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『少女世界攻略記録』  作者: けゆの民
『少女世界攻略記録』<終章>
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829◇好きに照らされた世界


「そうです!花奈に私達の世界を──私達抜きのこの世界をもっと知って貰いましょう!」


そんなセリアの発言が起源になり、半分追い出される形で私がいるのはエフティ領郊外。

平和で牧歌的な雰囲気が流れている、といえば半分嘘半分本当になるくらいの空気。


半分嘘、というのは……


「はいはい!というわけで案内を受け持つのはわたし!ノア=エフティです!」


牧歌的雰囲気、とは決して言えない賑やか蓄音機が真横に存在しているからで。

セリアの『花奈と話せなくて拗ねているリアさんは私が何とかします』という力強い宣言を背景に、アリスが固定メンバーと共にいすぎることの危険性を問いてくれたからでもある。


要は、お互いのために体よく引き離したってこと。


私とアリス達は、お互いがお互いのことを知りすぎている。関係性が深すぎる。

故に崩れるもの、手に入らないもの、お互いのためにならないこと。それらがあるだろう……というラスティの予測。


本人の言葉をそのままに借りるならば、『秀でた先導グループが“外”を見なかった結果、科学文明と魔法文明は滅んだんです。永劫の安寧は破滅と同義ってことですよ』とのこと。


その結果どうなったかといえば。

現状私達の関係性を把握している部外者、即ちノアに世界観光案内を頼むって流れが発生した。


「今回は全能王女様からのお願いで、ハナに外を見させて欲しいとのことだけれど……これって堅苦しく(フォーマル)な感じ?」


こんなのも渡されましたし、とノアは袋を摘まむ。

袋が揺れて鳴る金属音から考えて、金銭の現物支給か……と苦笑か浮かんでくる。


「そういうのじゃないね。外を見せて、って依頼だけど……つまるところ『外で遊んでこい』ってことだからね」


まああの三人が私抜きで何をしてるのか気にならないでもないけど、それはそれ。

こういう視点と気持ちの偏りをどうにかするために設けられた時間なんだから、今くらいはノアとの行事に集中しよう。


「遊ぶ、遊ぶかぁ……望岳城も行ってましたよね?」


「行ったし、あそこでノアとの戦闘するはめになったからなぁ……」


本当にあのノアを倒すのは苦労した。覚悟を決めた人に敗北を認めさせることほど難しいことはないからね。

もう一回やれって言われたら……それこそ、『観測』換算で60%以上は出さないとダメでしょうね。


「ちょっと?ノア?視線をそらさないの!」


「い、いやぁ……あの時はわたしとしても辛かったというか……」


それはわかる。いや、むしろあの状態からここまで持ち直せてるストロング・メンタリティを褒めはすれども、貶そうとは微塵も思ってないし。


「やりにくさって点では、経験してきた戦闘でも最上位……2位くらいかな?」


「褒められてるかわからないけど……そう言われると、1位が気になる!」


「大して栄光でもないやりにくさランキング1位はラスティだね。注意を払うとかそういう感じじゃなくて、ひたすらにどこまでも負けない(・・・・)のよ」


改めてラスティの……ラストホープが使ってきた能力を整理しよう。


まずは基本武装である無限の重火器と衛星(ビット)

ラストホープ本体だけではなく、射出点にビットが増えるのが困るのよ。

多分だけど、本来は雑兵処理用の武装その1なんだろうな、って感じ。


戦う力を持っていない非戦闘民を効率よく、最速で絶滅させるための武装。

ほら、英雄も体は一つって欠点が基本あるわけだからね。家族とか守りたいものを人質・物質(ものじち)にすれば脅せるでしょ、的な。


聖界守護永世エクストラ・シェルター】という名前の『定義』すら耐え得る絶対防御壁、【故郷滅する炎の海(ラスト・オブザーバー)】という環境変化兵器。

更に加えて機械式魂燃尽駆動『心身燃焼(プログラム・リペア)』という全自動回復機構。

そして対魔法存在と対科学存在、その双方を射程範囲に納めるべく存在する武装。


ここまで解禁したラストホープを倒せば、解禁されるのは全力モードラストホープ。


現世粛清第一武具『電脳簒奪サイバー・アポカリプス』という電気属性完全拒絶結界に、現世粛清第二武具『殖えし機怪(エグレイショナル)』という超合金製か?って固さの長剣。

加えて、粛清武具を取り除いた強さのラストホープが増える現世粛清第三武具『機械人形王臨界フィクショナル・ファンクション』。


これらを装備したラストホープを回復封印をしながら、倒しきる。すると現れるのがエネステラとしての……D.E.I.としてのラストホープ。

『D.E.Iの機能を停止させる』とかいう権限を持っていたり、さっきの剣の再降臨が待ち受けてたり、分身もあったり。


で、そうした諸々を乗り越えた先。最後に戦闘を継続するということすら諦めたラストホープが出したのが最終魔剣『鬼望(ラスト)』。


まあこっちは変に使わせる前に倒したから、基本機能しか見せてもらってない。

ちなみに上二つとの違いとして、挙動が曲線的になりうるっていう面倒なものがある。


……うーん、改めてまとめて見たけど酷い。


「要は、無限に回復してきて……そして回復するたびこっちの苦手属性に合わせてくる、みたいな?」


「うへ~っ!自分がされたらヤなことをするの、ダメなのに……」


そうね、と相槌を打ちながら私は遥か遠くの虚空を見る。

うん、人にされて嫌なとこはしちゃだめだよね……!


