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この世界で生きていく


十五年。それは長く。皆、もう良いだろうと思えてしまう程に長かった。別に恩を忘れた訳ではない。と、平謝りする町長やあれから偉くなった村人達。


「反省する。修繕も家具も買い戻す。直す。だから!どうか、あの国には言わないでくれ!」


()()。ですって?」


敬語じゃない事が気に入らないのかまた契約書を静は握る。連帯責任で皆の分も握るので油汗をかきながら皆は町長を睨む。あの国とは勇者一行を信仰し像まで建てた国の事だ。


今、思い出してもぞっとする。まだ幼かった可愛い王子を助けたら妙に好かれて心酔され像を建てられた。一国の王子なのに「勇者よ。貴女の為に命を捧げます」とか言って、幼い子供なのにと震え。拒否しても気難しく笑わない王子を変えたと国で祀り上げられた。


あの国は私達を強く信仰しているのでバレるとヤバい。下手をしたら滅ぼされる可能性ある。


「静ちゃん。町長の奥さんと元宿屋で現ホテルのオーナーだよ」


ぼそぼそと静の耳に新太が耳打ちする。その言葉にありがとうと礼を言う静が皆に向き直った。


「建て直し。家具も新品になさい。契約書は年月を記していないのよ?それにあの家で気持ちの悪い行為もされていた」


無茶苦茶だと反論する者達を片手で止め。町長の奥さんとホテルのオーナーを指さす。他の者は訳が分からないと言いたげだが二人の顏を青ざめている。


「風呂場と客間として使ってた部屋だけが綺麗でした。おかしいわよね。もう十五年よ?ね、同じ新品の石鹸の香りがする()()()()()?」


がくりと頭を下げ、許しを請う二人に伴侶の者達は怒鳴り、修羅場になってしまった。ここはあの不倫カップルの逢引場所になってたようだ。気持ち悪い。最低だ。世界を救った英雄の家にして良い事ではない。これは許されない行為だ。


「言わないでくれっていうけどね。もう、遅いわ。貴方達の町にはあの王子の使いの者が来た。王子もここに向かっている」


情報は小鳥達。町の人間が町長と奥さんを置いて慌てて、町に帰っていく。町長はもうおしまいだと泣き崩れ奥さんも放心し何かをぶつぶつ言っている。


小鳥達曰く。あの声は広い範囲に響き。国まで届いたらしい。いや、世界にうっすらなら届いたかもと言っている。乱暴に走る馬と馬車の音。バンと勢い良く開けられたそこには苦し気な大臣の姿があった。なにかを言う前に倒れる大臣。


「あ、足で踏んでたの忘れていたわ。ごめんなさいね?」


良い笑顔で足を退ける静に町長達は悲鳴を上げ「流石、静ちゃん!」と笑い寄り添う新太以外は引いている。ドラゴも目を前足と翼で隠してしまうくらいの鬼畜ぶりだ。


「ヨウコ!ヨウコなんだね!本物だ……私のヨウコだ!」


大臣を踏んで出てきたのは美しい大人の男。金の髪。緑の瞳。着ている物を見れば権力者だと分るくらいの身なり。そんな人間に知り合いはいない。はず?


「タケル様!お会いしとうございました!」


これまた大臣を踏んで現れたのは元悪役非道の令嬢。ドレ様。こちらは見た目もあまり変わっておらず、分る。この様子では嫁に行ったりはしてないようだ。


「おう!何だ。ドレか、元気してたか?」


「ええ!しておりましたわ!貴方の教えの優しくをモットーに慎ましく過ごしておりました。貴方の胸に飛び込んでいけるように筋肉も強化する魔法を覚えましたのよ!ほら!」


ひょいとドラコを持ち上げる令嬢に「ナイス筋肉!」と拍手を贈る猛。この令嬢。性格も悪く悪役令嬢と呼ばれていたが猛の愛のある説教に初めて怒られたと猛に心酔する様になった。


言われるままに迷惑をかけた人間に謝り罪を償い。猛がいないと発狂する。戻ってきたら「わたくしのどこが悪いの?捨てないでお願いお願い」を連呼。元の世界に帰らないで死ぬ死ぬ発言。結果、立派なメンヘラにジョブチェンジ。


猛がいると良い子なので無害だが、やせ細った顔色の悪い執事が号泣してるので十五年の間。色々あったんだろう。


「わたしく待って待って待ちましたの!結婚して!貴方の相棒のドラゴウルフの嫁も見つけましたの!婿に来て!」


まだ恋はちょっと、と苦笑いを浮かべる猛にお久しぶりの死ぬ死ぬ発言。それ嫌いだって言っただろうと抱き上げられて怒られたら泣きながらしがみ付き止める。猛獣使いは彼なのではないかとさえ思う。


「猛。女性の十五年ってすごく長いのよ。それにこんなに一途ならもう傷つかないんじゃない?」


一応はフォローを入れてやる。しばらく考えた後でタトゥーを新太に消してもらっていた。他の女の名前を何年もと喚いたが高い高いで泣き止んだ。めでたしめでたし。


……さて、このまるで最初からこのメンバーでしたよと言いたげな男、誰だろう。


「王、よ。どうか……呪いを……」


「ああ、そうだった。さよなら。大臣」


ぱちんとその男が指を鳴らすと大臣が灰となり消えていく。契約書もパンと弾け消えた。大臣の最後の声は「やっとあの世にいける」だった。ぞっとする。彼はもう死んでいたのだ。


