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超最弱!? 防御魔法の使い方  作者: カンタロウ
1章 空を覆う黒い影――ワイバーン編
10/52

1-8.この世界について――①

ブクマありがとうございます! 


2022/5月11日 加筆修正を行いました。

 全てのワイバーンは、どこか遠くの地へと飛び立った。そこは、きっと誰も知らない所だろう。



◆◇◆◇◆◇



 冒険者たちは、冒険者協会 王都ルティーナ支部――中央部へと集まっていた。

 ただある2人を除いて。



「ここにお休みください」


 その2人というのは、ケンイチとリーベだ。彼ら――特にケンイチは街を救った英雄として少々手厚い歓迎を受けていた。

 ただ実際は、仮の冒険者が生気冒険者と同じ場所に置くわけにはいかない――とのこと。ローナの説明によると、ケンイチには色々なことを説明する必要があり、今の段階で必要のない説明による混乱を防ぐためであった。

 とはいえ、別室で休憩できるのは喜ばしい事だ。これにより緊張することもなく、リラックスした状態で休める。



「部屋が大きい!!!」


 ケンイチは入ってすぐ興奮していた。

 2つのベットが部屋の端に設置され、中央にはテーブルと2人掛けソファ。壁には大きな針時計。そして、天井にはシャンデリラがぶら下げられており、よく見ると電球があった。

 1879年エジソンが開発したと言われているそれが、そこに。



「えぇ……」


 驚きに声が漏れる。

 街は中世だが、こういう技術を見るとそうとは言い切れない。まぁとにかく、チグハグすぎだ。

 まるで、様々な時代のいい所を取って集めました――みたいな。


 異世界だからあまり考える必要はないかもしれないが、気になってしまう。

 こうなれば歴史の勉強をしっかりとしておけばよかった――と後悔するほどに。


 不思議な気持ちを抱きつつ豪華な部屋は見られないと思い、目に焼き付ける。



「これぐら普通よ」


 松葉づえをついた女性――リーベが入ってくる。

 白と赤の戦闘服から水色の患者服と草履。腕や足に白い包帯を巻き、けが人となっている。

 ケンイチは、エスコートしつつ彼女をベッドまで運んだ。本来であれば担ぐべきなのだろうが、1人の人間を持てるほど腕力には自信が無かった。



「ありがと」


 端に松葉杖を置いて、ベッドで横になる。



「どこも痛くない? なんか必要な物は?」


 ケンイチのまくしたてるようなお節介に少々嫌気がさしたのか、ため息を漏らす。


「無いよ、大丈夫だから」


「わかった。必要ならいつでも呼んでくれ」


「えぇそのときは、お願いするわ」


 リーベが目を瞑ったのを確認し、ベッドから離れ、そして、


「いやっほー」


 小声で発しながらソファに寝転がった。

 ソファは弾力があり、跳ねる跳ねる。まるでシールドみたいだ。

 気持ちがよく寝てしまいそうになったタイミングで、横開きの扉が音を立てる。



「お邪魔します」


 大きな胸を携えた人間――ローナだ。

 手にはいっぱいの書類を抱え、一礼したあと部屋に入る。

 ケンイチはすぐさま立ち上がり、会釈した。



「あっ気にしないでください」


 ローナから言われ、ソファに座った。

 それから彼女はテーブルの上に書類を置き、隅にあった椅子を持ってくる。そして、ケンイチの正面に座り、書類を広げ始めた。



「ケンイチさん。ありがとうございました。おかげで街の被害は最小限に抑え込むことができました」


 ――最小限……?


 あれのどこが少ない被害で済んだと言うのだろう。記憶が正しければ、街は燃え、家は崩れての大災害であったのだが。



「魔法使いの数、場数、上級者冒険者の少なさの観点からもっと被害が出る、とわれわれ冒険者協会は考えていました。しかし、実際はケンイチさんによる機転の利いた戦い方とワイバーンの意識を全て集中させたことによって、街は崩壊せず済みました」


