表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界グルメ王 牛丼屋バイトが最強味覚を手に入れて、料理バトルの審判に!  作者: トラウマ未沙
ダンジョン:ジャイアントバット
31/375

魔物食

ダンジョンは、小さい物は個人レベルでの倉庫として、大きい物は国家の宝物庫として、古代以前の神々の時代から物の保管に使われていた。


魔力の循環による環境の安定性、魔物や罠による外敵からの警備性、そして世代を越えて残る持続性。どれを取っても誰かが何かを隠すには最適な条件が揃っている。


気が遠くなるような昔には神々が封じた神器を手に入れた人の神話が、古代には国民や国土ごとダンジョンに封じて永遠を求めた狂った王とその封印を解き放った勇者の伝説が、近世でも邪悪な支配者のダンジョンから宝物を盗み出し国を打倒した義賊の逸話が、ダンジョンに纏わるエピソードは数多く残っている。

ただ、それらは、他者がダンジョンを打ち破った極少数の事例だからこそ、英雄譚として世代を越えて語り継がれているのである。


現在ではそれほどに巨大なダンジョンを組み立てられる大魔術師は限られているが、それでもダンジョンメイカーの需要は根強い。


一説には今の魔女の仕事は行商をするか、薬師をするか、魔法道具を作るか、ダンジョンを作るかしか無いとも言われている。そのどれもが余人にはできない特殊な技術のため、食いっぱぐれることもほとんど無いが。

そしてダンジョン特有の持続性は、別の需要も生み出した。


――魔物食である。

ダンジョンには魔力を糧とする精霊や霊魂が集まり、それらを捕食する低級な魔物、さらにその上位捕食者が現れることで魔物の生態系が生まれる。

草や肉を糧とする野生動物も魔力に当てられ魔物化し、そして魔物の方が生物として強靭なため、多くの場合、ダンジョン内の生態系は魔物に支配されていく。


逆に、自然状態では魔力を糧にする精霊が集まれる場所は限られていて、上位捕食者がダンジョンの外で見られることはほとんど無い。

野生動物の肉の微量な魔力で生きられる低級な魔物を除き、ダンジョンの外でも生存・繁殖できる魔物は限られているのだ。


そしてダンジョン内には死んだ魔物を魔力に還元する分解者がいるため、生態系は常に一定のバランスを保ち続ける。ただし、人の手が加えられたダンジョンは魔力が増えやすいように設計されている。


保管した物品を永続させるために、何より避けなければならないのは魔力の枯渇だからだ。

もっとも魔力自体は微量であれば常にどこからでも湧き上がり、鉱物などに封じれば保存ができる。

そのため、蓄積する仕組みが作れれば、よほど下手な構築をしない限りは枯渇することはない。


魔物の生態系もまた、あらゆる階層が増えやすく、そして、死んで還元されやすいよう手を加えられている。

自らが傷つくのを厭わない魔物の攻撃性や凶暴性、死に直結する明確な弱点の存在はそのために神々が作り出したとも言われている。

ダンジョン内の魔物は、満たされた濃密な魔力の効果で、野生の魔物より成長に要する時間も極端に短い。


通常、動物や魚を狩りすぎれば繁殖力が衰え、やがて数を減らす。そのどこかで生まれた空白は、生態系のピラミッドに歪みをもたらし上位の捕食者を減らし、あらゆる生物を減少させる。長い時間を掛けて少しずつ下の層から増えていかなければ、再生しない。


植物の場合も同様に、栽培化した少数の作物を繰り返し繰り返し収穫していると、大地の滋養が失われ、やがて作物は育ちにくくなる。滋養を得て作物を栽培するために莫大な肥料を費やす必要がある。


その点、ダンジョン独自の生態系は、食す場合においても人に都合がよく出来ていた。どんなに大量に狩ってもすぐに回復するため生態系へダメージを与えることはほとんどなく、ポータルなどの整備ができていれば運搬の手間も少ない。魔力を抜けば通常の動物の肉とも大差無い。


ただ一点、人が逆に捕食される可能性があるというデメリットだけは、時代を越えて残り続けてはいるが。


「そういうことで、各地で魔物の調理法が産まれて、人は家畜や栽培植物と同じくらい、魔物を食べて生きているってわけねぇ」


「いや、そのデメリットが最悪なんだけど……」

「そうそう、冒険者の命が懸かってるから、魔物肉って高いんだよね。なんとかならないのかなぁ」

そういうことじゃないんだけど、と吉仲は思いつつ歩く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