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帝女隊物語 〜その3〜

読者様より指摘されまして、エドヴィッシュが悩む「罪」については下記参考を。


エド姉ちゃん出奔します ~姉妹の秘密~(5000pv記念SS)

https://ncode.syosetu.com/n4841ia/

 帝女隊に来るなんて一つ二つと脛に傷があるもんよ。

 少しボカしを入れたが、私は私の秘密を少しだけルーナに漏らした。黙って聞いてた彼女がそう言うと寒いねと続けた。なにせそこそこ広い湯船じゃお湯が貯まるまで時間がかかるのだ。


「ねぇ、その弟くん……、アンジュー君だっけ? どんな子なの?」


「うん。頭良くて素直で優しくて静か」


「そうなんだー! 私、兄は居るけど弟は居ないからなぁ」


「ルーナさんは兄が居るんだ……」


「兄と姉と妹がいるなぁー、兄妹は多いのよ」



 そう言ってルーナはんーと風呂で伸びをした。僅かずつだが貯まる湯のおかげで下半身は温まるのだが、上半身がものすごく寒い。半身浴どころかまるで「四分の一浴」なのだから、私は湯船で寝そべり背中を温めた。



「妹、かぁ。――私にも妹が居たんです」


 私はぽつぽつと妹の話をした、私と違い自分に素直で正直な彼女の話を。そして自分の葛藤を聞いてくれた唯一の人だと。


「いいなぁ年の近い妹! 私と妹ってけっこう年が離れててさ……アンジュー君と同い年だね。で、私の妹、お転婆が過ぎちゃって幼年学校放校になっちゃって! ――ねぇ、一つ提案」


「なに?」


「アンジュー君って大人しくていい子なんでしょ? じゃあ私の妹と結婚させちゃう? プラマイゼロでちょうど良――」


「嫌です! なんでですか!」


「えー、良い提案だと思うんだけどなぁ」


 私は思わず立ち上がってルーナに文句を吐いた、しかし彼女はそんなこと気にする様子もなく口唇を尖らせる。



「プラマイゼロ、てか私とエドちゃんが義姉妹よ?」


「マイナスですッ! なんでかわいく優しいアンジューがじゃじゃ馬の飼育員しなきゃいけなッ! ――ごめんなさい」


「私の妹もかわいいのになぁ……、てか、人の妹を馬扱いってひどくない? ――ふふ、エドちゃん面白い」


 私は相当頭に血が上っていたのかかなり酷いことを口走っていた。しかし殆ど漏らしてた事に気付き思わず謝った。しかしルーナは気にすること無くにこにこと私の顔を覗き込むのだった。そして小柄なルーナは身体を横にし寝湯を楽しむ。私もなんとか肩まで入れるよう身体を折り曲げた。



「談話室とかでね、エドちゃんがなんか悩んでるっぽいと気にしてる人が居るからさ、詮索されないよう差し障りのない事言っておくね」


「うん、――ありがと」


「あとさ、エドちゃんって自主訓練してるでしょ?」


「……うん」


「それ、私も混ぜて? ほら、私って班の足引っ張ってるでしょ? 正直辛いんだよね、誰も何も言わないから尚の事」


「私もそれ辛くて、自主訓練してた」


 そう私が言うとルーナはにぱっと笑い、知ってたと言った。


「ドロドロ風呂嫌だから、訓練終わったら皆一斉にお風呂入るでしょ? でもけっこう前からエドちゃん全然見ないなと思って、実はこっそり探してたんだ」


「なんでそんなに私に構うのよ」


「だってさぁ――仲間じゃん!」


 そう言って拳を突き出してきたルーナを見て、私は涙が止まらなくなってた。




 それ以降、私とルーナは訓練後の自主訓練を行うようになった。通常訓練でヘトヘトになるまで身体と精神をいじめ抜いた後の自主訓練だ。しかし私は同伴者というか、むしろ「共犯者」の彼女が居たため、さらに頑張れる気がしたのだ。


 しかし私ならともかくルーナが居ないとなれば周りもあれやこれや思うかもしれない、だから『夕刻の鐘から二時間まで』とルールを決めたのだ。そして終われば冷えた御飯をカッ込みお風呂に入り、談話室でしれっと自由時間を過ごす生活をする。しかも二人同時に談話室に入ってきたら自主訓練がバレるので、そこらへんも考えて工作もしてたのだ。




 そんな時、妹フィアランスからの手紙が兵舎に届いたと教官から手渡された。

 手紙交換は禁止されていないが情報漏えい防止から軍からの検閲が入る、封筒には『検閲済』のスタンプが押されていたが。中身はまるで新聞のようなデザインであり、書かれているのはアンジューのことだけ。と言うかその新聞タイトルも


『フィアランス・カマーク責任編集 日刊アンジュー』


だ。ここらへんの芸の細かさや記事内容には舌を巻くのだが、なにせ誤字が多い。なおフィアランスは新聞記者になりたく普通科中等学校を受験したが二度落ちし結局修身学校で礼儀作法を主に勉強していると編集後記に書かれていたが。


