46:不死の魔法
頭を潰したはずのリリーが自分の足首を掴んでいる状況に、エディスは愕然とする。
「おっ、おまっ・・・!!さっ、さっき・・・。」
「さっき?ああ。よくも一発かましてくれたな~?だけどおかげで、めっちゃ近づけた!!」
ダガーナイフを抜いたリリーは、エディスの足首を斬りつけた。
「あ゛あ゛っ!!!」
苦悶の叫びをしてエディスがうずくまった隙に、リリーはエディスのもとまで急いだ。
「ディアナ大丈夫!?」
「あっ、あなた・・・。あっ、あた、ま・・・。」
「頭?ああ。思いっきり踏まれて気絶しちゃったけど、もうへ~き!心配かけちゃったね。」
ディアナはおそるおそるリリーの頬を両手でなぞる。
「うへっ!?なになに?」
両頬に感じたディアナの手の生暖かさに、リリーはびっくりする。
「あっ、頭・・・ある、よね?」
「あるに決まってんじゃん。」
「・・・・・・うん。」
確かに感じるリリーの肌の温もりに、ディアナは目の前のリリーが生きていることを実感する。
そして、胸が張り詰めるほど安堵する。
「よかった・・・。生きてる・・・。」
「もしかしてディアナ、ボクが死んだと思った?あれっくらいじゃボクは死にゃしないって!!」
胸をトントンとグーで叩いて、リリーはディアナを励ます。
「本当・・・あなたって・・・。」
二人の間に、感動的な雰囲気が流れる。
「あっ、頭潰されてんのに・・・なんで生きてんだよぉ・・・!!」
足首を斬られて動けないエディスが、良いムードになっているリリーとディアナに吠える。
「おっと忘れてた。早いトコこっちを片付けないと!」
自分のことなど歯牙にもかけないリリーに、エディスは激昂して歯を食いしばる。
「お前らぁ!!!あのバケモンとその仲間を噛み殺せぇ!!!」
エディスが出せる最大量の魔力にあてられた毒犬たちが、リリーに集中攻撃を仕掛けてきた。
「ちょっ!?そんないっぺんに・・・!!!」
ディアナを巻き込めまいと、リリーは彼女を後ろに突き飛ばして庇った。
壁になったリリーに、全ての犬が噛み付く。
「死ね!!死ね!!死んじまえッッッ!!!」
今度こそリリーを殺せるよう祈りを込めて、エディスは狂乱して叫ぶ。
犬たちに群がれ、やがてリリーの姿が見えなくなった。
「あっ・・・ああっ・・・。」
毒犬たちに生きたまま食い荒らされるリリーを想像し、ディアナは恐れ慄く。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「くっ・・・クローバーあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「あっ。やっと名前で呼んでくれた。」
「え・・・?」
群がる犬の塊から、リリーの声が聞こえ、隙間からその姿が見えてきた。
「うっ、うそ・・・。」
「なっ・・・!?どっ、どうなって・・・!?」
リリーの犬にかじられて抉れた傷が、ボコボコ隆起して再生しているではないか。
ただ単に治癒されているだけならまだしも、リリーは痛みすら感じてないようで、平気な顔で立っている。
「いや~いつ呼んでくれるのかずっと待ってたよ~。」
「くっ、クローバー・・・それ・・・。」
「それ?って・・・ええっ!?!?なっ、なんじゃこりゃ!?!?」
自らが置かれた状況に、リリーは今更になって理解した。
「全然痛くないし、傷治ってるし、しかも毒もなんか聞いてないみたいだし!!!」
驚異的な再生能力を見せるリリーに、エディスは完全に戦意を喪失した。
「おっ、お前・・・なんなん、だよ・・・。」
「はっ!しめた!!ディアナ!!今の内にエディスをやっつけて!!犬はボクが引き受ける!!」
「なっ、何言って・・・。」
「ボクなら見ての通りへっちゃらだから!!」
全身を噛まれて指も喰い千切られているのに、どこがへっちゃらなのか。
リリーが心配になって、ディアナがその場から動けない。
「ほらほら早く早く!!今がチャンスだよ!!」
とりあえず、リリーは大事ないみたいなので、ディアナは攻撃に出ようと翼を展開しようとした。
その時、エディスを雷のロープが拘束した。
「間に合った・・・と言えるのか?」
「マリアせんせい!!」
「がっ、ガブリエル・・・。」
風穴の入口で剣を抜いたマリアが、切っ先から伸びる雷のロープでエディスを縛り上げている。
「話の前にコイツをおとなしくしないとな。」
剣が帯びている雷がロープを伝ってエディスに流れ、「ひぐっ・・・!?」と言って気絶した。
「対象の魔女の捕縛完了・・・と。」
「りっ、リリー・・・。」
マリアの後ろからアイリスが飛び出し、リリーに駆け寄る。
エディスが無力化されたことで、毒犬たちは元のロッキードッグに戻りそのまま眠りについた。
「りっ、リリー。だ、だいじょう、ぶ?」
「うん!ほら見て!!」
喰いちぎられたリリーの指が、まるでトカゲの尾のように生えてきて元通りになっていく。
「ひっ、ひゃっ・・・!!」
それを見たアイリスは思わず腰を抜かした。
「なっ、なんかまずかった?」
「千切れた指が生えてくるのを見て驚かない人間なんぞおるか。」
「マリアせんせい。ごめんなさい。勝手に出かけたりして・・・。」
「それを叱るのは後じゃ。しかし・・・。」
再生するどころか痛みや毒も全く受けてない様子のリリーを見て、マリアは低い声でうなる。
「もしやと思うておったが・・・まさか、真だったとはのう。」
「え?」
「がっ、ガブリエル。知ってるの?クローバーの、この力のこと・・・。」
「ああ。これはの、ジャンヌが七歳になった娘に渡したプレゼントじゃ。」
「ぷっ、プレゼント・・・?」
三人を集めて、マリアはリリーの見せた力について話すことにした。
「リリーの見せたモノこそ、ジャンヌを魔女の王たらしめる力の一つ・・・不死の魔法じゃ。」




