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魔女の子、異端審問官になる。  作者: 朔月理音(サツキコトネ)
第2章:異端審問官の学び舎
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40:好奇の奇蹟

「どっ、毒・・・?」


「うん。これはコモチチドクトカゲっていうトカゲの毒なんだ。オスは背中が平べったくてメスが産んだ卵をそこに孵るまでしょってるの。生まれたら今度はオスとメス一緒に半年間子どもを世話するの。は虫類なのに番いで子育てするなんて変わってるよね~?」


「トカゲの説明はいいですわ。それとこの症状がどういう関係があるっていうのよ?」


「ディアナはさ、涙やおしっこの材料って知ってる?」


「そんなの知る訳ないでしょう。」


「正解はね、()なんだよ!涙もおしっこも血から赤色を抜いてできた液体なんだ。」


「でっ、でも、、鼻からも、血、出てる、、よ?」


「それはさアイリス、鼻水が元は涙だからだよ。目にちっちゃい穴が開いててそれが鼻に繋がってるの。泣いてる時に鼻水が出るのはそれが原因なんだ。コモチチドクトカゲのチドクは読んでそのまんま()()。涙やおしっこから血の赤みをこし取るはたらきを阻害するんだ。なんでかっていうと襲ってきた外敵が他の動物に食べられるのを上げるからだって考えられてる。噛まれると血が出続けるほかに発熱や倦怠感も出る。敵が動けなくなった隙に逃げてもっと大きな動物に食べてもらう・・・。面白い生態してるでしょ?ちなみに赤ちゃんの時は毒がそれほど強くないんだ。親から口移しで食べ物をもらっている時に一緒に毒を強くする成分をもらってるってボクは思うんだ。捕まえて育ててみようとしたけどママに止めらちゃってね~!あとそれと、親の片っぽが敵に襲われて死んじゃったら一番最初に生まれた子の身体が大きくなって毒も強くなるのさ。これは生存率を上げようともう片方がひいき目に育てるからで・・・」


 いつの間にか饒舌になったリリーにアイリスがタイムのハンドサインを送った。


「あ、ごめん。止まんなくなっちゃった。」


「そっ、それで・・・!!父と母はどうなるんですか!?」


 居ても立っても居られず聞いてきたエルクに、リリーは微笑みながら答える。


「この毒はあくまで天敵が更に上の天敵に食べられやすくなるための毒だから、まず死なないよ。」


 死に至らない猛毒ではないことを知り、エルクは胸を撫で下ろした。


「おっ、おねえちゃん!!メメとエルクにいちゃんをたすけたみたいにおとうさんとおかあさんをたすけて!!」


 メメにすがられたリリーを、ディアナは嫌味な目つきで見てくる。


「そんなにこの毒に詳しいなら、解毒剤の一個も作れるわよね?()()()()()()()?」


 出す言葉を慎重に選んでリリーは言う。


「コモチチドクトカゲは東に住んでるは虫類なんだ。ここじゃ薬を作るための材料がない。そもそも・・・ボクはこの毒の治し方を知らないんだ。」


 メメは泣きながら肩を落とし、ディアナはほくそ笑んで、「はぁ・・・。」とため息をしながら両手の平を上に向けて軽く上げる。


 エルクやメメの両親をはじめ、そこら中で苦しんでいる人達を助けたい気持ちはあるが、何もしてあげられることができないことに、リリーの胸がズキっと痛む。


『僕を使って、リリー。』


 頭の中でサクァヌエルの声が聞こえた。


「え!?」


 懐に目をやると、ダガーナイフの形を取っているサクァヌエルが白く発光している。


「なっ、なにこれ・・・?」


『この人の身体に僕を当てて、その時に唱える言葉を一緒に言うんだ。』


「なっ、なんで!?」


()()()()()()()。さぁ。』


「うっ、うん!!やってみる!!」


 リリーはサクァヌエルを抜いて、苦しむエルクとメメの父親の腕に刀身を当てた。


「おっ、おねえちゃん!?」


「なっ、なんだ・・・!?」


 初めて見る天使の輝きに、エルクとメメは目を奪われる。


『何が知りたい?』


「コモチチドクトカゲの毒の解毒剤の作り方!!ミートスでできる材料で!!」


『分かった。じゃあ、一緒に。せーの・・・。』


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


『「❝知恵よ来い(ラダート)❞!!」』


 リリーとサクァヌエルが詠唱した瞬間、辺りを清浄な風が吹いた。


「りっ、リリー・・・!?」


「まさかコイツ・・・!!()()を・・・!?」


 ダガーナイフを通って、コモチチドクトカゲの毒に関する情報がリリーの頭の中の流れ込んでくる。


「おっ、おおっ~!?!?」


 未だ味わったことのない感覚にリリーは戸惑い、同時に快感を覚える。


 やがて辺りは再び静寂に包まれ、リリーは大きく目を見開き頭を上げて固まった。


「はぁ・・・!!はぁ・・・!!なっ、何!?今の・・・。」


『これが僕の奇蹟、()()。リリーの知りたい情報を探って、頭に流し込む。知りたがりのリリーにとても似合う奇蹟だと思うよ?』


「サクァヌエル。君・・・すんごくバチヤバだよッッッ!!!」


 リリーは近くにあった紙とペンを取って殴り書くと、それをケネスのところに持っていった。


「里長さん!!ここに書いてる草と実、材料をあるだけかき集めて!!」


「なっ、なんじゃ?」


「みんなを治す薬に必要だから急いで急いで!!」


「わっ、分かった!」


 全てを把握したわけではなかったが、ケネスは動ける里の者を集めて材料と道具の収取に取り掛かる。


「リリーよ。」


「なに?せんせい。」


「お主の天使の奇蹟はどうじゃった?」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「もう最っ高に・・・バチヤバだった!!!」


 満面の笑みでグッドサインを送るリリーに、マリアも満足げだった。

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