 で、記事内容は、アンジューが初等学校に入学した話、フィアランス自身のストリバ語宿題をやらせたら満点取れたって話、写真館での話だった。


 その写真館での話とは、前に私とアンジューとで撮った写真を小さく焼いて貰えるよう頼み、完成したってのだ。それが同梱されており辛い時はこれ見て癒やされてねと書かれていたのだ。



 私はいつも読んでる聖句集にその写真を挟み談話室でこっそりと見ていた。もうアンジューと会えなくなって二ヶ月と少し、辛くて脱走も(よぎ)ったけど帰る場所なんかもう無い。苦しいけど自分をもっともっといじめて罪を雪がないととしか思っていない。



 

「ねぇ、エドちゃんって傷心なぅって何があったの?」



 バディであるロモンが目の前にいる。訓練が終わってるんだからそっとしておいて欲しい、私は彼女を放って置くことにした。何度も声を掛けるが私の耳には入って来なかった。

 しかし、


「なにそれ、彼氏?」


 の言葉ではっと彼女を凝視すると聖句集を覗き込もうとしてたのだ。慌てて私はそれを閉じる、あ、アンジューいまの痛かったよね、折れ曲がってたらどうしようと思うと悲しくて仕方ない。そし

てこんな無神経なバディに頭に来ていた。


「うるさいわね、関係ないでしょ!」


 テーブルを思い切り叩いてからそう言った、しかし、あれ涙が止まらない。それに意外と自分は冷静で周りがしんと静まり返ってたのも感じてしまった。あ、これまずい展開になると思った私は談話室を飛び出していった。そしてベッドに飛び込むとカーテン閉めて不貞寝した。



 その日以降、私とルーナの自主訓練にロモンが混ざるようになった。何故彼女がと思った。正直こんな無神経とバディでいるのも苦痛なのにと思ってた。しかし自主訓練後一緒に湯船に浸かってた時、


「ボクはみんなの事を知った気で居たから嫌な思いをさせた。もし二人が職業軍人として生きてくなら二人の事をよく知りたいから……でも言いたくない事は聞かないから」


と言うと、きっとロモンがきっと知られたくなかった事を突然言いだしたのだ。


「ボクね、実は初等学校しか出てないんだ。家が貧乏で中等学校に行くお金もないから直ぐ商家へ奉公に出て、少ない賃金から仕送りしてたんだけど、――出来心で手を付けちゃったんだ、売上金。目的? 遊ぶ金欲しさ、仕送り目的なんかじゃない。で、しばらくしたらバレちゃってさ、しかも前科(マエ)有りだったから年少者刑務所で懲役三年。出所しても売上金なんかに手を付けた泥棒なんてどこも拒否よ。――だからボク、もうここしか行く所なくて」


 よく悪さ自慢をする小悪党は居るとは聞くけどロモンの語った過去はさすがに自慢できる過去でも誰彼と言える内容じゃない。しかし彼女は静かにぽつぽつと話し終えた時、ルーナはロモンの頭を抱きしめて訊く。


「もう二度と……やらないよね?」


「はい、――絶対」


「弁済は済んだの?」


「はい。塀の向こうでの日当で」


「じゃあ私は聞かなかったことにする。雪がれた罪を掘り返すなんて不愉快な事する気はないから……ね、エドちゃん!」


「――うん」


「あの、……ルーナちゃん、苦しい」




「じゃあ私も本当のこと言うね――パパから勘当されたのよ」


「はぁ?」「えっ?」



     ☆  ★  ☆





 ロモンから預かった資料等をキャビネに仕舞うと、今年より学校から取り寄せた格闘術経験者用資料に目を通す。


「ねぇエドちゃん、なんで今年からこんな資料もらったの?」


「んー、余所はどうやって指導してるのか気になってね。いい加減、過度な根性論とかは改善すべきだよ」


「そぉ? んでも軍人育成ならさぁ、その程度がちょうど良いんじゃない?」


 ロモンはソファにどかりと座ると紫煙を燻らせ私としゃべり、何服か吸うと灰皿に揉み消した。私は煙草を吸う人の気持ちが判らない、ただ煙を吸い込んでなにが良いんだろうか。


「ねぇロモンちゃん、じゃあ帝女隊から部隊配属率はどれだけだった?」


「んぁ? ――そんなもん、学の無い私に聞かないでよ!」


「去年実績なら、百五十人入隊して六十二人よ。うち士官学校卒と武芸館卒が四十人。つまり八十パーセントが一年で退官、体の良い出稼ぎ先になってるわね」


「ふぅーん、んでも今年は一人が戦闘技官ぶっ倒してたから良いんじゃない?」


「違うわ! 帝国軍が魅力のない職場だと思われてるのよ!」


 んまぁ職業軍人の魅力ってなんだろうねと言いながら再び紫煙を燻らせる、ちょっとこの部屋禁煙よと言うがロモンは気にせずにフゥーと煙を吹かす。


「じゃあどうすればいいのよ、エドヴィッシュ一佐?」






「――官給品のぱんつをかわいくする!」


「あんたやっぱバカでしょ?」

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