閃光
一階層を調べている間、何度かスライムを見つけたが、今回の目的では無いということと専用の捕獲網がないことで無視された。
下の階層へ行ける階段もあったが、今回は見送ることにした。
他の魔物はまだ見えていない。
ナーサの話では、相対的に魔力が薄い浅い階層に強力な魔物がいることは少ないらしい。
「最近のダンジョンメイカーは、食用にしやすい大人しい魔物に特化したダンジョンを作ろうとしているみたいだけど、まだまだ時間が掛かりそうよぉ。特定の種だけを増やそうとすると生態系が安定しないみたい。こういう古代から続くようなダンジョンが一番ってことなのかしらねぇ」
「ナーサさんはダンジョン作れないの?」
「ふふふ、無理よぉ。根気が続かないわぁ」
「……根気の問題なのか?」
「やってること自体は魔法道具と大差無いんだけどぉ、ここまで大掛かりな魔力の循環と生態系のバランスを組み上げるのは一朝一夕じゃいかないからねぇ……あらぁ?」
ナーサが二人の足を止める。壁の向こうの暗がりで、何かが動いた。
リヨリはとっさに山刀を抜いた。吉仲はおたまを見る。屋根の近くから羽音が聞こえる、飛んでいるようだ。
「伏せてぇ!」
ナーサの声で伏せたリヨリと吉仲の上を何かが飛び回る。暗がりに影が舞う。
「ジャイアントバット!」
リヨリは大きな蝙蝠の姿を認め、声を上げた。山刀を振るが、空を舞う蝙蝠を捉えることはできなかった。
「ナーサさん、どうしよう!?当たらないよ!」
「ナイフじゃ分が悪いわねぇ……」
ナーサはフードを被り防御して、鞄を探る。
蝙蝠は恐れることなく三人に突っ込んでくる。リヨリと吉仲は半ばパニックになり両手を振るうも、蝙蝠は鳴き声と共に、腕をかわし何度も飛びかかってくる。
闇雲に振るわれるリヨリのナイフが、吉仲の鼻先をかすめる。
「うわ!リヨリ危ない!」
「え!?ごめん!」
白刃をかわした時、吉仲は体勢を崩した。壁に手を突こうとする。しかしおたまを握っているせいで、うまく着地できない。
おたまが、照明の魔法陣に突き立った。
強烈な光が辺りを照らす。薄暗いダンジョンは一瞬で光に溢れる。
松明ほどの明かりも無かった魔法陣は一瞬で太陽のような光を放った。
「わぁ!!な、何!?」
「光!?」
真夏の太陽を直視したような光の中でも、吉仲にだけは周囲の状況がはっきりと見えた。
強烈な光で色彩は飛んでいるが、驚くリヨリとナーサ、光を直視し地面に落下する蝙蝠の姿。
ナーサはフード越しに懸命に辺りを見ようとし、リヨリは完全に目をつぶりしゃがみこんでいる。
蝙蝠は、あまりの光量で目が完全に潰されたようだ。悲鳴と共に地面をのたうちまわっている。
今しかない、そう思った瞬間、吉仲の身体が動いた。