「罪を償わせる為に呪いを沢山かけて、不死の呪いもかけてやった。勇者を愚弄した罰だよ」


誰だか知らないがそこまでしろとは言っていない。王と呼ばれていたが王もまた王子と同じく勇者一行の信者なのだろうか?流石の静達もドン引きである。いつの間にか隣に居たので物理的に距離を取ろうとすれば、その王と呼ばれた男に何故か抱き締められた。


「ヨウコ。大人になったね?今も変わらず愛しいよ。年はもう十も違わない。これでもう……子供だから無理だとそんな言葉で断れないね!」


子供だからと断るのかと泣かれた記憶が蘇ってくる。大人になって覚えていたら考えてあげるだなんて、お姉さんぶっていた。あの綺麗な涙で濡れた緑の瞳。


「覚えている。覚えてるんだ。毎夜、夢に出てくる。愛してるよ」


あ、王子だ。この無邪気な感じ王子だ。あれから十五年。もう大人になったんだ。


「いや、あの王なんでしょう?流石に他の奥様に迷惑が……」


「いない。貴方、以外に興奮しない子孫を残せない呪いをかけた」


出そうな悲鳴を押し殺す。隠していたが私にも特徴が一つある。ヤンデレほいほいだ。好意をもたれる人間は皆、病んでる。よく猛とメンヘラ、ヤンデレほいほいと静から呼ばれていた。


居なくなった十数年。呪いを沢山マスターした。大臣、私達を信仰しない者に呪いをかけ「呪いの王」と呼ばれているらしい。


「あのよ。男の十五年も長いんだぜ?」


分かってるわよ!と猛を睨んでやる。とりあえず、とりあえずは……。


「お友達から「婚約者から始めてくれるんだね!嬉しいよ!」」


駄目かもしれない。因みに先に結論から言うと駄目だった。この後、町には厳しい罰が与えられた。家も建て直し家具も高級な物へ。国がそれを払い。多額の借金を町ぐるみで返す事になった。そこで動いたのは静だ。


町長の悪やその幹部の悪を暴き。自らが町長に成り代わった。借金も今までの町の在り方を改変し返済。住みよい町に変えた。町の人間からは感謝され、家は今では豪邸だ。


「たまに来なさい。畑も木も恋しいでしょ?」


「うん。静ちゃんと()()()と待ってるね」


ツンとしているが優しい彼女は孤児院も建てた。豪邸は孤児院であり家だ。畑の物を売り自然を愛す。素晴らしい家。たまに私が畑の先生で来ている。彼女は今では皆の良きママだ。それから彼女自身も母になる。相手はあの新太。


私は……()()()()知っている。あれだけ私と猛を馬鹿にしているが彼女も()()だ。さて、ここで顔が女性みたいに美しく目立たなかったいじめられっ子の話をしよう。彼は帰って直ぐにいじめっ子に復讐。全員を退学にした。


今までそれを助けなかった両親を責め。金を出させて自ら縁切り。静の事は調べ。彼女の年収を越せる様にホストで稼ぎ。資金を増やしてのし上がりオーナーになった。さて、迎えに行こうかと思っていたらここに居たらしい。


静は頼られるのに弱い。なので弱者を演じていた。そう彼は言う。どうか、この罪を覚えておいてくれと切なげな顔で言われたので墓場まで持っていくつもりだ。彼は純真な静と猛にはこれからも言わないらしい。


猛とお嬢様は森の番人をしている。お嬢様は結婚を拒否され勘当されたと言い。猛が自分で作った動物達と暮らす家に転がり込んだ。因みにこの彼女の話は嘘である。愛に生きると家を捨てて金だけ要求して出て来たらしい。二人でそこで暮し彼女とドラゴとモンスターを狩り、その報酬で暮らしている。


彼女の金で少し豪華になった家は「親に手切れ金だと」と言われた金だと彼女は言う。


……実はこれら全ての嘘を彼は知っている。両親から猛に娘を頼むと言われて騙されたフリをしてやっているらしい。あの娘をなんとか出来るのは貴方だけだと彼女のいない所ではよく話し合っている。子も生まれるのでサプライズで大きくないが両親も呼んで式をするとあの優しい笑顔で笑っていた。


ドラコも二百歳差だったが無事に結ばれ子供が生まれている。ドラゴの躾が済んだので勇者一行の各家に修行中。ドラコ曰く。人と慣れあう修行だと言っていたが、うちの子は慣れ過ぎて野生感がまるでない。静の家の子は賢そうで猛の家の三匹はワイルド。うちの子は抜けている子。


どうしてこう差が生まれたのか未だに分からない。


あれから私は呪いを解くパレードの馬車に綺麗なドレスで乗せられ何故か隣で手を振らされた。頭に疑問を浮かべてると国民の前でされるキス。これのせいでもう逃げられなかった。結婚おめでとうございます。と国民に喜びで泣かれ。大臣。彼の親にも感謝しながら泣かれて逃げ場も無く結婚した。


偶然かもしれないが王が私が良く好んで、やっていたゲームの中のキャラに大人になって似てたせいで押しに負けたのかもしれない。ゲーム内で、そのキャラは呪いの王。エーと名乗っていた。この世界の王のであり旦那の名はエフ。名も似ている。……気のせいだと思うけどね?


押しに押されて私も子が出来た。しかもメンバーと同じ頃にだ。先の事は分からないが年が同じの勇者一行が誕生するかもしれない。


もうあの世界に未練は無い。ここを本当の故郷だと思っている。私達は帰ってきたのだ。


愛する故郷に……。

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