44:弾ける笑顔
感情がなく、突き刺すようなリリーの目に睨まれ、エディスはたじろぐ。
(このガキ、なんだ?とても神に身を捧げるヤツには見えない・・・。)
リリーの放つ言い様がない威圧感に、エディスは恐怖に似た違和感を覚えた。
「おっ、大人を下に見やがって!糞尿ぶちまけて後悔しちまえ!!」
怒りで虚勢を張り、エディスは毒犬たちにリリーを噛み殺すよう仕掛けてきた。
壁を駆けて滞空するリリーに迫る毒犬たち。
リリーは両サイドから襲ってきた犬二匹の脇腹を、身体を捻ってダガーナイフで斬りつけ着地した。
リリーの攻撃に『キャウン!!』と悲鳴を上げた犬だったが、すぐに立て直して牙を剥いて飛び掛かってきた。
リリーは地面を滑るように飛び、ダガーを構えてエディスに突撃する。
「ちっ・・・!!」
エディスがリリーに手を向けると、リリーの後ろにいた犬たちが猛スピードで戻ってきてエディスをガードする。
リリーは咄嗟に空中で一回転して後方に下がった。
「あたしの犬どもはあたしの命令だったら何でも聞くのさ!!どう近づくつもりだい!?」
エディスはそう豪語するが、守りに入った犬たちの腱から血が噴き出ている。
「操縦術で動物の出せる力の限界まで無理やり出させてるんだ。」
『グルルルルルルルルルルルルル・・・!!』
『ガルルルルルルルルルルルルル・・・!!』
牙を剥いてリリーを威嚇するエディスの犬たちであったが、バフォメルマウスで犬の言葉が解るリリーには聞こえる。
苦痛に満ちた彼らの声が。
❝足が痛い。❞
❝身体中が苦しい。❞
❝群れに戻りたい。❞
❝もうこんな奴の言うことなんか聞きたくない。❞
❝お願いだから森に帰らせて。❞
❝助けて・・・。❞
「・・・・・・サクァヌエル。」
『何だいリリー?』
「さっき切った子たちから操獣術の解き方を調べて。ボクにはまだできないから。」
『君が望むなら。リリーは?』
「手っ取り早い別のやり方試す!!」
ステップで身体をほぐし、リリーはダガーを構えて再度エディスにアタックを試みる。
「もうちょっと頑張って!!今助けるから!!」
エディスを守る犬の猛攻を回避しつつ、リリーはエディスの隙を探った。
「アイツ・・・もう魔女とあんなに戦えて・・・。」
リリーとエディスの戦いを安全なところから覗き見ていたディアナは、入学して二日目で魔女と渡り合っているリリーに目を奪われる。
「だっ、だけどこれで、二人は隙だらけになりましたわね。こっ、この隙に・・・。」
二人が戦いに夢中になっているのチャンスに、ディアナは当初予定していたリリーとエディスの同時殺害を実行に移すことにした。
「まっ、まずは・・・毒犬使いの魔女を・・・。」
エディスを先に殺せば、リリーは混乱するか安堵するはず。
そこを突いてリリーを殺せばいいと考えたディアナは、エディスにじりじりと近づく。
翼を展開し突進すればエディスの首をハンドクローで突けるくらいの距離まで近づいた。
「よっ、よし!いっ、今・・・」
「奇襲は感心しないな。」
リリーと交戦していたはずのエディスが犬十頭全てを集中させ、ディアナのところまで跳躍した。
「ばぁっ!!」
「ひっ・・・!?!?」
目の前まで来たエディスに驚き、ディアナはその場で腰を抜かした。
「まっず・・・!!ディアナ!!!」
ディアナを助けに行きたいリリーだったが、犬たちに邪魔され近づくことができない。
「どうした?殺してみろよ?ん?」
「あっ・・・あっ・・・。」
エディスの気迫に圧倒されたディアナは足の力を失ってしまい、立つことができない。
「なんだぁ?声がひっくり返っちまってるじゃないか!全然度胸足りてないじゃねぇかお前!!」
悦に浸った邪悪な笑みで煽ってくるエディスに、ディアナの下半身は弛緩し、股間を濡らす。
「やっば!!ちびってるよ!!いいお家に生まれたお嬢様が勿体ないでちゅね~?」
ゲラゲラと笑って、エディスはディアナの顔の前で片足を上げる。
上げられるエディスの足をスローで感じる中、ディアナは心の中で悲鳴を上げた。
(お父様やお母様、家の者みんな・・・魔女のことを虫けら同然に見ていたけど、こんなの虫けらじゃない。人間じゃ全然相手にならない化け物じゃない・・・!!!)
初めて魔女と相対したディアナは、そのオーラを全身で感じて痛感した。
こんなのと戦えるワケがないと。
「はいサヨナラ!!」
恐怖が極限に達し目を見開くディアナに、エディスは容赦なく剛脚を振り下ろす。
(わたくし・・・死んだ。)
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「え・・・?」
もうダメかと思ったその時、リリーが滑り込んできてディアナを突き飛ばした。
「あっ、あな・・・。」
「ふぅ〜、ギリギリセー・・・」
うつぶせで安堵の笑みを浮かべるリリーの頭をエディスは躊躇なく踏み潰した。
リンゴのように弾けたリリーの頭部が散らばり、血で瑞々しい細かい肉片がディアナの顔に『ピチョ・・・!!』と飛んでへばりつく。




