。


「やります。やらせてください!」


 ブルーノは、安心したのかクスッと口角を上げた。


「よかった」


 と、声を漏らす。

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