1. 世界の敵
「ねぇー、世界中の全ての人があなたの敵になってもーってやつあるじゃない?」
授業が少し前に終わり、私、笹川蕾はふうと一息ついたところに唐突に同じクラスの友達である神田美央に話題を振られた。急に何の話だろうと思っていると、美央は私の机の横で「それでもー私だけはあなたの味方ーってやつ。あれー、味方ってところ__アバウトだと思わない?」と話を続けた。アバウトとは何のことを言っているのだろうと「アバウト?」と聞くと、「あー、ぼんやりっていうかー……」と美央は気まずそうな顔で続きの言葉を考えている。
「いや、アバウトの意味が分からないわけじゃないよ」
「ほら〜世界中が敵になっているわけじゃない。そんな状況で味方なんてできる立ち位置……立場にいると思う?あなたのことは忘れないよ……って生きて行くほうがよっぽど”味方“だと思わない?」
私が言葉の意味を聞いているわけではないと分かった途端に、美央は急激に話を戻した。
「いや、そういうのってーそれくらいの愛しているってやつじゃないの?」
「えー」とそういうのではないと言いたげな鳴き声がする。
「それか、そういう物語の台詞じゃない?」
「ん〜それはありそうかも……」
美央は少しの時間、真剣に考えると「でも、そういうのじゃなくて〜」と言ってきた。まあ、逸らせないかと美央の話を考える。「味方、ねぇ〜」と声に出しつつ、思考する。「そうそう味方!」と嬉しそうに美央は期待した顔で目を細めている。
「そんな状況で味方の方が怖いかもしれないと一瞬思ったけれど、そんな状況でも信じてくれるってのが嬉しいんじゃない?そういう方は」
「えー」
「だって死ぬときに、それでも信じてくれる人がいるって思って死にたくない?」
「えー、皆に囲まれて死にたいけど」
「わぁー」
よくあるやつだ、と声の抑揚が少なめになりつつの返答となった。
「なにー⁇」
その顔は何か悪いのかなぁ?と心の内の感情を隠した笑顔だった。
次の授業の先生が教室に入ってきた。
「あ、準備しなきゃね。じゃあね、笹」
と流れるように手を出すのみの挨拶をした美央に立ち去られ、ややむかつきつつ、私も準備しなきゃと椅子から立ち上がった。