グサグサと轟音を立てながらストレートに刺さってくる言葉が消化不良物として、胃に穴を開けてくる。


普段なるべくそういう行動をすることで、何とか何とか相手の取れる選択肢を潰していって勝とうとする人類としては、ひきつった笑顔を浮かべて話題を流す以外のムーブは許されていないのよ。


「……でも、昔の人達が勝つためには仕方ないことだったのかな」


ノアの言葉にちょっとした衝撃を受ける。

それは私の知っている「過去」の印象が操作された物語であるからこそ、起きた衝撃。


英雄すらも有象無象と成り果てる世界において、遥か数千の年月先を見据えて文明を操り、手繰り寄せた天整統という人物が近しい人であったが故に発生した衝撃。


「自分達の生活(「好き」)を守るために手段とか、選り好みとか出来なかったんだろうな……」


陰謀、策略。そんな劇的で揺れ動く物語しか事実としては残らない。

そう、観測された物しか歴史書には残らない。人々の泥臭い努力が……「犠牲」という言葉で形容していいのかわからない、そんなものが星の数ほど眠っていたということ。

そして、その眠りが暴かれることはない。


師匠(イシュタム)がいて、エネステラがいて、たくさんの英雄がいて……それでも、どうしても守りたかった。そんな決意が、戦闘方法からわかるね」


前から言おうとしていたけど、ちょくちょく敬語が外れてるよね。

咄嗟に浮かんできたのは野暮ったい返事しかなかった。

何を言っても、言い訳にしかならないような気がしたから。


「まだ18年しか生きていないわたしですら、こんなにも沢山の出会いと別れ(じんせい)があるのに……それら全てをぐるっと囲む『文明』って、どんだけ重い(・・)ものなんだろうね」


70億を越え、80億手前まで個体数が繁栄した文明が1人を除いて滅びた。

言葉にすればたったこれだけで収まる大事件だけれど……それで途絶したモノへと思いを巡らせると、どうにもやりきれない気持ちがわいてくる。


今まではそんなことなかったのにな。


「わたし達が立っている今ここは、千万、一億、十億……もしかしたら、百億以上の「人生」の上に積み上がっている世界なんだなぁ、って思ったら……こう、大きいなぁって」


私みたいな『異世界転移者』じゃない。昔栄えていた文明を知っていたり、壮大な人類の物語に巻き込まれているわけじゃない。

アリスみたいな時代の奔流を作り出す人じゃない。全世界を凌駕し、魅了するような能力があるわけじゃない。

ラスティみたいな「時代の存在」ではない。その生存が文明の衰退・繁栄に直結するような存在ではない。


一般人であり、なおかつ様々な事情を知っているノアだからこそ気付けたこと。


「この先も文明は、沢山の人生を積み上げていくんだと思うと……壮大だよね。こういうの、ロマンっていうんだっけ?ロマンが積み上がって国が出来る。文明が出来る。世界が出来る。それって、もしかしてすごいことなんじゃない?」


ロマン。

合理と理性を中心軸においた「お堅い世界」に対する反抗として、庶民の間で生まれた感情や楽しむためのもの。

それが積み上がって国が出来る。

そんなノアの表現に、「ローマ」という国を知っている私としては複雑な顔をすることしか出来ない。


当然、複雑というのは悪い意味じゃない。

同時に、そういうものは記録書物の中では埋もれていく、描かれないという事に何も思うことがないわけでもない。


「だって、みんなの「好き」が集まって世界が出来るってことでしょ?」


だから、ノアの言葉に対して私は曖昧な笑みを浮かべることしか出来なかった。

それは今後、私の『観測』との付き合い方に関わる話だから。


うん、と脳内の整理をかねて発声をしてから。


「想いっていうのは全ての原動力だからね。その原動力で動かす対象(関数)が理性であり、才能ってことよ」


中学時代の教師の言葉のほぼほぼ流用。


『世界っていう空間の上の話でね。環境とか才能、理性っていうのは関数(・・)でしかないの。その上で君達がどんな変数(おもい)を入力していくかで、空間上(せかい)にどんな図形(人生)が出力されるかってのは変わったりするんだよ』


思い返せば、私にとって法国って何かと天世(あまのとき)について思い起こさせる場所になってるなぁ。

一応王国のほうに天整統(幽霊)とかおじいちゃんとかいるんだけど。




 


 ちなみに名言っぽいことを仰った教師の続く言葉は『だから先生の彼女はいないんじゃない。関数で描ける図形内で“彼女が存在する領域”に入るための必要十分条件を、感情が満たしてないだけだから!』というものです。

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