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帝女隊物語 〜その2〜

  ★ 帝女隊に入隊する皆様へ ★

 この度は帝女隊(正式名称・帝国女子教育隊)に入隊の決心をしていただき誠にありがとうございます。最低一年間の任期を何の金銭的負担もなく務め上げられるようになってます。ですから安心して期日時間まで街の帝国地方連絡部まで出頭してくださいネ!



  ★持ってくるもの★

 ありませんヨ!!

 ぱんつも下着も手拭いも、ちゃんと官給品があります! 無償で支給しますので手ぶらで来ても大丈夫だヨ!

(ただしデザインが超ダサいので、かわいいのをつけたい方、お胸が特殊サイズの方はご自身で用意してくださいネ)




 ロモンから預かった資料の中からとても懐かしいチラシが出てきた。私も学院修了間近に手渡されたそれは今見てもダサい、とてもダサい。何せピンク地の紙にいつの時代の影響か真ん丸っこい文字や『ヨ・ネ』と強調された表現で書かれてるのだ。見ていて悶えそうになるのは私だけだろうか。


 そして壊滅的なダサさの官給品ぱんつは今も支給されるという。殿方がベッドの上でこんなもんをぺろーんと見てしまったら『しおしおのぱー』らしい、何がしおしおなのかぱーなのか判らないけど、帝女隊時代によく聞いた。


 余程苦情が多かったのか、お陰で酒保にはかわいいのが売られるようになったという。




「ねぇロモンちゃん、私がまたここの隊長職として戻ってきたんだから色々改革してってもいいわよね?」


「お? 赴任早々ヤル気マンマンじゃん! どんな遣り口で脳味噌お花畑を泣いたり笑ったり出来なくするんだ?」


「ん、官給品のぱんつをかわいくするってのは?」


「───はぁ?」




     ☆  ★  ☆




 中等学校前期課程が修了した日の深夜、私は家族に見送られて家を出た。そして数日母の実家で過ごした後、イオニアの帝軍地方連絡部(通称・地連)に出頭したのだ。


 このイオニアから帝女隊に行くのは三人だけ、私の知らない人だった。でも私は異常に警戒してた。何故私が帝女隊に入る事にしたのかを誰かに悟られたら色んな物が完全に崩れてくと思ったからだ。そのため帝都へ向かう馬車の中で散々話しかけられたけど適当にあしらうことに。




 帝都にある帝女隊の基地へと連れていかれた私達はクジを引かされたのだ。『爾の参』と書かれたのを教官に渡すと一人の小柄な女性を紹介された。


「へぇー、あなたが爾の参の人? 名前は?」


「イオニアから来たエドヴィシュ・カマークと言うそうだ。お前のバディだ」


「ふぅーん、私、ロモン・シコロ、宜しくね! あんた、いくつ?」


 教官は私の前にロモンを置いてくと何処かへ行ってしまった。その目の前に居るロモンは年齢を聞いてきたがしかし、私は応える事を躊躇してしまった。


「ねぇ、聞こえてる?」


「───十五」


 私は絞り出すように応えると、ロモンは私のほうがお姉ちゃんだねとか言うので適当に頷く事にした。




 で、先程引いたクジで『爾』は班の名前らしい。なんと読むかも判らなかったが、


「これ、『に』って読むんですよ」


と、いつの間にか私の横に居た小柄な少女が教えてくれたのだ。肩までの長さに切り揃えられた綺麗な金髪サラサラの可愛らしい少女、彼女はルーナと名乗った。あれロモンさんや他の班員達はと訊くと、探検だーと行って出掛けており不在だと言う。私はルーナの前から逃げ出そうとしたけど彼女は私の肩をしっかりと掴み、言った。


「ねぇあなた、不思議な髪型ね」


「ごめんなさい――」


 目の奥底まで見抜くよう私を見つめながら訊く彼女に私は思わず応えてしまっていた。まるで私が隠してる秘密を知ってると勘違いする程に余りにも真っ直ぐな視線だったから自然とそんな言葉が漏れたのだ。


