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第25話 第4王子とオズワルド

 第1王子とその婚約者との一波乱はあったが、エストリアはオズワルドと色んな貴族達を相手に挨拶回りをしていた。

 婚約式の主役でもあるが、王子としての役割も果たさねばならない。時間的に会場も温まって来たので、ちょうど良い頃合いだと判断した。


 先程のアランとレティシアの1件がある為、エストリアに下手な事を言わない様に一部の貴族は緊張させられる事になったが。


「オズワルド兄様」


「ウィリアム、元気にしていたか?」


「ええ、兄様ほど大変ではありませんから」


 オズワルドと顔立ちの似た少年がオズワルドに声を掛けて来た。顔は似ているが瞳の色と髪の色が全然違う。

 瞳はルビーの様に紅く、鮮やかな銀髪をしている。彼はウィリアム・レアル・ファルガス。現在10歳の第4王子である。


 身長はまだ低いものの、兄達を思えばまだまだ成長の余地はあると思われる。今はまだ可愛らしい少年だが、成人する頃にはさぞ美しい王子になっているだろう。

 ウィリアムはオズワルドに似て、非常に理知的な印象を受ける。プライドが高く神経質そうな第1王子のアランとは対照的だ。


「エストリア、コイツは弟のウィリアムだ」


「私はエストリア・オーレルムと申します。以後お見知りおきを」


「僕はウィリアム・レアル・ファルガスです。宜しくお願いします。もう義姉上と呼ぶ方が良いでしょうか?」


「あ、義姉上!?」


 弟か妹が欲しかったエストリアには、非常に甘美な言葉であった。結婚すればエストリアは義姉の立場になる。

 確かにそれはそうなのだが、意識していなかっただけに衝撃は大きい。


 どことなくオズワルドに似た可愛らしい義弟が現れたのだ、エストリアとしては大歓迎である。

 今すぐにでも一緒に馬に乗ってオーレルム領を駆け巡りたい気分になった。今度こそ義姉として、正式な義弟との時間を過ごしてみたかった。


 しかし今はそうはいかない。少し残念に思いながらも、場を弁えられる女性である。

 昔はそれが出来ずに、散々母親に怒られて来た成果が出ていた。


「おや? 嫌でしたか?」


「いえ! 全然問題ありませんよ、義姉上で!!」


「ふふ、どうやら仲良くやれそうだな」


 ウィリアムは他の兄達と違って、今でもオズワルドと仲が良い。元々予備の王子同士だったからか、変な蟠りはない。

 それにウィリアムは頭の良い少年だ、似たタイプのオズワルドにはすぐに懐いた。


 違いがあるとすれあば、オズワルドは大体なんでも無難にこなす万能型で、ウィリアムは知能に特化したタイプであるという事ぐらいか。

 ウィリアムはオズワルド程戦闘には向いていないが、その分知識の吸収は早い。それ故に大人びた会話も普通に出来る。


 もしウィリアムがもう5年ほど早く生まれていたら、王位を巡る争いは4つの派閥に割れる事になったかも知れない。


「しかし流石ですね兄様、オーレルム家を選ぶとは」


「狙って決めた事ではないぞ?」


「ええそうでしょう、兄様は政治的理由で結婚を決める人ではありません」


 エストリアにそんな理由で結婚したと思われたくないので、オズワルドは当然嫌そうな顔をする。

 しかしウィリアムはそんな事は理解した上でこの話をしている。


 この王が倒れたという大事な時に、王座を争う2人の兄。その姿を見てウィリアムは心底落胆していた。

 見切りをつけたと言ってもいい。王族として恥ずべき行いをする醜い2人に比べて、オズワルドはずっと冷静だった。


 兄達を諫めて、騒動を落ち着けようとして来た。ウィリアムはその姿を見て、やはりこの人こそが王に相応しいと考えていた。

 そもそも昔から頼りにならない2人の兄を、ウィリアムは信用していなかった。


「いずれにせよ早々にアランもギルバートも王としては失脚するでしょうし、王都に戻る用意はしておいた方が良いですよ?」


「……そこまで兄上達も愚かではないさ」


「僕にはそうとしか思えませんけどね」


 ウィリアムがオズワルドを評価した理由、それはエストリアを射止めて来た事にある。それも狙ってやったのではなく、素である所がなお良いのだ。

 先ずオーレルム家はレアル王国において、非常に権威の高い家系で血筋として悪くはない。それにオーレルム家で生まれる子は優秀な肉体を持って生まれる。


 次世代を担う王族が優れた肉体を持つ事はメリットでしかない。兄達が失敗し、オズワルドが王都に戻って国王になれば、王妃はエストリアである。

 そこまで考えての評価なのだ。何より王妃が国王にとって最高の護衛というのは、これ以上ない程に良い条件だ。

 王妃としての才能が仮に無かったとしても、そこは自分がカバーすれば良いとウィリアムは考えている。


「大体、俺に王は向いてないさ。辺境で領民と暮らす方が合っている」


「そうでしょうか? その思考こそ、国王に必要だと思いますけどね」


 10歳にして聡明な頭脳を持つウィリアムは、想像通りになって欲しいと思っている。

 アランとギルバートには、民を大切にするという考えが足りていない。優遇されて育った為に、その大事な部分が身に着かなかった。


 自分勝手でプライドだけが強い、平凡な貴族と変わらない。それがウィリアムの2人への評価だ。

 そしてそんな政治的な話にエストリアが混ざる事はない。礼儀正しくて頭の良い義弟が出来て嬉しいな、と思いながら未来の夫と義弟の姿を眺めていた。

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