「まじか」


「今は冒険者と衛兵の数が手薄でしたからね」


「どれくらいだったんですか?」


「えぇと……ワイバーンに参加した冒険者はケンイチさんたちも含め全部で30名です。内わけは、★1冒険者28名、★2冒険者1名。そして――」


 仮冒険者の1名。


 結構、少なかった。てっきり、もっといるかと思ったんだが。まぁ終わった事だし良いか。



「衛兵も参加したんですか?」


「それは勿論です。ただ大部分が市民の誘導、城の防衛、消火活動でしたが」


「そうだったんですね」


 異世界情勢とかわからないから、ただそう言うしかなかった。

 ローナは咳払いする。



「今回の話と言うのはですね……改めてケンイチさん」


「はい」


「研修を受けてもらうことになります」


「はい?」


 間抜けな声が出る。


「研修です――まぁ2か月間の勉強会ですね」


 勉強は得意ではない。好きじゃないし、やるのは苦痛でしかない。

 外で遊んだり、キャッチボールしてるほうが百倍楽しい――まぁ本当はゲームしたいけど。



「それが終わったあと、ある試験を合格してもらいます。そうすると、晴れて★1冒険者でございます」


「合格しなかったら?」


「冒険者になれません。まぁパスする方法はありますが」


「どんなのですか!?」


 勉強をしなくていい、と知った瞬間ケンイチは身を乗り出した。



「それは、★2以上の冒険者たちから推薦状を貰うことです。推薦状と言うのは、ざっくり言いますと《この人は冒険者に向いているから、しておいたほうがいいよー》と言った感じです」


 おぉわかりやすい。

 推薦状か――それなら、と思ったがリーベは★1だ。条件を満たしていない。


 

「なら、勉強頑張るしかないですね」


「そうなんです」


「あっちなみに冒険者になるとどんなメリットが?」


「それは、今回の報酬金を受け取ることができます」


「えっもしかしていまの状態じゃ――」


「もらえませんでした。けち臭いですよね」


 頷きにくい。

 乾いた笑みが漏れる。



「そういうことですので、もし報酬金が欲しければ冒険者になる事をお勧めします」


 冒険者研修の申込書をもらった。


「明日から3日間、募集してますからぜひ」


 てっきりすぐなれると思ったが、それほど現実は甘くないらしい。

 冒険者はまだまだ程遠い。



「もちろんやるつもりです」


 申込書をさらっと目を通して、テーブルに置いた。


「それから、今日パーティがありますのでぜひご参加ください」


「どんなのですか?」


「いま遠出している冒険者たちの帰還祝いと今回の祝勝会でございます。服装は自由。どんな格好でも構いません」


 一応これを、と言ってローナはパーティー情報を載せた2枚の紙をケンイチに渡す。

 たぶん1枚はリーベのだろう――彼女の分は折り曲げず、そのまま申込書の上に置いた。



「それから、彼女の治療ですがこれから担当医が来ますので、安心して下さい」


「よかった」


 やはり異世界だから治療と言うのは、魔法だろう。楽しみだ。



「ここで私は失礼いたします。本当に今回は、ありがとうございました。ケンイチさんのおかげです」


 そう言ってローナは一例をし、部屋を出た。


「元からなるつもりだったし、勉強で音を上げちゃダメだな」


 頬を叩く。

 読むことができるので、書くことを頑張る必要がある――そこは面倒くさいけど。



「ケンイチ」


 どうやら、彼女を起こしてしまったらしい。



「どうした?」


 と、返事してみる。


「どんな話だったの?」


 心配しているのか、か細い声を投げかけてくる。ケンイチは彼女を安心させるべく、元に寄ってみる。

 ついでに容態も見ていたかったから。



「冒険者にならないかってお誘い。明日から募集するみたいだし、俺やるよ」


「それは良かったわ」


 リーベは、口角をあげる。


「あと、それからもうすぐ医者が来るって――」


 言い終える前に扉が開く。



「失礼しまーす」



 かすれた声が部屋に響く。

 入り口から入ってきたのは、おじいさん。一本の束ねられた髪が縦に伸び、両脇は皮膚が見えた。顔には黒色のグラサンのようなものをつけ、半分が髭に覆われて見えない。身長は130センチ台だろうか――異様に長い上半身で判断がにぶる。

 観た感じ、上半身7に対して下半身が3の割合となっていた。明らかに長い胴体から某ネコ型ロボットを連想させる。

 まぁあのロボットは顔が大きいのだが、ほんとそれと似ている。

 男性は医者っぽい白の服を身に着け、手提げバックを手にベッドまで歩いてくる。

 