「何がごめんなさいなの? ふふ、エドちゃん面白い。───これ、誰かに切られたの? 私がちゃんと整えてあげるわ」


と、ルーナはごそごそとバッグから櫛と鋏などを取り出すと、手慣れた手付きで髪の毛を櫛掛けし、ヘアクリップでブロック分けしていった。


「本当はね、私、理髪師になりたかったの。でも両親や周りが猛反対よ! 何でだと思う? お前は肌が弱いから手が荒れるでしょだって! なによそれ! だからね、じゃあ思いっ切り泥まみれになる仕事してやるって事で帝女隊に来たのよ。───エドちゃんは?」


 と、こんな事聞きながら櫛と専用髪切鋏を使ってパサパサと髪を切ってくれるルーナだが、今、私はどんな髪型になってるのか判らない。でも髪の毛なんてどれだけ切ってもどうせまた生えてくるから気にしない。今は明日から始まる訓練の事とルーナを信用していいのか、としか無かったのだ。


「ここに来た理由、話したくない? 判った。じゃあ言いたくなったら聞くよ?」


と言ってくれたのだ。なんて優しい子なんだろう、泣きそうになったけど私は必死に我慢した、そして心が少し軽くなった気がする。


「ほらできた。後頭部に残ってる一束の髪はこだわりなのかな? じゃあ編み込んじゃえ!」


 この時にルーナがしてくれた髪型は今も変えてない。ショートボブだけど後頭部に細長い三つ編みの髪型はもう二十年近くもしてる。




 翌日。ついに訓練が始まった。


 先ずは体力精神力作りと言う事でひたすらに走り込みと筋トレが主体だった。しかし班の中で一番若い私とルーナは体力が少ないから班長ロモンや他の班員の足を引っ張ったのだ。ルーナが腕立て伏せでヘバッてしまったから連帯責任で皆が腕立て伏せをする。走り込みで足がもつれた私のせいで連帯責任。腹筋トレーニング出来ないから連帯責任。


 ひたすらに連帯責任で皆の足を引っ張ってたけど誰一人文句や悪口を言わなかった。言ってくれた方が救われたのかもしれない。皆噯気(おくび)にも出さなかったのが辛かった。



 少しでも皆の足を引っ張らないように、連帯責任で皆に迷惑を掛けないように。だから私は訓練が終わったあと私は自主訓練をするようになったのだ。そのため訓練が終わり皆が隊舎へ引き上げたのを見計らい私は基地内周を何周も走った。走っていれば何もかも忘れられた、無心になれた、犯した罪を雪げる気がしたのだ。




 帝女隊の教育訓練にはルールがあり、訓練時間の開始は日によってバラバラで前日夕方に発表される。深夜や夜明け前からだったり、昼前からだったりとバラバラだが、訓練が終わる時間は必ず『夕刻の鐘』と決まっていたのだ。そこから次の訓練までは睡眠食事お風呂含めて自由時間とされている。


 だから私は自主訓練が終わったらさっと夕飯をカッ込んで風呂に入り、しれっと自由時間を謳歌してる振りをしてベッドに入るようにしていた。それはいつも自由時間に居なければ皆から色々聞かれるだろうから。それだけ私は皆を恐れていたのだ。



 夕飯は我慢できた。冷たくなった食事でも腹に入れば一緒だから無理やり押し込めば良い。


 しかしお風呂は皆の垢が浮いてドロドロだしお湯は随分と減ってるので入れるようなもんじゃない。本当なら足を伸ばしてゆっくり肩まで浸かって疲れを癒やしたいけど皆の足を引っ張ってる人がそんな我儘言えるわけもないので我慢した。


 なお、そんな状態の風呂なんかに誰も入りたくないので、夕刻の鐘が鳴れば我先にと皆が風呂に殺到するのだ。だからその時間はみっちり自主訓練し、皆が自由時間を謳歌してる時に私は誰も来ない風呂を楽しんでいた。――楽しめない、むしろ我慢した。

 しかしそんな、誰も来ない風呂に一人の来訪者が来たのだ。――ルーナだった。



「あ、エドちゃんお疲れさま、こんな時間にお風呂? ってか凄い事になってるねこの湯船。……全部抜いて張り直そうよ!」



 そう言ってルーナは栓を抜きお湯のバルブを開ける、ふんふんと鼻歌ご機嫌な彼女の背中を見て私は涙が止まらなくなってしまう。



「え、エドちゃんどうしたの? ほらほら、ちゃんと話を聞くから、ね?」



と、言ってお湯を張ってる途中の湯船に連れて行くと私の頭を撫でながら話を聞いてくれた。

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