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私の蒼空  作者: 蒼空
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ケバ三姉妹と旅立ち

孤児院に戻った私は院長先生に報酬から500リンを渡します。


「いつもお金を入れてくれてありがとうね。」


「ううん。まだ小さい子達のためだもん。」


院長先生は結構なお年の70歳。お名前は【北見しずる】素敵なマダムなんだ。優しくてみんなのお母さん&お婆ちゃんなの。


「これでミルクたくさん買ってあげてね!」


まだ働けない小さい子達のために年長者は報酬を孤児院に入れなくてはならない。強制されてないけど、こうやって私達はみんなに助けられてきたからね。今度は私達の番なの。でもね、やっぱりそうするとお金が貯まらなくて自立が難しくなるのが現状で、出ていく人も少なくないの。


朱鷺お兄ちゃんはもう少ししたら出ていくと言っていた。お兄ちゃんは他の子達と関わるのが苦手のようで、特にお姉さん達は嫌みたい。騒がれるのを嫌う人だから分かる。


お兄ちゃんが帰ってくるまで朝に干していた洗濯物を取り込んでおく。下着とかは毎日洗うようにしている。後は結界も張っておくんだ。……信じられないけど前にお兄ちゃんの下着が盗まれる事件があった。犯人はお兄ちゃんが無視していたから分からないけど、それでも気持ち悪かったみたい。私に結界魔法を教えてくれたので、洗濯物に限らず、貯金箱や私物に結界を張っておくようにしているの。


「あら蒼空。今日も稼いできたの?」


「ねぇ、ちょっとお姉さん達に貸してくれる?今日は全然稼げなかったのよ。」


「最近は不景気で嫌になるわ~。」


この人達は年長組のケバ三姉妹。化粧がケバくてそう呼ばれているおバカなお姉さん達だ。上から「キリエ」「加奈子」「ゆかり」という名前だ。


「ごめんなさい。お姉さん達に貸せるほどのお金はないの。」


「嘘つくんじゃないよ!ギルドからたんまり貰ってるのを知ってるんだからね!」


「そうなのぉ?加奈子を怒らせない方がいいよ~?」


「そうそう。」


このケバ三姉妹は私みたいな小さい子達からお金を巻き上げて遊んでいるんだ。いつか、孤児院を出たとしてもろくな人生にならないと思われる。


「お姉さん達なんか怖くないです。そんなことをしてる暇があるなら真面目に働いたら?」


「何よ!朱鷺が助けてくれると思って!!」


「そうよ!あんた、朱鷺のお荷物だって知らないの!?あんたさえいなかったら朱鷺は出世してるんだから!」


「ガキのくせに逆らうんじゃないよ!!」


キリエに殴られそうになっていた時、その腕を誰かが止めた。


「……何をしている。」


「あ……」


「お兄ちゃん!」 


仕事から帰ってきた朱鷺お兄ちゃんがキリエを止めてくれていた。


「蒼空、大丈夫か?」


心配そうに私の全身を確認し、キリエを突き放したお兄ちゃんは私を抱き上げてくれる。


「お前達、蒼空に何をするつもりだった?小さな子供に暴力を奮って楽しいか?本当に屑だなお前らは。」


「え、あ、」


「と、違うわよ!私達はっ」


「院長がお前達を卒院させると言っていた。さっさと荷物をまとめるんだな。」


そう言って歩き始めるお兄ちゃん。そしてケバ三姉妹は最初は何を言われたのか分からない様子だったけど、すぐに煩くなる。


「卒院ってどういうこと!?」


「お前達は院の秩序を乱しすぎた。お前達の行動は全て院長はご存知だ。今まではお前達が厚生するものと静観していらしたが、もうチャンスはないとのことだ。」


「そ、そんな……」


「お金もないのに、どう暮らしていけと!?」


「蒼空のように地道に働けば今の現状は起こらなかっただろう。全ては自分の行いの結果だ。自業自得だ。」



そして今度こそ三姉妹を振り返ることなく歩き出したお兄ちゃん。私はお兄ちゃんの腕の中で大人しくしていた。私も彼女達を振り返る事はしなかった。


彼女達を可哀想だなんて思わなかった。あの人達のせいで泣いた子達は多いからだ。一生懸命稼いだお金を奪われ、満足のいく食事も好きなものも買えなかった悔しさやひもじさは酷いもの。


その後、彼女達を見たのは裏路地の酒場近くだった。露出の高い服を着て、娼婦になっていた。体を売るなんて私には出来ない。でも稼ぐのに楽だからと彼女等が選んだ。彼女達はそうやって生きていくのだろう。願わくばまともな人生を歩んで欲しいと思います。







お兄ちゃんと共同の部屋に戻ると、お兄ちゃんから今日の報酬と食材を受けとります。


「今日も沢山あるね。」


「魔物が群れでいたからな。」


お兄ちゃんはギルドで狩人として登録しているの。狩人は実力に合った魔物を狩って生計をたてている。お兄ちゃんはとても強くてギルドに注目されているんだ。私の自慢のお兄ちゃんなんだよ!


「どれくらい貯まった?」


「んと、これで30ルン(30万円)になったよ!」


「ん、なら近いうちに孤児院を出ていくか。」 


「もう?」


いくらなんでも早すぎでは?


「最近、ここの噂は悪いものばかりだ。何か起こるより先に出ていくぞ。」


「でも、ここには他の子も……」


「……他の奴等にもこの話はしているが、みんな笑って相手にもしない。院長は確かに良い方だが、他の職員はそうじゃない。」


確かに怪しい人もいるし、院内の雰囲気も悪くなっている気がする。


「荷物をまとめておくんだ。明日にでも出ていく。」


お兄ちゃんが急かすから私は大慌てで荷物を用意する。持っていくものは着替えと思い出の品、お金くらいだ。持っていかないお金はお下がりに誰かにあげる。


本当に急な事で荷物も少なかった。お兄ちゃんは院長に話に行くとかで今はいない。


他の子達が心配で仕方がないけど、私もお兄ちゃんもお互いに生きるだけで精一杯だから……。みんなが無事でいてくれるよう祈るしかできなかった。




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