表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超最弱!? 防御魔法の使い方  作者: カンタロウ
2章 狡猾に笑う緑色人――ゴブリン編
18/52

2-3.謎を追って

 ケンイチが乗っている馬車は運転手――バルの所有物である。たまたまラロット村に行くからという理由で乗せてもらった。最初はツンとした表情で口数も少ない堅物だと思っていたが、今では頭に両手を抑え、ぶつぶつと念仏のように何かを囁いている。



「俺はやってしまった……取り返しのつかない事を……」



 見てられない変わりようにケンイチは声をかけれずにいた。

 リーベは少女の元に歩み寄り、無事を確認する。

 耳の下まで伸ばした、栗色の髪。顔の幼さと手足の短さから察するに、年はまだ10もいっていないだろう。恰好は、可愛らしいピンクのワンピースであるが、少々泥で汚れている。

 腕には数か所の切り傷ができているが、足は丈の長い服と暗めの靴により、しっかりと守られていた。



「…………」


 手や足を確認したリーベが彼女を抱きかかえる。


「どうやら気絶している見たい」


 微かに胸が上下する動きを見て、ほッと一安心する。

 ただちょっとした違和感というか既視感があるけど。

 ケンイチは、少女の顔をじっと見る。一体どこで見たのか、脳内に保管されている記憶を巻き戻した。

 昨日、1週間前、10日前、1カ月前、2か月前――その瞬間、「あっ!」と大きな声をあげる。



「急にどうしたのよ」


 ビックリしたことを恨んでいるのか、強めた語気で彼女は喋っていた。



「思い出したんだよ」


「何を?」


「この子を……」


 ケンイチが顎をしゃくって、少女だと示す。

 リーベはまだわかっていないようで、首をひねっていた。


「ほら、あのときだよ。道具屋カヤの隣で助けた少女じゃねぇか」


 ケンイチの言葉を難しい顔で受け止めながら、自分の手中で眠る少女を見た。

 

「あっ!! 確かに」と、目を大きく開いたリーベが何度も頷く。

 どうやら納得したようで、お互い目線を合わせた。


「ほんとだわ。うん、その少女じゃない」


「だろ。なんかあったんかな」



 どこから現れたのか――それを知っているのは、運転手だけだ。

 リーベが少女を荷台へと移動させてもらい、ケンイチは事情聴取をすることにした。と言っても、警察のようなかしこまったものでもなく、フランクな気持ちだ。

 ただ運転手の顔からは尋常じゃない量の汗が流れ、青白く変えた唇を小刻みに震わせていた。



「あの……!」


 強めに声掛けをしたことが功を奏したのか、運転手はすぐに顔を上げる。


「わ、悪いね。こんなことになっちまって……オレ気を付けてたんだけどさ」


 どうやら轢いた、と思っているらしい――少女は大きな怪我をしていないから、その事実はあり得ないのだと彼に話した。


「そ、それは本当か」


 みるみるうちに顔色は良くなり、元の彼に戻った。だけど、流れる汗は止まっていない。

 彼は頭にターバンを巻き、薄いジャケットを羽織っているから、暑いのかもしれない、と思いつつも同じ目線に姿勢を下げた。



「そうなんです。もし轢いたとしたらきっと大きな怪我を負うはずなんです。でも、それが見当たらなくて――あってもそれは切り傷でして、馬とぶつかってできたとは到底考えられません。確認してみますか」


 ケンイチの言葉に何度も頷き、彼は立ち上がる。



「そ、そうだな。一応自分の目でも見ておきたい」


 運転手と共に荷台へと登る。

 彼もまた少女の顔を何度も見て、安心したのか、顔から生気が抜ける。



「よかった……轢いてなかったんだ」


 その一言を噛みしめるように彼は呟いた。


「どうしてこうなったのか調査をしたいので、すみませんがバルさん、少女がどこから飛び出したのか教えていただけませんか」


 リーベの声に「あぁそうだな」と反応する。


「たぶんだけど、こっち側だ」


 指を刺したのは右側――そこに一体何が。



「わかりました。ワタシたちは調査をしますので、少しの間待っていてもらえませんか」


「もちろんだ」


 しかし、その後想定外の言葉をリーベが喋る。


「もしアタシたちの帰りが遅かったら馬を走らせてください」


 まじか――体力には自信があるけど、最悪の場合徒歩になるのか。

 反論できる雰囲気でもないし、ケンイチは言葉にしなかった。


「それは構いませんが……でも、それだと――」


「お構いなく。そうでしょケンイチ」


 この状況で「それはよくない」なんて吐けない。

 ケンイチは頷いた。


「そのほうがいいですね」


 心の中では泣いていた。


「わかりました。では、無理をなさらず気を付けてください」


 ケンイチとリーベは荷台から降りて、バルが指さした方向へと向かう。

 ただ、ちょっとばかしビビっている人が1人――それはリーベであった。



◆◇◆◇◆◇



 森の奥深くに入った男女のペアは色々と話し合った結果、そのまま下ることにした。


「緊張しているのか」


 後方を歩くリーベに声をかける。


「少しだけね」


 その声は上ずっていた。



「大丈夫だろ。なんとかなるって」


「そんな適当な……」


「それにヤバかったらヤバかったで、そのとき考えればいい。今は、とりあえず何があるのか探しに行こう」


 ケンイチがそこまで言うのなら、と言った表情で後ろを付いてくる。

 そんなに怖がるものか、と考えるが、それはのちにケンイチも思う事となる。この世界がゲームではないからこそ、死んだら終わる現実だからこそ、彼女がビビっているわけを。


 そのとき、荒い音が耳に入ってきた。ザザー、ザザー、と連続的に流れるその音は、川だ。

 ケンイチとリーベは音の鳴るほうへと近づく。頬に涼しい風を浴びながら、足を進め、木陰に身を潜ませる。

 リーベが顔を出して、目視で確認した。


「何か見えたか」


 ケンイチが小声で喋りかける。

 彼女はすぐさま顔を下げた。そこには緊張した面持ちで、首を振る。

 何か居るのか、まさか魔物が――顔を上げようとしたが、腕を引っ張られる。そして、耳元で口を近づけ


「だめ。気づかれちゃう」


 と、リーベが囁いた。


「別に問題ないだろ。何がいけないんだよ」


「いいからダメな物は、ダメ。やつらに勝てない……」


 ビビっている――彼女は怖がっていた。


「どうして」


 ケンイチに答えようとしたその刹那、頭を何かが霞める。それは、木に刺さると反動で揺れていた。

 顔を上げ、刺さったそれを見る。


「…………」


 2人は息を呑む。

 そこにあるのは矢だ。60センチほどの木の枝に、尖った石を縄でくくりつけた歪な形をしていた。

 気付かれたのか。奥のほうがギャーギャー騒がしく、足音が近づいてくる。

 出るなら今しかない――ケンイチはリーベに確認もせず立ち上がった。


「誰だ、お前ら!」


 河原に居たのは、2足歩行の化け物だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