「えぇとリーベさんでいいんだよね」


 おじいちゃん医者のような優しい喋り方だ。

 あの世界にもいたなぁ――と、懐かしさにふける。


「はい」


「ちょっと症状見せてもらうよ」


 まずリーベの手に巻いた包帯を取る。


「これは問題なさそうだな」


 両手の処置は、包帯を変えて終了。

 次は足の包帯を取った瞬間、医者の顔つきが変わる。



「ちょっとまずいねぇ」


 傷だらけの足は、見ているだけで痛々しい。しかし、それよりももっと目に引くものがあった――それは、紫色に変色し腫れあがった皮膚である。

 打撲かと思われたが、あまりにもそうは思えない。

 紫キャベツのような鮮やかさが足全体に広がっている。


「ちょっと触らせてもらうね」


 医者がツンツンと指でつっついた。

 瞬間、リーベは唇を噛みしめ大きく頷いた。

 空気の重さも相まって、この症状はとんでもないのだと知る。

 ケンイチの表情も曇った。



「これ治りますかね?」


 心配、あるいは、不安が募る。

 もしこれが冒険者生命を絶つほどの大事であれば自分はどうすればいいいのかわからない。

 目標の消失である。

 ケンイチは酷くうつむいた。



「あっ治るよ」


 しかし、医者はあっさりとそう言った。

 解決できる――希望が湧き、パッと表情が明るくなる。



「ほんとですか!」


「えぇ、もちろん。人を助けるのが医者の仕事ですから」


 そう言って、彼はカバンから薬を取り出し、


「痛いかもしれませんが我慢してください」


 と言って、緑の何かを指に付ける。見ると、それは塗り薬なのだろう、リーベの足首を掴んで伸ばした。主に紫色に変色した皮膚を中心にし、足全体へと塗る。


「……ッ!」


 自分の指を噛みながらリーベは必死に耐える。

 顔全体に汗が広がり、ケンイチはこぶしを握り締め心の中で応援した。



 それからすぐに処置は終わりを迎える。

 ケンイチは、医者を見送るべく背中を付いて行く。

 医者は扉の前で振り返った――改めてみると身長が低く、ケンイチは見下ろす形となった。


「1時間ほど安静にしていれば、自然に痛みも引いて、立てるようになるかと思います」


「わかりました。原因は何だったんですか?」


「あぁ、ポルポル菌による炎症です」


 可愛らしい名前をしているが、症状は痛そうだ――思い出すだけでゾッとする。



「ポルポル菌というのは、魔物の吐しゃ物とか糞にいます。思い当たる節は有りますか?」


「そういえば――」


 リーベは1度、爆発に巻き込まれていたことがある。

 ケンイチはそれを話した。



「あぁそれが原因でしょうな。」


 医者はアッサリと認めた。


「そのタイミングで怪我をし、ポルポル菌が体の中に入ってしまったのでしょう」


「入ったらどうなるんですか?」


「その場合、卵を産みつけられます。第一段階が今のような足の腫れですが、第二段階――卵が孵化したタイミングになると高熱にうなされ、体の中を食いちぎられます。生きたままで」


 想像するだけで気持ち悪くなる。


「と言ってもそこまでならないですけどね」


「そうなんですか」


「えぇ。傷口の度合いにもよりますが、基本的に洗い流せばポルポル菌も一緒に落ちていきますから」


「結構、簡単ですね」


「そうなんですよ。だから、あまり大事に考える事でもありません」


 医者は、カバンを開ける。


「一応、塗り薬渡しておきます」


 ケンイチは、茶色のビンを受け取った。


「これ塗れば解決しますから」


「あっお代……」


「それは結構です。冒険者協会から払われましたから」


「そうでしたか。ありがとうございます」


 医者がお別れの挨拶を口にし、部屋を出て行った。

 ケンイチは見えなくなるまで頭を下げる。部活の癖が抜けていなかった。



 異世界の見たことない病気――この先冒険者として生きていくのなら、と思うと笑い話じゃない。

 ところで、とケンイチはテーブルの上にあった書類へと目を向ける。様々な紙があるけど、なんといっても目に付くのは、


「パーティー……」


 今回の祝勝会と帰還を祝って開かれる行事。

行くつもりであった。しかし、リーベが行けないと言うのなら、行く価値はない。


 ――どうせうまく喋れないだろうし……。でも、誘われたから生きたいなぁ。



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