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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第3章:禁じられた魔女たち
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64:ワンメェ~ネットワーク

 夕刻を迎え、リリーは街に出た。


 テカーノヴァ街は、今日も変わらず行き交う聖職者や商店で賑わいを見せている。


 王国を騒がせている失踪事件の舞台であるにも関わらずだ。


 誰も自分が次の犠牲者になるなんて露ほどにも思ってないのだ。


 日々の繰り返しは人の中に慢心を生み出し、それにより足元をすくわれる。


 街に警官が多く配置されるようになったのも、その慢心を後押しさせる要因にもなっている。


「よぉ~し!!そんじゃ!行きますかぁ~‥‥‥!!」


 右手で押さえながら左手を、首をポキポキと鳴らしてリリーは気合を入れる。


『腕が鳴るのはいいことだけど、ほどほどにしなよ?』


 頭の中にサクァヌエルの声が聞こえる。


 腰元にダガーはない。


 遠くで待機しているフィンリー達に預けた。


 彼とリリーとの間には契約、魂の繋がりがあるためコミュニケーション自体はできる。


 今回のおとり捜査では、ダガーナイフが通信機の役割をしているわけだ。


 異常があればすぐさまフィンリー達を呼ぶよう、手はずは整えている。


「分かってるって。さ~てと!まずは‥‥‥」


 リリーは辺りを見渡し、何かを探していた。


『何を探しているんだい?』


「それはね‥‥‥おっ!いた!」


 行動に疑問を持ったサクァヌエルが聞き、リリーはそれに答えようとしたが、途中でお目当てのものを見つけてそちらに走って行った。


 リリーが向かった先には、野良犬が座っていた。


 テカーノヴァ街は聖職者の街なので清楚に保たれている。


 なのでリリーが近づいた野良犬も、他の街のよりかは毛つやが良かった。


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「ン~ワゥ!(まぁぼちぼちだな。)」


 頭の中に急に犬の言葉が入ってきてサクァヌエルは驚いて声を上げた。


 これがリリーのバフォメルマウスの力だ。


 彼女は今、犬と山羊の言語を使ってこの野良犬と話している。


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「ワン!(街を騒がしている事件のことだろ?)」


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「クゥン‥‥‥(悪いが俺は知らねぇな。ああでも‥‥‥)」


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「ワン!ワン!(街の北で畑やってる人間に飼われてるヤギいんだろ?)」


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「ワン。(一昨日消えたヤツを最後に見たとか言ってたな。)」


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「ワン!(確かだ!)」


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 リリーは懐から昨日の残りのサラミを出して犬にあげた。


「ワン!ワン!(いつもすまんねぇ~!何だい?この街で魔女騒動かい?)」


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「クゥ~ン!(ワンメェ~ネットワークが初めて役に立ったみたいだな!)」


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 リリーは野良犬と別れて、街の北の畑へと向かった。


『リリー、ワンメェ~ネットワークって?』


「ボクの犬と山羊と話せる力を使って作った秘密組織だよ。街中の野良犬や飼い犬、飼われてるヤギを情報屋代わりにして王都やこの街で魔女に関して情報交換をしてるんだ!まさかここに来て役に立つなんて思わなかったよ~。さ~て!次はジョージに話を聞きに行こう。早くいなくなった人達を助け出さなくっちゃ!!」


 サクァヌエルは感心した。


 リリーはリリーで、自分に与えられた力を活用して、この街の危機に備えているのだった。


 たとえそれが、『悪魔の血による力』と忌み嫌われている力であったとしても。

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